著者
弘田 洋二
出版者
大阪市立大学
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.641-665, 1996

はじめに : 文部省の提唱によって、スクールカウンセラーを学校に配置することについての制度化が推進されつつある。勤務形態および心理臨床的な専門家をどのように選定するかという重要な基準は曖昧なままに、各都道府県の公立学校はスクールカウンセラー制度の導入に向けて動き始めている。……
著者
田中 孝信
出版者
大阪市立大学文学部
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.p623-641, 1991

1840年から翌年にかけて週間読物Master Humphrey's Clock(1840-41)に掲載されたThe Old Curiosity Shop[以下OCSと略す]は, 従来の喜劇的なメロドラマに新しくペイソスを加え, "Little"を冠せられたNellという純情可憐な乙女の哀れな物語を綴ろうとしたDickensの野心作である。……
著者
天ヶ瀬 正博
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.91-104, 1999-12

1 整列性効果 : われわれはしばしば移動中に地図を見て目的地への方向の判断や経路の選択をする。その場合, 地図上に記された地形や建造物の位置関係が実環境におけるそれと平行するように地図の向きを変えると, 地図が読みやすくなる。例えば, 路上で地図を見る場合, 現実の道路と地図上に記されているその道路とを平行にし, かつ, 前方に見える地理的目印(landmark, 場所の目印となる建物や地形など)が地図上でも前方になるように地図を向ける。……

1 0 0 0 IR 親忠家と俊成

著者
谷山 茂
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.551-573, 1961

一 俊成の岳父藤原親忠(定家の外祖父)については、宇槐記抄・仁平三年(一一五三)五月二十一日に「後聞、今日入道若決守親忠卒(五十九)美福門院乳母伯耆之夫也。天下無雙幸人也。」とあるので、そこから逆算すると、嘉保二年(一〇五九)に生まれたことになる。このように、親忠の生歿年はひとまず明らかに知られるのだが、その系譜については諸説があって不審な点が多い。……
著者
高坂 史朗
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.1-17, 2004-03

1 狩野直喜の『中国哲学史』には次のようなエピソードが紹介されている。「兪樾(蔭甫・曲園)は中国に於ける近時の大儒で, 経学・文章を以て名を海の内外に馳せ, 著述も多く, 我国の人で就いて教を請ひし人もあつた位であるが, 彼のまだ存命中, 我国に於て余の一友人が其の著述を読み, 哲学雑誌に「兪曲園の哲学」なる題目で其の学説を紹介したことがあつた。然るに其の後, 春在堂全書といふ彼の全集の舶載され来つたのを見ると, 其の中に, 日本の学者が己の学説を紹介したるを喜び作つた詩がある。其の一節に「挙世人人談哲学。傀我迂疏未研権。誰知我即哲学家。東人有言我始覚。」と。……
著者
水鳥 喜喬
出版者
大阪市立大学文学部
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.27, no.10, pp.p651-667, 1975-12

I 14世紀の末頃, North-west Midlandの方言で書き残された技巧的な頭韻詩Sir Gawain and the Green Knight(以下Sir Gawainと略す)は, 主人公Sir Gawainをとりまいて次々に展開する冒険的な事件の連続である物語の面白さと, 生き生きとして無駄のない叙述・描写の巧みさのために, Arthur王伝説群を形成する中英語期最高のロマンスであり, 今日の読者をも最後まで退屈させない物語である。……
著者
牧野 宇一郎
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.13, no.10, pp.975-994, 1962

まえがき : 私は前回(第一二巻、第一一号、昭和三六年一二月)では、第一節において生活を芸術的にするための芸術教育の理論の必要を説き、第二節においてまず芸術をアプリシエイションの過程として規定した。第三節では「芸術的能力と教育」という見出しの下に、まず第一として学習が完結への性質的思考であるべきことを指摘したのであった。……
著者
仁木 宏
出版者
大阪市立大学
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1019-1036, 1996

近世、肥後熊本細川藩の筆頭家老であった松井家は、一方で同国八代(熊本県八代市)城主として領内の経営にあたるなど、独自の地位と格式を有していた。同家はまた、江戸時代の文書や『松井家譜』などの編纂史科の他、中世古文書の写など、多数の貴重な史科を伝来している。……
著者
横山 徳爾
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.5-54, 2001-12

ヨーク朝最後の国王であるリチャード三世(Richard III, 1452-85, 在1483-85)は, 在位わずか2年2か月弱ののちに, 1485年8月22日にレスターシャーのボズワース・フィールドにおいて, リッチモンド伯ヘンリー・チューダー(Henry Tudor, Earl of Richmond)に敗れ, 32歳にして落命した。リチャードの死によってヨーク朝は滅亡し, 28歳のヘンリー・チューダーがヘンリー七世(Henry VII, 1457-1509, 在1485-1509)として即位し, チューダー朝が成立した。……
著者
金児 曉嗣
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.35, no.13, pp.735-801, 1983

前稿(金8, 1982)では, 浄土真宗本願寺派門信徒を対象とした宗教性に関する調査資料に因子分析を施した結果が報告された。それぞれの因子は, 門徒的真宗信仰の因子, 事なかれ的伝統主義の因子, 民族宗教の因子, 反制度的宗教の因子, 道徳教団の因子と解釈された。……
著者
KOGA Tetsuo
出版者
大阪市立大学大学院文学研究科
雑誌
人文研究 : 大阪市立大学大学院文学研究科紀要 = Studies in the humanities : Bulletin of the Graduate School of Literature and Human Sciences, Osaka City University (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.5-20, 2018

Langston Hughes' last book of poetry is here reasserted as the author's major and critical attempt at summarizing his whole poetic output, rather than being a mere deathbed volume to combat the changing political situation of the times. By carefully documenting and discussing the poet's editorial work of recharging the older poems under the new and changed titles, in addition to the genuinely new poems, it may finally be shown that the principal intent of the poet's endeavors should lie in resonating his "original" stance in the matters of freedom and democracy, matters which are the two most "popular" themes for black people in America. After a brief introduction of the situation where the poet decides to publish his newest volume of poetry, the question of "originality" is raised as a topic which, in an Emersonian context, never collides with the notion of popularity, but merely accentuates the poet's prophetic vision of racial emancipation and an uplift of the democratic ideal in the mode of a popular address to the masses. The sections titled "The New Beat of The Panther and the Lash," "'American Heartbreak' through 'Dinner Guest; Me,'" and "Daybreak in Alabama" all tackle to analyze the major poems, and also to ascertain the poet's motive for summarizing his lifelong struggle for racial equality.
著者
前田 充洋
出版者
大阪市立大学大学院文学研究科
雑誌
人文研究 : 大阪市立大学大学院文学研究科紀要 = Studies in the humanities : Bulletin of the Graduate School of Literature and Human Sciences, Osaka City University (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.69-85, 2020

本論文の目的は、ドイツ鉄鋼業企業クルップ社の19-20世紀転換期における軍事技術代理であった、A. シンツィンガーの日本での活動を、駐日公使の報告書から明らかにすることにある。クルップ社の日本における軍需品販売やA. シンツィンガーの活動については、1920年代のものはこれまでの研究のなかで言及されてきたものの、19-20世紀転換期、とくに1895年から1902年におけるその活動については、十分に注意が向けられてこなかった。本稿では、フランス企業やイギリス企業といったクルップ社の競争相手が優勢であった、当時の日本の軍需品市場に割り込み、確保したそのシェアを守るために、A. シンツィンガーが日本でいかなる活動を展開したのかを明らかにする。そしてそれによって、19-20世紀転換期におけるクルップ社の対外事業における新たな側面を明らかにすることの一助としたい。
著者
図越 良平
出版者
大阪市立大学文学部
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.p523-539, 1990

I『湯治客。バーデンにおける湯治の手記』(Kurgast. Aufzeichnungen von einer Badener Kur)は1923年10月にバーデンとモンタニョーラで書かれ, 翌1924年9月, 最初は『湯治場心理学。バーデン湯治客の皮肉』(Psychologia Balnearia oder Glossen eines Badener Kurgastes)の標題のもとに私家版として300部出版され, その後わずかに手直しされて, 1925年春にS.フィッシャー書店より現在の書名で刊行された。……
著者
丹下 和彦
出版者
大阪市立大学
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1115-1140, 2000

VI. 第2スタシモン(863~910行) : 四つのスタンザからなる。まずストロペー1では人知によらぬオリュンポスを父とする天上の掟の存在が告げられ, その掟に従って言動いずれも清らかに過ごす定めが我とともにあるようにと歌われる。……
著者
王 燕萍
出版者
大阪市立大学大学院文学研究科
雑誌
人文研究 : 大阪市立大学大学院文学研究科紀要 = Studies in the humanities : Bulletin of the Graduate School of Literature and Human Sciences, Osaka City University (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.53-68, 2020

宋代の民間信仰研究では、「民間信仰」、「民間宗教」、「祠廟信仰」、「民衆祠神信仰」などの用語が混在しているが、「民衆祠神信仰」の定義に即した場合、宋代人の認識を反映する「祠廟信仰」を使うべきであろう。一般の「祠廟信仰」は発生地に限られて信仰されるが、宋代になって、発生地を越えて他の地域、さらに全国にまで信仰を集める「多地域的祠廟信仰」が次第に現れてゆく。これまで宋代における祠廟信仰に関する研究は、(1)個別の祠廟信仰、とりわけ明清時期に「多地域的祠廟信仰」に演変してゆく祠廟信仰の源流を遡ること、(2)祠廟信仰と国家の関係を探るため、祠廟に対する勅賜制度、正祠・淫祠の認定、祠廟信仰が地域社会に与える影響等の問題を考察すること、(3)祭祀活動の実態、即ち祭祀儀式、組織などの問題を解明すること、という三つの方向で行われている。多地域的祠廟信仰に関しての研究は伝播の媒介、伝播の方式、伝播の担い手、祠廟間の関係などの問題をめぐって進んでいる。今後の課題としては、勅牒、廟記、祝文、地方志の史料としての性格と可能性を検討しながら、「多地域的祠廟信仰」の代表例である、清水祖師、保生大帝、媽祖信仰をケーススタディとして取り上げ、福建地域社会における「多地域的祠廟信仰」の形成と発展について総合的な研究を行う必要性を示している。Through the previous research on the folk belief of the Song Dynasty, a lot of terms such as "local belief", "popular regilion", "diffuse dreligion", "temple worship", "people's temple worship", have been mixedly used. After analyzing the definition of "people's temple worship" and the recognition system of the Song People, it turns out to be more proper to apply the term "temple worship". Generally, a "temple worship" is restricted among the original area. Nevertheless, during the Song Dynasty more and more temple worships have achieved the expansion crossing over the original area and became multiregional temple worships. The research on this subject is conducted on three respects, including (1)individual case studies, mostly on the multiregional temple worships of Ming and Qing Dynasty for tracing back the originality to Song Dynasty; (2)the relation between the temple worship and the imperial, through the research on the title grant system of temple worship, the distinction between Zhengci (正祠) and Yinci (淫祠) and the role in local society playing by the temple worships; (3)the real conditions of ritual activities, like the ritual ceremony and organization. In addition, the research about the multiregional temple worship is advanced in considering the medium, the method, the infector of the propagation and the relationship between the original temple and the branch temples. As future issue, it is necessary to firstly consider the property and possiblility of the historical materials, such as Chidie (勅牒), Miaoji (廟記), Zhuwen (祝文), local topography (地方志), and then to study on cases of the multiregional temple worship, taking Qingshuizushi (清水祖師), Baoshengdadi (保生大帝), Mazu (媽祖) for instance, finally to make an integrated analysis of the multiregional temple worship among Fujian Area.
著者
岩瀬 悉有
出版者
大阪市立大学文学部
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.p512-523, 1979

私はワシントンというこの網の真中に静かに身をひそめて, 蜘蛛を演じることにすっかり慣れましたし, 大勢の蠅やその他の昆虫が網の目にかかって食い殺されるのを見てきましたので, 今はいささか, 醜悪で太った, 紫がかった猛毒の, 毛深いタランチュラのような気分です。……

1 0 0 0 IR

著者
森口 美都男
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.59-72, 1965

一 第一次大戦の始まる直前、ディルタイは相並び立つ多種多様の世界観の相対性の事実を強調すると共に、その様な「無政府状態」から脱出しうる唯一の途として、彼のいわゆる「歴史意識」の徹底とそこに基礎をおく類型化的把握とを提案した。……
著者
多和田 裕司
出版者
大阪市立大学大学院文学研究科
雑誌
人文研究 : 大阪市立大学大学院文学研究科紀要 = Studies in the humanities : Bulletin of the Graduate School of Literature and Human Sciences, Osaka City University (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.41-58, 2018

本稿は、臓器移植にかんするイスラームの倫理を検討することによって、現代社会においてイスラームがどのように実践されているかを示すことを目的としている。臓器移植は、コーランとハディース(ムハンマドの言行録)に基づくイスラームの伝統的な死生観にたいして倫理的な課題を突きつけてきた。しかし医療技術の進歩とそれによって得られる治療成果の高まりにともない、いまや世界中のイスラーム法学者の大半は、人体から人体への臓器移植をイスラームの教義からみて許されるものとしてとらえている。本稿では、イスラーム世界で臓器移植を肯定的にとらえる代表的なファトワ(イスラームにおける法的勧告)を紹介した後、臓器移植にかんするマレーシアの医療ガイドラインと同国におけるイスラームの権威が発したファトワを比較検討する。結論として、イスラームは、現代の生命倫理と共通する価値を持つ可能性を有していることが示される。イスラームは、イスラーム教義と非イスラーム的な価値が出会う境界上で、つねに現代社会に、より適合的な宗教へと変容を続けているのである。
著者
岩瀬 悉有
出版者
大阪市立大学文学部
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.p315-331, 1974-10