67 0 0 0 OA 頸椎症の診療

著者
安藤 哲朗
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.469-479, 2012 (Released:2012-07-27)
参考文献数
49
被引用文献数
8 7

頸椎症は50歳以上の人では高頻度であり,神経根症と脊髄症をおこす.放射線画像上の頸椎症性変化は無症候性のことも多いので,神経症候が頸椎症からおこっているのか,それとも他の神経疾患からおこっているのかを評価する必要がある.誤診を防ぐためには画像上の病変の高位と神経症候とを対比することが重要である.とくに頸椎症と筋萎縮性側索硬化症の鑑別診断は臨床上重要な問題である.頸椎症患者の経過や予後は様々なので,予測はかなり困難である.多くの患者は比較的良好な経過をとる.
著者
石田 志朗 本池 慶 岡本 育子 山川 和宣 渡辺 智康 安藤 哲信 鈴江 朋子 岡野 善郎
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.285-290, 2014-05-10 (Released:2015-05-10)
参考文献数
5

Amitiza® is available as an oval, soft gelatin capsule containing 24 μg of lubiprostone dissolved in a medium-chain triglyceride. Lubiprostone is a chloride channel activator indicated for the treatment of chronic idiopathic constipation in adults. Although Amitiza® capsules should be swallowed whole and not broken apart or chewed, the capsules have been administered by a simple suspension method to recipients unable to ingest food or drugs orally. The administration of Amitiza® capsule suspension through nasoenteric feeding tubes has not been investigated. Therefore, we evaluated whether the capsules are appropriate for administration through nasogastric tubes. The capsules disintegrated and dispersed after 10 min in 30 mL of hot water at 55°C. The suspension was transferred into a syringe or suspension bottle and passed through nasoenteric feeding tubes (8 Fr) without obstruction. Lubiprostone levels in each sample were determined by liquid chromatography/mass spectrometry. More than 93% of the lubiprostone was contained in suspension with flash solution through the feeding tubes administered through both the tubes. In conclusion, this study suggests that Amitiza® capsules can be administered to patients by a simple suspension method through nasoenteric feeding tubes.
著者
近喰 ふじ子 塚本 尚子 安藤 哲也 吾郷 晋浩
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1171-1185, 2010-12-01
被引用文献数
1

筆者は,ここ数年,子どもが身体症状を訴えて母親とともに小児科外来を受診した際,子どもの症状を心配するよりも夫婦関係を重視した情報を聞かされ,家族関係が変化したことを母親の言葉から間接的に知らされた.すなわち,夫婦関係の親密性が想定された.そこで,今回,「夫婦親密度尺度」を作成した.本尺度は4因子の構造からなり,親関係項目からは「依存型夫婦」「安定型夫婦」「不満型夫婦」「尊重型夫婦」の31項目が,子ども関係項目からは「子ども重視型夫婦」「子ども干渉型夫婦」「子ども否定型夫婦」「子ども不信型夫婦」の25項目が抽出され,信頼性と妥当性が確認された.すなわち,従来使用されていた「家族機能測定尺度」との相関関係から,従来の家族機能とは異なる新しい家族機能へと変化し,子どもの混乱が生じやすいことが推察された.
著者
西原 智恵 菊地 裕絵 安藤 哲也 岩永 知秋 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.264-271, 2017 (Released:2017-03-01)
参考文献数
7

食物アレルギーは多様な症状をきたしうるが, 心理的要因や併存しうる身体表現性障害を考慮した診療が行われなければ, 症状が遷延し重篤となりうる. 今回, 食物アレルギーと身体表現性障害を併存し, 身体的介入のみを受けたため多彩な症状が遷延し, 高度な生活障害に至った症例を経験した. 心身医学的介入が症状の改善に有効であったため報告する. 症例 : 40代, 女性. 2年前よりさまざまな食品を摂取した後に発疹, 腹部膨満, 四肢脱力, 情緒不安定などの症状が出現するようになった. 複数の医療機関で食物アレルギーが疑われ, 穀物・果物全般の除去を指導されたが症状は持続. 精査を希望しアレルギー科を受診した際, 四肢脱力をきたし緊急入院となった. 評価では, 食物アレルギー症状以外の症状を説明できる器質的異常を認めず, 身体表現性障害の合併が疑われた. 入院下の行動制限, 外来での情動への対処や自己主張の指導により, 身体表現性障害症状は改善し, 食物アレルギー症状も自制内となった.
著者
藤井 雄太郎 安藤 哲志 伊藤 孝行
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.24, 2010

近年,SNSが急激に発達してきている. SNS上には未成年ユーザにとって有害な情報を配信するユーザも存在し,問題となっている. そこで本稿では,効率的に未成年ユーザに対して有害な文章をフィルタリングする事を目的とし,それらの文章を2単語間の共起情報を用いた判別方法により自動的に判別するシステムを提案する. また,実在しているSNSの文章を用いて判定実験を行い,本システムの有効性を示す.
著者
永野 伸郎 伊藤 恭子 本多 雅代 須永 悟 田ヶ原 綾香 野原 ともい 野原 惇 星 綾子 溜井 紀子 安藤 哲郎 筒井 貴朗 新田 孝作 佐倉 宏 小川 哲也
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.571-580, 2016 (Released:2016-09-29)
参考文献数
20
被引用文献数
2 5

【目的】透析患者に処方される経口薬剤錠数に占めるリン吸着薬の割合を把握し, 錠剤に含まれるマグネシウム (Mg) の影響を検討する. 【方法】血液透析患者520名に処方中の経口薬剤を薬効別に分類後, 総処方錠数に占める割合を算出した. また, 血清Mg値をリン吸着薬の処方有無別, 錠数別に解析するとともに, リン吸着薬のMg含量をICP-MSにより実測した. 【結果】1日に17.8錠/人の経口薬剤が処方されており, このうちリン吸着薬の割合は35% (6.2錠) であった. リン吸着薬処方患者の血清Mg値は非処方患者よりも高値であった. 処方錠数が最多である沈降炭酸カルシウム錠500mg「三和」の単剤処方患者169名において, 血清Mg値は処方錠数と正相関し, 処方錠数五分位は独立した有意な説明変数であった. また, 本剤のMg含量は1.8mg/gであり, 他剤よりも高値であった. 【結語】リン吸着薬は服用錠数が多いため, 一部の製剤に含まれるMgが血清Mg値に影響する可能性が示された.
著者
竹内 茂 大塚 恭弘 林 高志 永野 伸郎 安藤 哲郎 小林 充
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.197-201, 2017 (Released:2017-03-28)
参考文献数
10

透析時血管痛は局所冷却や加温などで対応されるが, 不十分なケースも多い. 透析時血管痛を呈する3症例に対し, マイクロコーン (ソマレゾン®) を用いた耳介治療を行った. 症例1は80歳代, 女性. 透析時のシャント肢の右肩血管痛に対し同側の耳穴 (SF-4) を治療し, visual analogue scale (VAS) が74→0となった. 症例2は50歳代, 女性. 透析時のシャント肢前腕痛に対し同側の耳穴 (SF-2) を治療し, VASが34→6に減じた. 症例3は80歳代, 女性. 透析中の頸静脈長期留置カテーテル留置側の上腕血管痛に対し同側の耳穴 (SF-4) を治療し, VASが78→0となった. いずれも痛みが出現する前に耳介治療を行い, 治療開始日より著効が得られた. 同様の治療を透析ごとに行うことにより, その後の痛みが予防できた. マイクロコーンによる加療は穿刺を必要としない簡便な治療法のため, 透析時血管痛に対する本治療の有効性が広く確認できれば, 今後普及する可能性がある.
著者
安藤 哲也 小牧 元
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.47-56, 2009-01-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
31

摂食障害への罹患しやすさには遺伝的要因が大きく関与している.これまで候補遺伝子法による相関解析ではセロトニン2A受容体遺伝子,セロトニントランスポーター遺伝子,脳由来神経栄養因子遺伝子多型と神経性食欲不振症との関連が,メタアナリシスで示された.罹患同胞対連鎖解析では第1,第2,第13染色体上に神経性食欲不振症との連鎖が,第10染色体上に神経性過食症と連鎖する領域が報告された.グレリンは主に胃から産生され,成長ホルモンの分泌を刺激し摂食と体重増加を促進するペプチドである.筆者らはグレリン遺伝子多型およびハプロタイプが神経性過食症に関連すること,同じ多型が若年女性の体重や体格指数,体脂肪量,腹囲,皮脂厚などの身体計測値,「やせ願望」と「身体への不満」という心理因子,空腹時の血中グレリン濃度と関連することを示した.さらにグレリン遺伝子多型が制限型のANの病型変化のしやすさにも関連していた.マイクロサテライトマーカーを用いたゲノムワイド相関解析により,神経細胞接着関連分子遺伝子領域(11q22)と脳関連遺伝子クラスター(1p41)領域で感受性SNPが検出された.近年,生活習慣病,多因子疾患の疾患関連遺伝子の同定に成果を上げているゲノム全体を網羅するSNPマーカーを用いたゲノムワイド相関解析の実施を摂食障害においても目指すべきである.摂食障害に関する臨床研究,疫学研究での評価項目に遺伝子解析を入れておくことが,発見された摂食障害関連遺伝子の意義を決めるのに重要である.
著者
園生 雅弘 迫井 正深 渡辺 憲 冨本 秀和 安藤 哲朗 西山 和利 髙橋 良輔 戸田 達史 日本神経学会神経内科専門医基本領域化推進対策本部
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.515-519, 2020 (Released:2020-08-07)
被引用文献数
1 1

日本神経学会は2018年1月臨時社員総会において,神経内科専門医の基本領域化を目指すことを機関決定した.新専門医制度が大きく揺れる中,神経内科専門医基本領域化推進対策本部では,第60回学術大会において,専門医制度に関する緊急シンポジウムを開催した.本論文はその各演者の抄録を委員会報告としてまとめたものである.厚生労働省,日本医師会に所属する演者,及び,学会内の演者によって,基本領域化が必要な理由,特に地域医療との関係,実現するための手続き,克服すべき課題などが論じられた.これらを踏まえつつ,社員総会決定に従って,神経学会は今後も基本領域化を目指して関係各所との折衝を続ける.
著者
井汲 一尋 横井 克典 安藤 哲朗
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.27-31, 2016 (Released:2016-01-29)
参考文献数
30

症例は72歳女性である.2型糖尿病で通院治療中であった.7年前に左肺多発結節影があり精査するも診断に至らず経過観察で縮小した.その後呼吸器症状もなく安定していたが,5ヶ月の経過で認知機能障害と歩行障害が進行し入院し,クリプトコッカス髄膜脳炎と診断された.両足趾右優位にアテトーシス様の不随意運動を認めた.不随意運動はpainful legs and moving toesに極めて類似していたが,疼痛は全くなかった.クリプトコッカス髄膜脳炎で認知機能障害,不随意運動の改善過程を観察した報告は稀であり,貴重な症例であると考えられたため報告する.
著者
安藤 哲郎
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.41-54, 2008 (Released:2018-01-06)
参考文献数
37

This paper gives a synoptic view of the distribution of places mentioned in the setsuwa stories compiled in the late Heian and early Kamakura periods (the 12th and first half of the 13th centuries). The author deals with places that were described as the staging areas for various events occurring during the Heian period, in and around Heian-kyo (present-day Kyoto).The author presents a geographical analysis of classical Japanese literature. Existing studies of the field have tended to focus on individual works or authors. In this paper, various stories including similar contents from different compilations are classified and analyzed in temporal and spatial dimensions.The category of setsuwa literature consists of many stories that include miracles and reasoning based on Buddhist teachings. Those stories were collected and resulted in several compilations (setsuwa-shu) in the late Heian and early Kamakura periods. The events told in the stories were distinguished ‘desirable’ from ‘undesirable’ for the people described. Then the locations of the events were plotted on maps of different times during the Heian period.By examining such maps, we can see that the locations of those events were familiar to the inhabitants of Heian-kyo. We can also see that residences and Buddhist temples related to the ruling people of the time were mentioned frequently. This suggests that the events in the stories were told as occurring in reality, reflecting the nature of setsuwa literature.In analyzing the contents of the stories, we can see that undesirable events often occur within the city boundary, whereas desirable events tend to happen in the peripheral zone. This peripheral zone can be associated with Buddhist temples and Shinto shrines which were religious foci for people of that time. Several events were described as having occurred just outside the city boundary, suggesting that the city area was not clearly circumscribed.The author concludes that the locational nature of events mentioned in the setsuwa literature can be considered to reflect the spatial structure of the metropolis of the Heian period. Further research should analyze factual records in diaries written by noblemen for comparative studies with literary materials.
著者
安藤 哲也 小牧 元
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.47-56, 2009
参考文献数
31
被引用文献数
1

摂食障害への罹患しやすさには遺伝的要因が大きく関与している.これまで候補遺伝子法による相関解析ではセロトニン2A受容体遺伝子,セロトニントランスポーター遺伝子,脳由来神経栄養因子遺伝子多型と神経性食欲不振症との関連が,メタアナリシスで示された.罹患同胞対連鎖解析では第1,第2,第13染色体上に神経性食欲不振症との連鎖が,第10染色体上に神経性過食症と連鎖する領域が報告された.グレリンは主に胃から産生され,成長ホルモンの分泌を刺激し摂食と体重増加を促進するペプチドである.筆者らはグレリン遺伝子多型およびハプロタイプが神経性過食症に関連すること,同じ多型が若年女性の体重や体格指数,体脂肪量,腹囲,皮脂厚などの身体計測値,「やせ願望」と「身体への不満」という心理因子,空腹時の血中グレリン濃度と関連することを示した.さらにグレリン遺伝子多型が制限型のANの病型変化のしやすさにも関連していた.マイクロサテライトマーカーを用いたゲノムワイド相関解析により,神経細胞接着関連分子遺伝子領域(11q22)と脳関連遺伝子クラスター(1p41)領域で感受性SNPが検出された.近年,生活習慣病,多因子疾患の疾患関連遺伝子の同定に成果を上げているゲノム全体を網羅するSNPマーカーを用いたゲノムワイド相関解析の実施を摂食障害においても目指すべきである.摂食障害に関する臨床研究,疫学研究での評価項目に遺伝子解析を入れておくことが,発見された摂食障害関連遺伝子の意義を決めるのに重要である.
著者
安藤 哲郎
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.19, 2005

本発表では、平安京における「成長」の概念について、日記や物語などの歴史的資料(史料)を基に、都のモチーフや動静を理解して考察を試みた。<BR> 都市の場合には人口や経済から成長の探求が行われるが、都は生産性と別次元にある。そこで、都と必要十分の関係にある天皇家や官人がどう考えていたか、という面から考えることとした。都が「宮処」である観点も大きく、また彼らの考え方を知る術もあるからである。<BR> 都は天皇が常に位置していることが求められたが、時折京外へ出かけた。その行幸(上皇の場合は御幸)から理解を試みるため、「京外空間」を糸口として考えた。まず、平安遷都前後における天皇遊猟の目的地から、遷都行動(遊猟)が平城・長岡・平安3京を相互に結び付けた可能性がみられた。また、白河上皇時代の行幸・御幸状況から、前期は成人天皇と共に鳥羽を王家の地として人々に認識させ、後期は幼主のために摂関家に由緒のある白河を王家の地になすことで王権伸張に役立てたとみられた。<BR> 天皇は次第に遠出をしなくなり、京周辺の神社などから日帰りするようになった。一方で王家の地となった鳥羽や白河などは日帰りしなくてもとくに指摘されない。そういう意味では、都人は自由になる京外空間が広がっている。<BR> ただし、平安京が外を好まない傾向は残っていた。比べてみれば、「都会」と表現されていた太(大)宰府は御笠下流の博多に鴻臚館を設け、そこと一体となったまちであった。一方平安京は交流施設を近くに持たなかった。京に近いところが都とは違うことも表現されている。<BR> 平安京は限られた空間の中で完結する都であり、他との接触を好まない都であることは続いていたが、その周辺部が平安京の意味付けのために使われ、自由に訪問できる空間として整備されることがあった。都人の活動空間が広がったと意識される意味では「成長」と言える可能性がある。<BR>
著者
伊藤 恭子 永野 伸郎 高橋 伴彰 石田 秀岐 田ヶ原 綾香 塚田 美保 野原 ともい 岡島 真理 野原 惇 星 綾子 溜井 紀子 安藤 哲郎 筒井 貴朗 新田 孝作 佐倉 宏 小川 哲也
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.475-482, 2016 (Released:2016-07-28)
参考文献数
22
被引用文献数
2

【目的】リン吸着薬の処方錠数が, 服薬アドヒアランスおよび血清リンに対する影響を検討する. 【方法】リン吸着薬処方中の外来維持血液透析患者229名にアンケート調査を実施し, 処方錠数および患者背景との関係を解析した. 【結果】リン吸着薬の月間処方錠数の中央値は210錠/月であり, 単剤処方者は50%であった. 処方錠数が多い群は, 年齢が若く, 透析歴が長く, 血清リンが高値であり, 処方錠数は血清リンと正相関した. アドヒアランス不良者は30~40%であり, 「飲み忘れる」患者, 「残薬がある」患者, 「飲む量を減らしたい」患者は, 処方錠数が多く, 血清リンが高値であった. 処方錠数増加により, 「残薬がある」, 「量が多い・とても多い」と回答した患者が増加し, アドヒアランス不良者は, 「量が多い・とても多い」と感じる割合が多かった. 【結語】リン吸着薬処方錠数の増加にともない服薬アドヒアランスが低下し, 血清リン高値と関連する.
著者
座間味 義人 小山 敏広 合葉 哲也 天野 学 安藤 哲信 倉田 なおみ 名和 秀起 名倉 弘哲 北村 佳久 千堂 年昭
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.1027-1033, 2014 (Released:2014-08-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1

【目的】従来の薬剤経管投与法である粉砕法は薬効の減少につながる薬剤量の損失が指摘されている。そこで粉砕法による薬剤量損失に対する簡易懸濁法の有用性について検討した。【方法】頻繁に粉砕指示がなされる5種類の薬剤を用いて粉砕・分包による薬物含量減少、薬剤調製時の懸濁性および実際の経管投与を想定した薬物含量について2つの方法を比較した。【結果】薬剤を粉砕・分包するとそれぞれの薬物含量は減少した。またワーファリン®錠を粉砕して水に溶解すると完全には懸濁せず、小さな塊が生じたが、簡易懸濁法では均一に懸濁した。ワーファリン®錠の経管投与を想定した実験において粉砕法では薬物含量が大幅に減少したが、簡易懸濁法では、ほとんど損失が認められなかった。【結論】簡易懸濁法は粉砕法に比べて薬剤損失の面で有用性が高いことが示唆され、ワーファリン®錠のように安定性が悪い薬剤では特に適正な薬物投与に貢献出来ると考えられる。
著者
河西 ひとみ 船場 美佐子 富田 吉敏 藤井 靖 関口 敦 安藤 哲也
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.488-497, 2018 (Released:2018-09-01)
参考文献数
38
被引用文献数
1

過敏性腸症候群 (IBS) と自己診断して医療機関を受療する患者の中には, 腸管ガスに困難感をもつ一群が存在する. 本稿では腸管ガスに関連する症状を主訴とする多様な病態の診断と鑑別について述べた後, それらの病態をIBS・機能性腹部膨満を中心とした機能性消化管障害・呑気症・自己臭症のカテゴリに整理し, 治療についてまとめた. 中でも治療に難渋することが多い自己臭症は, 同様の病態がolfactory reference syndrome (ORS) として海外でも報告されている. 筆者らが自己臭症について国内外の治療法の効果研究報告を調査したところ, 現時点でRCTを含む比較研究は存在しなかった. そこで, システマティック・レビューと症例報告を紹介した. それらの文献では, 薬物療法では抗うつ薬を有効とする報告が, 心理療法では行動的介入の有効性の報告が多かった. 行動的介入の有効性の報告からは, わが国で自己臭症患者に適用されてきた森田療法や, 第三世代の認知行動療法のacceptance and commitment therapy (ACT) と治療構成要素の共通性が見出される. 腸管ガスに関連する症状には, 多様な病態が関与しうる. 病態理解と効果的な治療のために, さらなる研究とエビデンスの蓄積が期待される.