著者
清原 一暁 中山 実 木村 博茂 清水 英夫 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.117-126, 2003-09-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
11
被引用文献数
6

本研究では,印刷物による提示とコンピュータ画面の提示による文章理解の違いを調べ,わかりやすい文章提示の方法を検討した.文章の理解度を内容に関するテスト成績で調べた.その結果,表示メディアについては,提示方法によらず印刷物がディスプレイに比べて良いことが分かった.また,LCDがCRTよりも理解度において優れていることが分かった.さらに,すべての表示メディアにおいて,明朝体と比べてゴシック体の方が文章理解において成績が良い事を明らかにした.
著者
向後 智子 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.87-94, 1998-09-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
13
被引用文献数
5

本研究はマンガによる学習内容の提示が理解と保持に及ぼす影響について検討した.学習内容部分とストーリー部分を含むマンガを材料として,(1)マンガか文章かによる学習内容部分の表現方法の違い,および,(2)マンガによるストーリー部分の提示の有無の2つの要因が内容の理解と保持に及ぼす効果について実験した.各要因が理解の深さにどのように効いているのかを検討するために,解答に必要とされる理解の度合いが異なるようなテストを3種類用意し,読解直後と1週間後にテストを行った.その結果,解答にあまり深い理解を必要としない場合,マンガによる学習内容部分の提示が有効であるが,推論や新しい事態への知識の適用が必要とされるテストでは,マンガによるストーリー部分を提示することが成績を有意に高めることが明らかになった.また,実験後のアンケート結果から,関心度はストーリー部分を含む全体を提示することによって高まることがわかった.
著者
吉田 雅巳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.suppl, pp.29-32, 1999-08-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
8

グループ指導を, 教室で行う場合と教師が離れて遠隔で行う場合の, 生起する学習環境の比較実験を行った.実験では大学生を, 5名ごとのチームに編成し, 1名の教師役の学生が4名の生徒役学生に対してグループで協調して取り組む課題を与え, それぞれの環境で各4回のセッションを行った.そして, 記録VTRより相互作用分析と介入分析を実施し, コミュニケーションの違いを分析した.その結果, 「対面でのグループ協調学習では教師からの働きかけが多く見られた」, 「遠隔でのグループ協調学習では, 学習者が教師との個人的コミュニケーションを助長することなく, 学習者間の議論に集中した」という知見を得た.
著者
鈴木 佳苗 坂元 章 小林 久美子 安藤 玲子 橿淵 めぐみ 木村 文香
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.suppl, pp.117-120, 2004-03-05 (Released:2017-10-20)
参考文献数
8

本研究では,インターネットの各種アプリケーション(電子メール,ウェブページ作成,ウェブページ閲覧,チャット,ページャー,フォーラム,掲示板,ネットワークゲーム)の使用がソーシャルスキル(会話スキル,問題解決スキル,仕事・勉強スキル)に及ぼす影響を検討した.情報系専門学校の男子学生を対象に,約3ヵ月の間隔で2時点のパネル調査を行い,得られたデータに対して構造方程式モデルを用いて因果関係を分析した.その結果,電子メール,ネットワークゲームの使用がソーシャルスキル全体を高めること,ネットワークゲームの使用が問題解決スキルを高めることが示された.インターネット使用がソーシャルスキルを低めるという悪影響は見られなかった.
著者
西川 和夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.35-40, 1986-12-20 (Released:2017-10-20)

多くの漢字がいくつかの要素文字から形成されている事実に注目して,課題文字に含まれる要素文字の熟知性が漢字の書字再生学習に与える効果を検証した.小学校5年生を対象に12画の未習漢字12文字について,機械的に手本文字を書写する条件,筆順に従って口唱し書写する条件,課題文字を熟知性の高い既習文字単位に分解して口唱し,書写する条件で書写再生させた.実験Iでは,各条件とも4試行ブロック連続試行した場合の学習効果を比較した.熟知情報を利用する単位口唱群の正確な再生文字数は他の2群より有意に多いことが確かめられた.実験IIでは,同じ課題文字について,第2試行ブロックと第3試行ブロックの間に1週間の延滞期間を挿入した.単位口唱群では他の2群とは異なり,延滞期間挿入による保持の低下が見られなかった.また事前の書字力の低い学習者にとっても,熟知性の高い単位口唱条件はより学習の容易な方法であることが確認された.
著者
赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.23-34, 1986-03-20 (Released:2017-10-20)

教育工学の研究領域の1つに,教材開発がある.教材開発の方法は,各教科の独自性に依存しており,教育工学的アプローチによる教材開発の研究は数多くない.本研究では,教科内容の独自性に依存する内容に関する提案と,これを基礎にした教育工学的方法による教材作成の両面について報告する.本研究では,世界各地域に設置されている海外日本人学校の理科の教科における,天体教材を対象としている.すなわち,世界各地域で使用可能な「星座早見盤」の開発における視野の形状や分布について,新しい提案をしている.また,マイコンを用いて各地域ごとに適合できる星座早見盤を作成した.本研究の報告は,現実の問題における解決案の提案であり,その考え方および方法について論じている.
著者
稲見 和典 中山 実 西方 敦博 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.107-117, 1997-09-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
7

英単語学習において,英和辞典としてCD-ROM辞書を利用した場合と,印刷英和辞書を用いた場合の学習成績を比較した.その結果,制限時間内に辞書による単語検索回数を自由とした場合の,日本語の意味の記憶試験では1%,英語のスペル試験では5%水準の有意差で,CD-ROM辞書使用時の正答率が高いとの結論を得た.また,制限時間を設けずに辞書の利用回数を各英単語につき1回に制限した場合には,学習成績に差はなく,CD-ROM辞書を用いた方が,1単語ごとの記憶時間が長いことがわかった.次に,アンケートによる主観評価について因子分析を行い,「おぼえやすさ」,「学習のしやすさ」,「操作性」,「持続性」,「見やすさ」の5因子を抽出した.これらの因子評価点と学習成績との関係を調べたところ,「おぼえやすさ」と成績の間に相関関係があることがわかった.
著者
山岡 俊章
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.131-134, 2000-08-20
被引用文献数
2

iモードやEZweb, J-スカイウェブなどいわゆる"手の中インターネット"が可能なブラウザ内蔵の携帯電話が普及してきた.本研究では, これらのブラウザ内蔵の携帯電話へ休講情報を提供するシステムを開発し, また, 同時にメール配信システムも開発した.本システムを使用して, 管理者はPCまたは携帯電話(iモード)から休講情報を登録すれば学生に常に最新の情報を提供することが可能になる.またPCから, 学科や専攻, 学年ごとに一斉にメールを送信することができる.
著者
山本 洋雄 中川 英世 中山 実 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.109-118, 1998-09-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
13

入社前に身につけた能力や新人教育での成績,講師からみた性格など,入社時の個人データと,10年後の給与査定(企業内評価に相当)との関連を検討した.入社時試験の「専門」や「数学」「英語」と,新人教育での「情報基礎」が,10年後の給与査定との間で関連が認められ,順位相関係数が5%水準で有意であった.また,給与査定など人間に関する評価は多面的に行われているとの観点から,重回帰分析と,数量化II類による重判別分析を行った.そして,入社時の個人データによって10年後の給与査定を判別した結果,正判別率66.3%の高い値が得られた.判別に関係する項目としては,入社時試験の「専門」と性格の「努力」,「几帳面」,および新人教育での「情報基礎」などであった.入社前に身につけた「専門」知識や,新人教育での「情報基礎」といった,基礎的・基本的な知識が入社10年後にも関連のあることがわかった.
著者
佐々木 弘記
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.suppl, pp.13-16, 2004-03-05 (Released:2017-10-20)
参考文献数
4

本研究では,目標に準拠した評価(以下「目標準拠評価」と記す)における評価の統一を図るために,教師が児童生徒の評価資料を持ち寄り,評価情報を交換する協議・moderation(以下「モデレーション」と記す)を導入した.そして,教育委員会や各学校に提供しやすいようにその手続きをプログラム化した.開発したプログラムを本教育センターの研修講座で試行し,評価した.その結果,対象とする教師と評価資料とが適切に対応していれば,評価の統一にプログラムが有効にはたらくことの可能性が示唆された.
著者
矢川 園子 中山 実 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.213-216, 2000
参考文献数
6
被引用文献数
2

本研究では, さまざまな音環境において文章を読ませたときの音読速度について, 音読者の音楽的習慣との関係から検討した.音環境として, 無音, ホワイトノイズ, 日本語の歌詞つきの歌謡曲, クラシック音楽の4条件を設定し, それらの条件下での音読速度を比較した.また, クラシック音楽のテンポを変化させた時の影響も調べた.さらに, 音楽的習慣に関する質問紙の回答結果を因子分析し, "音楽の理解", "日常的音楽習慣", "音楽好き"の3因子を得た.各因子成績と音読速度の関係を調べ, 音楽的習慣による影響を明らかにした.
著者
坂元 章 木藤 由美子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.217-220, 2000
参考文献数
5

本研究は, 京都大学の合格者を対象として, 大学入試の得点が後年の社会的成功を予測するかどうかを検討した坂元ら(1999)の知見を追試するために, 昭和24年度の九州大学経済学部合格者147名に対して紳士録調査と質問紙調査を行ったものである.その際, 社会的成功の指標として50年後の生存を加え, また, 受験当時の生活についても検討し, 坂元ら(1999)の方法を拡張した.本研究の結果は, 進学適性検査得点の予測力は低く, 大学学力検査得点の予測力に優らないとする坂元ら(1999)の知見に一貫し, それがより広い対象者にあてはまる, より一般性の高いものであることを示した.
著者
関 友作 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.141-150, 1994-01-20 (Released:2017-10-20)
被引用文献数
2

学習メディアとしてのテキストを対象に,箇条型の情報提示が,読み手の内容理解に与える影響を研究した.具体的には,項目型の情報について,(1)各項目を箇条に分けて,リストの形で提示した場合(箇条群)と,(2)各項目を文中に埋没させて提示した場合(埋没群)とで,どのように理解に違いがみられるかを,印刷メディアを材料として実験調査した.実験では,テキスト読解後に内容についての再生を求めた.被験者の再生文を得点化した結果,箇条群の方が埋没群より,内容理解にすぐれていることがわかった.また,項目の再生順序については,埋没群の方が箇条群よりも,テキストの提示順序に近くなることがわかった.この理由として,次のことが示唆された.(1)リスト形式(箇条型)のテキストは,そのレイアウトにより,あらかじめテキスト構造についての情報を読み手に与える.(2)リスト型提示は,情報への自由なアクセスを,視覚的に可能にする.これらの点を,先行研究との関連の中で考察した.
著者
吉野 志保 野嶋 栄一郎 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.29-32, 1997
参考文献数
4
被引用文献数
3

本論文では, 字幕の種類による理解の効果について述べている.英語音声付き映像を用いた英語の聞き取り場面を設定し, 字幕を付加した.その場合の字幕の種類により異なる効果が, 再生にどのような影響をもつのかについての認知的な実験を行った.その結果, 英語字幕が英語の再生に最も有利であった.英語字幕では, 2つのモダリティ(視覚・聴覚)による情報の入力が再生に有効に作用し, 単純に再生された英単語数が最も多いだけでなく, 意味的なまとまりとして理解されていることが示唆された.日本語字幕は, 聴覚からの入力情報(英語)と異なる視覚情報(日本語)を同時に与えるために, 英語の聞き取りや記憶を阻害すると考えられた.
著者
横尾 能範
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-7, 1979

複数の専攻コースをもつ大学の入学試験実施後には,志望コースと試験成績とを照合しながら,各コースの定員が充足するように公正な選抜作業が行なわれるべく努力されている.しかし,特定コースヘの志願者の偏りや,選抜ルールの共通理解不足などの理由からその作業が必ずしも円滑に進むとは限らない実情がある.本論は,出願時に志望コースを記入する形の入学試験における合格者選抜の一実態を分析し,選抜の基準となる複数のルール同士が互いに矛盾する場合があることを明らかにした.そこで,各ルールの精神を生かし,かつ矛盾のない一つの総合ルールとしてそれらを体系化してフローチャートに描いた.次に,その総合ルールの初期条件を種々に変えてシミュレーションを実施した結果,被選抜者の第一志望での合格者率,各コースの定員充足率,合格者平均点などその内訳に,初期条件の設定値いかんが一定程度の意図的な影響を与えうることや,選抜作業が著しく簡素化できることを明らかにした.
著者
関 友作 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.97-108, 1996
参考文献数
29
被引用文献数
8

本研究では,テキストにおけるレイアウトとしての段落表示が,内容理解に与える影響を調べた.実験では,段落の設定を変えた3種類のテキストを用意し,それぞれの再生成績を比較した.テキストは,1)正しく段落づけしたもの(正段落),2)誤った段落づけをしたもの(誤段落),3)段落のないもの(無段落),の3種類であった.再生成績は,正段落,誤段落,無段落の順であり,正段落と無段落の間に有意差があった.これは,全体の再生だけでなく,要旨の再生についても同じ結果であった.このように,正しい段落設定が内容理解を高めるのは,段落が文章を視覚的に分節化することにより,読み手に次のような読解方略を促すためであると推察された.つまり,1)段落ごとに内容を体制化し,ポイントを把握する;2)段落間の関係をもとに文章構造を理解する,という方略である.このような方略の利用が,読み手の内容理解を促進すると考えられた.
著者
吉崎 静夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.61-70, 1983-07-20 (Released:2017-10-20)
被引用文献数
1

本研究の主目的は,教師の経験や性別によって,授業のポイント場面での意思決定にどのような違いがあるのか検討することであった.そのさい,録画された授業のポイント場面でVTRを中断させ,そして教師に教授行動の意思決定を求めるといった「VTR中断法」が,教師の意思決定研究法として開発された.録画された授業は,中堅教師が実施した小学校6年の算数であった.主な結果は,次のとおりであった.(1)授業場面での教師の意思決定は,「もどる」,「とどまる」,「すすむ」といった三つのカテゴリーにまとめられた.(2)教職経験や題材経験の多い教師は,少ない教師よりも危険性の高い決定をしていた.(3)男性教師は,女性教師よりも危険性の高い決定をしていた.(4)経験の多い教師が授業目標に注目して意思決定していたのに対して,経験の少ない教師は児童に注目して意思決定していた.
著者
崎濱 秀行
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.105-115, 2003
参考文献数
28
被引用文献数
3

本研究では,大学生・専門学校生を対象として,文章産出活動に対して持つメタ認知的知識の構造を検討した(研究1).その結果,「伝わりやすさ」,「読み手の興味・関心」,「簡潔性」の3因子を見出した.次に,文章産出スキルの高さにより,メタ認知的知識の重視度合い(メタ認知重視度)に違いが見られるのかどうか,などについて検討を加えた(研究2).各文章を得点化し,上位25%を熟達群,下位25%を非熟達群としてメタ認知重視度に関する群間比較を行った.その結果,熟達群は,「伝わりやすさ」という文章全体に関わる側面を重視していたのに対し,非熟達群は,「簡潔性」という文章の細部に関わる側面を重視していた.ところが,文章産出の際にメタ認知的活動をどの程度行ったと思うかについて自己評価させたところ,いずれの下位尺度においても群間の有意差が見られなかった.一方で,書き手がどの程度メタ認知的活動を行ったと思うか,読み手に評定を求めたところ,全ての下位尺度において,熟達群に対する評定の方が非熟達群よりも高くなった.以上の結果から,文章産出スキル育成の際,書き手に「伝わりやすさ」というメタ認知的知識を重視させるだけではなく,そうしたメタ認知的知識を上手く活用させるためのトレーニングを課す必要があることが示された.
著者
関 友作 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.97-108, 1996-09-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
29
被引用文献数
3

本研究では,テキストにおけるレイアウトとしての段落表示が,内容理解に与える影響を調べた.実験では,段落の設定を変えた3種類のテキストを用意し,それぞれの再生成績を比較した.テキストは,1)正しく段落づけしたもの(正段落),2)誤った段落づけをしたもの(誤段落),3)段落のないもの(無段落),の3種類であった.再生成績は,正段落,誤段落,無段落の順であり,正段落と無段落の間に有意差があった.これは,全体の再生だけでなく,要旨の再生についても同じ結果であった.このように,正しい段落設定が内容理解を高めるのは,段落が文章を視覚的に分節化することにより,読み手に次のような読解方略を促すためであると推察された.つまり,1)段落ごとに内容を体制化し,ポイントを把握する;2)段落間の関係をもとに文章構造を理解する,という方略である.このような方略の利用が,読み手の内容理解を促進すると考えられた.
著者
松森 靖夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.211-221, 1993-03-20 (Released:2017-10-20)

本研究は,今まで研究対象としてほとんど取り上げられてこなかった児童における空の水平方向の形状認知の類型化を試みるものである.そのため本研究では,(1)空の水平方向の形状認知の記述を試みるため,その調査方法を考案する,(2)調査結果に基づき,児童の形状認知をクラスター分析によって類型化する,(3)学習者の形状認知の類型結果から,教科教育における空の概念の取扱いについて考察する,(4)本調査方法について批判的検討を加える,ことを目的とする.本研究で得られた知見は,次のとおりである.(1)児童には多様な空の形状認知が存在しており,これらの形状認知はクラスター分析によって7類型(類型A〜G)に分類できる.(2)天文教育における天球概念に代表されるような球面として空を認知している者は,小学校第5学年児童のわずか5%にしか満たない.(3)各教科領域で扱われている空の概念の多義性について,教育していく必要性がある.(4)本調査方法には測定誤差等の問題点があり,今後さらに改善していく必要がある.