著者
詫間 晋平 中村 均
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.117-124, 1977-11-25

特殊教育における教育工学的研究は,その歴史も浅くまだ十分な水準の研究を系統的に蓄積するには至っていないが,まず,理論的基礎研究にふれ,つづいて比較的伝統の深い,視覚障害(盲),聴覚障害(ろう唖)の二部門と,近時,大きな研究努力が要求されている精神薄弱(知恵おくれ)の部門を中心に主なる研究報告93編を選び,その解説と比較検討を行なった.その過程で,特殊教育・教育工学ともいえる研究領域の枠組みを,行動,課題,障害の種別の三軸から見直して,今後の展望を探索する必要性も示唆された.
著者
佐伯 卓也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-8, 1982-06-20

「よい授業」をしたいとは教師なら誰でも考えることである.この「よい授業」の「よさ」の度合を,学習者の認知構造の変容という側面で把握し,比較的簡単に,視覚的に判断できる,P-Pグラフ分析・DA分析の手法を創出した.基礎データは岩手式言語連想テスト(I式WAテスト)から得ている.I式WAテストは,アメリカで開発されたWAテストを大幅に改変し簡略化した用具である.いまのところ,P-Pグラフは3種のパターンが識別できて,それを見ることにより,ある程度授業の評価ができる,という結果を得ている.
著者
中原 淳 前迫 孝憲 永岡 慶三
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.259-267, 2002-03-20
被引用文献数
15

コンピュータによる協調学習支援(CSCL)研究は,コンピュータを用いて,複数の学習者間の相互作用を通した知識構築を支援することをめざしている.学習者の相互作用は,知識構築の必要条件であり,それを誘発し,促進するための機能やインタフェースなどの実装が不可欠である.これまでCSCL研究においては,数多くのシステムが開発・評価されている.それらの研究知見は,研究者がシステムデザインを行う際に参照可能であるように,デザイン対象項目ごとに整理されることが望ましい.本稿は,まずはしめに先行するCSCLの研究知見を,可視化,キューイング,コンテンツの3つの観点から検討・整理し,最後に今後のシステムデザインの課題を指摘する.
著者
赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.57-71, 1991-09-20
被引用文献数
9

本論文は,数学の教科を事例として,教授方略を数理モデルで表現し,その教授方略を反映する学習課題系列を生成し,かつ学習課題系列が与えられたときにその教授方略が何であるかを推定する方法を提案している.その教授方略のモデルとは,学習課題の下位性,基礎性,関連性の組合せで表現されるが,これを数量化することにより,学習課題系列の自動生成や,教授方略の推定をすることができる.中学校数学の学習課題に適用した結果,教授方略の中でも関連性の要因が大きいことがわかった.また本手法は,教育現場で広く利用されている論理分析のコースアウトラインの決定法の考え方を基礎にしており,その拡張になっている.
著者
坂元 〓
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.95-100, 1989-09-20

イタリアでは,1985年に文部省による高校への情報学導入国家計画が始まり,情報教育の教員研修は,4つの中央研修機関による中央研修として第1段が行われ,そこで教育された指導者が,各地方の68の中核学校で地域の教員に対する指導を行うというカスケード方式となっている.第1世代の180人の高校数学・物理の教師が,指導者となるため,4週間の中央研修を受けた.第2世代は210人であった.これらの指導員は,地域で2年間一般教員の研修を行う.その間給料は1/3増し,代替教員も保証される.第1世代によって1年目一般教員2,400名,2年目4,800名.第2世代によって,1年目は6,800名が研修を受けることになる.研修内容は教科教育,既存ソフト教育,授業設計などである.そのほか,20の地方にある教育研究研修所が小学校教員研修の一部として情報教育を行い,国立教育工学研究所も情報教育の講習を教師むけに行っている.
著者
関 友作
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.17-20, 1997-08-20
被引用文献数
13

テキストのレイアウトが, 読み手の内容理解に与える影響を調べた.具体的には, レイアウト手法としての箇条書と, キーワードの強調をとりあげ, それらが内容理解に対して, どのような影響をもつか, 実験により調べた.実験では, 箇条書とキーワード強調の有無で, レイアウトにちがいをもたせたテキストを, 別々の被験者群に読んでもらい, 再生テストにより, 内容の把握を比較した.その結果, キーワードの強調は強調内容の再生を高め, また, 箇条書は, それ以外の内容についての再生を高めることがわかった.つまり, 内容上のポイントを強調すること, 箇条書で文章構造を明確にすることの有効性が, それぞれ確認できた.
著者
鈴木 克明
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-14, 1989-05-20
被引用文献数
6

本稿は,これまでに発表された多数のモデルや理論的裏付けを整理して,米国の授業設計研究の動向をまとめ,以下の諸点について概観し,考察を試みたものである. (1)現存するモデルの多くは,設計手順は共通であるが理論的根拠や利用効果に相違が見られる.(2)授業設計モデルを支えるべき教授理論には,REIGELUTHの業績等により,統合化への動きが見られる.(3)記述的対処方的理論,授業設計と開発,マイクロ対マクロ設計,成果としての魅力,スキーマ等の概念が整理されている.(4)モデルヘの体系化を踏まえた多岐に渡る質の高い教授方略の効果研究が求められている.(5)モデル構築にはGAGNEの9状況(事象)・5分類の枠組や折衷主義に基づくモデルの強化が提唱され,学習集団の影響や動機づけ等へのシステム的な研究も見られる.(6)モデルの理論武装に並行して,モデル使用能力の養成や使い勝手の向上等の技法研究も進められている.
著者
高橋 純 山西 潤一 佐々木 和男
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.127-134, 2003-09-20
被引用文献数
8

高齢者がWebページを利用する機会が増え,加齢により低下する視覚機能に対応し,アクセシビリティの高いWebページづくりが求められている.そこで,文字色や背景色の組み合わせによる文字配色や文字サイズについて,若年者,高齢者,高齢者のうち白内障患者を想定した群を対象に調査をし,見やすい配色,文字サイズを検討した.その結果,高齢者にも配慮した文字表示には,陽画表示が望ましく,輝度コントラスト比が5:1以上になる背景色と文字色の組み合わせを使うことや,文字サイズを10pt以上にする必要があるといった指標を得た.
著者
池田 央
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.3-13, 2000-06-20
被引用文献数
1

筆記試験から始まったテスト法の考え方ならびにその理論と技術の発展史を振り返り,この100年を客観測定の時代と位置付けた上で,これからのテスト技術が向かうであろう研究方向と,それに必要な課題と展望を行った.それはコンピュータと情報通信技術に支えられた「力量査定」の時代であり,従来のテストが果たしてきた狭い役割モデルの中でなく,学習活動そのものに深くかかわる広い教育行為の中に組み込まれたテスト技術でなければならないことが強調された.それは力動的テスト法とでもいうべきもので,高度な技術を必要とし,従来からの心理測定理論の延長線上にあるものばかりでなく,全く新しいパラダイム変換が要求されるものもあり,多くの分野から研究者の参入が期待されるものである.