著者
安藤 和代
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.65-85, 2015 (Released:2016-02-29)
参考文献数
83

近年、企業はターゲット層に向けて大量のサンプル配布や試用イベントを行ったり、記者発表会と並行してアルファ・ブロガー向け商品説明会を開催したりしている。商品を提供することで消費者の認知や商品理解を高めることに加え、対面あるいはソーシャルメディアを用いて使用後の感想が広まることを期待してのことである。クチコミマーケティングを実践する企業の関心は、潜在顧客である情報受信者の態度や行動に対してプラス影響を及ぼすことにある。したがって、クチコミ研究の多くは受信者に及ぶ影響に焦点をあてたもので、発信者におよぶ影響には注意が払われてこなかった。そこで本研究では、クチコミマーケティングで目指されるポジティブなクチコミを語る行為が、発信者の評価や行動や記憶に与える影響を明らかにすることを目的とする。口述・記述することで理解(センス・メイキング)が進み、既存の知識や経験で解釈が可能になると、対象の新奇性や驚きが薄れ、発信者の対象に対する評価やクチコミ意向は時間の経過の中で低下する(仮説 1・2)。またクチコミの骨格に沿った情報が限定的に処理されるため、記憶される内容は正確だが限定的である(仮説 3・4)といった仮説を設定し、実験データを用いて検証したところ、仮説は支持された。顧客維持の観点から、発信者に及ぶ影響を考慮したマーケティング計画の策定が重要であることが示された。
著者
安藤 和代
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.65-85, 2015

近年、企業はターゲット層に向けて大量のサンプル配布や試用イベントを行ったり、記者発表会と並行してアルファ・ブロガー向け商品説明会を開催したりしている。商品を提供することで消費者の認知や商品理解を高めることに加え、対面あるいはソーシャルメディアを用いて使用後の感想が広まることを期待してのことである。クチコミマーケティングを実践する企業の関心は、潜在顧客である情報受信者の態度や行動に対してプラス影響を及ぼすことにある。したがって、クチコミ研究の多くは受信者に及ぶ影響に焦点をあてたもので、発信者におよぶ影響には注意が払われてこなかった。そこで本研究では、クチコミマーケティングで目指されるポジティブなクチコミを語る行為が、発信者の評価や行動や記憶に与える影響を明らかにすることを目的とする。口述・記述することで理解(センス・メイキング)が進み、既存の知識や経験で解釈が可能になると、対象の新奇性や驚きが薄れ、発信者の対象に対する評価やクチコミ意向は時間の経過の中で低下する(仮説 1・2)。またクチコミの骨格に沿った情報が限定的に処理されるため、記憶される内容は正確だが限定的である(仮説 3・4)といった仮説を設定し、実験データを用いて検証したところ、仮説は支持された。顧客維持の観点から、発信者に及ぶ影響を考慮したマーケティング計画の策定が重要であることが示された。
著者
竹内 真登 猪狩 良介
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.17-32, 2022 (Released:2022-03-10)
参考文献数
63

文脈効果は実験や調査の選択でしばしば確認されるが,最近の研究から実際の購買環境ではほぼ観測されない可能性がある。こうした状況下で,選択型コンジョイントなどのマーケティングリサーチを行う場合,その回答には文脈効果に起因するバイアスが生じることを意味する。本研究では,魅力効果,妥協効果,類似性効果を考慮した選択型コンジョイントの分析手法と既存手法を比較するが,3属性以上のコンジョイントデザインでの対処方法の提案,画像あり/なし条件による文脈効果の生起の変化と実購買予測への影響を議論する。結果から,画像あり/なし条件のいずれでも魅力効果が特に生じることを把握した。画像なし条件で,魅力効果がより強く生じること,文脈効果を考慮した手法を用いるほうが実購買の予測力が高いことを例証した。
著者
藤原 一肇 守口 剛
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-15, 2021 (Released:2021-06-30)
参考文献数
113
被引用文献数
2

本研究の目的は,ラグジュアリー・ブランドの多次元的価値(名声/エリート主義/独創性/洗練性/情趣)が購買意図を形成するメカニズムに対する,財の観察可能性(他者の視線に晒される可能性)の影響を解明することである。検証の結果,相対的に「情趣」は観察可能性の高い財,「名声」は観察可能性の低い財において,購買意図の形成に顕著な正の影響を与えることが明らかになった。そして,観察可能性の高低に関係なく,総じて「独創性」が顕著な正の影響を与え,「エリート主義」が顕著な負の影響を与えることなどが明らかになった。
著者
大平 修司 薗部 靖史 スタニスロスキー スミレ
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.61-89, 2015 (Released:2016-05-31)
参考文献数
61
被引用文献数
3 2

本研究の目的は,混合研究法を用いて,東日本大震災後の日本で,消費を通じて社会的課題の解決を図るソーシャル・コンシューマーの意思決定プロセスを明らかにすることにある。具体的には,まずアンケート調査に基づき,寄付などの実施というシビック・アクションと寄付つき商品などの購入というソーシャル・コンサンプションによる過去の社会的課題解決行動を変数として,消費者を 3 つのクラスタに分ける。次にクラスタごとのデモグラフィクスにおける特徴を比較する。さらに行動統制を有効性評価と入手可能性評価に置き換えた計画的行動理論モデルを用いて,クラスタごとの寄付つき商品の意思決定プロセスの違いを検討する。最後にインタビュー調査と現実の事例に基づいて,分析結果のマーケティング戦略への示唆を検討する。分析では,定量分析と定性分析による混合研究法を用いた。まず上記モデルを用いて,アンケート調査によって得られたデータの全サンプルを対象とした共分散構造分析を実施した。その結果,主観的規範のみ,統計的に有意とならなかったが,行動に対する態度と有効性評価,入手可能性評価は意図に影響を与える点が明らかとなった。次に過去の社会的課題解決行動を用いて,クラスタ分析を実施し,サンプルを現在のソーシャル・コンシューマー層と潜在的ソーシャル・コンシューマー層,無関心層に分け,χ2検定と残差分析,分散分析を実施したところ,クラスタ間のデモグラフィック変数に差が認められた。さらに多母集団同時分析を実施し,クラスタ間で意思決定プロセスが異なる点が明らかとなった。最後にグループインタビューの結果と現実の事例を用いて,本研究の分析結果から得られた寄付つき商品のマーケティング戦略への示唆を議論した。
著者
栗木 契
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1-2, pp.29-43, 2007 (Released:2011-08-16)
参考文献数
80
被引用文献数
1

本稿の目的は、マーケティング・リサーチの対象、目的、焦点を再考し、質的リサーチの位置づけを見直すことである。そのために、本稿では、社会科学の領域で提唱されてきた3つの代表的なリサーチ・プログラムの構想 (論理実証主義、批判合理主義、構築主義) をとりあげ、マーケティング・リサーチの対象や目的により適しているのはどの構想であるか、そしてこれらの構想の違いによって、リサーチ・プログラムにおける質的リサーチの位置づけがどのように変化するかを検討する。その結論として、本稿では、 (1) マーケティング・リサーチは、「局所的秩序」を対象としたリサーチとなること、 (2) したがってマーケティング・リサーチの目的は、「規則や秩序の局所性の反省」と「規則や秩序の予測・再現可能性の向上」という2つの課題を達成することとなり、 (そのためには、「偶有性の解明」と「行為の連鎖がおりなす、循環する関係の把握」に適した質的、) サーチを積極的に活用するべきであることを主張する。なお、以下はその前編である。
著者
栗木 契
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.1-18, 2008 (Released:2011-05-20)

本稿の目的は、マーケティング・リサーチの対象、目的、焦点を再考し、質的リサーチの位置づけを見直すことである。そのために、本稿では、社会科学の領域で提唱されてきた3つの代表的なリサーチ・プログラムの構想 (論理実証主義、批判合理主義、構築主義) をとりあげ、マーケティング・リサーチの対象や目的により適しているのはどの構想であるか、そしてこれらの構想の違いによって、リサーチ・プログラムにおける質的リサーチの位置づけがどのように変化するかを検討する。その結論として、本稿では、 (1) マーケティング・リサーチは、「局所的秩序」を対象としたリサーチとなること、 (2) したがってマーケティング・リサーチの目的は、「規則や秩序の局所性の反省」と「規則や秩序の予測・再現可能性の向上」という2つの課題を達成することとなり、 (3) そのためには、「偶有性の解明」と「行為の連鎖がおりなす、循環する関係の把握」に適した質的リサーチを積極的に活用するべきであることを主張する。なお、以下はその後編である。
著者
水野 由多加
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.39-57, 2000 (Released:2011-08-16)
参考文献数
53
被引用文献数
1

もともと広告倫理はその広告の実施がなされた地域の文化や時代によってその判断基準が変化する。したがって、文化に密着し、様々な新たな実践がなされる分野で、理論的なアプローチだけではこの研究課題は解題しにくい、と考えられる。倫理の研究は、価値から離れた客観的実証的なアプローチには馴染まない規範的な面もある。しかしながら、この30年程の間にかつては倫理的に認識されなかった問題 (例えば、人権と差別の関係イシュー、など広告された商品・サービスの購入が前提となっていない倫理問題) が次々と立ち現れてきていることを、倫理課題の地平が拡大した、と認識し考察を深めることは可能である。具体的には、広告倫理性は広告物レベルで表現された内容の公正さ (虚偽、誤導など) に関する領域のこととして論じられることが多かったが、昨今の倫理の論点は、社会的ステレオタイプの助長等広告の社会的結果という社会レベル、領域に論点が広がる。
著者
小林 哲
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-12, 2018 (Released:2018-03-31)
参考文献数
31
被引用文献数
2

医療や教育サービスにおいて,サービス終了時に便益を享受することができず,その後しばらくして便益がもたらされることがしばしば存在する。このような現象は便益遅延性と呼ばれており,顧客満足の評価や顧客参加の在り様に大きな影響をもたらすことが指摘されている。しかし,このサービスにおける便益遅延性は,私たちにひとつの理論的な問題を提起する。便益遅延性がサービスの基本特性である生産と消費の同時性(不可分性)に反するというのがそれである。もし,サービスにおいて生産と消費が同時になされるのであれば,消費すなわち便益の享受が遅延することはない。一方,医療やサービスにおいて便益が本当に遅延するのであれば,それはサービスの基本特性である生産と消費の同時性に反することになり,この種の医療や教育は“サービスではない”とみなすこともできる。そこで,本稿では,サービスの基本特性に立ち返り,便益遅延性の発生メカニズムを探ることで,このような矛盾が生じる理由を明らかにし,サービス・マネジメントの新たな可能性について考察する。結論を先に述べるならば,医療や教育サービスにおける便益遅延性は,サービス・デリバリー(生産)と便益の享受(消費)との間に顧客資源が介在することによって生じる。さらに言えば,便益遅延性は,このような顧客資源介在型サービスの特徴のひとつに過ぎない。したがって,医療や教育サービスの成果を高めるには,便益遅延性のみならず,それをもたらす顧客資源介在型サービスの特徴を理解しマネジメントする必要がある。
著者
西川 みな美
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.1-15, 2021 (Released:2021-12-24)
参考文献数
70

本論の目的は,同業態競合店舗の多い市場に出店する「競争的出店」,自社店舗の多い市場に出店する「ドミナント出店」という対照的な2種の出店行動に注目し,チェーン小売企業がいずれの戦略を採用するのか,なぜその選択が同業態企業間で異なるのかを,理論的・実証的に説明することである。そこで,延期-投機モデルに依拠して,チェーン小売企業の出店行動は企業固有の在庫調整能力に依存するという理論仮説を導出し,GMSチェーン13社204店舗を対象に実証分析を行った。その結果,①在庫調整能力の低い企業は,競争的出店を避け,ドミナント出店を選択する一方で,②在庫調整能力の高い企業の出店行動は,企業の規模と収益性に条件づけられており,③規模が小さい高回転型企業は競争的出店を避ける一方で,収益性が高い高回転型企業はドミナント出店を避ける傾向を持つことが見出された。
著者
山岡 隆志
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-20, 2020 (Released:2020-03-12)
参考文献数
95
被引用文献数
1

文献レビューより導いた下位概念を用い,他の要素との相関を検討した先行研究はあるが,カスタマー・アドボカシー志向の中心概念の構成要素を入念に探求したものは,これまでなかった。そこで本研究において,その中心概念の構成要素を抽出し,様々な企業カテゴリーに適用可能な汎用性の高い尺度を開発する。先行研究とインタビュー調査から得られたデータを基に行った質的調査から,構成要素の抽出と整理を行った。事前調査を行った後,不変性の確認を行うため時期とサンプルを分けて2度の本調査を実施した。その結果,様々な企業カテゴリー間で使用できる汎用性と頑健性を兼ね備えた,5因子15項目で測定できる尺度を開発した。
著者
外川 拓 石井 裕明 恩藏 直人
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.7-78, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
53
被引用文献数
3 3

既存研究においては、パッケージへの画像掲載により、好ましい消費者反応を得られることが示されてきた。本研究では、こうした効果がどのような時に変化するのかを検討するため、解釈レベル理論を援用した。解釈レベル理論は、対象との心理的距離によって対象への捉え方が変化することを提示している。 実験 1 では心理的距離のうち社会的距離に注目した。その結果、消費者がギフトを想定した場合(社会的距離:遠)、画像非掲載パッケージが製品評価を高め、自分自身での消費を想定した場合(社会的距離:近)、画像掲載パッケージが製品評価を高めることが示された。 実験 2 では心理的距離のうち時間的距離に注目した。ギフトを贈与するまでの時間的距離を操作したところ、消費者が遠い将来の消費を想定した場合は、画像非掲載パッケージが製品評価を高める一方、近い将来の消費を想定した場合は、画像掲載パッケージが製品評価を高めることが示された。
著者
金 雲鎬
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.4_45-4_56, 2010

従来の卸売流通研究では,卸売企業が情報システムを導入するのは厳しい取引環境の中で生き残るための戦略として説明する視点が多く,情報システムを導入するメカニズムに関する議論は少ない。特に市場シェアを拡大している大規模卸売企業がなぜ・どのように情報システムを導入するのかに関してはあまり議論されてこなかった。これに対して,本稿では小売企業との企業間関係に注目して,大規模卸売企業が情報システムを導入するメカニズムを分析する。延期—投機理論を分析枠組みとして,リスク転嫁とプロセス革新の局面から捉える。分析の結果,大規模卸売企業の情報システム導入は,延期行動であり,小売企業との間での共同革新によって起こることが主張される。
著者
松井 剛
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.25-41, 2012-03-31 (Released:2014-03-01)
参考文献数
55

本論文の目的は、北米市場における日本産マンガ出版の事例分析を通じて、グローバル・マーケティングが直面する文化障壁について考察することにある。筆者自ら作成した書誌データベースなどを活用した事例分析によれば、大衆的な文化製品を輸出する際には、進出先市場で共有されている文化規範と、輸出される文化製品に対応する進出先の文化製品に関するステレオタイプという 2つの障壁に直面する。本論文は、大衆文化製品に与えられたスティグマがゆえに生まれたこうした文化障壁を克服するためのマーケティング努力を、ゴフマンのスティグマ管理という概念を通じて解釈する。
著者
織田 由美子
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.21-34, 2020 (Released:2020-06-30)
参考文献数
57

本稿では,結婚や育児,介護等プライベート領域の市場化において,伝統的な役割規範が維持されるプロセスを,Butler(1990)のパフォーマティビティの概念に基づいて明らかにすることを試みる。より具体的には,「婚活」ブームを通して配偶者探しの市場化が普及する一方で,男性の経済力を重視するといった伝統的な役割規範が維持されるプロセスを明らかにする。これまでの研究は,市場調達における利用者の矛盾やストレスを解決する方法や,市場をアイデンティティ構築の場として活用するといった観点であり,消費者のエージェンシーを前提とした研究であった。本稿では,新たな実践の採用(再意味化)と伝統的規範の引用という両面から,変化のプロセスを検討する。分析結果からは,実践を促進する言説が,伝統的規範に矛盾しないという言説と同時に展開されることで,市場化が促進されつつ伝統的規範が維持されたという可能性が示された。
著者
久保 知一
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.1-16, 2020 (Released:2020-12-26)
参考文献数
91

流通における卸売業者のミクロ的な介在根拠は,卸売業者が個々の顧客に対して提供する顧客価値にある。本論では,卸売業者がどのような顧客価値を提供しているのか,そして顧客価値はどのような組織的メカニズムによって作り出されているのかを問い,多属性モデルに基づいて卸売業者の顧客価値提供を描写する概念モデルを提案し,さらに実証分析を行った。その結果,配送の延期と流通サービスのカスタマイズ度が顧客価値に正の影響を与えており,それらは組織能力,仕入れの投機,そして人的資産特殊性から正の影響を受けていることが示された。
著者
木村 純子 ラッセル W.ベルク
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.39-55, 2004 (Released:2011-05-20)
参考文献数
18

本稿は、消費文化の受容について考えることを目的としている。分析対象として日本で活発に行われている西洋文化としてのクリスマス消費を取り上げる。これまでの議論は、西洋文化に日本文化を従属させる (グローバル論者) 、あるいは日本文化に西洋文化を従属させる (伝統論者) といった「西洋中心の文化帝国主義モデル」であり、文化を本質的なものとして捉え、日本の文化状況を均質化に行き着くものとして理解していた。ところが、消費文化の受容過程に目を凝らすと、実際は、文化は西洋か日本かのいずれかに均質化していくわけではない。本稿が依拠する変容論者は、消費文化の受容を日本人が主体的に異文化を受け止め利用していく過程 (=文化の再生産) と捉える。文化の再生産には、二つのしかたがある。一つは西洋をなじみのあるものに変えるしかたである。もう一つは西洋を西洋のまま維持するしかたである。このことから、日本の文化は、均質化に向かっているものとしてではなく、異類混交とした状況にあるものとして理解されるべきである。
著者
小林 哲
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-12, 2018

<p>医療や教育サービスにおいて,サービス終了時に便益を享受することができず,その後しばらくして便益がもたらされることがしばしば存在する。このような現象は便益遅延性と呼ばれており,顧客満足の評価や顧客参加の在り様に大きな影響をもたらすことが指摘されている。</p><p>しかし,このサービスにおける便益遅延性は,私たちにひとつの理論的な問題を提起する。便益遅延性がサービスの基本特性である生産と消費の同時性(不可分性)に反するというのがそれである。もし,サービスにおいて生産と消費が同時になされるのであれば,消費すなわち便益の享受が遅延することはない。一方,医療やサービスにおいて便益が本当に遅延するのであれば,それはサービスの基本特性である生産と消費の同時性に反することになり,この種の医療や教育は"サービスではない"とみなすこともできる。そこで,本稿では,サービスの基本特性に立ち返り,便益遅延性の発生メカニズムを探ることで,このような矛盾が生じる理由を明らかにし,サービス・マネジメントの新たな可能性について考察する。</p><p>結論を先に述べるならば,医療や教育サービスにおける便益遅延性は,サービス・デリバリー(生産)と便益の享受(消費)との間に顧客資源が介在することによって生じる。さらに言えば,便益遅延性は,このような顧客資源介在型サービスの特徴のひとつに過ぎない。したがって,医療や教育サービスの成果を高めるには,便益遅延性のみならず,それをもたらす顧客資源介在型サービスの特徴を理解しマネジメントする必要がある。</p>
著者
小本 恵照
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.1-15, 2006 (Released:2011-05-20)
参考文献数
31

本稿は、開示データが入手できる109のフランチャイズ・チェーンを対象に、フランチャイズ加盟店の廃業率を算出し、併せてフランチャイズ契約が加盟店の廃業率に与える影響を分析したものである。廃業率については、フランチャイズ加盟店の廃業率が非加盟店の廃業率に比べ高いことが判明した。加盟店の廃業に与えるフランチャイズ契約の影響については、テリトリー制が採用されている場合と加盟金が多額な場合に廃業率が低いことが明らかとなった。前者については、テリトリー権を付与しても依然として競合チェーンの参入は可能であることを踏まえると、市場が必ずしも競争的ではないか、ブランド内競争がブランド間競争より厳しいという、いずれかの結果を反映したものと考えられる。後者については、加盟金の金額が、開業支援の充実度やフランチャイズ加盟によって獲得できる将来利潤の大きさを示す結果とみられる。