著者
武藤 桃太郎 武藤 瑞恵 石川 千里 井上 充貴 升田 晃生 高橋 裕之 萩原 正弘 青木 貴徳 橋本 道紀 稲葉 聡 矢吹 英彦
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.49-56, 2014

症例1は85歳, 女性。近医にてCEA9.2ng/mlと高値を指摘され当科紹介となった。CT検査, 超音波検査で虫垂部に嚢胞状腫瘤を認めた。注腸造影検査では盲腸下端に半球状の表面平滑な隆起性病変を認め, 虫垂は造影されなかった。虫垂粘液嚢腫の診断で盲腸部分切除術を施行し, 術後CEAは4.7ng/mlと正常化した。 症例2は74歳, 女性。高血圧, 高脂血症で当科通院中にCEA12.3ng/mlと高値を示し, CT検査, 超音波検査で虫垂部に嚢胞状腫瘤を認めた。注腸造影検査では盲腸に粘膜下腫瘍様隆起を認め, 虫垂は造影されなかった。虫垂粘液嚢腫の診断で盲腸部分切除術を施行し, 術後CEAは1.5ng/mlと正常化した。 いずれも病理検査で虫垂粘液嚢胞腺腫と診断され, 免疫染色ではCEA陽性であった。
著者
高松 道生 田村 真
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.79-84, 2001

佐久地域の全住民を対象として, WHO-MONICA Projectの手法に基づく心筋梗塞発症登録研究を行った。1989年度から1998年度の10年間の推移では発症数に有意な変化は認められず, 人口の高齢化に伴う発症増加も認められなかった。心筋梗塞発症例の平均年齢は女性で不変, 男性がやや高齢化の傾向にあった。最重症の心筋梗塞は突然死の形を取る事が多いが, その把握には保健所を中心とした公的研究が必要と考えられる。一方で農業従事の有無に視点を置いた研究も必要であり, 本学会の研究テーマとして意義のあるものと思われる。
著者
水本 一生
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.747-752, 2015

難治性皮膚潰瘍に対して電子ネットワークを利用した臨床写真画像転送による大学病院と地域病院の診療連携体制を構築し, 診断治療にあたる試みを行ない, その有用性を検討した。2013年4月から2014年3月までの間に75歳以上の難治性皮膚潰瘍の患者で手術を必要とした26例を対象とした。臨床写真を電子メールに添付し共同研究者である島根大学医学部付属病院皮膚科形成外科診療担当医に配信, チャット形式での検討により, 治療方針を決定し, 熱傷瘢痕9例, 褥瘡7例, 虚血肢3例, 悪性腫瘍1例, 外傷6例に対して地域病院で手術および周術期管理を行なった。術式変更となったものは遊離植皮術を予定していた熱傷瘢痕に対して局所皮弁術を施行した2例 (7.7%) であった。術後, 重篤な合併症を発生した症例はなく, また, 再手術を必要とした症例は外傷に対して縫合閉鎖した1例 (3.8%) のみであった。電子ネットワークを利用した大学病院と地域病院の診療連携により高齢者難治性皮膚潰瘍の診断・治療を地域病院で展開することが可能であった。
著者
藤原 秀臣 田谷 利光 徳永 毅 雨宮 浩 家坂 義人 川田 健一
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.958-963, 1994-11-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
10

農業は, 近年各分野での機械化が進んできたとはいえ, 依然筋肉労働を主体とした産業のひとつである。土浦市は全国有数のれんこん生産地であるが, れんこん収穫労働は冬期には泥水田に腰まで浸かって掘り取り作業が行われ, 寒冷という外的因子に加えて強い筋肉労働を伴うため労働負担とくに循環器負担が大きいと考えられている。そこで, れんこん収穫作業中の循環諸指標を労働現場で測定し, 循環器負担の様相について検討した。対象は, れんこん生産農業者18例で, 男性11例, 女性7例, 年齢は41~66歳 (平均56.7歳) である。測定実施日前1週間以内に健康チェックと嫌気性代謝閾値 (AT) 測定を行い, 測定当日には, Holter心電図を装着し, 作業現場において, 血圧, 心拍数, 血液酸素飽和度, 12誘導心電図の測定を施行した。その結果, 心拍数は作業中, 有意に上昇したが全例で予測最大心拍数以下であり, 作業直後には前値に復していた。血圧, 二重積, 血液酸素飽和度とも作業前後で有意な変動は認めなかった。また, 労働において心電図上の虚血性変化はみられなかった。男女の比較では, 女性に作業直後に血圧はむしろ低下し, 二重積の上昇の程度も低い傾向がみられた。しかし60歳以上の2例では, 作業直後の血圧上昇, 不整脈がみられた。以上のことより, れんこん収穫労働は, 循環諸指標に著明な変動を惹起せず, 循環器負担は軽度であったが, 60歳以上の高齢者については充分な健康管理が必要であると考えられた。
著者
朱宮 哲明 国政 陽子 菱川 千鶴 大場 陽子 澤田 智恵美 林 幸子 西村 直子 尾崎 隆男
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.80-82, 2004
被引用文献数
2

平成14年4月~平成15年3月の1年間に, 昭和病院の栄養科職員35名より提出された事故報告書 (インシデント・アクシデントレポート) 158件を集計分析し, 今後の事故防止に向けて検討した。<BR>項目別の事故報告書件数は, 事務処理ミスが90件 (57%) と最も多く, 次いで配膳ミス56件 (35%), 異物混入8件 (5%), その他4件 (3%) の順であった。事故の大半が確認不足により発生しており, 反復確認, 複数の職員による確認など確認の徹底が事故を減少させると思われた。事故報告書の内容および原因を職員にフィードバックすると共に, それらを分析して, 新たな事故防止マニュルを作成してゆく必要がある。
著者
江幡 世利子
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.1078-1082, 1995

土浦協同病院に勤務する看護婦を対象として「死後の処置」に関する意識調査をアンケート方式で行った。<BR>調査は,(1) 死後の処置を行う時どのようなことに気をつけているか,(2) 患者の生前と死後での接し方の変化,(3) 患者の死に接して考えること,(4) 死後の処置に家族を参加させることの是非の4点に主眼を置いた。<BR>調査は,(1) 死後の処置を行う時どのようなことに気をつけているか,(2) 患者の生前と死後での接し方の変化,(3) 患者の死に接して考えること,(4) 死後の処置に家族を参加させることの是非の4点に主眼を置いた。<BR>今回の調査により, 本来の目的である「死後の処置」についての現状の把握ができたほかに, 自分達の行ってきた業務を振り返り, 反省するよい機会にもなった。そして, 家族の危機状況に対する心くばりをすることなど改めて自分の看護の姿勢を見直すことへもつながった。
著者
永美 大志
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.19-23, 1996-05-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
11

近年, 国内農業の重要性が認識される一方で, 農産物の輸入は年毎に増加しており, その農薬残留, とくに長距離輸送, 長期保存を可能にするためのポストハーベスト使用農薬の残留は, 衛生学上の問題点の一つである。今回筆者は, ポテトチップス中の発芽防止剤, マレイン酸ヒドラジドとクロルプロラァムの簡便な同時残留分析法を作成した。本分析法による, 両剤の回収率および検出限界は, それぞれ81±5, 79±4%, 0.1, 0.01μg/g-rawであった。本方法を用いて市販品の残留調査を行った。マレイン酸ヒドラジドは, 0.3μg/g-rawを最高に25%の検体から残留を認めた。クロルプロファムは, 0.11μg/g-rawを最高に45%の検体から残留を認めた。
著者
松尾 弘文 杉村 巌 小西 行夫 種田 光明
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.71-78, 1987

北海道鷹栖町は, 旭川市に隣接する農業 (主に水田) を主な産業基盤とする人口約7,500の農村地区である。同町では無床の開業医療機関が一か所あるのみである。住民のヘルスニーズに応えるべく, 昭和50年より住民総合健診を実施してきた。疾病の早期発見, 予防につとめ発症後も早期にまた効率よく一次医療機関および二次医療機関に受診できるように, 健診を中心としてのプライマリ・ヘルスケア (以下PHC) の確立をめざしてきた。<BR>今回の調査では健診開始10年目を迎え, 健診がPHCの確立にいかに寄与したかを調査し検討した。結果として, 疾病の有症者数の改善, 医療費上昇の抑制, 病診間の連携, 保健意識の向上などが認められた。以上のように, 健診を中心としたPHCの確立は, 医療機関の乏しい農村地区においては有効であると考える。
著者
倉益 直子 田内川 明美 宮内 幸子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.49-54, 2012-05-30 (Released:2012-09-20)
参考文献数
9

2004年に看護協会が実施した「新卒看護職員の早期離職等実態調査」において,新人の9.3%が1年以内に離職していたという結果は,看護界を驚かせた。離職理由としては,「基礎教育終了時の能力と現場で求められる能力のギャップ」「肯定的なストロークが少ない職場風土」「教育的配慮の不足」などが挙げられている1)。新人看護師にとっての入職後1年間は,これまでになくストレスフルな毎日であることがこの調査により明らかになった。事実,新人看護師の中で「眠れない」「食べられない」「仕事に行けない」などの深刻な症状を呈し離職に至る者もいる。 心理学によると,ストレス反応を低下させる要因は,「自尊感情 (self-esteem)」「自己効力感 (self-efficacy)」「アイデンティティ (identity) の確保」の3つであると言われている2)。ところが,医療現場では常に「完全」を求められることや,対人援助職特有の「やってもきりがない」等の不満足感が,自尊感情や自己効力感を低下させる。このことからも新人看護師が初めて接する看護現場は,ストレス反応が起こりやすい環境であると言える。そのため,当院では以前より新人看護師の心身のリラックスを図る新人研修として「集団コラージュ療法」を取り入れてきた。「コラージュ療法」はこれまで,精神科臨床や非行対応臨床などから始まり,最近は,末期がん患者や認知症患者などにも活用されて成果を挙げている。我々が検索した文献では,健康な専門職への適用は見られなかったが,当院では10年前から実施しており,その安全性はすでに確認されている。今回,当院における新人看護師対象の「集団コラージュ療法」について検討したところストレスケアとして有用と考えられる所見が得られたので報告する。
著者
渡辺 章充 南風原 明子 黒澤 信行 渡部 誠一
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.591-594, 2011-01-30

ロタウイルス感染に伴う急性脳症を2例経験した。<br>〔症例1〕2歳11か月の女児で全身強直間代性けいれんで発症した。人工呼吸管理まで要したが,後遺症なく回復した。<br>〔症例2〕2歳2か月の女児で不機嫌状態が遷延し,脳波の徐波化,頭部MRIで小脳に異常信号を認めた。運動機能は回復したが,高次脳機能と軽度の小脳症状が残った。<br> ロタウイルスによる脳症には,けいれん発作主体のものだけでなく,小脳に主病変を示すタイプがある。前者は診断・治療とも他のウイルス性急性脳症に準ずることで大きな問題はないが,後者は早期診断に苦慮することもあり,また,有効な治療法も確立されていない。
著者
乃木 章子 塩飽 邦憲 北島 桂子 山崎 雅之 アヌーラド エルデンビレグ エンヘマー ビャンバ 米山 敏美 橋本 道男 木原 勇夫 矢倉 千昭 花岡 秀明 井山 ゆり 三原 聖子 山根 洋右
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.649-659, 2004-11-30
被引用文献数
1 3

農村地域で肥満, インスリン抵抗性, 脂質異常, 高血圧を合併した代謝症候群が増加している。代謝症候群に対しては体重減少が有効とされているが, 白人と日本人では肥満と代謝症候群の関係に差異が見られる。日本人での体重減少と生活習慣変容, 体重減少と代謝症候群の改善についての実証的な研究は少ないため, 体重減少に寄与する要因, 体重減少と代謝症候群改善との関係を研究した。2000~2003年に健康教育介入による3か月間の肥満改善プログラムに参加した住民188名を対象とした。参加者の平均体重減少は1.3kgであり, BMI, ウエスト囲, 血圧,総コレステロール, LDLコレステロール, 中性脂肪の減少, HDLコレステロールの増加を認めた。相関および回帰分析により, 摂取熱量減少, 消費熱量増加が体重減少に寄与していることが明らかになった。一方, 体重変化との有意な相関が認められたのは, 各種肥満指標, 総コレステロール, 中性脂肪, HDLコレステロールであり, 血圧とLDLコレステロールでは有意な相関を認めなかった。体重変化量と有意な相関が認められた血液生化学的検査値の変化量との相関係数は比較的低く, 体重変化量は中性脂肪や総コレステロールの変動の10%以下しか説明しなかった。代謝症候群の改善における体重減少の有効性について, アジア人の民族差に着目した体重減少の有効性に関する実証的な研究が重要と考えられる。
著者
高松 道生 柳沢 素子 町田 輝子 松島 松翠 飯島 秀人 中沢 あけみ 池田 せつ子 宮入 健三 矢島 伸樹 佐々木 敏
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.595-602, 1999
被引用文献数
1

こんにゃくのコレステロール低下作用について検討し, その健康食品としての意義を明らかにする研究を行った。<BR>こんにゃくの成分であるグルコマンナンをチップ化して煎餅状に加工 (以下, マンナン煎餅) し, 総コレステロール200mg/dl以上の当院職員と正常範囲内の当院附属看護専門学校寄宿学生を対象に, 脂質代謝への影響を調査した。毎食後に煎餅を摂取し, 試験期間前後に脂質を中心とする血液検査を行ってマンナン煎餅の脂質代謝への影響を評価した。<BR>その結果, マンナン煎餅を摂取する事によって総コレステロール値の低下が認められ, 試験前総コレステロール値の高い群ほどその低下の度合いが大きかった。HDLコレステロールや中性脂肪への影響は認められなかった事から, マンナン煎餅はLDLコレステロールを特異的に低下させる作用を有するものと考えられた。血算や生化学などの検査値には変化を認めず, 腹満や下痢などの消化器症状が一部に観察されたものの, 重症なものではなかった。一方, 試験前後の体重に差はないものの試験期間中の総摂取エネルギーや脂質摂取は減少しており, マンナン煎餅を摂取することが食習慣に影響を与えた事が示唆される。以上から, こんにゃく (グルコマンナン) は直接・間接の作用でコレステロール, 特にLDLコレステロールを低下させ, マンナン煎餅が健康食品として意義を有するものと考えられた。
著者
早川 富博 鈴木 祥子 小林 真哉 福富 達也 井出 正芳 大野 恒夫 大河内 昌弘 多気 みつ子 宮本 忠壽 丹村 敏則 岡田 美智子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.438-446, 2009-11-30 (Released:2010-04-12)
参考文献数
12
被引用文献数
3 5

発芽玄米の糖代謝・脂質代謝に対する影響を知ることを目的に,糖尿病患者に試験食 (発芽玄米: 白米を1:1に調整) を3か月間摂食させて,その前後で糖・脂質のパラメーターを比較検討した。3か月間の試験食摂取によって,グリコヘモグロビンは,摂取前の6.40±0.23%から6.23±0.19%へと有意な低下が認められた。空腹時血糖値に有意な変化はなかったが,インスリン値とHOMA-IRは低下傾向を示した。T-CHO値,TG値は試験食の摂取によって変化はみられなかったが,LDL-c値は低下傾向,HDL-c値は増加傾向を示し,LDL/HDL比は摂取前の2.03±0.13から,摂取3か月後には1.83±0.12へと有意に低下した。試験食摂取量を多い群と少ない群に分けて検討すると,試験食の摂取量が多い群で,LDL-c値は有意に低下,HDL-c値は有意に増加した。今回,糖尿病患者において,3か月間の発芽玄米摂取によって糖代謝と脂質代謝がともに改善する結果が得られた。これらは,糖尿病患者の食事療法として発芽玄米が有効であることを示すものであるとともに,高コレステロール血症の治療にも有効である可能性を示すものと考えられた。