著者
佐藤 直人 Naoto SATO
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
no.1, pp.63-74, 1997

はじめに、日本語のナガラ節が、付帯状況と逆接という二つの意味に対応して、それぞれVP内、NegPに付加するという観察が得られることを示す。この観察は、ナガラ節の性質を説明する理論が如何なるものであれ捉えなければならないものであるが、この妥当性を満たすという要件は可能な理論の幅を狭める。ナガラ節がもつ意味によって付加する位置が決定されるという理論より、付加する位置によって意味が決まるとする理論の方が自然な説明が与えられるため、そのような理論が望ましいことを論ずる。
著者
野瀬 昌彦
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.61-72, 2004-12-25

フィンランド語の様格形 "-na/-na" の用法は意味的に, 属性やステータスを表すグループ, 動詞や形容詞と現れて状態を表すグループ, 時間表現, そして場所関係等の語彙的な用法の4つに分類することができる. 本論では, 実際の用便鯛査から様格形の意味用法を分類し, それぞれのグループの割合を調べた. 加えて, 様格形が語順に現れる位置を調査し, 様格形の4つの意味カテゴリーと語順に現れる位置との間に相関関係があることを主張する.
著者
瀧川 美穂 Miho TAKIGAWA
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
no.1, pp.75-86, 1997

『方言文法全国地図』の命令形の分布図を見ると、富山県呉西地域は形式のばらつきが大きく、分布が不明瞭であるが、それは当地域の命令表現が、複数の方言形の形式を、強要度や性差によって共通語と異なる枠組みの中で使い分けするようになっているためである。形式の層ごとに見れば、当地域にも均質な層が見られ、改めて平野部と山側との地域差をつかむことが可能となった。方言文法全国地図富山県呉西地域命令表現強要度男女差
著者
桑本 裕二 YUJI KUWAMOTO
出版者
東北大学文学部日本語学科
雑誌
言語科学論集 = Journal of linguistic science, Tohoku University (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.25-35, 1998-11-20

日本語に見られる略語のうち、もとの語がいわゆる超重音節を含む場合、分節音削除をともなった特殊な形成を行う。超重音節は一般に避けられる傾向が強く、日本語においてもその構造は様々に論じられてきており、その存在を認めない説もある。本稿では、略語形成の分析から、超重音節は存在することの新たな根拠を提示した上で、超重音節の2音節への再構成は、通常は起こらず、フットが bisyllabicity に従うときにのみ許される過程であることを示す。
著者
文 慶〓 Kyung Chol MOON 東北大学大学院
出版者
東北大学大学院文学研究科言語科学専攻
雑誌
言語科学論集 = Journal of linguistic science, Tohoku University (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.99-109, 1997-12-31

動詞連用形は名詞化する場合があり、これは複合動詞語構造の中でも同様である。この名詞化を、本論では品詞分類の形式的な問題ではなく、語構成構造の中で意味的な側面で捕らえる。本論では後項要素「たてる」を中心に分析を試みたが、その結果前項動詞の連用形が「名詞化する」と「名詞化しない」の二つの種類に別れることがわかった。それによって後項動詞「たてる」の意味機能が前項動詞が名詞化する場合には「意味の強調化」、名詞化しない場合には「確立、完成、結果の出現」になる。
著者
張 媛〓
出版者
東北大学
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.72-61, 1999-12-24

本稿では近世後期上方洒落本と江戸洒落本における終助詞「わ」と「わ」を含む終助詞を地域差・男女差という観点から比較した。その結果、上方語と江戸語では、使われた終助詞に相違があり、「わ」と複合する終助詞の種類に違いがあり、上方語の方が複合の構造が複雑であることが分かった。そして、男女の位相においても違いがあり、近世前期上方語との比較では、後期上方語は前期より使用範囲が広がり、変化していることが分かつた。
著者
嶺岸 玲子
出版者
東北大学
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.111-122, 1997-12-31
被引用文献数
1

日常会話で頻繁に用いられている縮約形について、外国人がそれを用いた際に日本人がどう感じるかということを評価実験によって検討した。フォーマルな場面では原形の使用が、インフォーマルな場面では縮約形の使用が高く評価されたが、初級学習者に対しては評価が甘くなる傾向が見られた。また、「んだ」「けど」などの縮約形は原形よりも評価が高く、初級の段階からフォーマルな場面でもその使用が許されることがわかった。
著者
〓 再京
出版者
東北大学
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.37-48, 2001-11-15

順接と逆接の論理を盛り込むことによって、「妥当な推論の結果としての話し手の判断」と「話し手の認識の確認や再確認」という二つの機能が「やっぱり」には認められる。さらに談話においても、複文より複雑な構造をなすものの、順接と逆接の論理が適用される。その結果、順接の論理からは、応答表現としての「やっぱり」の機能が認められ、逆接の論理からは、発話を修正する (repair) 機能が認められる。そして、話者交替 (Turn-taking) のシステムにおける発話の順番取りの機能、話題導入のシグナルとしての機能が両論理から認めれる。
著者
倉田 靜佳
出版者
東北大学
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.47-58, 2003-12-10

曲亭馬琴の読本『南総里見八犬伝』における「然」が後接する漢字語につけられた、字音語振り仮名について、一般的に「漢語」としては呉音から漢音への移行の優勢が常識とされるのに反し、「ゼン」から「ネン」への交替が多くの漢字語において顕著であり、しかもその交替時期は第6・7輯 (文政10・11年) を境としていることを明ら加こし、それは各語における音連結や文脈には起因せず、筆工の交替による可能性を指摘した。
著者
小野寺 学
出版者
東北大学
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.144-133, 1998-11-20

漢語接辞「然」を構成要素とする二字漢語「-然」は、近代の国語辞書と小説において出現の様相が異なる。小説において字音語と熟字使用でゆれていたこと、会話での「-然」の多くは書生を中心とした教養層が用いることから、当時まだ「-然」が日本語の語彙として定着していなかったためであると思われる。
著者
朴 承圓
出版者
東北大学
雑誌
言語科学論集 (ISSN:13434586)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.51-62, 2000-12-20

本研究では、日本語母語話者・韓国人日本語学習者・韓国語母語話者を対象として、三者の不満表明における特徴を探るため談話完成テストによる調査を行った。三者の不満表明ストラテジーの使用と言語形式に見られる間接的要因の使用を調べた。その結果、ストラテジー使用は、慣用的前置き表現に韓国人日本語学習者の過剰修正 (Hyper-Correction) の傾向が見られた。また Hedges 表現や省略表現の使用の面でも学習者は日本語母語話者に比べその使用が多く、学習者がより間接的な不満表明をすることが明らかになった。