著者
倉本 惠生 酒井 敦 酒井 武 田淵 隆一
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.107-111, 2000-03-20 (Released:2018-01-16)
被引用文献数
1

四国西南部,四万十川流域において,暖温帯性針広混交林のリターフォールの季節変化と年間リターフォール量を調べた。1997年12月から1998年11月までのリターフォール量には明瞭な季節変化がみられ,1月,5月,および10-11月にピークがみられた。組成別にみると,広葉では,5月と9月に落下が集中し,枝と樹皮は10月の集中落下と1月の小ピークが観察された。その他の細片の落下は10-11月に激増しており,そのほとんどが針葉であった。年間リターフォール量は,3.94ton・ha^<-1>であり,うち33.5%が広葉で占められていた。また, 16.9, 6.0および43.6%は,それぞれ,枝,樹皮,および,その他の細片で占められていた。広葉のリターフォール量は,尾根部より斜面部で多く,針葉では逆に,尾根部で斜面部よりも多かった。これらの違いは,地形に対応した上木樹種組成の違いを反映していると考えられる。
著者
野崎 愛 小林 正秀 藤田 博美 芦田 暢 江浪 敏夫 柴田 繁
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.61-66, 2001
被引用文献数
1

カジノナガキクイムシが穿入して枯死したミズナラの丸太にシイタケ菌・ナメコ菌・クリタケ菌を植菌し,子実体の発生量と植菌丸太からのカジノナガキクイムシ脱出数を調査した。丸太から食用きのこの子実体が発生し,枯死木がきのこ栽培に利用可能であることが示唆された。また,シイタケ植菌丸太からのカジノナガキクイムシ脱出数は少なかった。次に,被害枯死立木へシイタケ菌・ナメコ菌・クリタケ菌・エノキタケ菌を植菌したところ,シイタケ菌を植菌した立木からの脱出数が少なかった。これらの結果から,シイタケ菌を植菌することでカジノナガキクイムシを防除できることが示唆された。
著者
野崎 愛 小林 正秀
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.115-121, 2004

カシノナガキクイムシの穿入を受けて枯死したミズナラを用いて食用きのこの栽培を行った。枯死木の幹または枯死木から採取した1mの丸太に,シイタケ菌,ナメコ菌,クリタケ菌を植菌したところ,丸太だけでなく枯死木の幹に植菌した場合でも子実体が発生した。いずれの食用きのこも,枯死木の地上高2m以下の幹から採取した丸太からの子実体発生量は,地上高2m以上から採取したものより少なく,カシノナガキクイムシの穿入量が多い幹下部はこれらの食用きのこの栽培に適さないことが示唆された。シイタケ菌を伐倒4日後と3ヶ月後の丸太に植菌した結果,伐倒4日後のほうが子実体発生量が多かった。また,カシノナガキクイムシ共生菌の菌糸伸長を阻害する能力が異なる3つのシイタケ菌を枯死木の幹または枯死木から採取した1mの丸太に植菌した結果,菌糸伸長阻害力が最も高い東北S10の子実体発生量が最も少なかった。以上のことから,カシノナガキクイムシ穿入枯死木は食用きのこの栽培に利用できるが,東北S10の子実体発生量が少なかったことから,多くの子実体を得ることとカシノナガキクイムシの脱出抑制を同時に実現することは困難と考えられた。
著者
高橋 絵里奈 竹内 典之
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
no.8, pp.121-124, 1999-03-25
被引用文献数
2

東吉野村杉谷の山守,垤忠一氏による除間伐の調査を行い,特徴を示した。長伐期を前提として除間伐を実施し,除間伐前後の試験地全木の胸高直径を測定した。直径階別本数分布を比較すると,若齢林分と高齢林分では,同じ基準によっていても,除間伐のしかたが異なった。また,試験地の除間伐前後の状態を,密度管理図を用いて示し,吉野の収穫予想表を用いたものと比較した結果,試験地の管理は,吉野の中庸間伐に相当することが明らかになった。さらに,吉野と和歌山について,木口断面の年輪分布の比較を行った結果,吉野では高齢まで年輪幅がそろう施業が行われていることが確認できた。
著者
高橋 絵里奈 竹内 典之
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
no.8, pp.117-120, 1999-03-25
被引用文献数
1

250年生といわれる人工林を有する吉野でさえ,過疎化,高齢化の問題は深刻で,近い将来長伐期で山林を守り育てる技術が途絶えてしまう懸念がある。従って,長伐期での人工林管理技術の体系化と保存が急がれる。そのため,東吉野村杉谷で長年山守として人工林の保育,間伐に携わってきた垤忠一氏の経歴と,選木の基準についての聞き取り調査を行い,垤氏が,山仕事に楽しさとやりがいと自由を見いだし,山守としての責任感を持って,身近な先達に学び,その精神と技術を引き継いで,長年にわたってこれを実践してきたということを明らかにした。また,除間伐の選木基準は,1.足数をそろえること。(林分を均質に管理する)2.枝張りに注目すること。(永代木などの見極め)3.上の木を伐ること。(他の木の成長を害する木を積極的に伐る)の3点にまとめられた。
著者
小林 正秀 上田 明良 野崎 愛
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.87-92, 2000-09-25 (Released:2018-01-16)
被引用文献数
5

これまで,カシノナガキクイムシの関与するナラ類集団枯損が,倒木の発生によって助長される危険性が指摘されてきた。そこで,生立木の伐倒丸太を被害地に放置する実験を行った。その結果,カシノナガキクイムシは倒木に穿孔し,倒木周辺では主に斜面下部の立木が穿孔されて枯損木が発生した。また,カシノナガキクイムシは伐倒丸太でも繁殖可能で,1年間放置した伐倒丸太から集団枯損に関係すると考えられている病原菌が分離されたことから,伐倒丸太から羽化した成虫は病原菌を媒介する可能性が示唆された。また,風倒木が発生している被害林分を調査した結果,ナラ類集団枯損被害は風倒木を中心に拡大していることが明らかになった。以上のことから,倒木の放置によってナラ類の集団枯損が拡大することが明らかになった。
著者
大代 朋和
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.13-18, 1999-03-25 (Released:2018-01-16)

楽器用の木材は音響上高品質が要求される。本研究では日本国内で大量に生産されているピアノに注目し,ピアノに使用される木材,特に響板材料がどのように変化しているのか明らかにする。日本においてピアノ生産が本格的に開始されたのは戦後のことである。特に昭和30年代後半からピアノの生産量は急増した。このピアノ生産量の増加に対応するために原材料,特に木材の安定供給が必要不可欠であった。当時日本で一般的に使用されていた響板材料であるエゾマツは資源量が減少し,伐採量も急激に落ち込み始めていた。しかし昭和36年に木材の輸入が自由化され,エゾマツの代替材としてシトカスプルースが使用され始めた。現在ではシトカスプルースが供給の安定性という点で主流となっている。しかしながら,量的には少なくなっているがエゾマツの利用が続いているほか,近年ではヨーロピアンスプルースやチャイニーズスプルースの利用が始まっている。ピアノ製造業では,ピアノ需要の落ち込みによる生産量減少に対応するため,グレードの違う木材を利用することで幅広いユーザーの獲得を目指している。
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.19-27, 2015-08-31 (Released:2021-07-07)
参考文献数
38

野球用木製バット(以下、バット)の材種と流通の現状と変遷を明らかにするため、国内主要バット工場6 社への聞き取り調査及び文献調査を実施した。材種に関しては、1979 年に国内製造されたバットはほぼ全量が北海道産材であったが、2005 年頃を境に、北海道産アオダモから北米産・中国産メイプル、中国産モウソウチクへと移行し、現在は外材が少なくとも約70%を占めていると推計される。流通に関しては、以下の点が明らかになった。外材の増加により、1985 年に比べ、北海道のバット材工場数が激減した。バット工場については、メーカーの下請けを維持する工場とメーカーの下請けから脱却する工場の二極化が起こっている。さらに、1985 年には、国内で加工・製造されていたバットが、現在では、バット材加工の多くが海外へと移行し、バット製造工程の一部も中国へ移転し始めていることが明らかになった。また、販売方法としては、インターネット販売が新たに登場した。このような状況で北海道産アオダモによるバット生産を継続するためには、アオダモの育成だけではなく、原産国表示によるブランド力の維持も重要ではないかと考える。
著者
小林 正秀 萩田 実
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.133-140, 2000-03-20 (Released:2018-01-16)
被引用文献数
13

京都府北部の5林分で,コナラとミズナラの枯損状況を調査したところ,コナラよりミズナラの枯損率が高く,枯損率は最初の被害が発生して3年目頃に最大となった。エタノールを用いた誘引トラップでカシノナガキクイムシを捕獲したところ,捕獲数も被害発生3年目頃に最大となった。しかし,本種はエタノールにはほとんど定位しないことが,α-ピネンや誘引剤なしのトラップ及び障壁トラップとの比較で判明した。ナラ樹に粘着トラップを巻き付けて捕獲したところ,飛翔は6月上旬〜10月下旬にみられ,飛翔時間は午前5時〜11時で,飛翔高度は0.5〜2.0mに多いことがわかった。さらに,前年に穿孔を受けたナラ樹に羽化トラップを被覆して調査したところ,羽化時期は6月上旬〜10月上旬であること,枯死木からの羽化は多いが,健全木からは少ないことがわかった。また,枯死木1m^3当りの羽化数は約3万頭で,1穿孔当りでは約20頭であった。割材調査では,枯死木1m^3当りの羽化数は約5万頭で,1穿孔当りでは約13頭であった。また,すべてのトラップ調査においで性比は雄に偏っていた。
著者
大園 享司
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.7-12, 2006-03-31 (Released:2018-01-16)
被引用文献数
2

輪紋葉枯病に罹病したミズキ葉上の菌類を,生葉での病斑拡大と脱落・腐朽にともなう変化に注目して調べた。また分離菌株を用いた対峙培養試験により,ミズキ葉より分離される菌類の,輪紋葉枯病の病原菌に対する拮抗作用を調べた。罹病生葉の輪紋部からは病原菌が主に分離された。病斑周縁部からは病原菌とともに,未感染部に存在する内生菌が分離された。罹病生葉の輪紋部,周縁部において,病原菌が検出された葉片では検出されなかった葉片に比べて菌類の分離頻度が低かったことから,病斑の拡大にともなって内生菌が排除されると考えられた。早期落葉直後の脱落葉では,輪紋部から病原菌が,周縁部から病原菌と内生菌が分離された。未感染部では腐生菌の定着にともない内生菌が減少していたことから,脱落直後においても病原菌感染部への菌類定着は制限されていると考えられた。腐朽の進んだ葉から病原菌は分離されず,輪紋部,未感染部のいずれからも腐生菌が分離された。対峙培養試験において,ミズキ葉上から分離した9種18菌株の供試菌は病原菌4菌株に対して置き換わり,接触阻害,接触前阻害を示した。拮抗作用は供試菌の種や菌株と病原菌の菌株との組み合わせにより異なった。
著者
長崎 敏也
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.33-38, 1999

近年,南方熊楠が,明治政府による「神社合祀」に反対し,神社と神社林を守る運動を行ったことが,環境保護運動の先駆として,最近の環境問題に対する関心の高まりとともに注目されるようになっている。現在のところ,南方熊楠は,明治時代に既に「エコロジー」という言葉を用いたことから,自然と人間の生活をつながりあるものとしてとらえる,現代の環境保護に関する思想に相当する思想を持ち,神社合祀反対運動はその視点に立って行われたもめであるとする見方が有力である。しかし,南方熊楠が神社合祀反対運動に際して用いた論理は,「神社」が廃社となることによって,地域社会の習慣や伝統が崩壊し,「神社林」を伐採することによって貴重な生物が滅ぶというものであり,「神社」と「神社林」は分離されている。自然と人間の生活との関係については,既に主張され,あるいは知られていたことを利用しているに過ぎず,「エコロジー」という言葉も,当時外国で既に誕生していた「生態学」を意味する程度である。
著者
小宮 元晃 柴田 昌三 神埼 護 渡辺 弘之 サン ファン ミン ナム ブー タン
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.55-61, 2001-03-20

株立ち型のタケ(Dendrocalamus membranaceus)は北ベトナムにおいて重要な造林種のひとつにあげられている。この竹林の適正な管理方法を示すために,2大産地のタインホアとフートにおいて地上部現存量と新竹生産量を調べた。調査はタインホアとフートにおいて,林齢2〜21年の林分の中からそれぞれ7林分と6林分,計13林分を選んで行った。その年の伐採開始前の各林分に400m^2の調査区を設置し,稈の齢,サイズなどの調査を行った。さらに標本竹として各齢階と直径階から計8〜10本を選び,地上部現存量を推定するために稈のサイズと稈,枝,葉の乾重との間の相対成長式を作成した。また1年生の竹より新竹生産量を推定した。現行の管理法による林齢10年を超える林分での地上部現存量は約39ton/haで,林齢6年を超える林分での新竹生産量は約12ton/ha/年で安定的に推移していくものと思われた。
著者
丹原 哲夫
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
no.8, pp.137-142, 1999-03-25
被引用文献数
1

ブナ,ミズナラ,クリ,ケヤキ,トチノキ,オニグルミ,ヤマザクラおよびウワミズザクラの8樹種12カ所の広葉樹母樹林において1992〜1998年の5〜7年間にわたり,シードトラップによって種子落下数を調査した。ブナ,ミズナラ,クリ,ケヤキ,ウワミズザクラおよびオニグルミは調査年次によってはほとんど結実しない年もあった。また,ブナ,ミズナラ,ケヤキ,ウワミズザクラおよびオニグルミは隔年結果性を示した。一方,トチノキ,ヤマザクラは調査年次による大きな違いがみられなかった.豊作年とみられる年の1m^2あたりの種子落下数は,ブナ約150〜300粒,ミズナラ約100粒,クリ約30〜60粒,ケヤキ約500〜3,000粒,オニグルミ約10〜20粒,ウワミズザクラ約750粒であった。また,ヤマザクラ,トチノキの平均種子落下数はそれぞれ約880粒,約40粒であった。12調査地の平均種子重量と最大種子落下数には両対数軸上で負の直線関係が認められた。このことから,樹冠単位面積あたりに生産される種子数は,樹種が異なってもその種子重量に対応した上限値が存在すると推察した。
著者
小林 正秀 野崎 愛
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.67-71, 2001
被引用文献数
2

ナラ類集団枯損の被害材から,特定の糸状菌が分離されている。4種類の食用きのこ,シイタケ菌,ナメコ菌,クリタケ菌,エノキタケ菌とナラ類病原性未同定菌の対峙培養を実施して,食用きのこが未同定菌に与える影響を検討した。その結果,シイタケ菌が未同定菌の菌糸伸長を阻害することが明らかになった。次に,73品種のシイタケ菌との対峙培養を実施して,未同定菌の菌糸伸長を阻害する能力が高い品種を選抜した。選抜したシイタケ菌品種は,ナラ類集団枯損の防除に利用できると考える。
著者
岡本 安順
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
no.6, pp.131-134, 1997-03-25

スギカミキリ,マツノマダラカミキリに対するクロアリガタバチの寄生効果を調査するため,次の実験を行った。1)野外網室内実験:スギカミキリ産卵木とマツノマダラカミキリ産卵木を野外網室内に設置し,クロアリガタバチを放虫して寄生状況を調査した。2)林内実験:林内において,スギカミキリとマツノマダラカミキリ被害木にクロアリガタバチを放虫して寄生状況を調査した。野外網室内実験のスギカミキリへの寄生率は最高91%で高い寄生効果が認められたが,林内実験では10%にすぎなかった。野外網室内実験のマツノマダラカミキリ不在孔率(空室の蛹室の割合)は85%で,対照区に比べ極端に高かったが,林内実験の不在孔率は35%で,高い寄生効果は認められなかった。
著者
上田 明良 藤田 和幸 浦野 忠久 山田 倫章
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
no.8, pp.169-172, 1999-03-25

オオコクメスト成虫放虫によるマツノマダラカミキリへの捕食効果を,アカマツ丸太を入れた網室に双方の成虫を放すことで調べた。1996年の試験では7月の2週間,双方の成虫を同時に放した。放虫後回収したカミキリはほとんど生存していて,死亡したわずかも外傷はなかったことから,野外での成虫によるカミキリ成虫の捕食はないと判断できた。また,期間中放飼虫は飢えていて,ほとんど産卵できなかったと思われた。そこで,1997年の試験では,餌としてマツノマダラカミキリ終齢幼虫を丸太に針で刺した。卵巣の発達状況から産卵は行なわれたと考えられたが,割材調査ではカミキリ幼虫数に対照区と差がなく,放した成虫の子世代による捕食効果はみられなかった。キクイムシ類の加害が全ての丸太に多くみられた野外網室からは3頭のオオコクヌスト幼虫が得られたが,カミキリがいるだけでキクイムシ類がいなかった室内網室からは1頭しか得られなかった。このことは,野外丸太のような多様な生物が住む丸太ではオオコクヌストの生育が良く,捕食効果が上がるであろうことを暗示する。
著者
井上 牧雄 西 信介
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.91-94, 2001-03-20

キツツキ類を利用して松くい虫の被害を防除するため,キツツキ類の営巣環境を調査するとともに,営巣用巣丸太とねぐら用底なし巣箱の利用状況を調べた。アオゲラの営巣場所は広葉樹生立木の樹幹部が多かったのに対して,アカゲラ,オオアカゲラおよびコゲラは枯死木や衰弱木の樹幹部や太枝も利用した。営巣用巣丸太は,アオゲラとコゲラが巣の入り口をつくったことから,営巣対象になることが確認できた。ただし,造巣は完成することなく終わった。ねぐら用底なし巣箱は,調査期間中にねぐらとして利用されたものは希で,利用した種もコゲラかカラ類であり,マツノマダラカミキリ幼虫の有力な捕食者であるアオゲラの利用は確認できなかった。