著者
原田 佳代子 上地 正実 千葉 菜穂 海老澤 崇史 阪本 裕美 浅野 和之 水越 崇博 福井 亨
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.390-394, 2008-05-20
参考文献数
16

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、去勢雄、7歳齢が運動不耐性、発咳、呼吸困難を主訴に紹介来院した。グレード5/6の心雑音が左側心尖の領域で聴取された。胸部X線検査では、心陰影は著しく拡大し、肺水腫が認められた。心臓超音波検査では著しい僧帽弁逆流と拡張した左心房が観察された(LA/Ao:3.5)。これらの所見から、腱索断裂による重篤な僧帽弁閉鎖不全症と診断した。僧帽弁閉鎖不全は、人工心肺を使用して僧帽弁形成術によって整復された。手術2カ月後では、症例は臨床的に健康であり、心臓超音波検査で僧帽弁逆流が顕著に減少していることを認めた。この症例から、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの僧帽弁閉鎖不全が僧帽弁形成術によって修正できることが示唆された。
著者
新田 牧子 湯木 正史
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.786-789, 2012-10-20

8歳齢の避妊雌のパピヨンが,元気消失,食欲不振,急性の下痢を主訴に来院した。症例は10カ月前に巨大食道症を発症し,各種検査から甲状腺機能低下症と診断され,レボチロキシンナトリウム療法により改善していた。来院時,血液生化学検査にて低蛋白,低血糖などの異常を認めた。ACTH刺激試験にて,コルチゾール値は低値を示し,内因性ACTH濃度は高値を示した。本症例では副腎皮質機能低下症に多くみられる電解質異常を伴わないことから,非定型副腎皮質機能低下症と診断した。プレドニゾロンの治療により良好な経過が得られている。本症例は,免疫介在性の破壊をおもな原因とする二つの内分泌疾患を有することから,多腺性自己免疫症候群が疑われた。
著者
田中 誠悟 秋吉 秀保 中込 拓郎 青木 美香 白石 佳子 桑村 充 山手 丈至 大橋 文人
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.950-953, 2010-12-20

9歳齢の雌のポメラニアンが、約1年前からの発咳を主訴に近医を受診した.近医での加療中に状態の悪化を認めたため、精査・治療を希望し大阪府立大学獣医臨床センターに来院した.初診時、重度呼吸困難を呈し、興奮時のチアノーゼを認めた.呼吸音は後葉周辺部のみで聴診され、亢進が認められた.一般身体検査およびX線検査では肺気腫を疑った.CT検査では、胸腔内の大部分を占める嚢胞性病変と、一部に正常な肺の存在を確認したため、外科的切除を考慮し試験的開胸術を実施した.開胸下にて切除可能部位を切除後、残存した嚢胞に対して縫縮術を施した.切除組織は病理組織学的に気管支嚢胞と診断された.術後8日目には呼吸状態もやや改善し、歩行可能となるなど、良好に回復した.
著者
谷 峰人 林田 拓也 友川 浩一郎 水戸 康明 舩越 大資 谷 千賀子 北原 豪 上村 俊一
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 = Journal of the Japan Veterinary Medical Association (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.194-197, 2010-03-20

西南暖地の低地(標高38m)に位置するA酪農場(飼育経産牛117頭、夏季の平均気温27.5℃)と同・山地(標高795m)に位置するB酪農場(77頭、同23.2℃)について、季節、気温湿度指数(THI)および泌乳時期が受胎率に及ぼす影響を2001年4月〜2009年3月の8年間にわたり、のべ3,581頭について調査した。年間発情発見率の平均は、A、B酪農場それぞれ39.1%、40.9%で差はなかった。受胎率はA酪農場ではTHIが72を越えると20%以下となり、夏季に泌乳時期が51〜110日のもので14.2%となり、秋〜春季の32.8%より有意(p<0.01)に低下した。しかし、B酪農場では夏季と秋〜春季による違いは認められなかった。以上のように、西南暖地の低地に位置する酪農場においては夏季に泌乳時期が51〜110日のものでは受胎率が低下し、暑熱が繁殖成績の低下する大きな要因であることが判明した。
著者
岡田 雪男
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.35, no.11, pp.p638-647, 1982-11
著者
冨澤 伸行 山手 寛嗣 荻野 朋子 原 茂雄
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.115-118, 2001-02-20

左側肘関節の脱臼に対して整復術を試みたものの, 改善の認められなかったポメラニアン種の雄 (4歳) に対して関節固定術を実施した. 右側肘関節のX線写真において, 肘突起の欠損および鈎状突起の低形成が認められたことから, 本症例の肘関節脱臼の要因が先天性の肘関節異常であることが強く疑われた.