著者
中山 実 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.15-23, 2000-06-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
31
被引用文献数
3

生体情報による学習評価について,その考え方や必要性を述べたうえで,研究事例を紹介した.生体反応情報による学習評価や情意的な学習活動の検討については,研究事例から主観的な評価指標と生体指標との関連や,認知的な評価指標と生体情報の指標との関連について述べた.さらに,認知神経科学的な研究から,ニューロイメージングなどによる脳内活動の観察の研究事例と,今後の生体情報による研究について概観した.
著者
苅宿 俊文
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.24, no.suppl, pp.203-206, 2000-08-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
9

本稿は, 実践を通して, 「プロセスの作品化」が, 外化を通しての自己理解を深める時に, 外化過程の支援をする方法の一つであることを明らかにしていく試みの報告である.「プロセスの作品化」の実践として, 本稿では, 描いたプロセスを再生することができる「再構成型描画ソフトウエア脳の鏡」で描いた後に, 自己の描いたプロセスを見直し, 他者に制作のプロセスについて語り, それを文字化し, 絵と併せて表現していくという「心の花」という実践である.「脳の鏡」は, 外化支援のツールとして位置づけている.
著者
西之園 晴夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.67-77, 1999
参考文献数
29
被引用文献数
4

わが国が当面している課題として,多数の現職教員に高度の職能専門教育を目指した大学院修士レベルの教育を提供する問題がある.この場合,旧来の研究後継者養成で採用されてきた研究方法論では対応できず,教育実践に通した研究方法を開発する必要がある.教育方法の研究方法として経験的アプローチ,規範的アプローチおよびシステムズ・アプローチに区分したとき,ここでは経験的アプローチについて論じている.修士課程に在籍する現職教員を指導するにあたって,経験的な実践知を一定の手順によって形式化するために,カテゴリー,概念,モデルならびに命題によって表現した形式知とする方法を採用した.経験的知識をこのように形式化することは,情報ネットワークによって実践知を流通するために不可欠である.
著者
滝田 亘 中山 実
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.81-84, 2004-03-05
参考文献数
6
被引用文献数
7

本研究では,文章を視覚と聴覚で提示した場合の記憶への影響を調べるために,課題文を視覚と聴覚で提示し,提示文章の内容について問題文により真偽判定する実験を行った.課題文に含まれる命題数が記憶に与える影響について,問題文での正答率と反応で検討した.その結果,3〜5命題課題において,視覚提示時の正答率は聴覚提示時の正答率より有意に高くなった.また聴覚提示について,2〜5命題課題においては,提示文章の命題数増加に伴い正答率は有意に低下した.問題文に対する判断の難易度を信号検出理論のd'を用いて検討した.その結果,視覚提示では命題数による低下は認められなかった.聴覚提示では,命題数増加に伴い,正誤の判断が有意に難しくなった.
著者
宮田 仁 石原 一彦
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.167-172, 2001-08-20
参考文献数
4
被引用文献数
7

小学生を対象として「インターネットで, こんなページが出てきたら, 君ならどうする?」をテーマに, 各児童が7つのWebページを閲覧し, その中に埋め込まれた情報モラルや問題点に関してワークシートに記入しディスカッションを行った.その結果, 学習前には, 個人情報の保護や情報発信の留意点, うわさや誤情報への対処方法, 電子掲示板での中傷への対処が, 今回の調査対象者の小学生では対応が不十分であったが, 指導後, 正しい知識や正しい対処法を回答できた.また, 学習展開を分析した結果, 情報モラルに関する対処的なルールの指導ではなく, それらのルールの意味を正しく理解し, 新たな場面でも正しい行動, 自分の身を守れるような行動がとれるような指導展開が有効であることが明確となった.
著者
北神 慎司 山縣 宏美 室井 みや
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.37-40, 2004-03-05
参考文献数
7
被引用文献数
1

本研究では,視覚シンボル検出課題を用いて,北神ほか(2002)で示されたシンボルの認識容易性に対する白抜きシンボルの優位性を,背景の色を変更して再検討した.また,意味内容の事前学習,および,シンボル自体の意味の明瞭さの影響も併せて検討した.その結果,認識の速さという点において,白抜きシンボルの優位性はみられず,白抜きシンボルの優位性は,シンボルが配置される背景の色と,シンボルの地の色との関係によって変動する状況依存的なものである可能性が示唆された.また,先行研究と同様,事前に学習を行う方が,あるいは,もともと意味がわかりやすいシンボルの方が,認識が容易であることも示された.
著者
永野 和男 天花寺 博司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.1-11, 1986-12-20

学習反応データの処理については,これまで統計的手法が主であったが,学習診断においては,教師の扱っている情報のほうが,実際にコンピュータにデータ化し入力できる情報より質・量ともに上回っているため,教師が主観的に判断した値や,判断過程そのものをパラメータとして扱えるようにする必要がある.本研究では,学習項目の関連情報と学習反応データをあらかじめ蓄積しておいた場合に,これに基づいて,教師の学習診断をシミュレートするシステムを開発した.このシステムは,1)会話形式で定義した項目関連構造から自動的に診断ルールを生成し,これを用いて診断を実行する,2)学習反応データに対応する下位目標の達成度を求める場合には,必ず教師の主観的判断を問い合わせる,3)判断ルールを蓄積しておき,以後の診断に再利用できる,4)教師でも利用できるように,なめらかな日本語会話で動作する,の特長をもつ.このシステムが実用にたえるものであるかを評価するために,実際の中学校数学の授業で収集した34時間分の学習データを用いて,1クラス全員について,診断を試みた.その結果,ほとんど教師の予測と一致した診断結果が得られた.このシステムは,教師の入力した診断ルールにより,診断過程をシミュレートしていることになるが,エキスパートシステムのようにベテラン教師の診断をまねるのではなく,教師自身に診断過程を明示し,意識化させる訓練システムとしての機能ももつことがわかった.
著者
姫野 完治
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.139-144, 2001
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究の目的は, 教職経験や教材経験の異なる教師を対象に, 授業過程の分節化を活用した調査を行うことによって, 教師の授業認知を比較検討することにある.現職教員と大学生の計5名に対し, 小学校2年算数科のある授業記録(VTR)を分節化する作業を課した.つぎに, 分節化の意図などについてインタビューを行った.これらの調査における発言記録を分析対象とし, 分析には各教師による発言の要旨を整理する方法と, 筆者が作成した9つの観点によって分析する方法を併用した.その結果, 教職経験や教材経験の豊富な教師ほど, 授業過程を構成している離れた分節や, 分節を集めた分節群を関係づけて認知していることが明らかになった.
著者
藤江 康彦
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.201-212, 2000
参考文献数
26
被引用文献数
4

本研究の目的は,教師による子どもの発話の「復唱」に,教授行為としてどのような意味があるのか,ということを明らかにすることである.小学5年の社会科単元「日本の水産業」の一斉授業(計7時間)を対象に,教師の復唱と後続する発話に着目し,カテゴリーの数量的分析と事例の解釈的分析を行った.その結果,次のことが明らかとなった.(1)教師は子どもの発話に対する応答として,復唱を多用していたが,復唱には,子どもの発話より教師の発話が後続する場合が多かった.(2)教師は教授意図に応じて復唱の機能と形状との組み合わせを使い分け,談話進行の円滑化や子どもの学習の進行に向けた教授行為として運用していた.(3)教師は,復唱を明示的評価の回避,授業進行の主導権の維持や授業進行のテンポの調整など,自らの教授行為の構成のために運用していた.よって,教師の復唱は発話内容としてではなく言語行為として,教授活動上の意味をもつといえる.
著者
赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.139-147, 1989
被引用文献数
3

授業を対象として,これを分析する方法を開発した.授業を教師と学習者のコミュニケーション過程としてとらえ,教師の教授行動と学習者の学習行動の相互作用を,単位時間の授業のなかから抽出する方法である.その方法は,従来の教授行動,学習行動のカテゴリー分析に改良を加えたものであり,カテゴリーの時系列データから,授業の特徴を表すカテゴリーの遷移パターンを抽出する方法である.その遷移パターンは,ネットワーク構造と階層構造の二つの形で表示することができる.授業の事例に適用し,(1)授業のなかで出現する頻度による遷移パターンの差異,(2)授業者(熟練教師と教育実習生)による遷移パターンの差異を検討した.その結果,遷移パターンの分析から,(1)では,出現頻度が小さくなるにしたがって,ネットワーク構造になること,(2)では,教育実習生は,教師主導型であり,単調な応答パターンであることに対して,熟練教師は,教師と学習者の双方コミュニケーショソ型であり,多様な応答パターンであることがわかった.本研究は,その分析方法の提案と適用結果について報告するものである.
著者
長倉 康彦
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.135-142, 1986

建築計画の分野のひとつとして,学校建築を対象とした計画的研究がはじめられたのは,1955年頃からである.建物が利用されている状況を観察・調査することから,教師と子供達の生活・行為と,学校建築空間との間の関係を分析する研究が主眼になり,爾来30年の間多くの研究蓄積をみるようになった.一方学校建築は社会的にも特に重要な建物であるから,学校建築を対象とした耐震性,学校開放,面積基準,システムズビルディングなどに関する総合的研究も多くの蓄積がある.本論文は,これらの研究成果を18項に分け,主要な研究文献リストを用意しながら,学校建築研究の展望をこころみたものである.
著者
森田 裕介 中山 実 清水 康敬
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.167-175, 1999-12-20
被引用文献数
8

本研究では,図的表現のひとつであるコンセプトマップの効果的な表現形式を実験的に検証した.学習内容は,キーワードに包含関係または順序関係があるものを用いた.まず,コンピュータディスプレイを用いて,コンセプトマップ表現と文章表現を比較する提示実験を行った.次に,実際の授業を想定し,講義室でOHPを用いた提示を行い,コンセプトマップ表現と文章表現を比較した.そして,コンセプトマップ表現は,記憶学習に有効であることを示した.ただし,キーワードの上位・下位関係を表示画面の上下方向に一致させないものは,効果がないことを併せて示した.コンセプトマップは,キーワードの上位・下位関係を表示画面の上下方向に一致させて表現することによって,学習内容の全体構造を把握することが容易になる.そのため,学習内容の提示における有効利用が期待できる.
著者
森田 英嗣
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-13, 1994-09-20
被引用文献数
6

多桁減算の領域を対象にして,学習者が他者の犯す誤りから学ぶことを目指すコンピュータ利用の学習環境を設計した.この環境は,デバッギングの機会を保障するために,コンピュータにバグをもつ学び手の役割を担わせ,教え手としての学習者がコンピュータの演示する誤りを指摘・修正するという活動を導くものである.83名の小学二年生にグループ活動として適用した評価研究の結果,次のことが示唆された.すなわち,(1)システムとの型通りの形式的な相互作用だけでは効果が導かれない.(2)誤りを導く意図的な問題作成をなすこと,誤りの指摘・修正活動を通して誤った手続きの対象化をなすことが,効果を生む要因である.(3)活動の文脈がシステムの効果を決定する重要な要因になっている.(4)グループが協同的でない時は成員間に効果の差異が生じる,等が明らかにされた.最後に,環境改善のポイントが検討された.
著者
向後 千春 岸 学
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.161-166, 1996-12-20
被引用文献数
3

映像と文字情報の提示についてのデザイン原則への示唆を得ることを目的として,外国映画の字幕つきビデオを視聴するときの眼球運動を分析した.実験材料として,字幕版のビデオ,「JFK」と「マルコムX」を用いた.それぞれから5分間程度のシーン4つを選び,編集したものを,アイマークカメラを装着した被験者に視聴してもらい,そのときの眼球運動を記録した.1行6文字,1行13文字,2行13文字,2行20文字の4種類の字幕パターンに注目し,それぞれにおいて,眼球運動を,字幕への反応時間,先頭への移動時間,実質的な読み時間,(2行字幕の場合)改行時間,に分解し詳細に調べた.その結果,字数が増えれば増えるほど文字あたりにかかる時間が長くなり,そこでは行数の要因と文字数の要因とが効いていることが明らかにされた.
著者
直井 一博 大谷 尚
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.247-258, 2003-12-20
被引用文献数
1

本稿は,英語学習のための合宿における英語使用経験を対象とするエスノグラフィのための理論的枠組みの考察である.最近の第二言語学習(SLA)研究によれば,第二言語使用の経験とは,主体が置かれた状況,すなわち,他者ならびに場面との対話の中で,文化的に適切な行為を選択する一連の出来事と見なすことが可能である.そしてその学習を捉えるためには,場における言語使用とそれを行う主体との複雑な関係性の理解を目指す,エスノグラフィの考え方が有用である.本稿に関係の深い理論的立場としては,「言語による社会化」という考え方,並びに,「実践のコミュニティ」の考え方が有益である.以上を背景にしたエスノグラフィにより,英語学習のための合宿を一事例とする,人々が共同で第二言語を用いて達成する場の理解を深めることが可能となり,さらに,学習共同体がCSCL等でネットワーク化されつつある現在の教育環境における第二言語学習の理解を深めることが可能になる.
著者
向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.257-263, 2002-12-20
被引用文献数
1
著者
鈴木 克明
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.43-55, 1998-06-20
被引用文献数
5

CAI教材自作課題用に,解答に応じた練習カードの除去や再出題などの制御をHyperCardに付加するドリル教材作成支援ツールを開発した.評価実験1では,KELLERのARCSモデルとGAGNEの9教授事象を参照したアンケートを用いて,HyperCardの標準リンク構造のみの教材と,支援ツール内蔵教材の特徴を大学生に評価させた.その結果,ツールが練習支援の側面を強化しているとの印象を与えていたことがわかった.次に,改善提案とドリル構造の研究結果とを取り入れて「正解消去型ドリル」の機能を改善・拡充し,操作性を向上させた.評価実験2では,ツールとしての使い勝手を調べるために,改善後のツールを大学生に試用させ,任意の画像情報と音声情報を含む教材を自作させた.10人中9人がツール初回利用時で新しいドリルを約30分で自作・試用することができ,ツールとしての使い勝手がおおむね確保されたことがわかった.
著者
菅井 勝雄 松下 幸司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.25-34, 2000-06-20
被引用文献数
2
著者
植野 真臣 吉田 富美男 石橋 貴純 樋口 良之 三上 喜貴 根木 昭
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.115-128, 2001-09-20
被引用文献数
8

本論では,多人数の複数クラスにおける遠隔授業の特性を明らかにし,その授業方法論の構築に貢献することを目的とする.具体的には,複数の工業高等専門学校に対する遠隔授業の実施とそれに伴うアンケート結果,客観データを数量化III類法を用いて要因分析を行った.本分析の特徴は,5段階の順序性を持つ授業の好ましさに係わる質問項目とその理由を聞く名義尺度項目を同一尺度上で数量化したことにある.その結果,複数クラスにおける遠隔授業の特性として授業の好ましさに関する項目の重要度は,「遠隔授業という授業方法について」,「教育テレビに比較してよかったか」,「実感が持てたか」,「教師との親近感」,「学校間の違い」「質問ができたか」,「授業回数」,「授業内容の理解」の順であり,評定の理由に関する項目として,「学習者が教師に認識されているかどうか」が主な要因となっていることが示された.すなわち,質問などの顕在的な双方向性以上に,まず認識的な教師との双方向性(相互作用)が重要であり,複数クラスにおける遠隔教育でも,教師-学習者個人の関係が要求されていることが示された.