著者
坂本 考弘 木村 光 矢崎 善一
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.860-863, 2016-01-30 (Released:2016-03-16)
参考文献数
3

急性冠症候群は致死的疾患の代表的疾患であるが, 救急外来を受診した患者の1~8%は帰宅させられている。その原因の一つとして無痛性心筋梗塞が挙げられるが, 急性冠症候群の25%は胸痛以外が主訴で来院すると言われており, 悪心嘔吐のみの主訴は1%程度である。嘔気嘔吐のみの症状にて内科外来受診し, 前壁中隔心筋梗塞と診断され冠動脈バイパス術の適応となった1例を提示し, 本症例について診断学を中心に文献的考察を含めて検討した。高齢者はリスク要因が少ないからといって急性冠症候群を否定できず, 本症例のように他の随伴症状を認めない場合には鑑別に挙げる必要がある。鑑別に挙げることで致死的疾患である急性冠症候群の見逃しを防ぐことに繋がると考えられる。
著者
杉浦 利江 高橋 由佳 坂本 忍 稲森 美穂 山田 浩昭 米積 信宏 森下 博子 前田 美都里 川合 智之
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, 2018

安城更生病院(以下当院と略す)は,病院のスタッフ全員が,将来ビジョンを見据えた地域の病院となるためのプロジェクトに取り組んでいる。医事課を担当する病院職員は,「地域住民の健康と幸福」というスローガンの下,このプロジェクトに関わっている。達成に向けて3つの目標,すなわち1.未収金管理における回収の改善,2.委託金削減,3.委託取引件数の減少,を設定した。具体的な内容は,1.コンビニ決済の利用による未収金の回収,2.限度額適用認定証の周知および国民健康保険対象者の高額療養費貸付制度の推進による高額療養費の回収,3.無戸籍者への戸籍取得支援並びに健康保険の給付支援である。コンビニ決済の利用による未収金の回収額は約9万円/月であり,無戸籍者への戸籍取得支援並びに健康保険の給付支援により約8万円の回収が可能であった。さらに,限度額適用認定証利用の周知および高額療養費貸付制度の利用の推進は,年間約1,700万円の回収額を生みだした。今回の取り組みにより2016年の4月から8月の委託金の平均月額は890,188円で,委託件数は12件,2017年にはそれぞれ305,615円,10件へと削減することができた。本プロジェクトは,患者の自主的な医療費の支払いを促し,回収額の増加並びに委託金や委託取引件数の削減をもたらした。

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著者
武藤 輝一
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.777-783, 1996-03-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9

Truth telling to the cancer patients (TTCP) is a part of informed consent (IC). The name of IC was firstly used in a judgement of the Court of Appeal of California in 1957 and then in Helsinki Declare of the 18th Congress of World Medical Association. The core of IC is “self-determination” in every medical treatment including diagnosis and therapy. Self-determination should be respected to the utmost in TTCP.The rate of TTCP is more than 90% in USA and northern countries of Europe, but slightly higher than 20% in Japan. However, Dr. M. Sasago who is a surgeon of National Cancer Center Hospital in Tokyo has reported the high rater of TTCP (97.1%).In attitude of doctors, devices of manner in TTCP such as a stepwise truth telling are necessary in order to prevent or reduce shock of cancer patients following TTCP. In attitude of cancér patients, they are recommended to have usually their own views of life and thanatopsis or religions to be able to receive TTCP without perturbation.Patient's prepardness confronting to cancer and considerable support of doctor, nurse and family are necessary following TTCP.In conclusion, it is stressed that doctors have to endeavor to tell the truth to the cancer patients considering thinkings of patients and families as possible they can.
著者
野村 賢一 岩瀬 定利 斎竹 達郎 浅野 吉徳 山本 卯
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.76-87, 2006 (Released:2006-09-08)
参考文献数
6

医療現場において医療材料の購買プロセスはどうあればよいのか。全国厚生連病院を対象に,医療材料の購買業務の実態を把握するためアンケート調査を試みた。アンケート調査は,全国厚生連病院のうち100床以上の病院を対象に実施,調査依頼数97件,回答数53件であった。アンケート調査より,評価項目として十分できているものは,購入予算計画の実施79%,除去資産の確認89%,必要性の明確化96%,収益性・生産性についての試算98%,採用後の使用満足度調査76%,廉価品の提供91%,安全性に関しての配慮96%,共同購入のスケールメリットによる仕入値の低下61%であった。一方,不十分と考えられるものは,納品業者の事業概要・納入実績等による書類審査34%,医療材料に関する購買担当者の知識見識不足55%,医師異動後の不動在庫への対応41%,製品購入による効率性の時間的検討59%,廃棄物としての処理費用46%,共同購入による業務の省力化59%であった。全体として購入委員会を設けている病院は多方面から製品選定を図っていることが伺われた。しかし,事務局の医療材料に関する知識見識については十分とはいえなかった。従って,購入委員会参加者との合議が大切となる。この場合,資料として検討内容を視覚的・客観的に捉えられるチャート図を作成することにより,選定基準の明確化が図られ,優れた購買を可能にすることが考えられた。
著者
安田 ゆかり 大津 佳子 柴田 雅子 佐藤 真由美 平山 薫 羽持 律子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.25-29, 2006 (Released:2006-07-11)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

発病を機に看護師を退職した患者は,死の言動,家族の希望の優先や元医療者として良い患者を演じるという言動が多く,社会的苦痛が強いために自分の思いを表出できていないと考えていた。しかし患者から手渡された愛用のナースピンをきっかけに,患者の言動がスピリチュアルペインを表出していると考えるようになった。そこで,患者の言動の意味を村田の終末期患者のスピリチュアルペインの3つの構造「時間存在」「関係存在」「自律存在」を通し,考察することで,患者が抱えていたスピリチュアルペインの構造を知ることとした。患者が家族の思いにこたえる,医療者と良好な関係を保つという社会的苦痛と捉えていた言動は,孤独になる不安や恐怖の回避,つまり「関係存在」のスピリチュアルペインであり,また愛用のナースピンを手渡すという行動はこれからも看護師であり続けたいという「時間存在」のスピリチュアルペインが多く混在していることがわかった。
著者
登内 真
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.1177-1185, 1995-03-30

私は昭和23年に東京医学歯学専門学校を卒業し, インターン生活を1年送った後, 昭和24年4月, 母校第一外科の川島外科に入局し, 24年9か月大学生活を送った。川島教授は, 人格高潔, 真の教育者であると共に, 外科医として最高の技術をそなえておられた先生であった。<BR>この間, 私は医師としての基礎的教育と外科医としての手術手技の指導を受けた。また研究面では主として肝・胆・膵疾患の研究に携わった。<BR>其後, 昭和48年10月1日, 恩師川島健吉名誉教授の後任として土浦協同病院院長として赴任し, 満21年を経過した。<BR>赴任後, 常に念頭にあったのは, 川島先生の名声を傷つけないように心掛け, 先生の教えである患者に対する思いやりと, 後輩の育成及び健全なる病院経営であった。<BR>このように私の医師生活45年間を回顧すると大学時代, 土浦協同病院時代に区別することができる。<BR>[I 大学時代]<BR>大学時代, 専門として修業したのは, 腹部外科, 胸部外科であるが, 特に力を入れたのは, 肝・胆・膵疾患についてである。その主なものをあげると,(1) 胆道鏡の開発,(2) 肝・胆・膵の悪性疾患に対する治療,(3) 胆石症, 特に苺様胆嚢の成因に関する研究であった。<BR>[II 土浦協同病院時代]<BR>土浦協同病院時代には地域の農民, 並びに住民の最も必要とする医療をめざした。そのためには本格的医療完結型病院即ち, 専門化別のセンターの集合体を構築するよう努力した。<BR>(1) 農村健康管理センターの増改築,(2) 周産期センターの設立,(3) 救命救急センターの設立,(4) 茨城県地域がんセンターの設立,(5) サンテーヌ老人ケアハウスとの協力,(6) エイズ問題である。<BR>医師生活45年を回顧して, 大学時代指導していただいた恩師, 一緒に研究に励んだ後輩の顔が目に浮かびます。<BR>土浦へ赴任してからは, 病院経営の全責任を託してくれた, 茨城県厚生連の会長始め, 役員の方々, また, 私と一緒に病院発展に全力を尽してくれた全医療人に心から感謝します。<BR>日本農村医学会に入会してからはあらゆる問題に胸襟を開いて相談してきた友人方がおります。これらの友人と将来共に生きる喜びをわかち合いたいと思っています。<BR>最後に申したいことは, 今の若い人達は, それぞれ, 斬新な創造力があります。これらの人々のエネルギッシュな先見性, 創造的意見を尊重し, 活性化した学会・医学をめざしたいと思っている。
著者
国枝 武文 佐藤 英文 三島 信彦
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.99-103, 1996-07-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
7

多包虫症 (AHD: alveolar hydatid disease) は北海道では1937年, 礼文島出身者における報告に始まり, 以後同島中心に流行及び鎮静化, 1960年代中期より道東での発症及び症例数の増加, 更に以後道南及びその他地域での発症が相次ぎ, また報告症例数も1980年代中期より増加傾向を認め, 深刻な疫学的問題となっている。一方本州においては東北地方を除いて発症報告は極めて稀で, それ故その診断には臨床, 病理面とも注意を要する。現在迄愛知県下での発症報告は見当たらないが, 今回X線像上胸水で発症し, 両肺野の多発生結節陰影へと進展した肺多包虫症の一例を経験した。潜伏期は45年と極めて長く, 当地域での稀有さ故診断に苦慮した。
著者
高橋 幸治
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.76-78, 2021

患者は85歳,男性。クルミを摂取した直後から頸部痛が出現した。CT検査では頸部食道に食物と考えられる低吸収物を認め,上部消化管内視鏡検査では,頸部食道に全く咀嚼されていないクルミを認めた。内視鏡でクルミを胃内に押し込み,回収ネットを用いて体外に摘出した。食道内に食道狭窄や腫瘍性病変,潰瘍成形などは認めず,処置後は症状が改善した。本症例はクルミによるステーキハウス症候群であるが,病歴より本疾患の可能性が高いと考えた場合は,速やかに内視鏡検査を行なうべきである。
著者
仲山 良二 村上 輝子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.91-100, 1976

1.深川市在住婦人20~59才の全10, 449名から年令階層別に無作為抽出した計410名について健康水準を検索し, 併せて農夫症との関連を検討した。<BR>2. 26項目について年令階層別, 職業別に平均値 (一部は標準偏差も) 又は実数か率かの何れかを報告した。<BR>3. 特に肥満度は全国平均よりも高いことを指摘した。<BR>4. 藤井の農夫症10症候を検討し, 1) 農夫症は, 現今では農業者に特有な職業病ではなく, 広く浅く全住民に分布普及していることを認めた。2) いきぎれ, どうきを最重症, 肩こり, ひるでもねむいを最軽症, 他を中等症とした。3) 10症候の類似性を検討して, 3群別したが, 群間の重合があって, 三円が交り合う型の構築図を想定し, 就中, 肩こりの解消を最優先すべきことを強調した。4) 農夫症症候は所謂循環器系成人病と重合又は並進する部分が多いことを認めた。少なくとも公衆衛生対策的には, 両者は区別の要を認めず, 綜合的に循環器対策として, 少なくとも20才代から検診, 健康指導の必要を強調した。<BR>5. 対策として, 次の公衆衛生処方を提唱した。1) 腹八分目運動, 2) テレビ体操毎日2回以上。
著者
久我 貴之 重田 匡利 矢野 由香 坂本 龍之介
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.114-119, 2021 (Released:2021-09-16)
参考文献数
11

消化器癌化学療法患者は有害事象や癌進行で食欲不振の症状がみられ,栄養低下や体重減少をきたし易い。イノラス®配合経腸用液(本剤)は,少量で効率的に栄養素やエネルギーを補給する高濃度半消化態経腸栄養剤である。2019年7月から2020年1月に本剤を投与された21例を対象に投与前後のアルブミン値(Alb),コリンエステラーゼ値(Ch-E),リンパ球数(Lymph),ヘモグロビン値(HGB),体重(BW)により栄養保持および体重維持効果を知ることを目的として,後ろ向き研究を行なった。また投与中止理由等も検討した。男性15例,女性6例で年齢は57~87歳で,癌種は胃8例,大腸7例,胆管4例,食道3例であった。病期分類はⅡ:1例,Ⅲ:6例,Ⅳ:8例,再発:7例であり,2020年2月時点で生存16例,死亡5例であった。投与期間は6~210日で,中止19例の理由は甘すぎ8例,PD6例,食欲改善4例,手術1例であった。全症例で服用前後のAlb,Ch-E,Lymph,HGBおよびBWの変化量に差はなかった。生存群が死亡群と比較してCh-E変化量が有意に良好であった(p=0.0258)。服用期間30日以上群が未満群よりBW変化量が良好な傾向を示した(p=0.0696)。Stage 3以下群がStage 4又は再発群よりAlb変化量が良好な傾向を示した(p=0.0932)。本剤は消化器癌化学療法患者において栄養及び体重維持の補助に役立つ可能性が考えられた。
著者
安藤 満
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.55-63, 1990

現在, 南極大陸上空を中心に成層圏オゾンの枯渇 (オゾンホール) の拡大が観察されており, 地球全域でのオゾン減少による紫外線B照射の増大が危倶されている。紫外線B照射によって, 雪盲, 白内障, 皮膚癌のような種々の障害が引き起こされる一方, ある種の感染症に対する免疫能が低下する。非黒色腫の基底細胞癌と有棘細胞癌は, 明らかに紫外線B照射量との関係が強い。悪性黒色腫も少なくとも一部は, 紫外線B照射と関係がある。アメリカ合衆国における調査では, 高緯度から低緯度になるにしたがい, 紫外線B照射が強くなり, 黒色腫を含む皮膚癌の発生率が高くなる。<BR>数量的予測は困難であるが, アメリカ合衆国の疫学データーから, UNEPとWHOは1%の成層圏オゾンの減少により白内障が0.3%から0.6%, 基底細胞癌が2.7%, 有棘細胞癌が4.6%, 悪性の黒色腫が0.6%増加すると予想している。このため, 紫外線B暴露量との関連で皮膚癌の発生率の検討を世界各国で行なう必要がある。さらに, 紫外線B照射の増大が免疫を抑制し, 感染症の発症に関与する可能性について充分な検討が必要である。
著者
柴原 弘明 今井 絵理 植松 夏子 木下 早苗 眞野 香 山本 絢子 青山 昌広 西村 大作
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.104-108, 2011

症例は80歳台女性。肺癌の骨転移による疼痛に対し緩和ケアチームに依頼があった。オピオイド,ロキソプロフェンナトリウムに加えて,鎮痛補助薬としてガバペンチン,イフェンプロジル酒石酸塩投与の追加,さらにオピオイドの増量・変更を行なったが,疼痛の著明な改善はなかった。そこで,ガバペンチンをプレガバリンへスイッチしたところ,疼痛の著明な改善がみられた。プレガバリン内服以前は,疼痛が強いときには臥床していることが多かったが,プレガバリン内服以降は疼痛の改善が得られたため,元気に車いすを押して歩行する姿がみられ,日常生活の活動は改善し,笑顔が多くみられるようになった。ガバペンチンからプレガバリンへのスイッチは,癌性疼痛に対する鎮痛補助薬を考慮するにあたり有効な選択肢のひとつである。
著者
中川 裕之
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, 2020

この取り組みは,「十勝"夢"プロジェクト真冬のマンゴーづくり大作戦」と題し,平成22年より地域おこしの為に経済人11名で始まった事業です。何もない北海道十勝の冬に亜熱帯果実を産地化できたらとの思いで始まり,当初から栽培にあたっては地産地消型の再生可能エネルギーの有効活用を重視しています。特に,十勝地域は太平洋型の気候なので冬も好天が続き,広大な雪原に真っ青な空に輝く太陽の光が燦々と降り注ぐという冬だからこその明るく綺麗な景色が楽しめます。一般的に北国の冬は,演歌の「津軽海峡冬景色」や,映画の「北の零年」等に代表されるように曇天で雪が毎日降っている暗く辛いイメージがあるが,十勝の冬の好天を正確に伝える事で,真冬の十勝のイメージを180度変えさせ,今は閑散期となっている冬期間の観光客増につなげていくことを考えました。同時に,農業において収穫及び収入の無い時期に新たな収入をもたらす事業を展開することによって,冬期間の地域の新たな雇用の創出につなげていくことを考えています。さらに,マンゴーの収穫時期を真冬にシフトさせながらも,化石エネルギーに頼らず,自然エネルギーで栽培する仕組みを確立することで農業生産の新たな可能性を見出しています。
著者
木下 徹 藤井 健志
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.8-17, 2019 (Released:2019-07-20)
参考文献数
23
被引用文献数
2 3

高齢化社会の大きな問題のひとつに認知症がある。近年のコホート研究において,血中コエンザイムQ10(CoQ10)濃度が高い者ほど認知症発症リスクが低いとの結果が報告されている。本研究では地域住民を対象とし,ユビキノール(還元型CoQ10)の摂取による血清ユビキノール濃度および認知機能の変化を評価した。愛媛県上島町在住で,1日100~150mgのユビキノールを6か月~2年間継続摂取した61名(男性26名,女性35名,33~87歳)について,摂取前後での血清ユビキノール濃度及び1分間のDigit Symbol Substitution Test(DSST)スコアを評価した。さらに,3か月間の非摂取期間後の血清中ユビキノール濃度とDSSTスコアについても分析した。ベースラインにおいて,年齢とDSSTスコアは強い負の相関を示したが,血清ユビキノール濃度とDSSTの間には有意な相関は認められなかった。ユビキノールの長期摂取により,血清ユビキノール濃度は有意に上昇し,DSSTスコアも有意に上昇した。また,3か月間の非摂取期間後,血清ユビキノール濃度はベースライン値まで有意に低下したが,DSSTスコアについては有意な変化は見られず高い値が維持された。本研究は単群試験であり結果の解釈には留意が必要であるが,ユビキノールの長期摂取によって認知機能が改善する可能性が示された。
著者
橋本 智史 稲垣 秀司 可児 裕介 塚本 英人
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.643, 2020 (Released:2020-03-06)
参考文献数
1

糖尿病性腎症に起因する血液透析患者の増加と,維持透析患者の長期化に伴いVA(Vasucular Access)にかかわる合併症が増加している。なかでも中枢側静脈の狭窄または閉塞などの病変(中心静脈病変)に伴う静脈高血圧症は深刻な合併症の1つである。シャント肢の中心静脈病変により高度腫脹や透析困難な状況になると,かつて当院ではシャントを結紮し,他肢に新たなシャントを造設せざるを得なかった。しかし,この方法ではシャント作成可能な部位が少なくなってしまう。これに対して,PTA(percutaneous transliminal angioplasty)では,使用中のシャントが温存可能となり,静脈高血圧症におけるシャント肢の腫脹が改善可能となる。今回,中心静脈病変(内膜増殖による器質的狭窄と周囲臓器・病変からの圧迫による狭窄)の2症例を経験した。症例とともに当院での造影CTの検査方法を紹介する。
著者
久野 邦義
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.548-552, 2007

&nbsp;&nbsp;Anjo Kosei Hospital was instituted in March 1935. In those days many people in rural areas of our country were suffering from poverty and illness. Of the numerous agricultural cooperative hospitals and clinics that were established across the nation in the 1930s with the spirit of cooperation, many were inaugurated with a heroic resolve. However, the Kosei Hospital in Anjo founded by the Maruheki Association was fraught with optimism and great promise. The reason for this was that the county of Hekikai-gun was, at the time, called the &ldquo;Denmark of Japan&rdquo; and boasted the largest business expenses among all the counties in the nation. In order to return the surplus to group members, a plan to build a hospital was drafted with the advice of Nobukichi Yamazaki, the first principal of Anjo Norin (Agricultural and Forestry) Senior High School. He used to say, &ldquo;The greatest threats to a farmer's livelihood are accidents and sicknesses. There can be no happiness without good health. We should build an agricultural cooperative hospital to provide its members with modern health care.&rdquo;<br>&nbsp;&nbsp;Initially, the hospital had 34 beds, eight medical departments, and 40 staff members, including seven physicians. Control over the hospital was transferred to Aichi Koseiren (the Aichi Prefectural Federation of Agricultural Cooperatives for Health and Welfare) in 1948, after having tided over a shortage of labor prior to World War II and during the chaotic postwar period. The hospital began togrow rapidly, measuring up to the expectations and trust placed by local residents. Through enrichment of functions and expansion of the wards, the institution went on to become what could be called a citizens' hospital of Anjo and in fact, the largest hospital in the Nishi-Mikawa area. With the passage of time, the hospital got cramped for space and the buildings decrepit, adversely affecting not only the care environment but also disaster prevention measures. To maintain medical standards, hospital relocation was a must. In May 2002, the hospital moved to the present site, thanks in part to the support of the City of Anjo.<br>&nbsp;&nbsp;After relocation, the hospital decided to give priority to treatment of acute diseases. Now, the number of hospital employees has been increased to 1,205, including 128 physicians and 676 nurses. In addition, there are 40 interns. Designated as an emergency medical care center, the hospital is the nucleus medical institution in the southern part of the Nishi-Mikawa area.<br>&nbsp;&nbsp;However, due to the excessive concentration of patients in this hospital, it has come to pass that all the 692 beds are almost always occupied. This has inevitably made it difficult for the hospital to accept emergency patients. Measures to combat the situation, such as bed control, shortening the length of hospital stay and referring patients to other facilities have reached their limit. Therefore, further effort must be put into the division of hospital functions in the community. The required number of personnel such as physicians and nurses currently reaches the full quota, though only barely. Nonetheless, it would become more difficult even to maintain the present level.<br>&nbsp;&nbsp;The 71-year history of Anjo Kosei Hospital reminds us of our predecessors' will and wishes to work hand in hand with the community to promote the health andwell-being of the people. We would like to continue to be a hospital that appeals not only to local residents but also to physicians and nurses by upholding the following basic principles:<br>1. To contribute to the health and happiness of local residents through health care.<br>2. To place patient care at the center of all the activities of the hospital.<br>3. To create a work environment which the staff can be proud of and feel happy with.