著者
柳下 実 不破 麻紀子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.7-18, 2019

<p>近年,日本社会でも有配偶離婚率が高まっている.離別が家事労働に与える影響を検討した欧米の先行研究では,離別は男性の家事を増やし,女性の家事を減らすことが示されている.しかし,日本では欧米諸国に比べ離別者の実親同居率が高いため,離別の効果の検証には親同居の影響を考慮する必要がある.本稿は働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査を用いて,離別が男女の家事にどのような影響を与えるのか,また離別者の家事は親と同居することによってどのように変化しているのかを固定効果モデルで検討した.結果から,離別によって男性は家事を増やし,女性は家事を減らすことが示された.また,親同居による家事の削減効果は既婚者より離別者の方が大きいことも示された.離別者は稼得役割と家事労働を一人で担わなければならず役割過重が生じやすいが,親と同居できるか否かで家事労働の負担には格差が生じていることが示唆された.</p>
著者
松岡 英子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.101-112,142, 1993-07-25 (Released:2010-02-04)
参考文献数
26
被引用文献数
8 2

This paper discusses and estimates the various factors on stress which have been used with family caregivers for the impaired elderly, and explores the factors influencing the stress of family caregivers, using the conceptual components of stress : “Stressor”, “Perception of caregivers”, “Resources” and “Stress response”. The sample consists of 873 family caregivers for the impaired elderly living in Nagano prefecture, of which 712 (81.6%) were valid responses. A questionnaire was developed to investigate present stress symptoms of the caregivers. Principal component analysis, Cronbach's alpha, Multivariate analysis of variance and Multivariate analysis of convariance are used to look at the relationships between factors on the stress of caregivers. The findings show that, the conceptional components, “Stress response” is related to the other components “Stressor”, “Perception of caregivers” and “Resources”. As for “ Stress response”, there were nine significant factors influencing the stress level of family caregivers. They are the elderly person's mental status, the quality of service, traditional caregiving ideology, the caregiver's health, the caregiver's job status, the emotional attachments in family relations, the emotional support from relatives, the emotional support from friends and neighbors, and instrumental support in the case of emergency from relatives.
著者
鈴木 富美子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.58-70, 2007
被引用文献数
3

本稿は男女共同社会への過渡的状況を生きる夫婦関係の諸相を計量的に描き出す試みである。夫婦関係を多元的にとらえるため, 「夫婦類型」の特徴を夫婦ペアデータから分析した。夫婦類型は「夫からの情緒的サポートの有無」と「妻の苛立ちの有無」に対する妻回答をもとに, 「サポート有・平穏型」「サポート有・苛立ち型」「サポート無・苛立ち型」「サポート無・平穏型」の4タイプを作成, 夫と妻および両者を組み合わせた「夫婦属性」, 行動面・意識面の共同性, 夫婦関係満足度から分析を行った。分析の結果, 「サポート有・平穏型」を除き, 行動面の共同性や夫婦間の意識の連関が低く, 妻の夫婦関係満足度は夫より低かった。このように, 結婚生活のひずみを背負っているのは主に妻であり, 現状のまま男女共同社会が到来するとこうした状況を助長しかねないことが明らかとなった。夫婦間の「代替戦争」を避けるには, 夫婦双方ともに労働環境の改善が急務となる。
著者
玉水 俊哲
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.15-30, 1989-07-20 (Released:2010-05-07)
参考文献数
54

1. This article aims at finding the clue to prospective image of the family through a study on the relation between industrial/economic structural changes and the family changes in post-war Japan.2. On the basis of the socio-economic development in post-war Japan, Japanese family has drastically changed, i.e., the family composition has been simplified, the family ties have been loosened and the family consciousness based on these changes has become more individualistic.3. The way of life has been changed as a factor of changes in the family form. This trend involved changes proper to be termed 'Privatization' and/or 'Dispersed Privatization' of family.4. This privatizing family should not be termed 'Family Disorganization' since it contains possibilities to create a new solidarity and a new way of life for individuals who constitute the family.
著者
望月 嵩
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.23-31, 2003

結婚についての考え方が揺れ動いている。本論は, 結婚は (1) 社会的に承認された性関係, (2) 継続的関係, (3) 権利義務関係, (4) 全人格的関係という特性をもった男女の結合関係 (夫婦関係) を形成する社会制度であるという筆者の見解を説明する。そして, これらの特性とは異なった見解や現象 (たとえば, 同棲, 同性カップル, シングル志向など) を検討することによって, 結婚の意味を再確認する。<BR>結婚制度を否定するかのような現象がみられることは事実であるが, それらを検討してみると, 必ずしも結婚制度を否定しなければならない必然性は認められない。したがって, 今後の動向を考えてみると, 結婚制度とそれ以外の生き方が併存していくことになろう。
著者
水嶋 陽子
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.10, pp.83-94, 1998
被引用文献数
1

本稿は、高齢女性と子供の関係に生じている、新しい動向の一端を捉えることをめざしている。ここで着目する老年期の今日的特徴とは、夫の死後、女性が独居する時期の出現である。まずアメリカの親子関係研究を概観し、この新局面の分析には、親子関係が双方の交渉により変容しうること、つまり構造的ではなく関係的な性質だとする視角を用いる。すると高齢女性の人間関係形成能力が問題となる。そこで主婦役割を検討し、女性は老年期にも、生活に密着した人間関係形成能力をもつ存在であることを確認する。そのうえで、調査事例を紹介する。事例から明らかになったのは、 (1) 高齢女性は子供を含め広範な人々との間で相互依存的なネットワークを形成している、 (2) 高齢女性は自分のライフスタイルにあわせて、子供との関係を操作している、である。以上より、高齢女性の親子関係には柔軟性があるといえる。最後に、親子関係の柔軟性がもつ今日的な意味を議論する。
著者
松田 茂樹 鈴木 征男
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.73-84, 2001
被引用文献数
3

本稿では, 平成8年社会生活基本調査の個票データを用いて, 夫婦の家事時問の規定要因を探った。分析に使用したのは, 同調査のうち, 夫が60歳未満で就労している夫婦約1,200組の平日の個票データである。分析は, 夫と妻の家事時間が, 本人の労働時間と配偶者の労働時間, 家事時間にどのように規定されるかという点を中心に行った。多変量解析の結果, 次のことが明らかになった。 (1) 夫, 妻とも本人の労働時間が長くなるほど, 家事時間は短くなる。ただしその傾向は妻で顕著である。 (2) 配偶者の労働時間が長くなると, 本人の家事時間は増加する。ただし夫の家事時間は, 妻の労働時間が自分以上に長いときに増加する。 (3) 夫と妻の家事時間の間には, 一方が増加すれば他方が減少するというようなトレードオフ関係はない。これらの結果から, 妻が中心となって家事を行い, 妻がすべてできない場合に夫が支援するという現代夫婦の家事分担像が示唆された。

1 0 0 0 OA 家族の個人化

著者
目黒 依子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.8-15,116, 1991-07-20 (Released:2009-08-04)
参考文献数
32
被引用文献数
4 3

The family has become a central issue of concern for policy makers in Japan due to demographic and socioeconomic changes. The resurgence of the family-crisis theme in the United States in the 1970s reflected the changing patterns of familial living as options among alternative life styles. The break-down of such assumptions as “the family as a group” and “two-parenthood”, and the increasing visibility of non-modal living styles over time has legitimated the emergence of new perspectives. Sex roles and gender research has accumulated a considerable amount of evidence to indicate that the wife's decreasing economic dependency on the husband, or woman's increasing autonomy, has shaken the modern family ideology. Life course studies and social network studies have shown the effectiveness of using the individual as the unit of analysis in studying the family. Through the review of the above research areas, this paper attempts to present a framework to explain a mechanism of family change, claiming that woman's independent access to economic resources brings the modern family system based on the “provider-housewife” role-pairing to an end. This process is the “individualization of the family” because the autonomy of each spouse is assumed. An application of such a framework is intended to interpret seemingly relevant scenes of contemporary Japanese families.
著者
柳下 実 不破 麻紀子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.142-154, 2017-10-31 (Released:2018-11-08)
参考文献数
46

日本では女性の就業が拡大する一方,非正規雇用の増加による雇用の不安定化や就業と家庭生活の両立の困難など,結婚を取り巻く厳しい環境は根強く残り,未婚・晩婚化の背景ともなっている.そこで本稿は「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査2007」を用いて未婚女性の就業継続意向および雇用の不安定性と希望する結婚までの期間との関連を検討する.結果から,就業継続を予定している女性は希望する結婚までの期間が長いことが明らかになった.就業継続を目指す未婚女性が結婚後に就業と家庭生活の両立が困難になると予想し,結婚を先延ばししようとしている可能性が示唆された.また,非正規雇用の女性は希望する結婚までの期間が長いのに対し,大企業や専門職など比較的安定した就業環境で働く女性は短いことが示された.本稿の結果は女性の就業状況が希望する結婚までの期間の長短に影響を与えていることを示唆する.
著者
田渕 六郎
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.111-120, 2018
被引用文献数
1

<p>本稿は主として全国家族調査(NFRJ)データの分析にもとづき,世代間の居住関係の変化に焦点を当てて2000年代における現代日本家族の動態を明らかにした.有配偶子の親との同居は,夫親との同居率がやや低下したものの大きな変化は生じておらず,親との同居に関連する要因には,持続的なパターンと変化の両方がみられた.未婚子の親との同居については,親同居率が顕著に上昇しており,同居の関連要因について,未婚子の低い経済的地位と同居との関連が継続的に観察された.2000年代の世代間居住関係は,未婚子の親との同居が拡大するなかで,親と有配偶子との間の「直系家族制」的な同居が減少し,その構造も変化の兆しをみせている.こうした今日の世代間居住関係の変化を的確に解釈するためには,従来のような有配偶子とその親との関係に限定されないような研究枠組みからの接近が求められる.</p>
著者
余田 翔平
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.98-106, 2018

<p>本稿の目的は,パネルデータを用いて,有配偶女性の就業とメンタルヘルスとの関係をめぐる2つの相反する仮説を検証することである.第1の仮説は役割過重仮説と呼ばれ,多重役割がメンタルヘルスの悪化をもたらすと予想する.第2の仮説は役割展開仮説と呼ばれ,職業役割の獲得は社会的アイデンティティにつながるためメンタルヘルスにも良好な影響を持つと予想する.クロスセクションデータを用いた先行研究によると,日本ではこれらのいずれの仮説も支持されていない.「全国家族調査パネルスタディ(NFRJ08-Panel)」を用いた分析の結果,時間不変の個人特性を統制すると,有職時は無職時よりもメンタルヘルスが良好なことが確認された.この結果は役割展開仮説と整合的であり,有配偶女性が職業役割から心理的メリットを得ている可能性を示唆するものである.ただし,本稿には方法論上残された課題やデータの制約も多く,それらについて最後に整理する.</p>
著者
服部 範子
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.70-80,119, 1990

Topics about today's family problems and women's roles are debated very actively recently. In this context, there is an interst in how &ldquo;the modern family&rdquo; and sexual division of labor emerged in the study of family history and women's studies.<BR>The ideology of motherhood emerged during the period of the women's liberation movement at the biginning of this century : Ellen Key was known as a typical thinker about motherhood at that time. Through her thought, I believe we can understand how people, especially women came to accept the idea of &ldquo;two-sexes-different-but-equal&rdquo; favorably in those days. Her position on this should be clarified in this paper. To understand this better, the socio-economical circumstances at that time in Sweden, her home country, are considered.<BR>She insisted that women shold be seen not as &ldquo;humankind&rdquo; but as &ldquo;womanhood.&rdquo; She thought mtherhood was the very essential core part of womanhood, so she insisted that every wife or mother should stay home all day long, and put her children first, and that that was very rewarding work. Such ideas are considered to contribute to the formation of the ideology that women's place is in the home, by giving high priority to love, marriage and motherhood.
著者
湯沢 雍彦
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.6, pp.29-36,134, 1994-07-25 (Released:2009-08-04)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

The rerationship between husband and wife in Japan in the 20th century can be categorized into two types; the “Pre-World-War” marital relationship, common among Japanese before the 1950s, and the “Contemporary” common after 1975.In the “Pre-World-War” relationship, people did not marry for romantic love, but rather thought of marriage as a means for realizing stability in their lives.The marital structure of the relationship in general was characterized by the husband's dominance, the clear existence of traditional gender roles among wage earning families, and a lack of emotional function.On the other hand, in the “Contemporary” marital relationship, both men and women place the most emphasis on the free choice of a mate, with the woman's will being more important than the man's when decaiding to marry.For both parties, equal partnership and motional satisfaction are considered to be the most important factors in the relationship.When these goals cannot be realized, the wife generally takes the initiative for a no-fault divorce.There are still many doubts, however, so to whether this type of relationship will become more common in Japanese society.
著者
余田 翔平
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.60-71, 2012
被引用文献数
7

本稿の目的は,ひとり親世帯で育つことによってどれほどの教育達成上の不利を被るのか,そうした不利は時代とともにどのように変化しているのかを明らかにすることである.『日本版総合社会調査(JGSS)』を用いた分析の結果,以下の点が明らかになった.(1)高校進学や短大・大学進学といった指標について,ひとり親世帯出身者は二人親世帯出身者よりも一貫して不利な立場に置かれていた.(2)特に,短大・大学への進学格差は顕著に拡大していた.(3)父子世帯は母子世帯よりも経済的には恵まれているにもかかわらず,父子世帯出身者と母子世帯出身者との間に教育達成水準の違いはほぼ見られなかった.(4)さらに,ひとり親世帯と教育達成との関連は「15歳時の世帯収入レベル」では十分に説明されず,経済的要因以外の媒介要因を解明する必要性が示された.