48 0 0 0 IR 公共心と愛国心

著者
中村 清
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.215-226, 2003-04-01

教育改革の一視点として公共心と愛国心の育成があげられることが多い。たしかに、最近の若者の利己主義の傾向を考えれば、公共心の育成は重要である。しかし、これを安易に愛国心と結びつけることは危険である。愛国心は、ともすれば国家単位での集団的利己主義に陥るからである。本来の公共心は、特定の人間集団を越えて人間一般に貢献する精神である。愛国心も、この意味での公共心の具体例となる必要がある。
著者
桑山 隆志 横田 成彬 可児 毅 村上 尚史 松井 慶太 中村 清吾
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.11-18, 2023 (Released:2023-01-27)
参考文献数
12

【目的】メトロニダゾールゲル(ロゼックス®ゲル0.75%:以下,本剤)について,長期使用時を含む使用実態下の安全性と有効性に関する情報を収集する目的で使用成績調査を実施した.【方法】がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減のために本剤を初めて使用する患者を中央登録方式にて登録した.観察期間は最長1年とした.【結果】安全性解析対象は301例であった.副作用発現割合は3.32%(10/301例)で,すべて非重篤であった.全般改善割合は73.7%(205/278例)であった.最終観察時の医師評価によるにおい改善割合は80.2%(203/253例)で,患者の治療満足割合は70.1%(82/117例)であった.【結論】使用実態下において,本剤ががん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減に対し,安全かつ有効な治療薬であるとともに,本剤の使用により,患者の高い治療満足度が得られることが明らかとなった.
著者
長屋 裕 中村 清 佐伯 誠道
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.20-26, 1971 (Released:2011-06-17)
参考文献数
14
被引用文献数
15

北太平洋および日本近海海水中のストロンチウム濃度を原子吸光光度法によって測定し, Sr/Cl比を算出した.ストロンチウムの平均濃度は8.08mg/kg, 平均Sr/Cl比は0.425mg/kg/‰ であった.Sr/Cl比の海域別, 深度別変動は5%以下であって, 分析誤差を考慮すればSr/Cl比はほとんど一定である. また, ミリポアフイルター (0.22μ) によって分離される粒子状Srは存在しないと考えられる.これ等の結果は大西洋についての最近の報告とは一致しない.
著者
中村 清
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学教育学部教育実践総合センター紀要 (ISSN:13452495)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.153-164, 2005-04-01

近年の教育改革論では、公教育において国民としての自覚を育成するために、我が国の伝統的文化を確実に教えることが必要であるといわれることが多い。公教育において国民諸個人に国家の形成者としての自覚を育成することは大切である。しかし、国民としての自覚が人類の一員としての自覚と両立するためには、特定の国家に伝統的な文化ではなく、人間にとって普遍的な価値を有する文化を教えるのでなければならない。小論は、伝統的な文化を教えることの難点を示すとともに、普遍的な文化を教えることの可能性を示すことによって、この原則の妥当性を確認した。
著者
星野 真人 村越 一支 中村 清彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.490, pp.47-52, 2000-12-01

短期記憶には、"magical number"といわれる7±2項目程度の容量限界が存在することが知られている.また、反応時間に着目して、記憶項目数がある値を越えると反応時間が急激に増大するようなnew magical number4±1も提唱されている.課題の中にはこのnew magical numberが現れない課題も見られる.本研究では、このnew magical numberの発現が、視覚刺激を被験者が学習済みか未学習かに依存していることを調べるため、知り合いと知らない人物の顔画像提示による心理物理実験を行った.その結果、(1)知り合い画像提示でmagical numberの増大が見られた.このことは短期記憶保持に対する長期記憶の効果を示している.また、(2)new magical number周辺で、反応時間の増大勾配が飽和していくという現象が見られた.このことは、被験者がnew magical number4±1近辺で、直列悉皆走査から記憶の走査戦略を変えているということを示している.
著者
筒井 昭仁 中村 寿和 堀口 逸子 中村 清徳 沼口 千佳 西本 美恵子 中村 譲治
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.341-347, 1999-07-30
被引用文献数
15

社会人の歯科的問題の程度を企業の生産性および経済面から把握することを目的とした。福岡市に本社を置く電力供給に関連する大型電気機械を製造する企業の工場部門の全従業員421名を対象とした。年齢は20〜65歳に分布していた。質問紙の配布留置法により過去1年間の歯科的問題に関連した1日休,半日休,遅刻・早退,作業効率の低下の情報を収集した。これらの情報から労働損失時間を算出し,さらに金額にも換算することを試みた。質問紙回収率は96%であった。工場全体で歯科的問題に関連する労働損失経験者は22%で,全損失時間は年間1,154時間,日数換算で144日であった。1人平均労働損失時間は年間2.85時間であった。この労働損失は生産高ベースで約1,200万円,生産コストベースで約800万円,人件費ベースで約400万円の損失と算定された。一企業を単位に歯科的問題に関連した欠勤や生産性の低下を把握,収集したとき社会・経済的損失は多大であることがわかった。DMFTやCPIなどの客観的指標にあわせてこれらの情報を明らかにすることは,労使双方に強いインパクトを与えるものであり,産業歯科保健活動の導入,展開に寄与するものであると考える。
著者
藤原 正義 朝隈 進 桝谷 充男 中村 多一 中村 清子 岩崎 忠昭
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.23-26, 1996-01-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
9

ゴルフプレー中に発症した急性心筋梗塞(以下AMI)症例について検討した.対象は1978年1月1日から, 1 9 9 4 年1 月3 1 日まで当科に入院したA M I患者1,153名のうちゴルフプレー中に発症した13例(すべて男性,平均60.7±11.9歳).AMI全体に占める割合は,1.1%.ゴルフを含めたスポーツ中の発症例32例中では41%を占め,原因として最も多いスポーツであった.13例中何らかの冠危険因子を有していた者は11例.前駆症状は4例にあり,そのうち運動負荷テストを含めたメディカルチェックを受けていた者は1例のみであった.前駆症状のない者でメディカルチェックを受けていた者はいなかった.冠動脈造影は11例に施行され,1枝病変6例,2枝および3枝病変がそれぞれ2例,左冠動脈主幹部病変1例.発症時期は,春から夏,秋から冬にかけてに多かった.ゴルフは運動強度も低く比較的安全で気軽に楽しめるスポーツと思われやすい.しかし,プレー中にAMIが発症する可能性もあり,冠危険因子を多く持つ中高年男性プレーヤーが多いことより,メディカルチェックが必要と考えられた.
著者
桑原 慶紀 吉田 幸洋 中村 清 伊藤 茂
出版者
The Society for Reproduction and Development
雑誌
Journal of Reproduction and Development (ISSN:09168818)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.j55-j60, 1995 (Released:2010-10-20)

著者らは独自に開発した装置を用いてヤギ胎仔の長時間子宮外保育を試みてきた.すなわち,帝王切開で娩出したヤギ胎仔の臍帯血管にカテーテルを挿入し,ECMO(Extracorporeal Membrane Oxygenation)回路に接続する.胎仔は人工羊水中に置かれ,胎児循環を保持し,低酸素環境下で保育される.これまでの著者らの成績では10日間の保育が限度で,慢性循環不全を主たる原因として死亡しており,保育状況・期間ともに不満足であった.最近著者らは胎仔の体内環境の変動をできるだけ少なくし,水分貯留傾向と関係すると思われる飲水行動を抑制する目的で子宮外保育期間中,胎仔にminor tranquilizerと筋弛緩剤を投与した.その結果,保育期間中,胎仔の状態は極めて安定しており,水分貯留傾向も認められず,約20日間というこれまでにない長期間保育に成功した.さらに,子宮外保育からの離脱を試みたところ,レスピレーターによる人工換気は必要としたものの良好な換気が得られ,保育期間中に肺の機能的成熟が進行したことも確認できた.以上により,臍帯動静脈A-VEC MOが未熟動物の長期にわたる保育法として有効であることが証明されたが,長期間の体動抑制による未熟動物の筋力の発達成熟におよぼす影響などの解決すべき問題があり,正常新生仔への移行にはさらなる改善が必要である.
著者
松岡 桓準 平 徳久 中村 清香 勝山 雄志 吉岡 正人
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.200-207, 2014

アスコルビン酸は生体にとって不可欠な成分であり,化粧品分野においても抗酸化作用をはじめとする様々な生理機能を求めて多くの製剤に配合されている。しかし,アスコルビン酸は非常に不安定な物質で,しばしば着色・着臭をはじめ乳化系の破壊や製剤の粘度低下の原因となる。今回われわれは,アスコルビン酸とグリセリンを結合させた2種類のグリセリル化アスコルビン酸を開発した。これらはB16細胞を用いたメラニン生成抑制試験において高いメラニン生成抑制効果を示した。また,<i>in vivo</i>の連用試験ではグリセリン由来の保湿効果を示し,肌表面の紋理を整え,乾燥による目尻の小じわを目立たなくした。さらに,水溶液や粘性製剤において高い安定性を示すことも確認された。これらの結果よりグリセリル化アスコルビン酸は既存の誘導体と同様の生理活性を有するだけでなく,化粧品市場に求められる付加的機能を併せ持った保湿型アスコルビン酸誘導体であることが確認された。
著者
井浦 陽一郎 田中 琢真 中村 清彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.480, pp.37-42, 2013-03-06

人は自らの楽しみ・興味や達成感などに基づき行動する.先行研究はこのような行動を内発的動機づけと呼んで,様々な条件や環境が内発的動機づけに影響を与えることを明らかにした.本研究では被験者が目標を自身で決める「自己決定条件」と他者から決められる「他者決定条件」に分け,さらにそれらそれぞれを褒められる条件と既される条件に分け,4条件とした.これらに目標設定をしない条件を加えた5つの条件で内発的動機付けの変化を調べる実験を行った.ストップウォッチ課題を繰り返し行ったあとの待ち時間に自らその課題に何回取り組んだかを指標とし,内発的動機づけを定量的に測定した.その結果,自己決定一褒め条件は他の条件とは待ち時間の課題の取り組み方が有意に異なり,継続して自発的に課題に取り組むことが分かった.
著者
澤 繁実 伊藤 秀昭 中村 清彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.341, pp.39-44, 2005-10-10

環境から受け取った利得を主観的にどう評価するかの価値関数について研究したプロスペクト理論(Daniel Kahneman and Amos Tversky, 1979)[1]がある.本研究はこのプロスペクト理論の価値関数がヒトにおいてどのように獲得されたかを考察した.「環境における生き残りやすさ」という概念を導入した生存競争によってプロスペクト理論の価値関数の進化心理学的合理性を説明する.そのモデルを構築して数学的解析を行い, プロスペクト理論で示されるように価値関数がgainsの領域では上に凸となり, lossesの領域では下に凸となる条件を見出した.また, Daniel Kahneman and Amos Tversky (1992)[3]が求めたパラメーターに対して当モデルを適用し, ヒトの意志決定に関していくつかの新しい知見を得た.
著者
川上 雅彦 中村 清一 金子 日和 滝沢 潤 馬場 美智子 三上 正志
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.467-471, 1998
被引用文献数
1

医院と総合病院医師の禁煙指導に違いがあるであろうか。アンケートにより都内の医院医師245人(C群)と総合病院医師366人(G群)を比較した。その結果喫煙率は両群とも本邦の一般市民より低率であり, 年齢による傾向は見られなかった。診療中患者に喫煙状態を聞いている医師の割合に差がなかったが, 聞いている医師の間では, 疾患により必要があれば聞く医師に比し, 全員/ほとんど全員に聞く医師はG群で多かった。喫煙患者に禁煙アドバイスをしている医師はC群で多かったが, している医師の間では積極的にしている医師がG群で多かった。C群では医師自身の喫煙状態や喫煙に対する態度が禁煙指導の熱意と関連したが, G群ではこの関連を認めなかった。以上より, C群の医師は患者に禁煙アドバイスを行いやすい環境にあること, G群には専門診療分野の性格上これを行いにくい医師と禁煙指導に積極的な医師がいることが推測された。
著者
田井中 秀嗣 織田 肇 中村 清一 田淵 武夫 野田 哲朗 三戸 秀樹
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.241-249, 1998-11-20
参考文献数
22

阪神淡路大震災における勤労者のストレス-家屋被害別にみた1年半後のストレス症状-:田井中秀嗣ほか.大阪府立公衆衛生研究所労働衛生部-阪神淡路大震災被災地域に職場のあった勤労者を対象に, 震災1年半後に, 被災実態とストレス関連症状の有無を尋ねる質問紙調査を実施した.製造業, 病院, 地方公務員, 交通・港湾関連の勤労者3, 015名から回収(回収率40%)した質問票を分析した結果, ストレス関連諸症状の訴えは家屋被害が大きい群ほど高く, また, それら諸症状の訴えは時間経過に伴い減少するが, 家屋被害の大きい群では1年半後にも高い訴えを示す.心的外傷後ストレス障害(PTSD: Post Traumatic Stress Disorder)様の症状を示す者の比率を男性勤労者についてみると「家屋被害なし, あるいは軽微であった群」では, 震災直後21.8%, 3ケ月後12.9%, 1年半後3.7%であり, 直後にはかなりみられるが, 1年半後は少ない, 他方「家屋被害が大きく元の家に住むことができなかった群」では, 直後48.0%, 3ケ月後34.2%, 1年半後12.6%であり, 直後も多く, かつ, 1年半後もかなり多い.持病の再発・悪化を訴える者の比率は震災直後頃よりも3ケ月後頃に高く, 1年半後でもほとんど減少せずそのまま残る.職業上の問題としては, 失業不安, 震災後の繁忙と過労, 無理な出勤, 通勤の不便, 危険を感じながらの作業, 収入減, 勤務地の変更・出向が訴えられた.
著者
筒井 昭仁 中村 寿和 堀口 逸子 中村 清徳 沼口 千佳 西本 美恵子 中村 譲治
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.341-347, 1999-07-30 (Released:2017-11-12)
参考文献数
23
被引用文献数
2

社会人の歯科的問題の程度を企業の生産性および経済面から把握することを目的とした。福岡市に本社を置く電力供給に関連する大型電気機械を製造する企業の工場部門の全従業員421名を対象とした。年齢は20〜65歳に分布していた。質問紙の配布留置法により過去1年間の歯科的問題に関連した1日休,半日休,遅刻・早退,作業効率の低下の情報を収集した。これらの情報から労働損失時間を算出し,さらに金額にも換算することを試みた。質問紙回収率は96%であった。工場全体で歯科的問題に関連する労働損失経験者は22%で,全損失時間は年間1,154時間,日数換算で144日であった。1人平均労働損失時間は年間2.85時間であった。この労働損失は生産高ベースで約1,200万円,生産コストベースで約800万円,人件費ベースで約400万円の損失と算定された。一企業を単位に歯科的問題に関連した欠勤や生産性の低下を把握,収集したとき社会・経済的損失は多大であることがわかった。DMFTやCPIなどの客観的指標にあわせてこれらの情報を明らかにすることは,労使双方に強いインパクトを与えるものであり,産業歯科保健活動の導入,展開に寄与するものであると考える。
著者
中村 友紀 天野 ともみ 松井 奈津子 蔵前 仁 中村 清忠 伊藤 誠
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.186-191, 2019-01-25 (Released:2019-01-25)
参考文献数
11

血液培養よりAerococcus urinaeを分離した重症感染性心内膜炎の1症例を経験した。患者は大動脈弁閉鎖不全症による大動脈弁置換術,慢性膀胱炎の既往のある70歳代の男性。来院時の血液培養よりCluster状のグラム陽性球菌を認めた。分離培養を行ったところ血液寒天培地に小型のα溶血性レンサ球菌様のコロニーが発育し,質量分析装置による同定を実施したところA. urinaeと同定された。心エコー検査によって感染性心内膜炎と診断され,VCMやSBT/ABPC,カルバペネム系抗菌薬などによる加療を行ったが,心原性脳梗塞を合併し第26病日に死亡した。A. urinaeはGram染色ではブドウ球菌様の形態を示すのに対し,血液寒天培地上ではα溶血を呈するレンサ球菌様のコロニーとして発育するため,Staphylococcus属やStreptococcus属と誤同定されやすい。高齢者の尿路感染症の原因となりうるほか,稀に敗血症や感染性心内膜炎を引き起こす。本菌による感染性心内膜炎は臨床経過の急激な悪化をたどり,重症化しやすいとの報告がある。血液培養にて本菌を疑う所見を得た際は迅速に同定し,早期に適切な治療を開始することが重要である。その点で質量分析装置による同定は非常に有用であると思われた。
著者
中村 清香 佐藤 浩昭
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.483-493, 2022-09-05 (Released:2022-10-05)
参考文献数
27

質量分析法はポリマーキャラクタリゼーションにおいて有力な手法であり,測定装置の高分解能化とともにますますその利用範囲が拡大している.その一方で,マススペクトルが複雑になるため解析が困難になるという課題があった.その課題に対し,著者らはマススペクトルを二次元プロットへと展開することで視覚的に成分分布を表現する「ケンドリックマスディフェクト(KMD)解析」を,実用的なポリマー分析へと初めて適用した.さらにKMD解析を工業製品として用いられる複雑な組成を持つポリマー材料の組成分析へと適用するために,KMDプロットの高分解能化を行った.あわせて,KMD解析に適用できる高強度のマススペクトルを,マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOFMS)で観測するための,簡便な試料前処理法を開発した.さらにKMD解析の適用範囲をMALDIのみならず,他のイオン化法を用いたデータへも拡大した.このような成果により高分解能質量分析法を用いたポリマーキャラクタリゼーションが加速されると期待される.