著者
小谷 眞男
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.201-207, 2009-10-30 (Released:2010-10-30)
参考文献数
15
著者
善積 京子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.59-65,140, 1993-07-25 (Released:2009-08-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1

In recent years, an increasing number of people in Europe and the United States are choosing to live together, i.e. to cohabit, rather than legally get married, and are discoveing the advantages of this arrangement. Traditionally, cohabitaion was not a choice but a forced lifestyle for those who were not allowed a legal union.This paper first cited some statistics, such as the increase in the number of divorces, the decrease in the number of marriages, the increase in the number of cohabitations, and the increase in the number of births out of wedlock, as a way to depict the current so-called “crisis in the marital system” in Western Societies.Secondly, after analyzing the social background which has led to this increase in cohabitation, people living together are categorized into three groups : young people, women seeking independece, and people seeking an alternative to remarriage. Their process of choosing cohabitation as their lifestyle, from the point of view of strategy, is also explained.Thirdly, the paper examines Swedish society where cohabitation is not only accepted as a socical institution but also legal. Through examining the Swedish example, social conditions which enable “neutrality” of lifestyle and a new paradigm for the family is investigated.Finally, the possibilty of cohabitation being chosen as a lifestyle in Japan in examined.
著者
三谷 はるよ
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.109-120, 2013-10-31 (Released:2015-09-05)
参考文献数
28
被引用文献数
2

昨今,里親養育に期待が高まる一方で,里親がストレスフルな状況に置かれていることが問題化している.先行研究は危機への対処としての里親本人の意味づけに注目してきたが,社会関係が対処に与える影響は十分に捉えていない.そこで本稿ではインタビュー調査を実施し,里親の危機対処過程を,とくに社会関係の影響に注目して検討した.その結果,里親は家族成員の理解・協力によって困難性を共有し,里親仲間の類似経験や専門家の知識によって困難性を相対化することで,危機に対処していることが明らかになった.また,里親は危機対処の過程を経て,里子や児童相談所職員から肯定的評価を得ることで,役割アイデンティティを強化していることもわかった.以上から,家族内外の社会関係からの道具的,情緒的,情報的サポートがストレッサーの悪影響を緩和し,ケアの受け手や公的な第三者からの評価的サポートが心理状態をつねに安定させることが示唆された.
著者
佐藤 宏子
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.67-67, 2000

本書は、「21世紀の日本の最も大きな社会問題は、若年・中年・老年という三世代の金銭的・物質的・サービス的・情報的・愛情的な交流がうまくいくか、それとも逆に世代間の対立が激化するかの点にあると信じて疑わない」と考える著者が、16名の共同研究者と共に3力年にわたって行なった「世代間交流」の研究成果をもとに、1989年から1998年の間に執筆した「世代間交流」の理論化に寄与する6編の論文を集めたものである。<BR>本書の構成は、第1章 : 高齢化社会における世代の問題、第2章 : ボランティア活動の意味、第3章 : 長寿社会の生涯学習、第4章 : 意味の深みへ-方法論によせて、第5章 : 白秋・玄冬の社会学、第6章 : 家族の来し方行く末を考えるとなっており、薪しい研究分野である「世代間交流」が非常に幅広い視点から論じられている。内容を簡単に紹介すると、長寿化しつつある先進諸国では世代相互間の断絶・抗争が発生しやすくなっており、顕在化した「世代の断絶」や「世代間抗争」に対処するためには、家族を超えた社会的レベルで三世代間の交流システムを再構築する必要があり、全体社会的レベルの世代間交流としてボランティア活動の重要性、生涯学習の意味や必要性などが述べられている。また、エリクソンが老年 (成熟) 期への移行過程の発達課題としたインテグリティ (「充全性」) に到達するためには、高齢者が自分と同じ老年の世代と接触するだけでなく中年や若年の世代と接触し、それらの人びとのために働くという手立てが有効であり、さらに「長寿社会」から「成熟社会」に達するためには、すべての世代がすべての世代と接触し、損得を離れて相互に奉仕し合う「世代間交流」が「必要条件」の一つであると指摘している。また、本書の後半では著者自身の老後感、ライフパニック、臨死体験、参禅における悟りの境地、遺伝子操作が論じられたり、現時ヒト科の古生物学・考古学的研究・霊長類の動物生態学的研究・狩猟採集民の人類学的研究の成果から、ヒトにとって言語の獲得と家族の形成が不可欠なものであったことが導かれており、経験と学識の豊かな著者ならではの示唆に富んだ良書である。ただ、私は著者らのライフパニック調査における有配偶男性の身の回りのことや家事に関する生活自立能力の低さは、著者の言葉を借りるならば「健常者の平和時の日常生活世界」の問題であって、危機管理としての問題ではないと感じること、「夫婦が負担を平等に分け合いながら共生しようとしたときの二つの生き方」には共感しかねることを正直に付け加えさせていただきたい。
著者
中田 奈月
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.41-51, 2004
被引用文献数
1 1

近年, 女性しか従事しないと考えられてきた保育職に参入する男性が増加している。男性保育者の存在は我々がイメージしてきた「保育者」像を大きくゆるがす。そのため女性保育者や保育所所長は彼らを不必要だと考えたり矛盾した期待をしたりする。そんななかで男性保育者は周囲の人々の期待にどうこたえ男性保育者であり続けるのか。男性保育者の経験に伴って変化する男性保育者自身の「保育者」定義に着目して分析する。分析の結果, 男性保育者の「保育者」定義にはシークエンスがあり, そこには3段階あると分かった。それらの定義は, 優しく世話好きでケア労働を好むといった従来の「保育者」定義とは大きく異なる。第1段階, 彼らは自らを保育所の父と定義する。第2段階, ある程度経験をつんだ男性は, ジェンダーの偏りを是正する者として男性の視点を取り入れようとする。そして第3段階, かなり経験をつんだ男性は, 子どもの発達を促す者として保育をしていた。
著者
廣嶋 清志
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.56-62, 2016
被引用文献数
1

1 0 0 0 OA 家族戦略?

著者
武川 正吾
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.43-51, 2013-04-30 (Released:2014-11-07)
参考文献数
26
被引用文献数
2 1

この報告は,家族戦略論のなかに公共政策を新しい変数として導入することを提案する.家族戦略の「構造的諸条件」の多くが公共政策の決定の結果として生み出されているからである.他方で,個々の家族戦略の集積の結果として,これらの「構造的諸条件」は単純再生産されたり,拡大再生産されたり,構造自体が変化する場合もある.日本も他の先進諸国と同様,グローバル化と個人化の影響を受けている.しかしその影響が他国と同様に純粋的な形で現れないのは,日本では「家族」が緩衝地帯としての役割を果たしているからである.このようなことが可能となった背景には,日本の福祉レジームの存在がある.しかし,その家族そのものの数が現在減少しつつある.家族変動に対する公共政策の影響は,これまで十分に評価されてきたとはいえない.しかし,公共政策の最初の一撃は,家族変動を含む社会変動にとって重要である.家族戦略と公共政策との間の正のスパイラルを確立するために,現在の日本では「公共政策による最初の一撃」が求められている.
著者
舩橋 惠子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.209-218, 2011-10-31 (Released:2012-11-13)
参考文献数
28

本稿の目的は,フランスの家族政策が家族変動にどのように対応しているかを示すことである.はじめに,増加する同棲,別居パートナー,婚姻に代わろうとしているパックス,離婚とひとり親,ステップファミリーといった,今日的パートナーシップ現象を概観する.これらは,家庭や職場における女性の権利と,生殖に関する権利を尊重することと並行していた.次に,働く親を支えるために1980年代から革新してきたフランスの家族政策の概要(子どもの教育・保育システム,労働時間の短縮,十分な余暇,膨大な家族手当など)について描き出す.フランスの経験は,家族変動の時代にあっては家族の絆(きずな)を社会的に支えることが,われわれの社会を持続可能な状態に保つということを教えている.
著者
後藤 憲子
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.21-29, 2009

1995年から2005年の10年間で,就学前の幼児を育てている家庭の世帯年収は全体的に減少傾向が見られたが,1ヵ月あたりの平均教育費は増加していた。全体的に年収が減少しているのに対し,教育費は増加しているので,この10年間で世帯年収に占める教育費の比率は上がっていることになる。学力低下を危惧する世論が就学前の子どもを持つ保護者にも影響を与え,習い事などに使う金額が増えていることがわかった。母親の学歴別に子ども一人あたりの平均教育費をみると,高等教育(短大も含む,以下同)を受けた母親と高卒の母親の間で,95年から05年の10年間で,教育にかける金額の差が大きくなっていることがわかった。また,習い事などの実施状況をみると,高等教育を受けた母親で英語の実施率が高くなっていることがわかった。将来のために幼児期から行う習い事として,高収入・高学歴層で英語の実施率が高くなっていた。
著者
後藤 憲子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.21-29, 2009-04-30 (Released:2010-04-30)
被引用文献数
1

1995年から2005年の10年間で,就学前の幼児を育てている家庭の世帯年収は全体的に減少傾向が見られたが,1ヵ月あたりの平均教育費は増加していた。全体的に年収が減少しているのに対し,教育費は増加しているので,この10年間で世帯年収に占める教育費の比率は上がっていることになる。学力低下を危惧する世論が就学前の子どもを持つ保護者にも影響を与え,習い事などに使う金額が増えていることがわかった。母親の学歴別に子ども一人あたりの平均教育費をみると,高等教育(短大も含む,以下同)を受けた母親と高卒の母親の間で,95年から05年の10年間で,教育にかける金額の差が大きくなっていることがわかった。また,習い事などの実施状況をみると,高等教育を受けた母親で英語の実施率が高くなっていることがわかった。将来のために幼児期から行う習い事として,高収入・高学歴層で英語の実施率が高くなっていた。
著者
篠崎 正美
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.24-38, 2004
被引用文献数
1

農村において, とりわけ男性農業後継者の結婚難が地域社会の問題となっている。結婚や家族観における最近のジェンダー・ギャップ, 農村や農家の経済社会的後進性農業男性の「消極性」などが結婚難の主因として論じられている。が, 重要な要素として日本における配偶者選択の主な領域である学校や職場という第2次的生活領域で, 農村には若い未婚女性と出会えるチャンスが非常に少ないという構造的欠損を考える必要がある。<BR>本論文では, 自治体の結婚介入事業の種類や目的, 経費, 成果, 成否の理由の調査から, 農村の結婚問題の現況を把握するとともに, 行政の担当者自身個人的な結婚観と事業の公的な目的との間のずれにも注目した。次に, 結婚相談員への面接の分析から農村に生じている結婚への意味づけの大きな揺らぎ, 4Hクラブ男性メンバーへの集団面接の分析から, 一方で「消極的」で伝統的な配偶者選択と, 他方で合コンなど「遊び」の第3次生活領域への積極的な参加によるポストモダンで, 脱制度化された結婚と家族への多様化が認められた。
著者
池岡 義孝
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.55-66, 2000-07-31 (Released:2009-09-03)
参考文献数
33
被引用文献数
2 1 2

本稿の目的は、戦後日本の家族社会学における社会調査の方法の定式化を、その成立期にまで遡及して考察することである。社会調査の方法については、それを量的方法と質的方法に区分し、前者を主とし後者を従とするウエイトをつけた補完関係にあるものとして位置づけることが一般的であるが、家族社会学においてもこれと同様の二分法的理解が、現在に至るまで広く普及している。本稿においては、家族社会学におけるこうした量的方法と質的方法という二分法的理解が、戦後日本の家族社会学が通常科学化した1960年代ごろに成立したものであることを、それを提起した小山隆を中心とする家族社会学に固有の要因と、より一般的な社会学および社会調査法をめぐる状況の両面から論証する。そのうえで、さらにそれがその後の家族社会学の展開においてどのような道筋をたどったのか、その方向性の概略的な見取り図を提起することにしたい。
著者
立山 徳子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.77-88, 2010-04-30 (Released:2011-05-10)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

本稿では都市度(都心・郊外・村落)が「家族・コミュニティ問題」にどのような関連をもつのかを,子育てにおける世帯内ネットワークのサポート動員から検討した。主な知見は次の三つである。1)都市度は夫の子育てサポートと関連せず,都市度と強く関連する夫の就労スタイルが夫の子育てサポートの多少を説明する効果をもつ。2)親同居世帯に限った分析から,世帯内サポート(夫サポートと同居親サポートの総和)は都市度ではなく夫の就労スタイルと関連をもち,また世帯内サポートの差は同居親サポートではなく夫サポートの差によるものであった。3)都市度と育児孤立との間に関連は確認されず,夫サポートならびに世帯内サポート量と育児孤立の間に有意な負の相関関係が確認された。だがこれを都市度別に確認すると,郊外のみにこの負の相関関係が確認された。以上から,都市度は間接的ながら,都市空間における世帯内ネットワークの差異を説明するといえる。
著者
中西 泰子
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.45-57, 2007
被引用文献数
1

近年, 日本では, 嫁による介護に代わって, 娘による介護に期待が寄せられている。娘による老親扶養は, 情緒的な結びつきに支えられた, 選好的な世代間関係と評される。しかし, その規定要因については, 十分な検証はなされていない。本稿では, 娘の老親扶養志向を規定する要因を, 社会的要因も含めて検証する。また, その独自性を明確化するために, 息子の扶養介護志向の規定要因も併せて分析し, 両者の比較考察を行う。対象は, 府中市在住の20代男女である。従属変数は, 老親に対する経済的扶養志向および介護扶養志向である。独立変数には, 父母との情緒的親密さに加えて, 社会的要因として, きょうだい構成や本人および親の学歴, 親の経済状態ライフコース志向を用いる。分析の結果, 娘の老親扶養は, 単に情緒的親密さによって支えられているのではなく, 性別分業という社会構造的要因によっても規定されていることが示された。
著者
野田 潤
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.17-26, 2006
被引用文献数
1

本稿は, 近代以降の夫婦関係と親子関係の接続についての人々の了解の形式の変容を明らかにし, 近代家族の情緒的関係の分節化を試みる。読売新聞の悩み相談欄「人生案内」 (1914~2003) の語りを分析した結果, 以下の知見が導かれた。 (1) 夫婦関係と子どもの幸福は1930年代までは無関係とされており, すべての語り手が子どものために頻繁に両親の夫婦仲を重視し始めるのは1970年代以降のことである。 (2) 夫婦関係と親子関係も1960年代までは別個に成立するものとされていたが, 1970年代後半以降, 人々は二つの間に因果関係を想定するようになっている。これらの知見からは, 近代家族の情緒的関係と現在ひとくくりに言われているものが, 近代以降でも変化していたことが明らかになった。なかでもとりわけ現在は, 家族内部の複数の異なる関係を, 容易に影響し合い連動し合うものだとみなし始めている点で, 特殊な時代だと言える。
著者
善積 京子
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.59-65,140, 1993

In recent years, an increasing number of people in Europe and the United States are choosing to live together, i.e. to cohabit, rather than legally get married, and are discoveing the advantages of this arrangement. Traditionally, cohabitaion was not a choice but a forced lifestyle for those who were not allowed a legal union.<BR>This paper first cited some statistics, such as the increase in the number of divorces, the decrease in the number of marriages, the increase in the number of cohabitations, and the increase in the number of births out of wedlock, as a way to depict the current so-called "crisis in the marital system" in Western Societies.<BR>Secondly, after analyzing the social background which has led to this increase in cohabitation, people living together are categorized into three groups : young people, women seeking independece, and people seeking an alternative to remarriage. Their process of choosing cohabitation as their lifestyle, from the point of view of strategy, is also explained.<BR>Thirdly, the paper examines Swedish society where cohabitation is not only accepted as a socical institution but also legal. Through examining the Swedish example, social conditions which enable "neutrality" of lifestyle and a new paradigm for the family is investigated.<BR>Finally, the possibilty of cohabitation being chosen as a lifestyle in Japan in examined.
著者
大和 礼子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.40-40, 2002-03-31 (Released:2010-11-18)

スウェーデン政府は1995年から「女性の権力調査」というプロジェクトを行った。本書は, その一環として1996年に行われた, 質問紙とインタビューからなる調査報告書の翻訳である。この調査研究の理論的枠組みは次のようなものである。 (1) 家族生活の組織方法についての伝統的規範が弱まった現代のスウェーデンにおいては, 家事・賃金労働, 家庭内のお金の組織化は, 夫妻 (サムボとよばれる同棲関係を含む) 間の「交渉」によって決められる部分が大きい。 (2) なにが交渉に影響を及ぼすかについて, 3つの仮説 ((1) 経済的合理性, (2) ジェンダーに関する文化的既成観念, (3) 権力資源) がある。 (3) この研究では, 交渉において夫妻間には利益の不一致があることを前提にする, つまり (3) の権力資源仮説にとくに注意を払う。 (4) 交渉の結果は, 短期的・長期的に夫妻関係に影響を及ぼす。このような枠組みのもとで調査研究が行われた結果, 明らかになったのは, 第1に, 男女平等規範の浸透にもかかわらず, 実際の家事・賃金労働, お金の組織化には多様性があるということである。一方の極には家父長的な分担を行っている家族, もう一方の極には男女平等な分担を行っている家族があり, そして残りはこの2極の間に位置している。2極の間に位置する家族には, 共通したジェンダー関係のパターンがみられ, それは「男女ともに賃金労働につき家計に貢献することが基本とされるが, 子どもが幼い間は母親が育児の責任をおもに取るべきであり, また家事は男性も一部しなければならないが, おもに責任をもつのは女性である」というものである (ただしこの共通性を強調しすぎるのは危険だと著者らは述べている) 。第2に, なにが交渉に影響を与えているのかについては, 経済的合理性, ジェンダー観念, そして権力資源のどれもが, ある程度影響を与えている。ただし育児休業の取得については, 「育児は母親の責任」というジェンダー観念の影響が強い。第3に, 交渉の結果, とくに家事の分担に関して, 妻の側に不満が高く, これは家事分担に権力がかかわっていることを示す。また交渉についての不満・対立によって関係の解消 (離婚) にいたる場合もあるが, 過去の交渉の結果は, 離婚後の生活についての交渉や, 生活そのものにも影響を及ぼす。以上のような骨格だけの紹介では十分示すことができないが, この調査研究は「交渉」という概念を採用し, インタビュー調査を合わせて行ったことによって, 家事の分担, 育児休業の取得, お金の管理方法や配分などが夫妻間で決められていく過程を生き生きと描き出しており, 夫婦関係についてのさまざまな洞察や新たな仮説を考えるためのヒントに満ちている。また第1章で, この問題を考察するための3つの主要な仮説が, その学説史をも含めて整理されていて有用である。夫婦関係に関心をもつ人, 現代のスウェーデン家族に関心をもつ人には, ぜひ一読を勧めたい。