著者
中田 実
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.14-20, 1992-05-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

ブドウ栽培作業の中でも, とりわけ摘粒作業は長時間の連続的な上肢挙上・立位・上向き作業姿勢が要求され, 繁忙期には作業者の問で筋骨格系を主とした疾労の訴えが増加する. この問題の解決に資するため, 人間工学的な改善策の検討を行なった.大人用三輪自転車 (三輪自転車), 老齢者・身体障害者用電動三輪車 (電動三輪車) をそれぞれ農作業用に改造し, ブドウ摘粒作業現場で, 旧来通りの立位作業, および2種類の作業車による作業を実施し, 自覚疲労症状, 作業量などの比較検討を行なった.その結果, 電動三輪車作業は, 腰痛や下肢のだるさなどを減少させるのに有効であることが示された. また電動三輪車による作業は, 立位作業や三輪自転車による作業に比べ, 作業能率が高く, 取扱い操作などに関する作業者の評価も良好であった. 電動三輪車に今後さらに改良を加えることにより, 実用化が十分可能であると考えられた.
著者
小田川 敦 桂 敏樹 星野 明子 志澤 美保 臼井 香苗
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.781, 2020 (Released:2020-05-17)
参考文献数
27

我が国では認知症の増加が重要な健康課題になっている。厚生労働省は認知症を予防する最も効果的な方法はMCI(Mild Cognitive Impairment)を把握し対処することであると指摘している。そこで,本研究では認知症のリスク要因である不活発な身体活動量とMCIの関連を検討することを目的とした。 基本チェックリストによって判定したA市在住閉じこもり高齢者26名と性,年齢,居住地区をマッチさせた非閉じこもり26名を2013年コホートから無作為に抽出し,身体活動量,MCIなどを訪問調査した。その内容は基本属性,基本チェックリスト,IPAQ,MoCA-J,Kohs,HDS-R,GDS-S-J,IADLである。抽出された高齢者の身体活動量(IPAQ)から区分した身体活動の活動群と不活動群の2群間でMCIを比較するためにχ2検定,Mann-Whitney U検定を用いた。統計解析にはSPSSを用い,危険率は5%未満とした。 身体活動不活動群は活発群に比べて殆ど身体活動がなく非活動時間が多く,健康づくりに必要な身体活動量を満たしていなかった。更に不活動群は活動群に比べてMoCA-JによるMCIが多かったが,KohsによるMCIは相違がなかった。 このことから,健康づくりやMCI予防に必要な身体活動レベルを満たしていない不活動状態がMCIのリスク要因になることが明らかになった。本研究は地域在住高齢者から不活動者を把握し,MCIのリスクを早期に発見し対処する方法を考案する必要性を示唆している。
著者
堀田 彰一朗 前島 裕子 重富 秀一 下村 健寿
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.121-125, 2020 (Released:2020-10-09)
参考文献数
8

ウイスキー樽に用いられるオーク材には,抗炎症作用を有するバニリンとバニリン酸の前駆物質であるフェルラ酸が結合していることが知られており,オーク材から抽出できれば有効利用が期待される。しかし,今日にいたるまでオーク材からの有効な抽出法は報告されていない。今回,我々は日本酒の中に含まれる麹菌由来フェルラ酸エステラーゼに注目し,ウィスキー熟成用いられたオーク樽に日本酒を入れ,さらに熟成することでフェルラ酸,さらにはその酸化生成物であるバニリン,バニリン酸の抽出を試みた。その結果,2週間から2年間の熟成によりこれらの物質を多く含む日本酒を産生することに成功した。本方法はアルコール摂取による消化管や肝臓に対するストレスを一部緩和できる手法として将来の活用が期待できる。
著者
小杉 康夫 福原 昇 岩田 邦裕 朝比奈 泰斗
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.516, 2018 (Released:2018-12-18)
参考文献数
5

乳癌術後放射線治療後経過観察中に同側乳房内再発を来し,追加乳房切除術施行予定となった58歳女性と冠動脈バイパス術後経過観察中に両側肺癌を指摘された81歳男性に対しがんの全身検索目的でDWIBS(diffusion weighted imaging with background signal suppression:背景抑制広範囲拡散強調画像)を施行した。その結果,両症例とも二次的に膀胱癌が発見され,適切な治療につながった。いずれの症例もPET/CTでは発見困難な病変であった可能性が高く,少なくとも本症例ではがんの全身検索としてDWIBS がPET/CTに比して有用であったと考えられるので報告する。
著者
田坂 重元 大友 浩 関寺 恭朗
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.161-165, 1959-03-20 (Released:2011-02-17)
参考文献数
9

農村の乳児の骨系統の発育についての文献は余り見当らない。然し, 二, 三の文献から見ると一様に母体の妊娠中の偏食と過労などが原因し一方乳児期においては離乳の遅延と偏した離乳食などによって骨系統の発育に明かな障碍が起ってきている。北海道における, 乳児についての観察を行って見たのでその結果を要約すると, (240名についての統計)。(1) 離乳が都市より3~4ヵ月おくれ, 8~9ヵ月が一番多く行われていた。(2) 離乳食も14ヵ月迄は殆んどがおかゆ程度で副食は野菜物煮付が殆んどをしめ, 海藻類, 魚獣肉類やそのスープ類はやっていなかった。(3) 離乳未開始のものは栄養状態も悪く, 骨発育が劣っていた。(4) 未熟児は全出生児の10%をしめ, 未熟児の7割が栄養失調性クル病であり, 又, 重症型が多かった。(5) 未熟児は先天性股関節脱臼のものが24%いた。
著者
重田 匡利 久我 貴之 工藤 淳一 山下 晃正 藤井 康宏
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.61-67, 2007-07-30
参考文献数
21
被引用文献数
1

マムシは琉球列島を除く日本の全土に分布している毒蛇であり春から秋にかけて多くみられる。本邦では年間,約10名前後が死亡する<sup>1)</sup>。田畑や山中での被害報告が多く農村医療では重視される。平成11年から平成18年においてマムシ咬傷35例を経験し臨床像および治療とその経過について検討した。患者は7歳から80歳 (平均60歳) 男性17名,女性18名であった。全例に咬傷部の腫脹と疼痛を認めたが,全身症状は16例 (46%) に認め眼症状が高率であった。血液検査上の異常はCPK高値を24例 (69%) で認め重症度と相関していた。治療は切開排毒処置のうえ原則全例入院とし,独自のマニュアルを初期治療に活用した。治療の結果,症状改善傾向が認められるまでの中央値は3日であった。入院日数の中央値は7日であった。腫脹などの局所症状の消失には時間がかかり治療期間の中央値は31日間であった。受傷から受診までの時間により重症度に差を認め重症化した1症例では集中治療を必要とした。マムシ咬傷では迅速かつ適切な初期治療が必要であると思われた。
著者
相川 択弥 三村 未美 金山 美鈴 鈴木 理香
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.665-669, 2014 (Released:2015-03-10)
参考文献数
3
被引用文献数
2

A病院は地域での急性期中核病院の役割を担っている。それに加え, 平均在院日数の短縮化や看護師不足と, 看護師の業務は多忙を極めている。この環境下で働く看護師は, どのようなストレスを感じて業務を行なっているのか実態調査を行なった。 研究方法は, A病院看護師, 准看護師 (師長・副師長・主任を除く) に看護職場にみられるストレス要因についての質問用紙を作成し調査を行なった。業務量, 業務内容, 人間関係, プライベートの4つのカテゴリーに分類し, さらに年代別に比較した。 集計の結果, 全ての年代でストレスの1位は業務量, 2位は業務内容であった。患者の病状経過の把握, ケアや検査, 処置, 医師の診療の介助, 医療安全への配慮, 他部門との連携など業務が多岐にわたり, 常に時間に追われていることが要因であると考える。ストレス3位は人間関係であった。多忙な業務の中, 患者とゆっくりと向き合えないジレンマや, 医師とのコミュニケーションが出来ていないことへの不満, 上司や同僚との関係などが関与していると考えられる。ストレス4位はプライベートであった。30・40歳代は, 家庭を持つ看護師が多く, 希望の休日は家庭の用事などに当てなければならず, 自分の時間が確保できないこと, 夜勤や時間外勤務, 研修への参加等も, 影響していると考えられる。今後は, スタッフ同士が同じストレスを抱える仲間として助け合い, 働きやすい環境となるよう努めていく必要がある。
著者
今木 雅英 三好 保 吉村 武 棚田 成紀 松本 和興
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.87-91, 1988-07-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
13

健康な中年および老年者における血清LDH活性値およびアイソザイム分画比と血清ビタミンCの関連性について検討した。対象者は、漁村住民男性87名, 女性83名 (年令45-84才) である。男女とも各年令グループ (45-59才グループ, 60-69才グループ, 70才以上グループ) において血清LDH総活性値と血清ビタミンCは、統計的に有意な関係はみとめられなかった。しかし、男女とも血清LDH-4分画比, 血清LDH-5分画比と血清ビタミンCはすべての年令グループにおいて統計的に有意な負の相関関係が認められた。
著者
若月 俊一 松島 松翠 荒木 紹一 筒井 淳平 白井 伊三郎 高松 誠
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.399-413, 1973-01-10 (Released:2011-02-17)

長野, 愛知, 三重, 徳島, 福岡の5地区において, 同一の調査方法により, ハウス栽培従事者の健康調査を行なった。調査人員は, 昭和45年415名 (男230名, 女185名), 昭和46年458名 (男185名, 女273名) であるが, 別に対照として, 一般農家を昭和45年152名 (男73名, 女79名), 昭和46年281名 (男118名, 女163名) 同一方法で調査した。このうち農繁閑期を通じて同一人を調査できた30代, 40代のものについて, ハウス栽培状況及び健康状況を分析した結果は次の如くである。1) 各地域におけるハウス栽培状況の比較調査対象農家1戸あたりのハウス栽培面積は, 三重。が最も多く, 29.7a, 長野が13.5aでもっとも少なかった。暖房の設備状況は, 各地域によって異なるが, そのうち煙突を装備しているものは, 愛知, 三重, 徳 島では大部分であるが, 長野及び三重では約半数に過ぎなかった。その他副室, 換気窓, 面側扉の設備は地域により差異がある。農薬はハウス内でかなり使われており, 有機硫黄剤が多いが, その他の強毒性殺虫剤も多かった。2) 各地域及び農繁閑期における健康状態の比較労働時間は, 一般に農繁期, しかも女子に多く, 睡眠時間は, 逆に農繁期, 女子は少ない。ハウス栽培作業の最盛期には, ハウス内作業は1日8時間にも及んでいる。農夫症症候群は農繁期に多く, 症状としては, 肩こり, 腰痛が多く, 男子に比べて女子に多い。自覚的疲労症状も同様で農繁期に多く, 女子に多い傾向にある。地域別では, 農夫症症候群は三重, 福岡に多く, 疲労症状の発現率は福岡に多くみられた。検査成績では, 女子に貧血の傾向がみられるが, とくに農繁閑期で大きな差はみられない。地域別には若干の違いがみられた。血清コリンエステラーゼ活性値が20%近く異常値を示したことは, 今後ハウス内の, dermal absorption riskのほかに, inhalational exposureの危険についてもさらに深い調査を行なわねばならないことを示すものと思われる。3) ハウス栽培農家と対照農家の健康状態の比較労働時間は, ハウス栽培農家の方が対照農家に比べて多く, とくに女子において著明である。睡眠時間は, ハウス栽培農家の方が少ない傾向がみられた。農夫症症候群は, 農繁期にはハウス栽培農家に多い傾向がみられ, 症状として, 肩こり, 腰痛, めまい, 不眠などがハウス栽培農家に多い。疲労症状もとくに農繁期には, ハウス栽培農家に高いが, 「頭が重い」「全身がだるい」「肩がこる」「体のどこかがだるい」「足がだるい」 といった症状が多くみられた。また検査成績では, ハウス栽培農家に肝機能異常や血清コリンエステラーゼ活性値低下を示すものが若干みられた。以上の結果により, ハウス栽培従事者には, 一般農家にくらべて, とくに農夫症, 疲労症状等, 自覚症状が多くみられており, これらはハウス病症候群と呼ばれる症候群の一部を構成している。そして, その原因として高温多湿の作業環境, 農薬散布, 作業姿勢等が考えられるが, 今後, 予防対策として, ハウス内の構造の改善, とくに大型換気扇の設置, また労働条件の改善, とくに農薬散布方法の改善等が必要であろう。さいごに, 去る第5回国際農村医学会 (ブルガリヤ・バルナ市) における東欧諸国の研究や調査の発表では, ハウス栽培における農薬散布が原因する健康障害のテーマが, 少なからずとりあげられていたことをとくに付記する。
著者
白石 卓也
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.886-890, 2016-01-30 (Released:2016-03-16)
参考文献数
7

脊柱側弯症は, 思春期児童の約1~2%にみられる比較的頻度の高い疾患である。疼痛などの自覚症状を伴うことは少なく, 外見上の背部変形を観察することで発見されるため, 脊柱側弯症学校検診 (以下, 検診) は大きな意味をもっている。側弯症は早い段階から適切な保健指導や治療を始めることが極めて重要であるため, 早期かつ確実に発見するための体制づくりが求められる。しかし, 検診の内容は各自治体間で一定せず, 専門外の内科医や小児科医が内科健診と併せて行なうことが多いのが実情である。近年, 検診に問診票を取り入れる自治体が増えているが, 本研究では平成27年度に当地域で導入した機会を捉えて, 問診票の保護者に及ぼす効果を検討した。検診終了後に問診票導入に関するアンケートを配布・回収することにより集計・解析した。その結果, 問診票の活用は, 注意深く診察しなければならない児童の抽出に有効であるばかりでなく, 保護者に対する側弯症の啓発および学校健診に対する関心の向上につながっていることがわかった。また, 年1回の検診による子供の体型の確認に加え, 問診票の活用により保護者が日頃から子供の体型の変化に気をつけるようになるため, 側弯症の早期発見につながる可能性が示唆された。
著者
日本農村医学会農薬中毒研究班
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.89-139, 1984-07-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
65
被引用文献数
4 2

Of clinical cases of pesticide poisoning at rural hospitals across the country, it has been requested to provide reports on 31 cases the course of which had been of interest.By type of pesticide, the number of cases is 3 for fenitrothion, 1 for DDVP, 1 for vamidothion, 2 for malathion, 1 for trichlorfon, 1 for cyanophos, 1 for phenthoate, carbaryl, and edifenphos, 1 for leptophos, 1 for ortho-dichloro-benzene and dichlorvos, 1 for fenthion anal carbamates, 2 for methomyl, 2 for nicotine sulfate, I for calcium polysulfide, 1 for blasticidin S, 1 eye injury for paraquat and chloropicrin, and 11 for paraquat.One grave factor today is a sharp rise in the prevalence of poisoning with paraquat, which in most cases is used for suicide. Of late, there have also appeared cases in which death eventually results from the spraying of paraquat.
著者
新開 省二
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.826-829, 2013 (Released:2013-07-23)
参考文献数
15
著者
山下 一也 飯島 献一 白澤 明
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.90-94, 1996-07-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
23

A型行動様式と血圧について1年間のfollow upをし, 性格の変化と血圧との関係を検討した。A型行動パターンスクリーニングテストのスコアの変化率と収縮期血圧, 拡張期血圧の変化率はともに有意の相関を示した (p<0.05)。1年間の比較において, A型行動パターンスクリーニングテストB2型よりA2型に変化した群では収縮期血圧, 拡張期血圧ともに有意に増加したが (p<0.001), B2型のままで変化のない群では収縮期血圧, 拡張期血圧ともに有意な変化はみられなかった。性格の変化と血圧とは関連が認められ, 健康管理に行動様式の面からの取り組みも必要と思われる。
著者
瀧原 博史 植野 卓也 城甲 啓治 城嶋 和孝 酒徳 治三郎 中山 純
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.924-927, 1989-11-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9

膀胱尿道異物は, 小郡第一総合病院泌尿器科において, 過去7年間に3例 (泌尿器科外来総受診患者の0.1%) 経験され, 2例が外来にて内視鏡下に経尿道的に摘出され, 1例は入院のうえ, 観血的に摘出された。患者はすべて男性で, 年令は24才, 42才, 56才であった。2例は尿道異物で, 1例は膀胱異物であった。異物の種類は, 電気コード, ボールペン, ビニールキャップであった。侵入経路は3例とも経尿道的で, 2例が自慰によるもので, 1例が就寝中に他人により挿入されたものであった。1例は尿道鏡下生検用鉗子にて摘出, 2例目は膀胱高位切開術にて摘出, 3例目は膀胱鏡下, 異物鉗子を用いて摘出した。本邦における本症の治療法の検討から, 明らかに以前の観血的治療が減り, 内視鏡を中心とした非観血的治療法が中心となっていくことが示唆された。
著者
二塚 信
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.938-949, 1998-03-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
16

近年農業の機械化は急速に進展し, 水田, 畑作ともに乗用化, 多機能化, 多条化がはかられている. 本研究班では主として水田9機種, 畑作13機種の乗用型農業機械の騒音及び手腕系振動, 座席振動についてISO等国際標準に基づく測定法によって測定した. その結果, 乗用機械の実稼動時の騒音は少なからず日本産業衛生学会の許容基準を上回り, 聴覚障害のリスクが高いことが判明した. 手腕系振動は乗用型農業機械では振動レベルは低いが, 携帯型摘茶機などは高値を示した. 他方, 座席振動は現行の操作時間ではISOの許容曝露限界を上回るケースは例外的であるが, 長期的な健康影響を考慮するとき, 疲労・能率減退限界2時間を下回る機種が少なくなく, 機械の工学的改善が必要だと思われた. 作業者の健康影響については, 乗用型農業機械の長期間操作者では高周波帯域の聴力低下が明らかで, 臨床的に騒音性難聴と診断され得る症例がみられた.今後農業経営規模の拡大, あるいは法人・会社組織化による農業機械のオペレータの専属化の進行は必至だと思われる. 本学会として, 農業機械の騒音及び振動の測定及び評価を組織的・体系的に行なう必要があり, 本研究班として健康障害予防の観点から今後の医学的, 衛生工学的対策の提言を試みた.