著者
橋本 元二郎
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.120-134, 1958
著者
矢野 裕俊
出版者
大阪市立大学
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.637-653, 1995
著者
土屋 礼子
出版者
大阪市立大学大学院文学研究科
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
no.56, pp.25-43, 2005-03

第二次世界大戦において連合国軍は日本軍に対し、心理戦と呼ばれる宣伝ビラを主力としたプロパガンダを行った。本稿では国立公文書館蔵の第十軍諜報部心理戦班の報告書に基づき、その全体的経緯と当事者が行った評価方法を明らかにした。沖縄戦で用いられた宣伝ビラには三系統あり、一つはハワイ州オアフ島の米海軍太平洋艦隊司令部で作成されたナンバーシリーズ11種、二つ目は沖縄現地で作成されたXシリーズ17種で、これらの内容は日本軍将兵向けと沖細住民向けふたつに大別された。三つ目はやはり沖縄で作成された「琉球週報」と題する新聞形態のXNシリーズ6種である。1945年3月末から7月初めまでに総計八百万枚散布されたこれら宣伝ビラの効果については、日本側から投降した捕域の数、あるいは死者の数に対する捕虜数の比といった数値が評価基準として挙げられた他に、捕虜に対するアンケート調査や尋問による調査も行われた。その結果、日本軍や沖細住民に最も読まれた新聞形態の宣伝ビラが高く評価された。また、ビラのメッセージが心理的に与えた影響は明確ではなかったが、捕虜の数はそれまでの太平洋戦からは予想できなかったほど多く、沖縄における心理戦は成功であったと評価され、今後の戦闘においても心理戦が有効で必要であるとの結論が導き出された。一方、日本軍のプロパガンダは比較にならないほど貧弱なものであった。その後の日本本土攻撃および沖縄占領と日本の戦後統治を考える上でも、また朝鮮戦争などのそれ以降のアジアにおける戦争での心理戦を考える上でも、これらの心理戦の分析は重要な意味を持っている。
著者
奥村 三郎
出版者
大阪市立大学文学部
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.p185-202, 1986

(1) オスカー・ワイルドの『理想の夫』(An Ideal Husband, 1895)は, それに先立つ『ウインダミア夫人の扇』(Lady Windermere's Fan, 1892)と『くだらぬ女』(A Woman of No Importance, 1893)と同様, 問題劇(problem play)としての社交界劇(society drama)であり, いわゆる「過去」をもつ人物を主要人物とする点で, 同工異曲といえようが, 問題の人物が女ではなく男―外務次官のロバート・チルターン準男爵(Sir Robert Chiltern)―であるのが前二作と異なっている。……
著者
村上 陽介
出版者
大阪市立大学文学部
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.p178-189, 1978
著者
田中 孝信
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
no.60, pp.110-124, 2009-03

イギリスの帝国主義的野心によって始まった第2次ボーア戦争(1899-1902)は、イギリス側の当初の予想に反して長期化の様相を呈する。政府は戦争を遂行するために世論を味方につけなければならなかった。それに大きく貢献したものの一つが「戦争もの」と呼ばれる大衆文学である。実際の軍隊が提供できない英雄と勝利の物語を大衆に期待されたそれらには、理想の兵士像や国家像が描き込まれる。本論では特に、これまであまり顧みられなかったドキュメンタリー・タッチの作品に焦点を当て、その主人公に据えられた「トミー・アトキンズ」像を分析した。結果として明らかになったのは、その像が孕む異質性だ。勇猛果敢で母国への忠誠心に溢れる陸軍兵卒は、将校への不満を通して社会の階級的緊張を示唆し、肉体的に退化し道徳的に堕落した現実のフーリガンと結びつく。軍隊はフーリガンを更生する役割を担う一方で、フェアプレーの精神というカモフラージュのもと、将校も兵卒もともにフーリガンと同じく残忍性を示す。既成事実化していたイギリス人とボーア人の優劣、軍隊内の秩序、文明と野蛮といったものの境界の流動化という問題が生じる。ボーア戦争は、それらの問題が今にも噴出せんとするイギリス史上初めての戦争だったのである。しかし、従来の言説に生じた亀裂は「健全な臣民」育成の大合唱によって覆い隠され、社会は「異質な要素」を孕んだまま、悲惨な第一次大戦へと突き進んで行くのである。
著者
長橋 芙美子
出版者
大阪市立大学文学部
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.p103-116, 1986

1 第一次大戦の体験が1920年代になると一般に忘れさせられる傾向が強まったこと, その「現実の抑圧」(die Verdrangung der Wirklichkeit)を問題にして, A.ツヴァイクは『グリーシャ軍曹をめぐる争い』(Der Streit um den Sergeanten Grischa)執筆当時の状況を, のちに次のように説明している。……
著者
長橋 芙美子
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.759-775, 1984

1 アルノルト・ツヴァイク(Arnold Zweig 1887-1968)は『グリーシャ軍曹をめぐる争い』(Der Streit um den Sergeanten Grischa 1928)以来7編の長編小説からなる第1次大戦に関する連作(最後の1編は未完)を書き, 戦争をひきおこす力との対決を生涯の課題とした作家である。……
著者
高島 葉子
出版者
大阪市立大学
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.123-137, 2001

はじめに : 昔話や伝説に老婆の姿で登場する「山姥」は, 人を取って喰う恐ろしい妖怪であるが, 同時に, 作物の豊作や狩猟の獲物さらには食物や富など様々な恵みをもたらす豊饒の女神, あるいは福の女神でもある。このような豊饒の女神としての山姥が, 縄文時代に崇められていた古い母神の性質を受け継いでいることは, 吉田敦彦によって指摘されている。筆者も, 山姥の起源が遙か縄文時代の狩猟神にまで遡る可能性があることを別の機会に指摘した。本論では, 吉田があまり論じていない狩猟神としての山姥を対象とし, 狩猟民文化の伝統の強く残るシベリアや北米の北方諸民族の女神と比較することによってその原形を考察する。……
著者
多和田 裕司
出版者
大阪市立大学大学院文学研究科
雑誌
人文研究 : 大阪市立大学大学院文学研究科紀要 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.25-41, 2017

本稿は、マレー系ムスリムの行動についての分析をもとに、現代社会においてイスラームがどのように実践されているかを示すことを目的としている。イスラームは、おこなうべきこと、おこなうことが許されていること、禁じられていることが明確に区分されている宗教である。しかし現代社会においては、この区分についてムスリムの間で様々に意見が分かれる事柄が数多く存在する。これは、とくにイスラーム教義と非イスラーム的価値との境界線上にある事柄に顕著である。そのひとつが、ムスリムがクリスマスの祝祭に参加できるか否かをめぐっての論争である。ムスリムのなかには「メーリー・クリスマス」という祝賀を述べることすら禁じる者がいる一方で、参加することを問題視しない者も多い。本稿では、マレーシアにおいて近年交わされたムスリムによるクリスマス行事への参加をめぐる論争を取り上げ、イスラームの権威者および一般のムスリムの意見について検討する。結論として、マレー系ムスリムの行動はイスラーム教義だけではなく、イスラームの外側に派生する多民族性や消費社会における経済的論理といった要因によっても、形作られていることを指摘する。
著者
三上 雅子
出版者
大阪市立大学
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.109-121, 2002

1963年の東宝による『マイ・フェア・レディ』(My Fair Lady)初演の興奮を, 小藤田千栄子は以下のように記す。「マイ・フェア・レディ」の日本初演は1963年9月1日から29日まで, 東宝劇場において行われた。初日の開演は午後3時―。当時のミュージカル・ファンは, どんなにかこの日を, そしてこの時を待ちこがれていたことか。この日のことを思うと, 私は今でも, いささか上気してくる。それは新しい歴史の始まりであり, ミュージカルというジャンルに向けての興奮の船出であった。(中略)客席にみなぎる静かな興奮。もうすぐ「マイ・フェア・レディ」が, "本格的な"ブロードウェイ・ミュージカルの「マイ・フェア・レディ」が始まるのだという興奮。私は三階席だったけれど, 見まわすと東宝劇場は観客の期待をのみこんで, もう限界までふくれあがっているようだった。……
著者
大黒 俊二
出版者
大阪市立大学
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.55-86, 2002

一 : 説教史料 : 「声の影」 : 西欧中世史研究において、説教記録のもつ豊かな可能性が広く知られるようになったのはここ二〇年来のことである。説教記録は近年ようやく、単なる記録を脱して歴史家にとっての史料としての地位を得たといってよい。それ以前、説教記録は教会史家や思想史家、ときに文学史家が興味を示す程度であり、研究者も修道士など教会関係者がおもであった。それが今日では、説教それ自体が中世最大のマス・コミュニケーション手段として専門研究の対象となるとともに、経済史、心性史、女性史、民衆文化史、美術史などの研究者が素材を求めて説教史科に赴くようになっている。……
著者
高島 葉子
出版者
大阪市立大学
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.835-850, 1996

はじめに : ヨーロッパにキリスト教が広まるとともに, 土着の異教の神々の多くは悪魔に転落させられ, 排除されていった。「大いなるパン神は死せり」という言葉どおり, パン神も悪魔として追放された。……