著者
田渕 六郎
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.117-122, 2000-07-31 (Released:2009-09-03)
参考文献数
44
被引用文献数
2

本稿は、近年の家族研究において注目されている構築主義的研究の動向を紹介することを目的とする。ここで構築主義的研究とは、以下で述べる意味で「構築主義的」な理論枠組みを採用していると考えられる研究を指す。関連する研究動向の紹介としては、拙稿 (田渕, 1996, 1998) のほかに、構築主義的家族研究を代表する研究であるGubrium and Holstein (1990) の訳書「あとがき」に訳者等による紹介があり、宮坂 (1999) や土屋 (1999) も関連する実証研究の動向を整理している。本稿は研究動向の紹介を網羅的に行う紙幅を欠くため、紹介はこれら先行研究に挙げられている文献と重複しないものを優先していることをお断りしておきたい。
著者
布施 晶子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.48-56,118, 1990-07-20 (Released:2009-08-04)
参考文献数
10

Firstly, this work examines of the '80s and the present problems of the Japanese family. How has the family been affected by the tremendous economic and social changes brought by rapid economic growth, and the structural recession that followed it? We will find the affluence is barely skin-deep. We pay attention to the working hours, housing, and so on. Creative plans are needed. There is no place for the elderly in Japan. The birty rate is decreasing and the strain on children is inc reasing. We also must consider changes in the configuration of the family. We notice diversity in the configuration. At the same time, We find icreasing self-reliance of members in the family, especially in the wife.Secondly, this work examines how family sociology copes with the Japanese family in transition. We have to confront the problem of the Japanese family acccurately. We have to verify the quality of life. We have to propose a scheme for new policies of qovernment. We have to appreciate the signs of diversity and self-reliance in the family.
著者
末盛 慶
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.103-112, 2002-03-31 (Released:2010-11-18)
参考文献数
28
被引用文献数
2

本研究では, 母親の就業が子どもに与える影響に関する諸理論と先行研究を概観した上で, 母親の就業が子どもの独立心にどのような影響を持つのかを実証的に明らかにする。本研究では, 母親の就業状態だけでなく母親の職業経歴の効果も検証し, また社会階層や母子関係を統制した上で母親の就業の効果を検証する。分析対象は, 東京都郊外地区から多段無作為抽出法でとられた長子の中学生とその母親451組である。分析の結果, 母親の就業状態によって子どもの独立心に違いはみられなかった。しかし, 母親の職業経歴によって子どもの独立心に有意な差異が生じていた。結果は, 就業継続する母親の子どもの独立心が他の群に比べ有意に高いことが示された。ここから, 母親の就業状態だけでなく母親の職業経歴を捉えることの重要性, および母親の就業継続が必ずしも子どもに対して否定的な影響を及ぼさない-むしろポジティブな影響さえ及ぼしうる-ことが明らかになった。
著者
清水 新二
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.10-1, pp.31-83,154, 1998-03-25 (Released:2010-02-04)
参考文献数
6
被引用文献数
6 5

Research on family problems in Japan during the last 25 years is thoroughly reviewed in this paper. Each decade has been characterised as follows : in the 1970s as the golden age of family pathology research, in the 1980s as the age of Maxist family problem research, and in the first half decade of the 1990s as a transitional age of family problem research.Several topics discussed in this paper include internationalization of research, the family crisis debate, problem-solving orientation, and family policy. Finally, it is concluded that the transition of research trends during the last 25 years can be phrased as from pathological and Marxist prespectives to the normalization perspective of family problem research.
著者
高見 具広
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.50-57, 2022-04-30 (Released:2022-04-30)
参考文献数
17

在宅勤務(テレワーク)は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて急速に拡大したが,その実施有無には,学歴,業種,職種,企業規模,所得など,仕事特性や社会経済的地位による格差が見られた.コロナ禍で在宅勤務を行った者においては,生活時間の変化があり,男性も含め家事・育児時間が増加する傾向が確認された.在宅勤務は,その面でワークライフバランスに寄与した部分があるが,今後は,「働きすぎ」をいかに防ぐかが課題となる.場所を問わない柔軟な働き方は,コロナ禍以前から,情報通信技術(ICT)の利用可能性拡大に伴う論点であり,勤務先以外でも仕事を行えることでアウトプットを高められる反面,「いつでもどこでも仕事」という状況に陥り,生活領域(生活時間)が侵食されるリスクも存在する.今後の在宅勤務においては,ワークライフバランス上の課題に向き合うことが求められる.
著者
岡村 利恵
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.7-18, 2017-04-30 (Released:2018-06-18)
参考文献数
34

子育てにスマートフォンやタブレットなどのIT機器を利用することが,母親自身にどのような影響を与えるのかを検討する研究は数少ない.本研究の目的は未就学児を持つ母親のスマートフォンやタブレットなどのIT機器利用が母親自身の役割適応や生活充実感にどのような影響を与えるかを明らかにすることである.調査対象者は首都圏に在住し未就学児を持つ母親1194名である.分析の結果,育児が困難と思う母親ほどIT機器を子育てに利用し,それにより母親役割適応が高まり,生活充実感も上昇することがわかった.また配偶者との子育てに関するコミュニケーション頻度が高いほど母親の子育てにおけるIT機器利用が高まることがわかった.IT機器を子育てへ「活用」することに父親の関わりが影響を与えている可能性が示唆された.
著者
笹谷 春美
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.36-46, 2005-02-28 (Released:2009-08-04)
参考文献数
17
被引用文献数
3 2

本稿は, 高齢者介護における「社会化」のプロセスとその問題点を, 家族介護者の視点から明らかにするものである。介護の「社会化」とは, 家族介護者が家庭内で行うアンペイド・ワークを外部の社会的労働に転化する道とその労働を「社会的に評価」する道がある。先進福祉国家では, 福祉国家のリストラにより, 公的サービス供給によってカバーされず, 介護システムの外部に押し出される高齢者の割合が増える傾向にある。北欧では, このような背景から家族介護が再発見され, 家族を介護する人々のニーズに応え, その市民的権利を保障する「家族介護者サポート政策」の制定の新たな動きがある。介護保険制度の施行にもかかわらず, 「社会化」の進展も抑制され, 仕事をやめてでも介護を強制される孤独な中高年女性が多数存在する日本においてこそ, 家族介護者サポートの議論はジェンダーやケア・バランスの視点から深められなければならない。