著者
高島 宏幸 佐々木 光信 小原 甲一郎
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.164-169, 1992-12-15
被引用文献数
4

肥満を評価するため近赤外線分光法による脂肪量測定を行い,諸種の体格指標(丹治指数,BMI, Broca-桂法,明治生命の標準体重表による肥満度)との比較を行った。対象は男性134例,女性38例であった。体脂肪率は16.4%〜47.5%に分布し,男女とも各体格指標と有意な相関を認めた。また測定精度を検証するため,同一測定者による多数回測定と別測定者による測定での変動係数と測定者間誤差の有無を調べたが,精度に問題は認められなかった。危険選択において脂肪量測定が充分可能となった意義は大きい。特に過体重として評価された被保険者について脂肪量の補足データが得られるのは重要な利点である。
著者
岩佐 寧
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.2, pp.181-190, 2003-06-17

2002年10月20-23日に米国フロリダ州オーランドのディズニーワールド内ディズニーズボードウォークインにて行なわれた第111回米国保険医学会年次総会に出席し,最終日に行なわれたThomas E. Murphy Jr.博士による「非糖尿病者における蛋白尿と微量アルブミン尿」を聴取したので報告する。博士は,蛋白尿と微量アルブミン尿の定義,微量アルブミン尿発症のメカニズム,病的意義,原因,国民ベースでの頻度,全死因死亡率や心血管死亡率の予測因子としての意義について報告された。さらに,高血圧症治療薬であるアンギオテンシンII受容体阻害剤による幅広い治療効果及び微量アルブミン尿検出を保険加入時の検査項目とすべきかについても言及された。
著者
寒河江 悟 杉村 政樹 工藤 隆一
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.4, pp.364-372, 2003-12-17
被引用文献数
2 2

婦人科がんの最近の動向は,子宮頸がんでは検診の普及により初期がんが増加しているものの,進行がんも依然多く死亡者数は横ばいである。頸がんの治療はその組織型の違いにより放射線感受性が異なるので,扁平上皮がんには放射線照射を中心にし,腺がんには化学療法後に手術を行う。また子宮体がんは明らかに増加しており,早期がんは予後良好であるが,進行がんの予後はここ10年改善されていない。治療方針は拡大手術か縮小手術か議論が分かれているが,術後療法に放射線療法のみでなく化学療法も取り入れられてきた。更に卵巣がんはI期とIIIc・IV期に二極化しつつあり,依然進行がんの5年生存率は30%台で変わっていない。卵巣がんの治療方法の基本は手術であるが,化学療法の併用による縮小手術が行われている。さらには,化学療法の間に腫瘍減量手術を行う工夫もされている。一方絨毛がんは激減し,完全制圧まであと1歩である。これは,有効な抗がん剤の発見のみならず,経腟超音波による胞状奇胎の早期発見やbeta-HCG検査による管理法の進歩による。これら婦人科がんの危険因子は,子宮頸がんでは性感染症によるヒト乳頭腫ウイルス,子宮体がんでは薬剤や動物性脂肪摂取によるエストロゲン優位状態,卵巣がんでは女性の社会的環境の変化による間接的に排卵の無い時期が少なくなったことが挙げられている。婦人科検診では,頸部・体部細胞診,経腟超音波,CA125が実施されるべきである。
著者
横山 哲
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.59-68, 1997-12-15
被引用文献数
5

体格指数の中では身長の影響をうけにくいといわれ国内外で広く用いられているBMI (Body Mass Index)をもちいて,体格を狭長体・標準体・軽度肥満体・中等度肥満体・高度肥満体の4群にわけ各種死亡指数を分析した。(1)診査方法別でみると,全身診査に比べて面接士扱いの肥満体の死亡指数の悪化が男女とも示され,面接士扱いの肥満に対する選択力の弱さを示唆した。(2)年齢階級を29歳以下,30〜49歳,50歳以上の3群にわけ体格別の死亡指数をみたところ,男性では中高齢になるにつれ,狭長体で死亡指数の上昇と高度肥満体で指数の低下が示された。(3)肥満体の過腹囲で死亡指数が悪化するという傾向は,女性および39歳以下の男性にみられたが有意差は示されなかった。また39歳以下の男性では胸囲が腹囲より11cmをこえる中等度および高度肥満体の死亡指数は標準体よりも低かった。
著者
牧野 安博
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.78-87, 2003-03-17

2002年10月20日から23日まで米国フロリダ州オーランドで開かれた第111回AAIMに参加した。聴取した演題の一つアリアンツ再保険会社のRobert Coates医学博士による講演「血液凝固」の内容を資料として報告する。血液凝固の概念,血液凝固の引き金,関与する因子と各々の機能,血液凝固異常をきたす疾患,各疾患の危険評価上のポイントについての講演であった。
著者
栗山 進一
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.100, no.1, pp.27-34, 2002-09-17
被引用文献数
2

我が国の衛生指標は世界でも最高の水準にあり,平均寿命(男77.6歳,女84.3歳),健康寿命(男71.9歳,女77.2歳)ともに世界一である。しかしながら人口の急速な高齢化や生活習慣の欧米化が進む中で疾病構造が変化し,生活習慣病が増加している。3大疾病のなかでも,がんの増加が著しい。増加しているがんの筆頭は男女とも大腸がんである。また,男性では前立腺がん,女性では乳がんの増加も顕著である。先進国の中で飛び抜けて高い喫煙率も肺がんの依然として高い罹患率に関与している。心疾患の中では虚血性心疾患が,脳血管疾患では脳梗塞が増加している。糖尿病の激増は,保険医学上も国民の健康寿命延長のためにも最も深刻な課題のひとつである。こうした生活習慣とそれに伴う疾病構造の変化は,日本の長寿世界一の座がいつまでも続くとは楽観できない旨暗示している。
著者
小林 三世治
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.2, pp.175-180, 2003-06-17
被引用文献数
2

悪性新生物に罹患し,診断確定されたときに,保険金が支払われる特定疾病保障保険に平成11年9月25日(責任開始期)に加入した被保険者(35歳女性)から,乳癌に罹患したとして,支払請求があり,責任開始期後発病担保規定を巡って争われた一件。加入後の平成11年10月末に被保険者自身が右乳房のしこりに気付いた。同年11月17日に行われた定期健康診断で,右乳房のしこりを指摘され,精密検査を受けるよう指示があった。乳腺粘液癌の診断にて平成12年3月4日に右乳房切断術を受けた。これらの事実を踏まえ,「責任開始期の属する日から起算して90日以内に乳房の悪性新生物に罹患したときは保険金を支払いません」と定めた約款に基づき,保検者は不払を主張した。一審・二審とも保険者の主張を認めた。
著者
泉 泰治
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.100, no.1, pp.64-69, 2002-09-17
被引用文献数
1

生命保険の医学的選択の中心となるのは被保険者個人の健康状態であるが,こういった個人情報の取扱いについても国のレベルでの法規制が避けられないものとなりつつある。日本の個人情報保護法案では利用目的の特定義務,本人への開示義務,訂正要求への対応義務などが示されている。これら義務規程の生命保険業への影響を,アメリカですでに行われている法規制(NAICプライバシーモデル法)との関連で考察した。また,これらの法規制の存在下で,米国において生命保険会社間の顧客医療情報交換制度(MIB)が成立している基盤についても論考した。その中で,近年日本において,プライバシー法制化や販売チャネルの変化など生命保険の周辺事象は米国型になりつつあるが,それに対応できるだけの選択制度の整備ができていない状態が顕在化しつつあることが示された。この乖離は死差益にとって大きなリスクになりうるものと考えられる。
著者
KRAUS H. K
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.89, pp.84-97, 1991-12-15

皆さん、次に要約を致します。生命保険におけるスクリーニングは、査定の必要条件で一般の選択過程で十分機能する道具です。逆選択は排除しなければなりません。これは、保険申込者および保険者の双方の側で、平均余命を縮めるどんな欠陥についても、等しい知識を必要とします。スクリーニング技術は、医学的に十分明示され、一般の臨床および医療のルールに従います。さらにスクリーニング・パラメーターは、保険の目的に対して、年齢グループによる疾患のパターンに従うべきです。スクリーニング・パラメーターからの予後の推論は、臨床医学的観察とルールを共に考慮する限りにおいては、道理にかなうものです。HIV-抗体試験は、スクリーニング法の新しい範囲で、継続的な科学的フィールドバックを必要とします。遺伝学的試験は、生命保険スクリーニングにはまだ使用されていませんが、生命保険医学は、リスク分類における遺伝学的試験の将来の役割の可能性を承知していなければなりません。敏感な性格のスクリーニング技術は、秘密厳守やカウンセリングを含めたインフォームド・コンセントのように扱うために、非常に特別なルールを必要とします。最後に一言申し上げます:慎重に前進しましょう。御静聴ありがとうございました。
著者
外間 之雄 小林 三世治
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.139-144, 1997-12-15
被引用文献数
1

1984年から1993年度新契約における早期死亡について,若干の検討を試みた。対象は84年から93年に当社に加入した診査扱の個人保険のうち契約後2年以内に支払い請求のあった早期死亡例20,459件である。男性が75.9%,女性が24.1%であった。40代が23.7%と最も多く,保険金額は3000万円以下が大部分を占めた。五大死因は,1位悪性新生物,2位不慮の事故,3位心疾患,4位自殺,5位脳血管障害の順であった。
著者
佐藤 久美 榎本 真希子 内山 武史
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.102, no.4, pp.414-417, 2004-12-17

第101回日本保険医学会定時総会が,平成16年10月14日,15日の両日にわたり,東京都千代田区有楽町のよみうりホールで開催された。第一日目は,ニッセイ基礎研究所研究理事の明田裕氏による特別講演「生活リスクの変化と生命保険事業の将来」が行われ,続いて住友生命・横山哲氏が座長をつとめたパネルディスカッション「高齢者の生命危険因子および危険選択」が行われた。第2日目は小林三世治氏による会長講演「医的査定から見た生命保険」およびGen Re医長のFajah S. Peshi氏による特別講演「The pitfalls in the interpretation of diagnostic data」が行われ,さらに総会議事,表彰式,宿題報告,一般演題,教育講演,さらにはワークショップなども開催された。
著者
鈴木 淳
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1, pp.101-106, 2005-03-17

2004年10月2日から6日まで,アメリカのコロラド州デンバーで第113回アメリカ保険医学会(AAIM)総会が開催されました。筆者はこの学会に参加する機会がありましたので,デンバーやアメリカ保険医学会の様子について報告します。前半はデンバーについて,後半は各種講演やワークショップについてご紹介します。
著者
三河 一夫 上島 弘嗣 犬塚 勉 立澤 惇 相模 嘉夫
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.314-319, 1992-12-15

貧血や肝障害がなく比較的栄養状態が良好な場合でも,飲酒者では何らかの機序を介して平均赤血球容積(MCV)が増大することがこれまでの研究報告より知られている。一方,MCVの増大に喫煙が関与しているとする報告もある。そこで本研究では、大同生命大阪診療所の成人病検診を受診した35歳以上の男子255名の成績を基に,飲酒と関係の深いγ-GTPをMCVと対比させつつ,喫煙習慣を考慮のうえMCVと飲酒の関連について検討した。分析の結果,喫煙習慣を考慮してもなお,飲酒はMCVと有意な正の関連を示した。貧血や肝機能障害がないにもかかわらず,一日当たり日本酒換算で2合以上の多量飲酒者では,ほとんど飲酒しない者に比べて喫煙の有無を問わずMCVが有意に大きかった。また,MCVはγ-GTPに劣らず飲酒と強く関連していた。以上より,断面的調査の範囲内ではあるが,飲酒の指標としてのMCVの有用性が示唆された。
著者
小林 三世治
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.61-66, 2003-03-17
被引用文献数
1

脳出血後に失語症および要終身介護状態になったとして高度障害保険金の請求が被保険者(62歳男性)からなされた。診療録等を精査した結果,約款に定めた失語症・要終身介護状態にはあたらないとして,保険者は高度障害保険金の支払を拒否した。争いは法廷に持ち込まれたが,保険者の勝訴で判決が確定した。
著者
宇都出 公也
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.114-125, 2008-06-17
被引用文献数
3

「がん保険」とは,「がんしか保障しない保険」である。「がんしか保障しない]という革新的な方法によって,革新的な保障上の特長と革新的な営業上のモデルを可能にした保険である。その危険選択の要諦は,革新的な約款上の規定にある。その約款規定を現実の力としたのは,代理店を含む全社における,規定とその実行に必要な配慮を浸透させるための継続的な努力であり,その結果として風土と化した全社の意識である。「がん保険」とは,「がんという状況」に対する配慮の体系でもある。
著者
清水 宏一
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.39-60, 2012-03-17
被引用文献数
2

【背景】高血圧症は加齢と共に増加し,70歳以上の人口の過半数は降圧剤を内服している。顧客の高齢者層へのシフトを考慮すると,この集団に対する引受査定の重要性は大きい。高血圧治療患者への適切なリスク評価の実現が,本検討の目的である。【方法】分析対象は当社の2001〜2009年度死亡保障・医療保障新規契約者のうち,新契約時に血圧値の確認が可能であった契約とした。死亡リスクは多変量Cox比例ハザードモデルを,入院リスクは多変量一般化線形モデルを用いて分析した。【結論】死亡リスクに関しては血圧治療群のリスクが有意に低く,-20点程度の美点評価が適切と考えられた。入院リスクは血圧治療群が有意ではないものの高い傾向にあった。査定上重視すべき高齢者や血圧高値者で,治療群の死亡・入院リスクが非治療群を上回る傾向は認められなかった。降圧治療中患者への現在の査定はリスクを過大評価しており,査定の適正化は引受拡大への寄与も期待できる。
著者
三好 裕司 平尾 行雄 石川 瑞子
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.182-185, 1990-12-15

喫煙と体重の関係を,対象者の年齢を考慮して分析した。若年者では喫煙量の多い群ほど肥満傾向を示し,50歳台の高年者では喫煙量の多い群ほどやせ傾向を示し,中年層では高度喫煙者の若干の肥満傾向が認められた。一般に加齢に伴う体重増加,所謂中年肥りが存在するが,この傾向は非喫煙者に最も甚だしく,喫煙量が増すに従ってその程度は小さくなっていた。そして,高度喫煙者では加齢に伴いやせている傾向がみられた。このことは,喫煙が体重増加抑制,または体重減少に働くことを意味し,高度喫煙による肥満効果については否定的であった。20歳台における高度喫煙者の肥満傾向は,喫煙開始者の体格上の特質であり,喫煙者の性格や日常生活習慣を反映したものと思われる。
著者
味元 寛幸 兼子 敏昭
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.100-103, 1996-12-15

阪神・淡路大震災における当社の死亡統計・入院統計を分析し,厚生省統計と比較検討した。その結果,(1)性・年齢階級別死亡数は,15〜64歳が243名(65%)と最多で,65歳以上は85名(23%)であった。性別では,男199名,女174名であった。厚生省統計では,65歳以上が45.7%を占め,女性が約1.5倍となっているが,この差は被保険者の年齢・性構成によるものと考えられた。(2)死亡日時は,1月17日当日が298名(96%)と最多であった。(3)障害発生場所別死亡数では,自宅死亡が298名(80%)と最多であった。(4)死因別死亡数では,312名中,窒息・圧死が252名(81%)で最多であった。(5)被災者の傷害状況は,骨折が163名で最多であり体幹部の骨折が多くみられた。震災後注目された挫滅症候群は19名であった。