著者
早川 幸男
出版者
素粒子論グループ 素粒子研究編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.341-348, 1954-11

核子とπ中間子から成る体系について, Iスピンの保存則が成立つことは殆んど確からしい。そこでIスピンの保存に基いて,基本的なπ反応の荷電比を予測することができる。このような計算はすでに多くの人々によつて行われているが,前項の実験の綜合報告に続いてこゝにとりまとめておく。それ故本稿は原著ではない。またこの形で素研に出すことについて,南,長谷川氏等との討論に負うところが多い。
著者
中村 誠太郎
出版者
素粒子論グループ 素粒子研究編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.94-106, 1990-11-20

標準模型は電磁相互作用と弱い相互作用を統一し,ゲージ理論の基礎の上に立って広い範囲の現象の説明に成功していると信じられている。しかしくわしくしらべると弱い相互作用に関与する重粒子カーレントはnon-leptonic decayとsemi-leptonic decayとで相互作用の選択律がちがう,また共に普遍的にV-A型では説明できない,これはたとえクオークの力学が完成したとしても,それだけでは説明できるかどうか分らない程複雑である。また巨大質量をもつウィーク・ボゾンの質量を説明すべく導入されたヒグスボゾンは定義が不十分で実験以前に問題が残っている。さらに,ワインバーグ角やカビボ角のような任意常数の値を現象毎に調節していることは完全な理論とはいえない。われわれはこのような不完全な普遍性をもつ標準理論をやめて,まず素粒子の多重項と強・弱の二つの相互作用の中から,素粒子の対称性の理論を建設し,これにもとづいて,相互作用の選択律を推定した。軽粒子の相互作用は,ミンコフスキー空間の中のhelicityの反転に対する不変性から導いた。non-leptonic decayではこの不変性は破れるが,更に電荷の反転をつづけて行えば不変性が成立つという複合反転を仮定し,実験との一致をえた。semi-leptonic decayに対しては,湯川理論の立場にもどり,まず重粒子カーレントからメソンへ移り,次にメソンがウィークボゾンをへて軽粒子カーレントにつながるというモデル(Strong meson dominance)を採用し,実験を説明することができた。光子の他に質量ゼロ近くに中性のウィークボゾンδがありうるかを調べた。
著者
野上 茂吉郎
出版者
素粒子論グル-プ
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.289-307, 1973-11
著者
瀧 雅人
出版者
素粒子論グループ 素粒子論研究 編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.119, no.4, pp.171-243, 2012

2009年にAlday、GaiottoおよびTachikawaによって発見された新しいタイプの「双対性」について概論したい.摂動的な計算結果の観察から、彼らはN=2四次元超対称ゲージ理論のインスタントン分配関数が、二次元共形場理論のVirasoro共形ブロックと解析的に結びついていることを見抜いた.すなわちこれは四次元ゲージ理論の分配関数と二次元共形場理論のカイラル相関関数が等価であることを意味している.つまり少なくともこれらのセクターにおいては、両理論の間に双対性が存在していることが強く示唆されている.このレビューでは、共形ブロックとインスタントン分配関数の組み合わせ論的計算手法を紹介する.その後でAlday-Gaiotto-Tachikawaの原論文に従い、AGT対応を発見法的に確認する.さらに、その他の双対的記述や弦理論との関係、あるいは証明の試みなどについても紹介したい.なお本稿は、2010年11月に東京工業大学素粒子論研究室で行ったセミナーの講義ノートを大幅に加筆したものである.
著者
東 茂 東野 一郎 久保添 忠嘉 小田 稔 小塩 高文 柴田 啓行 渡辺 健二 渡瀬 譲
出版者
素粒子論グループ 素粒子研究編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.509-529, 1953-04

我々は地下宇宙線について得られて居た知識が非常に少く,基礎的定量的なdataを欠いていること,しかし地下では割にelementaryな現象を見易いかもしれないし,又上空の宇宙線や新粒子等についても地下宇宙線の知識が案外大きな役割を果すかも知れないこと等に注目して,1951年初め頃から地下宇宙線の研究にとりかヽつた。その後Georgeは"Progeress in comic ray physics"の中で1951年の地下宇宙線に関する研究をまとめて可能な限り統一された像をつくりあげ,更に最近Amaldietal, Cornellの人達等によつて知識がつけ加えられた。我々は出来る限り色々な側面から地下て起きて居る現象をつかんで,はつきりした像をつくり上げて行きたいと思つて居る。その手はじめにこれから述べるような実験を進めて居る。未だまとまつて居ないけれどもこヽに中間報告して,当面の事,ずつと先の事を問わずsuggestionなり御協力なりを得られヽば幸である。実験の場所は静岡県焼津郊外のトンネルである。
著者
林 青司
出版者
素粒子論グループ 素粒子研究編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.157-176, 1982-11-20

重いディラック・フェルミオン及び重いマヨラナニュートリノの低エネルギーでのクォーク・フレーバー及びレプトンフレーバー非保存希少過程に於ける効果を調べる。従来行われて来た,フェルミオン質量がm_F≪M_<WL>と見なせる場合の近似的表式に基づく遷移確率の計算は意味を成さない為,全てのm_Fの値について成立する正確な表式を導出する。この表式による遷移確率の理論値を実験値と比較する事により,未解決の問題:tクォーク質量の大きさ,ニュートリノ質量のタイプ(マヨラナ or ディラック),左右対称性の自発的破れの程度(M_<WR>の大きさ)等,に対し重要な手がかりが得られる事を示す。