著者
根元 裕樹 泉 岳樹 中山 大地 松山 洋
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.315-337, 2013-07-01 (Released:2017-12-05)
参考文献数
38
被引用文献数
1

1582(天正10)年,岡山県の備中高松で備中高松城水攻めが行われた.近年の研究では,備中高松城の西側の自然堤防を利用した上で基底幅21 m,上幅10 m,高さ7 mの水攻め堤が3 kmにわたって築かれたとされているが,わずか12日間でこの巨大な堤防が本当に築けたのか,その信憑性が疑われている.そこで本研究では,流出解析と氾濫解析を組み合わせた水攻めモデルを開発し,水攻め堤の有無と高さによる複数のシナリオで備中高松城水攻めを再現して,水攻めの条件について考察した.その結果,水攻めには上述したような巨大な堤防は必要なく,足守川からの水の流入,備中高松城西側の自然堤防,それに接続する南側の蛙ヶ鼻周辺の水攻め堤があれば十分であることが示された.また,この結果と史料を考慮すると,蛙ヶ鼻周辺の水攻め堤は,その高さが約3.0 mであったと考えるのが合理的であるという結論に至った.
著者
酒井 健吾 長谷川 宏一 泉 岳樹 松山 洋
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

1. はじめに近年,小型の無人航空機(UAV; Unmanned Aerial Vehicle)を用いて撮影した複数の画像から地表面の三次元データを作成する手法が注目されている。UAVを用いてステレオペア画像を撮影し,SfM(Structure from Motion)ソフトウェアで処理すると,対象物の三次元点群データ,三次元モデルを作成することができる。さらに,この三次元モデルから,空間解像度数cmのオルソモザイク画像や数値表層モデル(DSM; Digital Surface Model)を得ることもできる。これらは条件によってはレーザ計測と同等の精度が得られるという報告がある(小花和ほか,2014)。一方,植生を対象とした場合,精度が落ちるという報告もされている(Harwin and Lucieer,2012)。これは,画像の解像度が十分でないこと,風により植生が動いてしまうこと,影になっている部分が再現されにくいことなどが原因として挙げられる。そこで本研究では,直下視画像に加えて,斜め視画像を加えてSFMで処理を行うことで,森林樹冠のDSM作成を試み,その再現精度の検証を行った。2. 研究手法対象地域は八ヶ岳南麓のカラマツ林(緯度35° 54' 34''N , 経度138° 20' 06''E)であり,2015年7月にUAVを用いて樹冠上から空撮を行った。機材にはK4R(K&S社)を使用した。K4Rは電動マルチコプタ(クワッドコプタ)であり,飛行にはGround Station(DJI社)の自律航行機能を利用した。UAVにコンパクトデジタルカメラGR(RICOH社)を搭載し,1秒間隔で写真を撮影した。K4Rのジンバルは角度を変えることができるため,直下方向に加えて前後方45°の撮影も行った。飛行方向は東西方向であり,約9,000m2の範囲に対し合計823枚の画像を取得した。次に,撮影したステレオペア画像を,SfMソフトウェアPhotoScan(Agisoft社)を用いて処理を行い,三次元点群データ,三次元モデルを作成した上で,オルソモザイク画像・DSMを作成した。これらの処理を,約250m2の範囲に対し,(1)対地高度100mから撮影した直下視画像70枚のみ,(2)(1)に,対地高度50mから撮影した直下視画像54枚を追加(3)(1)に,対地高度50mから撮影した斜め視画像54枚を追加という3パターンの画像を元に解析を行い,作成したDSMの再現性を比較した。3. 結果と考察3つのパターンで,空間解像度2~2.5cmのDSMを作成することができた。(1)では実際にギャップになっている部分もモザイクをかけたように,凹凸の少ない平坦な形状として表現されてしまった部分があった。一方,(2)や(3)にもこのような部分はあったが,(1)のものよりは少ないことが確認できた。三次元点群データを上空方向から見たときの画像で,点群がない部分(三次元形状が復元されていない部分)の面積割合を求めたところ,(1)では17.5%,(2)では12.8%,(3)では9.7%となり,直下視画像を加えた場合よりも,斜め視画像を加えた場合の方が,三次元点群データして再現された割合が多いことがわかった。この結果から,直下視画像に斜め視画像を加えることで,特にギャップなど直下視のみでは影になる部分の再現精度が上がる事が明らかになった。同じ枚数の直下視画像を加えた場合よりも再現度の向上率は高く,斜め視画像を加えたことによる効果の高さを示した。UAVとSfMソフトウェアによってDSMを作成する場合,UAV飛行のコストとリスクを減らし,処理時間を短縮するためにも,より少ない撮影回数,総飛行時間で必要なデータを取得する事が求められる。本研究はそのためのひとつの知見となることが期待される。今後の課題としては,精度のチェック,解像度の向上,斜め視画像の角度・方向の検討などが挙げられる。4. 参考文献小花和宏之,早川裕弌,齋藤 仁,ゴメスクリストファー : UAV-SfM手法と地上レーザ測量により得られたDSMの比較, 写真測量とリモートセンシング, 53, pp.67-74, 2014.Harwin, S. and Lucieer, A.: Assessing the accuracy of georeferenced point clouds produced via Multi-View Stereopsis from Unmanned Aerial Vehicle (UAV) imagery, Remote Sensing, 4, pp.1573-1599, 2012.
著者
泉 岳樹 松山 洋
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.69, no.581, pp.83-88, 2004
参考文献数
14
被引用文献数
7 9

Rooftop area and potential area for rooftop greening in Tokyo metropolitan area are estimated by analyzing polygon data of buildings and digital aerial photographs on geographic information system The followings are the results of this research 1) Rooftop area of buildings for public, commerce, residence and industry in 23 wards of Tokyo is estimated to be 16,491ha 2) The ratio of the potential area for rooftop greening is estimated to be 77 6% on average 3) Potential area for rooftop greening is 4,917ha, about 8% of 23 wards' area These results give important suggestions for planning scenarios of rooftop greening in Tokyo
著者
泉 岳樹 松山 洋
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.69, no.581, pp.83-88, 2004-07-30 (Released:2017-02-09)
参考文献数
14
被引用文献数
9 9

Rooftop area and potential area for rooftop greening in Tokyo metropolitan area are estimated by analyzing polygon data of buildings and digital aerial photographs on geographic information system The followings are the results of this research 1) Rooftop area of buildings for public, commerce, residence and industry in 23 wards of Tokyo is estimated to be 16,491ha 2) The ratio of the potential area for rooftop greening is estimated to be 77 6% on average 3) Potential area for rooftop greening is 4,917ha, about 8% of 23 wards' area These results give important suggestions for planning scenarios of rooftop greening in Tokyo
著者
樋泉 岳二
出版者
日本植生史学会
雑誌
植生史研究 (ISSN:0915003X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.81-87, 1996 (Released:2021-06-16)

日本考古学は歴史学の一分野として発達してきた。このため,考古遺物としての動植物遺体は人工遺物より軽視される傾向にある。動物考古学者自身でさえも,標本の扱いは生物科学に比べてルーズであり,管理・公開への対応は著しく立ち後れている。現生標本は,同定根拠を示す証拠物であると同時に,正確な同定法を確立していくための比較骨学資料でもある。これらを恒久的に維持・活用していくためには,標本の登録・保管と記載法に関わる一貫した管理システムを構築することが必要だ。一方,近年の貝塚・低湿地遺跡発掘の増加・大規模化の結果,出土遺体は膨大な量に達しており,保管スペースの不足や整理・収蔵にかかる手間・経費といった問題が深刻化してきた。これらは「標本」に対する社会全体の認識とも関連する問題であり,社会的コンセンサスなくして抜本的な解決は望めない。遺体標本から描き出される人間と環境の交渉史について,社会一般にわかりやすくアピールし,標本の持つ重要性を広く理解してもらう努力が必要である。
著者
稲村 友彦 岩崎 一晴 齋藤 仁 中山 大地 泉 岳樹 松山 洋
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.123-138, 2009-03-31

阿蘇山の特徴的な地形(中央火口丘,阿蘇外輪山および立野火口瀬)が,立野火口瀬の西で起こる局地風「まつぼり風」に及ぼす影響を,メソ気象モデル(RAMS)に現実の地形と仮想的な地形を与えることによって調べ,まつぼり風発生のメカニズムを考察した.まつぼり風は南東の地衡風が吹くときに発生しやすく,発生が確認された1999年4月17〜18日を対象に実験を行ったところ,現実の地形の実験で,立野火口瀬周辺にはおろし風や地峡風が出現した.仮想的な地形の実験との比較により,まつぼり風を発生させる主要な原因は,立野火口瀬南側の外輪山によるおろし風であり,立野火口瀬による地峡風効果と中央火口丘によるおろし風が,強風をさらに強めていることが示唆された.また,下層の東寄りの風と上層の西寄りの風との間,高度1500m付近に現れる東西風速0m/sの層により形成された臨界層が,おろし風の強化に寄与していると考えられた.
著者
松山 洋 泉 岳樹 中山 大地 島村 雄一 長谷川 宏一 尾身 洋
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の主な成果は以下の通りである。(1)葉面積指数をよりよく推定する新植生指標を提案した。(2)常緑針葉樹であるオオシラビソの分布規定要因を定量的に示した。(3)太陽高度の低い時期における衛星画像の地形効果補正法を提案した。(4)集中型モデルであっても融-流出量を精度よく推定できることを示した。(5)北方常緑針葉樹林の生育開始に融雪が影響している可能性を示した。(6)タブレットPCを用いた高速マッピングシステムを構築した。
著者
瓜田 真司 齋藤 仁 中山 大地 泉 岳樹 松山 洋
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.114-114, 2010

本研究では、気象庁が開発した土壌雨量指数を用いて、日本全域を対象に、2001-2008年の土砂災害発生危険性を明らかにした。2001-2008年の土砂災害発生危険性には地域差があり、1年間に何度も危険性を高める雨が降った箇所もあれば、この8年間に一度も土砂災害の危険性が高まらなかった箇所もあった。<BR> 牛山(2005)では、暖候期降水量から推定される極値降水量が観測されていない地域を豪雨空白域として抽出している。その豪雨空白域における土砂災害発生危険性を調べたところ、新潟・山形県境付近、富山県中央部、近畿地方中部と種子島南部は豪雨空白域であり、対象期間(2001-2008年)の土砂災害発生危険性も高まっていなかった。すなわち、これらの箇所では、今後の大雨の際に土砂災害発生危険性が高まる可能性が示唆される。
著者
和田 範雄 泉 岳樹 松山 洋 近藤 純正
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.13-22, 2016-01

測器近傍の障害物の有無が気温に与える影響を定量的に評価するため,放射による観測誤差が最大で0.04℃の高精度な測器による気温観測を行い,空間広さ(「周囲の障害物と測器との距離」と「障害物の高さ」との比)に注目して解析した.観測は,首都大学東京南大沢キャンパスの陸上競技場の芝地上6地点において,2014年8月22日~9月17日に行い,その内1地点では不織布の囲いを設置して,空間広さが小さい状態を人工的に作り出した.その結果,日中は,空間広さが小さくて天気がよいほど気温が高くなり,いわゆる日だまり効果(測器近傍の障害物による風速の減少に伴う地上気温の上昇)の影響が示唆された.一方,夜間は,空間広さが小さい地点ほど気温が低くなった.これは,囲いによる風速減少により上空大気との熱交換が抑制されるとともに,囲いの中に冷気がたまりやすくなることで放射冷却の効果が強められたことが原因と考えられる.また,日中と比べて夜間には地点間の気温差は小さくなったが,これは日中と夜間の正味放射量および風速の違いを反映したものと考えられる.
著者
山本 遼介 泉 岳樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

<b>1 </b><b>はじめに<br></b>東日本大震災の復興過程のアーカイブについては,NHKの「東日本大震災アーカイブス」の中での復興の軌跡や(独)防災科学技術研究所を事務局とする「東日本大震災・災害復興まるごとデジタルアーカイブス」(略称:311まるごとアーカイブス)をはじめとして,様々な取組がなされてきた.それらの中でも,Google社の日本法人が行っている「未来へのキオク プロジェクト」では,写真や動画の投稿プラットフォームとして既に6万1千件以上のデータがアーカイブされているだけでなく,ストリートビューという360度画像の閲覧サービスのデータを震災直後と震災後2年の2時点で取得し公開している(一部地域については震災前のデータ有).360度画像は,人の目線に近い視点から空間全体を記録しているので,臨場感があるだけでなく,町並みや景観の記録としての価値も高く,このデータを元に建物の3次元モデルを作成し町並みを復元する試みもなされている.<br>本研究では,このように利用価値の高い360度画像を取得できるMMSを用いて独自にデータ取得を行い,復興過程のアーカイブを試みる.その際,写真測量技術により複数の360度画像から画像内の地物の位置や高さなどを計測する機能の有効性についての検討を行う.<br><br><b>2 </b><b>研究手法<br></b><b></b>MMSによるデータ取得は,(株)トプコン製のIP-S2 Liteを用いた.このシステムでは,車両のキャリア上に6つのカメラ,GPS,IMUを備えたメインユニットを搭載し,車内に接続されたPCで動画撮影の制御とデータの保存を行う.このMMSはレーザースキャナを搭載していないが,撮影データの後処理により,動画内の地物の位置や高さを測定することができる.<br>対象地域は,被災地で最も早く防災集団移転事業が進んでいる宮城県岩沼市とした. <br>現地調査は,2012年8月4日~7日と2013年11月18日~19日に行い,津波の被害を受けた岩沼市沿岸部(仙台東部道路の東側)をMMSにより撮影した.<br>&nbsp;<br><b>3 </b><b>結果<br></b><b></b>2012年と2013年のデータを比較すると,以下の変化を見ることができた.(1)防災集団移転地において造成工事が本格化し,用水路の整備や地面のかさ上げ等が開始された.(2)「震災遺構」にもなり得た相の釜地区の水防倉庫が解体された.(3)「千年希望の丘」の造成工事が開始された.(4)海岸部にあった瓦礫等が撤去され,防潮堤の工事が本格化した.また,画像内の計測機能については,特徴点が抽出できるところでは概ね1m以内の精度で測定できることが分かった. <br>今後は,現地調査を継続的に行うとともに,変化の大きい場所について,位置や高さの測定など定量的な解析を行う予定である.
著者
山川 大智 泉 岳樹
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

<b>1</b><b> はじめに<br></b><b></b>&nbsp;近年, UAV(無人航空機)の低コストかつ高解像度のデータ取得能力とSfM-MVS手法を利用し,災害現場やアクセス困難地での地表計測を行う研究(例えば,小花和ほか, 2014; 泉ほか, 2014; 飛田ほか, 2014など)が数多くなされている.一方で,既存研究では露頭のように傾斜がほぼ垂直の崖面を扱った研究はほとんど見られない.これは既存のUAVの自動航行ソフトでは崖面のステレオ画像を取得することが困難なことや基準点の設置や測量が困難であることが影響していると考えられる.<br>&nbsp;そこで本研究では,UAVを用いて露頭のステレオ画像を取得し,露頭の3次元モデル作成を試みた.その際,UAVの位置情報のみを使用した3次元モデル(UAVモデル)と露頭内のGCPの位置を与えた3次元モデル(GCPモデル)の2種類を作成し,精度の差についても検討した.<br> <b>2</b><b> 現地調査の概要</b><br>&nbsp;対象地域は神奈川県足柄下郡箱根町仙石原,箱根外輪山中腹の長尾峠露頭とした.選択理由としては,長井・高橋(2008)に地層構造が示されており比較・検討が行いやすいことや,露頭が小規模でUAVの手動フライト時の安全確保が容易であることなどが挙げられる.露頭全体を目視できる基準点をGNSS(Trimble GeoExplorer 6000XH)で測量し,そこからTS(トータルステーション, SOKKIA SRX3)で露頭内の6点のGCPの位置を測量した.<br>&nbsp;使用したUAVはDJI社のPhantom3 Professionalである.調査は2016年9月16,17日の2日間で行った.16日は撮影設定やフライト方法の検討や練習を行い,17日に撮影した2回分の各約120枚の画像を分析に用いた.フライトは手動で行い崖面との距離5mを目標で行い,概ねオーバーラップ75%以上,サイドラップ60%以上の画像を取得できた.SfM-MVS解析には,Agisoft社のPhotoScan Professional Ver.1.2.5を用いた.<br> <b>3</b><b> 結果と考察<br></b><b></b>&nbsp;カメラ画像の撮影位置の推定結果からUAVと崖面との距離は最大でも8m以下であり,取得した画像の解像度は最大でも0.36cmであることが分かった.17日の2回目の画像に基づく露頭の3次元モデルを図1に示す.3次元モデルを拡大し判読を試みると,直径約1cm未満の中礫以上の粒子の判別が可能であった.<br>&nbsp;露頭内の6点のGCPの位置をGNSSとTSで測量した結果を真値とし,位置情報の付加の仕方が異なる2種類の3次元モデル(UAVモデルとGCPモデル)上での6点の位置の推定値と比較した結果が表1である.GCPモデルの最小二乗誤差(RMSE)が0.16mなのに対し,UAVモデルのRMSEは21.84mと非常に大きい.これはUAVモデルの位置情報はUAVに搭載されている単独測位のGPSに依存しているためz方向や急斜面により視野が狭められているy方向の精度が悪いためと考えられる.ただし,UAVモデルはいずれの方向に対しても系統的な誤差が大きいため,3次元モデル自体の形状や大きさ,方位などの精度は悪くない可能性がある.そのため,2つの3次元モデル内で,長さや方位の計測を行い,比較をおこなった.その結果,長さの精度は両モデルともRMSEが0.15mで同程度,方位に関しても両モデルの差は0.1度未満であることが分かった。このことにより,絶対的な位置精度は高くないが,3次元モデルを用いて露頭の観察や計測を行うには,地上測量を行う必要のないUAVモデルでも十分な精度を持っていることが示唆される.<br><b>謝辞<br> </b>&nbsp;長尾峠でのUAVの撮影許可について,箱根町企画観光部企画課ジオパーク推進室の青山朋史氏に大変お世話になりました。記して謝意を表します。
著者
島村 雄一 泉 岳樹 中山 大地 松山 洋
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.331-348, 2003-07-05
参考文献数
31
被引用文献数
8 9

林床積雪の判別が可能な積雪指標S3 (斎藤&middot;山崎, 1999) をLANDSAT-5/TM画像に適用し, 積雪水当量&middot;融雪量を推定した. 積雪指標の適用を想定したADEOS-II/GLIが未稼働なので, 衛星データへの適用は本研究が初めてである. 1986年の融雪期の黒部湖集水域を対象として, 積雪指標を用いて積雪域を抽出した. ここでは, この地域における標高と積雪水当量の関係 (関西電力株式会社工務部, 1960) と山地積雪モデル (小池ほか, 1985) に基づき算出した2時期 (1986年4月14日と4月30日) の積雪水当量の差を融雪量とした.<BR>推定された融雪量は, 同じ期間の黒部第四ダムでの観測流量と相対誤差&mdash;8.2%で一致した. 植生の影響を考慮せずに可視波長帯から抽出した積雪域を使った場合の推定誤差は&mdash;23.8%であり, この差は積雪指標が林床積雪を判別できているためと考えられる. 以上から, 積雪指標による積雪域の抽出は妥当であり, 植生の影響を考慮しない方法よりも優れていると言える.
著者
泉 岳樹 岡部 篤行 貞広 幸雄 花木 啓祐 一ノ瀬 俊明
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究 (ISSN:09150390)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.171-178, 1999-10-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1

This paper predicts the effects of the capital relocation on a thermal environment using a meso-scale meteorological model. Five candidate cities, Tomakomai, Nasu, Hamamatsu, Toki and Ueno, are chosen for study areas.The simulation results show that temperature will rise in all the candidate cities after the relocation. The temperature rise averaged over a day is from 0.5 to 1.0 degree centigrade in each candidate city. In the coastal candidate cities, Tomakomai and Hamamatsu, the temperature will rise not only in new capital regions but also in the leeward regions because of the sea breeze.Relative contribution of land cover changes and anthropogenic heat to the temperature rise are also compared. The temperature rise in the daytime is brought mostly by land cover changes. At night the influence of anthropogenic heat becomes large, and in some candidate cities it becomes greater than that of land cover changes. These results imply the energy-saving at night is effective for controllingthe temperature rise in a new capital.
著者
赤坂 郁美 安藤 晴夫 横山 仁 大久保 さゆり 高橋 一之 泉 岳樹 三上 岳彦
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.120, no.2, pp.309-316, 2011-04-25 (Released:2011-06-30)
参考文献数
11
被引用文献数
5 7

To investigate the spatial and temporal variability of the urban heat island, a high-spatial density meteorological observation system was set up in the Tokyo ward area by Tokyo Metropolitan Research Institute for Environmental Protection (TMRIEP) and Tokyo Metropolitan University from July 2002 to March 2005. The observation system was named Meteorological Environmental Temperature and Rainfall Observation System (METROS) and consisted of two observation networks named METROS20 and METROS100; METROS20 was made to observe meteorological factors (wind direction and speed, pressure, rainfall etc.) on the roofs of 20 buildings; METROS100 was made to observe temperature and humidity in instruments screens of 106 elementary schools. Since April 2005, observations of temperature and humidity were continued with the instruments screens of elementary schools by TMRIEP. This observation network was maintained until March 2010. Based on their observations, temporal and spatial characteristics of thermal environment of Tokyo have been investigated such as temperature range, especially in summer. For example, warmer areas differ between daytime and nighttime as shown by spatial patterns in rate of time exceeding 30 degrees Celsius and number of sultry nights: the warmer area is located from central part to northern part of the Tokyo ward area during daytime and from central part to coastal area during nighttime.
著者
北村 彩子 泉 岳樹 松山 洋
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.113, no.4, pp.495-511, 2004-08-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
29
被引用文献数
2

The thermal infrared images observed by satellites represent integral of radiations from both surface and atmosphere. This has been pointed out qualitatively, however, it has not been clarified quantitatively. Using Landsat-5 TM images (Kanto scene, Path107, Row35), this study quantitatively investigated the ratio of the radiant flux densities of surface temperature and those of air temperature. A multiple regression analysis was applied in this investigation. Four daytime scenes of the thermal infrared images of Landsat-5 TM (28 Feb1992, 25 Feb 1997, 13 Dec 1998, 30 Jan 1999, all were fine), and meteorological data in meteorological observatories, AMeDAS stations and Terrestrial Environment Research Center, University of Tsukuba were used for the analysis. Generally, surface temperature around10 : 00 JST is not observed when Landsat passes the study area, so the diurnal variation of thesurface temperature and energy budget at each site was calculated by the method of Kondo (1992) who set exchange coefficient constant throughout a day.It was clarified that the radiant flux densities of surface temperature and those of air temperature equally contribute to the radiant flux densities of brightness temperature observed by Landsat-5 TM, except for a case of strong wind since the constant value of exchange coefficient was not appropriate in this case. In the case of 13 Dec 1998, correlation between brightness temperature and air temperature, obtained in this study (r=0.71) was better than that of Yan and Mikami (2002) (r=0.53) who analyzed the same thermal infrared images. This was due to the difference of the area studied. In this case, correlation betweenradiant flux densities of brightness temperature and those of air temperature were also 0.71. Moreover, the multiple correlation coefficient among brightness temperature, surface temperature and air temperature (r=0.76), and radiant flux densities of brightness temperature, that of both surface temperature and air temperature (r=0.76) was better than the single correlation coefficients between brightness temperature and air temperature, and radiant flux densities of them. Since AIC (Akaike's Information Criterion) of the multiple correlation analysis was smaller than that of the single correlation analysis, this study statistically showed that the radiant flux densities of brightness temperature observed byLandsat-5 TM represented equal contribution of both surface temperature and air temperature.
著者
木下 尚子 黒住 耐二 新里 貴之 高宮 広土 中村 直子 安座間 充 石丸 恵利子 鐘ヶ江 賢二 神谷 厚昭 川口 陽子 岸本 義彦 新里 亮人 樋泉 岳二 中村 友昭 松田 順一郎 宮城 弘樹 盛本 勲 山崎 純男 山野 ケン陽次郎
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究は伊江島ナガラ原東貝塚の8回の発掘調査をもとに、沖縄貝塚時代中頃の変化を伊江島において明らかにした。すなわち、遺跡の時期が5世紀から7世紀であること、この時期の沖縄諸島の土器は伝統的な形状を大きく変化させるがその変化は内在的なものであると同時に南九州や奄美地域の影響によって生じたこと、遺跡が南九州や種子島と貝殻を交易するために断続的に使われたキャンプ地であった可能性の高いことを明らかにした。
著者
一ノ瀬 俊明 白 迎玖 泉 岳樹 三上 岳彦
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

2006年まで4年間の8月中旬に、復元河道近傍および河道より100m以内の5地点で、集中的な移動・定点観測による体感温熱指標SET^*の観測(温・湿度、風速、天空放射、地物表面温度)を行った。また、サーモカメラによる地物表面温度の観測、シンチロメーターによる上向き顕熱フラックスの観測、ソウル市政府が観測している大気汚染物質濃度の時系列解析などを行ってきた。CFDモデルによる数値シミュレーションからは、復元河道上を吹走する冷気が渦を巻きながら、河道に直交する街路へ南北同時に侵入する様子が計算された。2006年夏季に超音波風向・風速計などによる集中気象観測を行った結果では、河道上および河道南側80m付近で清渓川に沿った西風(海風)の強・弱に対応して、気温の下降・上昇が見られ、河川から周辺地域への冷却効果のプロセスが実証された。そこで2007年夏季の集中気象観測では、冷気の川面から周辺市街地へ輸送されるプロセスに関して、その発生源である河道内の気象学的なメカニズムを検証することを目的として、河川真中と南北川岸において、ポールを立て、鉛直(高さ別)に気温や湿度の測定を行った。清渓川の河川水による冷却効果については、川面に近い高度ほど気温が低く、水蒸気密度(絶対湿度)が大きい傾向が見られた。また、南側の鉛直分布に関しては、北側より相対的に気温が低い傾向が見られた。また地表面に近いほど気温が低くなっている傾向が見られた。一方、北側では日中地表面に近いほど気温が高くなっているのがしばしば観測されている。それらの要因としては南側沿道の地表面には植物が繁茂しているのに対し、北側の地表面はコンクリート面がむき出しになっていることが考えられる。以上の結果から南側河岸の方に冷気層が形成されている可能性が示唆された。