著者
堀内 信之
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.85-95, 2001
被引用文献数
4

本邦の農山村では, 古くから大型の大豆大までになるマダニ (tick) による刺咬症があり, ときに咬着しているマダニをつまみ取った後に遠心性に拡大する紅斑が出現する症例がみられた。われわれは, 1987年に「マダニ刺咬症の統計」と題して, このような遊走性紅斑の7症例を報告した。ところが同じころ, 馬場等によって妙高高原でシュルツェマダニ刺咬後に生じたライム病の本邦第1例が報告され, 注目されるようになった。われわれは, その後もマダニ刺咬症とライム病の実態調査を続けてきたのでその結果を報告した。1999年までのマダニ刺咬症は, 165例であり, その中で遊走性紅斑を生じたライム病患者が16例であった。外来受診時の状態は, 虫体が咬着したままの症例62例 (37.6%), 虫体を除去した後の症例79例 (47.9%), 遊走性紅斑を生じた症例16例 (9.7%), その他8例 (4.8%) であった。年度別患者数は1994年の18例, 月別患者数は6月の135例・7月の113例, 年齢別患者数は10歳以下の33例・50歳代の32例・60歳代の29例, 咬着部位別患者数は腹部の99例が多いものであった。マダニの除去法は, 医師にて切開又は切除して除去したもの56例, 自分又は家人がつまみ取ったもの94例, 自然脱落したもの7例となった。刺咬マダニの種類は, シュルツェマダニ56例・ヤマトマダニ26例・その他3例となった。ハイリスク集団である営林署職員のアンケート結果と抗ライム病ボレリア抗体の測定をあわせて報告した。
著者
植松 夏子 柴原 弘明 岡本 妙子 木下 早苗 眞野 香 青山 昌広 西村 大作 伊藤 哲 吉田 厚志
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.764-769, 2012

直腸癌術後仙骨転移による坐骨神経痛に対し緩和ケアチームが介入した。娘の結婚式を控え,早急な疼痛緩和と,レスキューの人工肛門からの投与経路変更が必要であった。投与していたフェンタニル貼付剤25.2mg/72hrを16.8mg/72hrへ減量し,モルヒネ注射薬3.6mg/hrを新たに併用した部分的オピオイドローテーションと,患者自己調節鎮痛ポンプによる経静脈的経路へのレスキュー投与経路の変更により,患者は疼痛なく,家族も安心して結婚式に参加することができた。今回行なった部分的オピオイドローテーションは,①比較的短時間に行なえる,②異なるオピオイドを新たに加えるため鎮痛が期待できる,③オピオイド変更による副作用が全量オピオイドローテーションより少ない,といった利点がある。癌患者の疼痛緩和での薬剤調整は,患者と家族の視点で立案することが肝要である。
著者
大西 丈二 益田 雄一郎 鈴木 裕介 石川 美由紀 近藤 高明 井口 昭久
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.641-648, 2004-11-30
被引用文献数
5 1

加齢に伴いこれまで担ってきた家庭的・社会的役割を喪失することの多い高齢者では,活動性が低下しやすく,時に身体的・精神的機能低下を引き起こしてしまうこともある。地域で行われる余暇活動の開発は高齢者の活動性やQuality of Life (QOL) の維持・向上に役立つものと思われるが,こうした余暇活動の効果はまだあまり実証されていない。今回われわれは農村部に居住する424名の高齢住民 (平均年齢71.6±4.8SD歳) を対象に,余暇活動を楽しむことと幸福感等との関連を明らかにするため調査を行った。調査項目として生活環境や,日常生活動作 (ADL) などの身体状況,外出の頻度,余暇活動を楽しいと感じる程度およびPGC主観的幸福感を含めた。この結果,楽しいと思う活動は「入浴」,「食事」,「テレビ」の順であった。余暇活動の中では「食事」や「入浴」を楽しむことがPGC主観的幸福感と正の関連を持ち,逆に「パチンコや麻雀などの賭けごと」を楽しむことは負の関連を示した。「動物の相手」を楽しむ者は閉じこもりが少なかった。PGC主観的幸福感を従属変数とする回帰分析では,人間関係の悩み,「パチンコや麻雀などの賭けごと」を楽しむこと,基本的ADL,体の痛み,独居を予測値とした有意なモデルが構築された。これらの結果は今後地域で高齢者の余暇活動を促進していくにあたり,有用な知見を与えた。
著者
仲谷 和彦 柏倉 紀子 黒木 悟 遠藤 正志 杉田 暁大
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.789-797, 2016-01-30 (Released:2016-03-16)
参考文献数
4
被引用文献数
1

尿検査は, 概ね患者に苦痛を与えることなく検体採取が可能であり, 分析機器の発達により簡便かつ短時間で多くの情報を得ることができる検査である。 しかし, 保存状況で尿成分は変化しやすく, 採尿後速やかな検査実施が原則であるが, 入院患者の場合採取から検査実施まで数時間経過している場合がある。その背景には, 採尿時間が不規則なため, 速やかに検査室に提出されない現状に起因する。 そこで, 特定条件下で実際に患者尿を用い, 経時的変化・規則性について検討した。 さらに, 尿中に高頻度に検出される腸内細菌 (大腸菌・プロテウス菌) が尿糖に及ぼす影響と亜硝酸塩反応の変化についても検討したので報告する。 結果, 尿検査に影響するような生理的・病的成分を含有する尿ほど経時的変化は著明であった。保存が必要な時は, 蓋付容器で冷蔵保存が望ましい。また, 尿中の大腸菌とプロテウス菌では, 解糖作用・亜硝酸還元反応の経時的変化に大きな差が認められた。
著者
軽部 彰宏 齋藤 史子 長尾 大輔 田村 大輔 尾野 夏紀 木村 菜桜子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.1-8, 2014 (Released:2014-07-24)
参考文献数
12

平成24年度より由利本荘地区 (由利本荘市, にかほ市) で, 細胞診のみによる従来の子宮頸がん検診にHPV検査を併用したHPV併用検診が開始された。1年間で772名がHPV併用検診を受診し, 87症例 (11.3%) がHPV検査陽性であった。その後に精査受診し, 組織診断まで追跡可能であった64症例 (73.6%) の結果について示した。細胞診が正常でHPV検査が陽性であった症例の67.6%にCIN1以上の病変が認められ, CIN2以上が5例発見された。従来の細胞診のみで発見されたCIN2以上は9例であったが, HPV検査を併用することでCIN2以上は14例となった。子宮頸がん検診の精度を向上させるために, HPV併用検診を積極的に取り入れていくべきと考えられた。
著者
林 雅人
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.705-711, 2003-01-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

高齢者の生活習慣病対策は若壮年とは異なった視点が必要である。BMIについて男性ではやせ群の生存率が低く, 高齢男性群はがん死亡者を除外しても有意に低い。血清総コレステロールについて高齢者男性群は中年群より血清総コレステロール低値群の生存率が明確に低く, 5年以内のがん死亡例を除外してもその傾向は変わらない。この事実は基本健診で得られた高齢者高コレステロール血症に対する食事指導を若年者と同様に行うべきでないことを示している。血清アルブミンと血清総コレステロールは男女, 中年・高齢群すべてにおいて有意に正相関しており, がん死亡例を除外してもその傾向は変わらない。この相関は高齢者程より明確であった。この点からみても高齢者食事指導にあたっては若壮年者と同様に行うべきではない。
著者
竹之下 秀雄 山本 俊幸 藤山 幹子 橋本 公二
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.476-482, 2009-11-30 (Released:2010-04-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1

59歳,女性。非定型精神病のためカルバマゼピンが処方され,約1か月後に発熱と皮疹が出現した。当科初診時,38°C台の発熱,全身性に浮腫性の播種性紅斑丘疹型の皮疹がみられ,紅皮症状態を呈し,頸部リンパ節が腫脹し,肝機能障害もみられた。初診の3日目には急性汎発性発疹性膿疱症様状態となった。プレドニゾロン50mg/日の全身投与を開始し,徐々に改善傾向を示した。経過中,軽度の膵炎を発症したが治療の必要はなかった。ヒトヘルペスウイルス6型DNAが,全血中より2期間にわたって検出され,この期間は,血清中のアミラーゼ値とリパーゼ値の上昇期間と一致していた。以上より本例を,経過中に急性汎発性発疹性膿疱症を呈し,膵炎を発症したカルバマゼピンによる薬剤性過敏症症候群と診断した。
著者
高 開焔 方 先業
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.96-100, 1990-07-30 (Released:2011-08-11)

Large strides have been made in primary health care and services in Jinzhai County, Anhui, sincefourth-grade health care facilities at hamlet and village levels were improved under the guidance ofthe public health organization of the county.Worthy of special note are the establishment of the health compensation system for women andinfants, introduction of premarital education programs for the young, regular checkups for pregnantwomen, regular health screenings and vaccination for infants under the age of 7. The results havebeen outstanding.Mortality rates of pregnant women, nursing mothers and babies during the perinatal period have dropped remarkably. The incidence of tetanus among the neonates has been reduced to zero.Health inquiries have found there is a high rate of cancer of the thyroid gland. As preventive measures, iodine preparations are given to primary and middle school children. Thyroidectomy has been performed on some malignant cases.Meanwhile, the spread of a clean water supply system is a major task grappled with by community health officials. Although the service area is limited yet, tap water has become available. The living environment in Jinzhai County overall has been improved to a level comparable with the PHC (?) standards recommended by the World Health Organization.Under the slogan “Creating Better Health for All the People, ” continuous effort is being madewith 2000 as the target year.