著者
清水 新二
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.47-60, 2005-02-28 (Released:2009-08-04)
参考文献数
31

家族の多面的リアリティに即して, 「ストレス発生の場」としての “おそろしい家族”の側面と, 「ストレス緩和の場」としての家族保健機能の両面から, さらに自分物語を構築するという上での関係性の観点から, 現代家族の意義と意味を検討した。具体的データを参照しつつこの検討を通じて, なぜ夫婦/パートナー, 家族関係が人々の間で「一番大切なもの」と意識されるのかを実利的ならびに意味的観点から論じた。私事化, 高齢社会という社会的背景を考慮すると, 夫婦/パートナー, 家族がコンボイとしてなおしばらくは中核を占めることが考察された。
著者
石原 邦雄
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.43-47, 2010-04-30 (Released:2011-05-10)
参考文献数
5

シンポジウムの際のコメンテーターの立場から,当日の報告により得られた示唆と家族研究において考えるべきポイントとして,以下の2点を指摘した。第1に,統計的にも増加しつつある独身男性高齢者に典型的に見られるコミュニケーション能力の不足と,そこから生じる社会的孤立などの問題に注意を向ける必要があること,そのためにも,従来日本の家族研究では根付いていなかった,コミュニケーション論や相互作用論による研究が求められる。第2には,葬送の「個人化」に関連して,それが市場化・商品化と連動することによるネガティブな側面に着目することの重要性を再確認するとともに,より基礎的には,家族について何らかの制度論的,文化論的なアプローチによる研究が改めて求められているのではないか。
著者
ジェームズ レイモ
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.2_60-2_70, 2008-10-31 (Released:2009-11-20)
参考文献数
107
被引用文献数
1
著者
尹 〓喜
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.7-17, 2007-04-30 (Released:2009-08-04)
参考文献数
23

近年の社会では, 子世代の高学歴化, 就職時期の遅れ, 結婚年齢の上昇などによって親が成人子の世話をする時期が長くなり, 若者に対する自立が話題になっている。そこで, 本稿では, 成人未婚者の自立に影響を与える要因を探り, 経済的・情緒的・生活的自立間の関連性について男女別に分けて分析することを目的とする。韓国ソウルと京畿道に居住する20~39歳の未婚男女を対象に質問紙調査をした結果, 以下の知見が導かれた。第1に, 経済的自立にもっとも影響を与える変数は, 男女ともに親との別居であった。情緒的自立の場合, 男性では父親との親密度, 女性では経済面に対する父親の態度であった。生活的自立度の場合, 男女ともに親との別居であった。第2に, 各自立間の関連性において, 男性では, 経済的自立と情緒的自立, 経済的自立と生活的自立には正の相関が, 女性では, 経済的自立, 情緒的自立, 生活的自立すべての間に正の相関が見られた。
著者
前田 信彦 目黒 依子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.81-93,119, 1990-07-20 (Released:2009-08-04)
参考文献数
31
被引用文献数
6

Sosial network studies in family sociology have mainly been in the areas of kin network and family support. This paper attempts to analyze the network pattern of urban families by using the concept of “tie strength.” Two specific attentions given to are : 1) a social class comparison, and 2) the pattern of activation of social network as resources.From a set of family network data collected in 1976, we have found that : 1) the component of family network on the basis of tie strength differs by social class, and that 2) the resource mobilizati on pattern also differs by social class. Above findings seem to suggest positive directions leading tow ard more general theory building in social network studies.
著者
木本 喜美子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.27-40, 2000-07-31 (Released:2010-05-07)
参考文献数
33
被引用文献数
3 6 2

本稿は、戦後日本の家族と企業社会との関係を「家族賃金」という概念から分析することにある。日本において性別分業を組み込んだ〈近代家族〉モデルは、終身雇用、年功賃金、企業福祉を柱とする日本的経営のもとで、強固な基盤が据えられた。とくに「生活給」賃金思想に支えられた大企業の労働者家族は、物質的生活基盤とひきかえに、夫を競争的な「企業内人生」へと駆り立てていった。「減量経営」を経た1970年代以降こうした動向は明確化し、家族と企業社会とは強い絆で結ばれるところとなった。だが同時に1970年代以降のスクラップ・アンド・ビルドの進展のもとで地域間移動をともなう配置転換、出向等が多発するなかで、家族の側から「家族帯同」を拒否する傾向が強く現れ、1980年代以降単身赴任が社会現象として注目されるにいたった。物質優先主義が、「家族成員相互の情緒的関係」を欠いた〈近代家族〉の中心軸になっており、この傾向は1990年代にも基本的にひきつがれている。
著者
保田 時男
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.89-95, 2011-04-30

NFRJ-08 Panel (全国家族調査パネルスタディ ; National Family Research of Japan, 2008-2012 Panel Study)は,学会員の有志によって進められているパネル調査プロジェクトである.この調査はNFRJ08(第3回全国家族調査)の回答者のうち継続調査への協力を応諾してくれた者を対象としており(最終的に1879名),2009年1月のNFRJ08を第一波として,1年ごとに2013年1月の第5波までの実施を予定している.本レポートでは,NFRJ-08Panelの(とくに第2波の)調査票をどのような意図と手続きで設計したかを順に説明する.調査票の設計においては,クリーニングの方法も一つの大きなポイントとなったので,第5節ではクリーニングの手続きについても簡単に説明する.このような裏方の手続きは公になりにくいが,実際的に調査研究を行う際には重要なプロセスである.学会で共同利用されるデータの収集過程を周知するとともに,類似の調査プロジェクトの参考資料となることを企図している.
著者
保田 時男
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.89-95, 2011-04-30

NFRJ-08 Panel (全国家族調査パネルスタディ ; National Family Research of Japan, 2008-2012 Panel Study)は,学会員の有志によって進められているパネル調査プロジェクトである.この調査はNFRJ08(第3回全国家族調査)の回答者のうち継続調査への協力を応諾してくれた者を対象としており(最終的に1879名),2009年1月のNFRJ08を第一波として,1年ごとに2013年1月の第5波までの実施を予定している.本レポートでは,NFRJ-08Panelの(とくに第2波の)調査票をどのような意図と手続きで設計したかを順に説明する.調査票の設計においては,クリーニングの方法も一つの大きなポイントとなったので,第5節ではクリーニングの手続きについても簡単に説明する.このような裏方の手続きは公になりにくいが,実際的に調査研究を行う際には重要なプロセスである.学会で共同利用されるデータの収集過程を周知するとともに,類似の調査プロジェクトの参考資料となることを企図している.
著者
野田 潤
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.48-59, 2008
被引用文献数
3

近年,個人の選択性の増大や家族の拘束性の減少を意味する「家族の個人化」の進行が指摘され,増加する離婚率はその証左と見なされてきた。しかし子どもの存在を分析枠組に入れて新聞の離婚相談欄を研究した本稿からは,異なる知見が導かれた。まず,離婚したいという夫や妻個人の希望の正当性を,子どもという夫婦以外の第三者の都合から審査する傾向は,相談者の間では1930年代以降,2000年代の現在においても全く減少していない。次に,「あなたのための離婚」と述べて個人の選択権の増大を強調する1980年代以降に特徴的な回答者の言説は,実は「あなたのため」が「子のため」を阻害しないという前提のもとでしか語られていない。つまり夫婦の離婚は子どもという拘束からは自由になったとは言い切れないのである。このように本稿は子どもを分析枠組に入れることで,個人化とは矛盾する現代家族の一側面を明らかにした。
著者
加藤 彰彦
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.10-2, pp.111-127, 1998-07-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
18
被引用文献数
1

定位家族構造と夫婦形成タイミングとの関連は、これまで次の2つの仮説によって説明されてきた。社会化仮説は、幼児期において父親不在の家族で生活した者は、伝統的な性役割や規範の内面化が不十分なために結婚のタイミングを遅らせると主張する。ストレス仮説は、ひとり親家族への移行や再婚家族への移行が、子どもや青年を定位家族から離脱させて、未熟な成人役割へと駆りたてると主張する。本研究は、全米家族世帯調査データとコックス回帰モデルを用いて、これらの仮説を検討した。分析結果は、全体として2つの仮説を支持した。しかしながら、定位家族構造変数と出生コーホートとの間に交互作用があるために、これらの仮説の妥当性はコーホートによって異なる。社会化仮説は、ベビープーム期のコーホートの結婚タイミングとベビーバスト期のコーホートの同棲タイミングを説明する。一方、ストレス仮説は、ベビーブーム期のコーホートの結婚タイミングと、ベビーブームおよびベビーバスト期のコーホートの同棲タイミングを説明する。こうした交互作用の実質的な源泉は、コーホート規模と離婚率というマクロ変数と、定位家族構造変数との交互作用にあることが示された。
著者
石井クンツ 昌子 宮本 みち子
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.16-18, 2012

シンポジウムでは,経済不況と少子高齢社会における家族戦略について,学際的な視点を提示してもらうことおよび家族戦略論アプローチの有効性を論じてもらうことを主な目標とした.チャールズ・ユウジ・ホリオカ氏は「不況期・老後における家族内助け合いの国際比較」,前田正子氏は「孤立する人々をどう支えるか―包括的対人サービス基盤整備をめぐって自治体の現場から」と題して,経済と社会福祉面における家族(的)戦略を提示した.田渕六郎氏は「少子高齢化の中の家族と世代間関係―家族戦略論の視点から」と題して,世代間アンビバレンスを説明するうえでの家族戦略論アプローチの有効性を明らかにした.木本喜美子氏と山田昌弘氏はコメンテーターとして,「家族戦略論」アプローチの限定性や有用性などについて討論した.司会は石井クンツ昌子と宮本みち子が務めた.
著者
森岡 清美
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-5, 1989-07-20 (Released:2009-09-03)
被引用文献数
2

1968年に発足した家族社会学セミナーが、1988年の第21回セミナーから新しい装いのもとに再出発することとなり、このたび機関誌『家族社会学研究』創刊号がその成果を盛って刊行されることは、家族の社会学的研究を志した者の一人として、まことに喜びにたえない。ついては、創刊号に記念エッセイを寄稿するよう本誌編集委員会から依頼されたので、第1回の家族社会学セミナーがどのような背景から、どのような意図をもって開かれたかを述べてみよう。もし、そのような回想がこのセミナーに草創期から深くかかわってきた者の昔話に過ぎないのなら、巻頭の文章としてふさわしいかどうか疑わしい。しかるにあえてこのような題材を選ぶのは、第21回の新装セミナーが第1回セミナーの素志の今日的発展形態であることを、確認する意義をもちうるように思われたからである。この意義を実現するために、当時の文書を資料として引用することをお許しいただきたい。
著者
木本 喜美子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.17-28, 2006-03-20 (Released:2009-08-04)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本稿の目的は, 雇用流動化が家族-企業間関係にいかなる変容をもたらしているのかを検討することにある。バブル経済の崩壊後の雇用流動化が日本的慣行を揺るがしているとすれば, この日本的雇用慣行を媒介としてとり結ばれた家族と企業社会の安定的で密な関係に変化を生じさせていることになる。だが統計データを解読すると, 雇用流動化の担い手は若年層, 女性層, 男性高齢層である。男性中年期・壮年期層に影響をもたらすとみなされてきた「成果主義」の導入も, 喧伝されたほどの変化をもたらしておらず, この層の雇用の安定性は保たれている。また個別企業の人事戦略をみても主として女性の正社員数が絞りこまれ, 若年層と女性の非正規化, そして非正規内部の多層化が推進されてきている。以上から見るならば, 2005年時点でも家族-企業間関係は大きく揺らいではおらず, 中核層と周辺層の隔離と後者の分断化が進行しているといわなければならない。

1 0 0 0 OA 生殖補助医療

著者
浅井 美智子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.2_77-2_84, 2008-10-31 (Released:2009-11-20)
参考文献数
5
著者
山田 昌弘
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.17-20, 2009-04-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
11

2008年度の家族社会学会のシンポジウムでは,貧困を伴った家族の経済格差拡大という社会における子育て状況を解明するために,子育てする親の調査を精力的になされている3人の研究者を報告者としてお招きした。後藤憲子氏には親の経済状況の変化と親の子育てへの態度の現状を,片岡栄美氏からは,お受験などに熱心な高階層の親の子育て戦略と意識を,湯澤直美氏から,経済的に困難な家族における子育ての実態をご報告いただいた。討論者として,竹村祥子氏,吉川徹氏にお願いし,司会は渡辺秀樹と山田昌弘が当たった。
著者
牟田 和恵
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.7-9, 2008-04-30 (Released:2009-08-07)
被引用文献数
1 1

シンポジウムでは,1対1の性的関係に絶対的基盤をおかないつながり,あるいはそれを基としながらも,カップルの対の関係(とその子ども)という核家族的関係に閉じないつながりによる,「家族のオルタナティブ」の新たな可能性を検討した。小谷部育子は「コレクティブハウジングの理念と実践」,釜野さおりは「レズビアン家族とゲイ家族から『従来の家族』を問う」,上野千鶴子は「家族の臨界:ケアの再分配問題をめぐって」と題して,新たな親密さ・拠るべき生の基盤の構築の可能性を,実践的・理論的に提示した。討論者の野沢慎司は,ステップファミリー研究の知見を生かし,これまでの家族研究とのつながりを論じた。司会は,牟田和恵と須長史生が務めた。