著者
坂東彩 河野 あゆみ 津村 智恵子
出版者
日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.93-99, 2008
被引用文献数
1

目的:本研究では,独居虚弱高齢者を対象とした悉皆調査を行い,独居虚弱高齢者の身体的機能,心理社会的機能,生活行動の性差による特徴を明らかにすることを目的とした.方法:本調査は,他調査の一部を用いて二次分析を行った.調査は郵送による自記式質問紙調査と,地域看護職の訪問による面接聞き取り調査を行った.A町全独居高齢者のうち介護認定を受けていない677人に郵送調査を行い,質問紙が返送された501人の回答内容から,要介護認定者,家族同居者,交通機関を使って自由に外出できる者を除外し,110人を面接聞き取り調査の対象とした.このうち,調査の拒否,死亡,転居,不在,介護認定申請の必要であった者を除外した79人を分析対象とした.結果:身体的特性では,男性は女性に比べ転倒不安をもつものが少なかった(p<0.05).社会的特性では男性は家族関係に満足している者(p<0.05),友人と一緒に過ごす時間に満足している者(p<0.05)が少なかった.また,生活行動では男性は自身の食事の支度をしている者(p<0.05),友人の家を訪ねる者(p<0.01)が少なかった.考察・結論:独居虚弱高齢者の身体的機能,心理社会的機能,生活行動の性差による特徴は,男性は女性に比べ家族や友人とのつながりが弱く,自身で食事の支度をしている者が少なかった.よって男性の独居高齢者は,ソーシャルサポートや家事機能の支援がより必要な対象であることが明らかになった.
著者
田村 須賀子 上杉 絵理 曽根 志穂
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.85-92, 2007-10-10 (Released:2017-04-20)

保健師は,地区住民の健康生活上の援助ニーズを把握し,個人あるいは住民集団に対して看護援助を提供する.本稿では,保健事業の実践過程における保健師の意図と行為を記述することにより,保健師による保健資源提供活動の特徴を明確にすることを目的とする.研究対象は,熟練保健師による保健事業の実践過程7事例である.調査項目は,保健師の意図,保健師の行為である.熟練保健師とは保健師として原則5年以上の実務経験があり,実践活動の詳細な記述と現状分析ができる者とした.保健師による保健資源提供活動の特徴は,1)公衆衛生・疾病予防の観点で,住民の生活実態・健康課題を捉え,より重点的に対応すべき援助ニーズを明確にする,2)事業対象者およびその家族ばかりでなく,全数に対する提供を原則とし,適切な健康行動とライフスキルを獲得できるようにする,3)住民あるいは関係機関と協働し主体的な課題解決を促すために,既存の保健事業の活用または他事業と連絡・調整した一体的な展開を図る,4)国や都道府県の施策に関連づけて,その地区の実情に合った保健福祉事業の推進体制の基盤整備をする,と考えられた.保健師の意図を記述することにより,保健事業の実践過程の特徴を明確にし,保健師の住民に対する責任と役割を共有でき,より質の高い実践活動を導くことができると考えられた.
著者
齋木 千尋 伊藤 絵梨子 田髙 悦子 有本 梓 大河内 彩子 白谷 佳恵 臺 有桂
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.56-64, 2015

目的:本研究では,訪問看護師のとらえる臨死期にある在宅終末期がん療養者の家族介護者の体験と支援を明らかにすることを目的とした.方法:対象は,関東圏A市内に所在する2か所の訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師である.管理者より熟練訪問看護師として推薦され,かつ在宅終末期がん療養者と家族介護者に対する支援の実務経験が3年以上,おおむね10事例を有する者5人である.臨死期にある在宅終末期がん療養者の家族介護者の体験と支援について半構成的面接を行い,質的帰納的に分析した.結果:臨死期の家族介護者の体験について分析した結果,【在宅での看取りの決意とジレンマ】【家族の死の接近に対する知覚と混乱】【家族間の意思や感情の衝突と再結集】【家族の最期の瞬間の立ち会いと看取り】【家族の死の体験の振り返りと意味づけ】の5つのカテゴリーが抽出された.また支援については【臨死に揺れ動く家族の繊細な思いに対する見守りと対処】【在宅での看取りに必要な家族の資源力の引き出し】【看取りに求められる家族の心身の健康と日常生活の保障】の3つのカテゴリーが抽出された.考察:臨死期における在宅終末期がん療養者の家族介護者への支援においては,臨死期の家族が看取りの過程におけるさまざまな体験を乗り越えるとともに,家族がその後の人生も主体的に生きていけるよう,成長のプロセスを支えることが重要である.
著者
尾崎 伊都子 小西 美智子 片倉 和子
出版者
日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.35-43, 2009-10-30

目的:本研究の目的は壮年期男性勤労者の健康習慣(栄養バランス,身体活動,睡眠,節酒,禁煙)に関する自己効力感尺度を作成することである.方法:予備調査として勤労者を対象に行った保健指導に基づき,栄養バランス10項目,身体活動7項目,睡眠6項目,節酒8項目,禁煙8項目の尺度項目を作成した.本調査では作成した尺度項目を用いて勤労者1,000名を対象に自記式質問紙調査を行った.尺度の信頼性に関してCronbach α係数を算出,妥当性に関して生活習慣,主観的健康管理能力尺度との関連性を検討した.結果:953名を分析対象とし,因子分析の結果,栄養バランスは第1因子「食生活の管理」,第2因子「環境への対処」の2因子が抽出され,身体活動,睡眠,節酒,禁煙はいずれも1因子構造であった.尺度のα係数は,栄養バランス0.87,身体活動0.90,睡眠0.89,節酒0.92,禁煙0.94であった.自己効力感尺度と生活習慣との関連性を分析した結果,好ましい生活習慣を実施している者は,実施していない者に比べて尺度得点が有意に高かった.また,自己効力感尺度と主観的健康管理能力尺度との相関分析の結果,栄養バランス,身体活動,睡眠の自己効力感尺度は主観的健康管理能力尺度と有力な相関があった.結論:栄養バランス,身体活動,睡眠,節酒,禁煙の5つの健康習慣に対する自己効力感尺度を作成し,信頼性・妥当性を確認できた.
著者
宮田 さおり 岡部 充代 櫻井 しのぶ
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.40-46, 2008-03-25 (Released:2017-04-20)

本研究の目的は半導体設計者における精神的健康度とストレス要因の分析である.研究対象者は半導体設計会社に勤務する設計者273名,記名式質問紙調査を行った.回答者は245名,回収率は89.7%であった.1)GHQ28の症状の7点以上の者は,男性で132名(59.7%),女性で17名(70.8%),全体149名(60.8%)になった.またGHQ28平均値を年齢別区分でみると最も高かったのは35〜39歳で109名(70.6%)であった.2)GHQ28の下位尺度について「身体症状」の重度の者が33名(13.5%)で最も多かった.症状のある者の割合では,「社会活動の障害(80.8%)」「身体症状(71.0%)」「不眠・不安(71.0%)」が高い数値を示した.3)ストレスと感じていること(複数回答)について最も多かったのは,仕事(72.2%),対人関係(31.8%),家族(16.7%)であった.ストレスの有無とGHQ28について,GHQ28総得点および下位尺度すべてに有意差があった(p<0.001).4)仕事に関するストレス,対人関係に関するストレスとGHQ28について,GHQ28総得点および下位尺度すべてに有意差があった(p<0.05).半導体設計に特有な事業展開の早さ,テクノストレスなどの背景が考えられる.今後はそのストレス要因の詳細な分析を進めることで,半導体設計者特有のメンタルヘルス問題が明らかになると考える.
著者
福島 道子 北岡 英子 大木 正隆 島内 節 森田 久美子 清水 洋子 勝田 恵子 黛 満 奥富 幸至 菅原 哲男 藤尾 静枝 山口 亜幸子
出版者
日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.38-46, 2004-03-25

都内某保健所において児童虐待事例として援助した家族8例,および関東圏某児童養護施設において虐待事例として入所した児童の家族17例を対象に,「家族生活力量」の概念に基づいて事例検討し,児童虐待が発生している家族の問題状況を分析した.各事例を「家族生活力量アセスメントスケール」や家族システム論を用いて分析した後,全体像を短文で記述し,それをグルーピングしたところ,「精神疾患から虐待が発生し,それに伴って生活困難が生じている」「不健全な夫婦関係が虐待問題をより解決困難にしている」「生活基盤が弱いことによってネグレクトが生じている」「家族形態が成立しないまま出産し,出産直後から育児放棄している」「世代間境界の曖昧さが虐待問題をより解決困難にしている」「未成熟な家族ゆえに虐待が発生している」の6つに類型化された.また,「家族生活力量アセスメントスケール」で家族の生活力量を測定した結果,虐待が発生している家族は家族生活力量が低値であり,特に「役割再配分・補完力」と「関係調整・統合力」が顕著に低かった.虐待事例各々についてスケールの得点をみると,同スケール9領域のいずれかが0%である事例が21例みられた.虐待支援に当たっては,家族生活力量を査定したうえで働きかけることが必要であることが考えられた.本研究の限界として,事例数が少なく,虐待重症度や対象選定機関等に偏りがある.今後は,地域保健・福祉機関からの事例を積み上げていきたい.
著者
西嶋真理子
出版者
日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.98-105, 2007
被引用文献数
1

本研究は,保健師に求められる地域看護診断(地域の保健ニーズをアセスメントし,計画策定)のできる能力の基礎を備えた保健師教育の基礎資料とすることを目的に,地域看護実習の中で学生が地域看護診断の展開過程をどのように学習しているかを分析した.方法は,E大学4年次学生22名のうち書面で同意が得られ,現地オリエンテーションが実習期間中に行われた10名の実習日誌に記述された内容から,地域看護診断の学習過程について分析した結果,以下のことが明らかになった.1.現地オリエンテーションでは,保健所・市町の組織,保健事業,保健師活動等から地域に必要な保健サービスについて学習している.初回地区踏査では自然環境や交通・人々の集まり等から人々の暮らしぶりを実感している.2.2事例4名の実習日誌の経時的分析から地域看護診断の学習過程は,<地区や人々の実像が見える><テーマに関わる対象が見える><データを関連づけて分析できる><健康課題を抽出し,背景・地域の強みがわかる><計画策定のアウトラインがわかる>の5段階の学習過程を辿っていることがわかった.地域看護診断の過程でデータの分析は,地域を大づかみに把握した後,データを焦点化し,統合化する思考過程が推測された.以上のことから,地域看護診断の展開過程における学生の学習過程が明らかになり,それぞれの段階に応じた支援の必要性が示唆された.
著者
有本 梓
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.37-45, 2007-03-30 (Released:2017-04-20)
被引用文献数
3

目的:児童虐待に対する保健師活動に関する研究結果を整理し,今後の研究・実践上の課題を明らかにした.方法:1996〜2006年7月に発表された文献を対象に医学中央雑誌とMEDLINEを用いて検索し,得られた論文34本を対象とした.結果:研究結果は「保健師が関わる事例の特徴」,「保健師の支援内容と求められる知識・技術」,「保健師の新たな役割」に分類できた.保健師が関わる事例の多くは,母子保健活動の対象で,保健師が最初に関わり長期間継続支援する場合が多かった.支援内容は,虐待者・母親の精神的支援,子どもの発達・安全の確認は具体的に明らかになっていたが,家族支援,関係機関との連携・調整については具体的な内容は明らかではなかった.ケースマネジメントの知識・技術が求められており,保健師は職場や経験によらず,個別支援の方法,家族支援の方法に関する研修を希望していた.近年,児童福祉分野での役割も求められていた.研修や職場内外での協力体制等の環境上の課題も明らかとなった.考察:今後の課題として,(1)虐待予防に貢献するための母子保健事業の活用と評価,(2)家族支援に関する研究の必要性,(3)連携・調整,社会福祉の知識・技術に関する研究実践および研究成果の活用,(4)新たな役割に向けた研究の継続・充実,(5)研修の企画運営の工夫および職場の上司・同僚,関係機関との協力体制の確立,が考えられた.
著者
成田 香織 田髙 悦子 金川 克子 宮下 陽江 立浦 紀代子 天津 栄子 松平 裕佳 臺 有桂 河原 智江 田口 理恵 酒井 郁子
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.16-22, 2011-03-18 (Released:2017-04-20)

目的:農村部における認知症予防に向けた介護予防事業への参加者と不参加者の特徴の相違を明らかにし,不参加者における適切な支援を含めた今後の介護予防のあり方を検討することである.方法:対象はA県在住の地域高齢者における認知症予防に向けた介護予防事業対象者(特定高齢者)94名(参加者47名,不参加者47名)である.方法は質問紙調査であり,基本属性,身体的特性(認知機能,生活機能),心理的特性(健康度自己評価),社会的特性(ソーシャルサポート)等を検討した.結果:参加群は平均年齢79.5(SD=5.8)歳,不参加群は82.0(SD=6.2)歳であり,基本属性に有意な差はみられなかった.不参加群は参加群に比して,認知機能の低い者の割合が有意に高く(p=0.03),手段的自立(p=0.02),知的能動性(p<0.001),社会的役割(p=0.07)が有意に低いもしくは低い傾向があった.また不参加群は参加群に比して,手段的サポートが低く(p=0.09),サポートが乏しい傾向があった.なお参加群の事業参加の動機は,孤独感の緩和や人とのつながりが最も多く,次いで,物忘れの重大さの自覚や将来の認知症への懸念などとなっていた.結論:農村部の認知症予防に向けた介護予防事業不参加者は参加者に比較して,生活習慣や対人交流の脆弱性があり,今後は,高齢者一人ひとりの特性やニーズに応じた参加への意欲や動機づけの支援が必要である.
著者
川崎 千恵
出版者
日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.90-97, 2014-03-31

目的:在日外国人女性の出産・育児の過程において経験する困難や,異文化社会で出産・育児を行うことの健康への影響,出産・育児の過程における支援ニーズを明らかにし,今後の在日外国人女性への育児支援策を検討するうえで示唆を得ることを目的とした.方法:医学中央雑誌,CINAHL,PubMedを用いて検索し,抽出した国内外の原著論文について分析を行った.結果:在日外国人女性は出産・育児の過程において,異文化間の葛藤やジレンマ,サポートを得られない,孤立や孤独感などの困難を経験していることが明らかになった.また,これらは産後うつなどの精神的な健康にも影響しており,情報やソーシャル・サポートのサービスへのアクセス,異文化に関連する困難への対処についての支援が必要であることが明らかになった.結論:文献レビューの結果,日本の文化の影響を考慮した在日外国人女性への具体的な支援策を検討することが今後の研究課題と考えられた.特に,在日外国人女性の支援ニーズを満たし,精神的な健康を維持するために必要な方法についての検討が求められていると考えられた.保健師等専門職は,情報やソーシャル・サポート,ソーシャル・ネットワークにつながる仕組みを整備するとともに,在日外国人女性が出産・育児の過程で直面していると考えられる困難に共感し継続的に支援を行う必要があること,家族に対する働きかけが必要であることが示唆された.
著者
小野 恵子 片倉 直子 島内 節
出版者
日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.64-69, 2010-03-31

目的:本研究の目的は,在宅看護学概論の評価であり,具体的な授業の評価内容は,授業の理解度,授業形態の工夫による学習理解への役立ち度,在宅看護の具体的なイメージ化,授業の満足度を明らかにすることである.また,その評価の結果から,在宅看護のイメージに関連する内容,満足度に関連する内容,イメージ化と満足度との関係,授業理解度と授業形態の工夫との関係があるかどうかを明らかにする.対象は,A大学看護学科3年次学生の56名中,調査への同意が得られた者計52名である.調査の結果から,授業の工夫について8割以上の学生が,学習と理解に役立ったと評価していた.しかし「介護保険法」「自立支援法・健康保険法」のような法関連の授業の理解度は,他の授業内容に比べて低かった.これらの授業の理解は在宅看護のイメージ化に関係していたこと,イメージ化と関連した工夫はPRパンフレットだけであったことから,更なる授業の工夫の必要性が示唆された.また,在宅看護のイメージ化と授業の満足度,授業の満足度と授業の理解度,そして授業の理解度と授業形態は,それぞれ関連しており,在宅看護のイメージづくりには,授業の満足度と授業の理解度と授業形態が連鎖していると考える.
著者
湯本 理子 佐藤 悦子
出版者
日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.73-80, 2012-12-31

目的:本研究は,スピリチュアリティ評定尺度(SRS)を用いて,A県内の訪問看護師のもつスピリチュアリティに影響を及ぼす要因を明らかにすることである.方法:A県内の全訪問看護ステーション40か所の訪問看護師244人に対し,無記名自記式アンケート調査を実施し,183人から返信が得られ,うち回答に欠損のない173人(有効回収率70.9%)を解析対象とした.調査項目は,訪問看護師のもつスピリチュアリティをスピリチュアリティ評定尺度(SRS)を用いて測定した.先行文献より抽出されたスピリチュアリティに影響が想定される要因11項目との関連についての分析はt検定,多変量解析は数量化I類によった.結果および考察:平均年齢は44.0歳(±7.8),訪問看護師の経験年数は7.7年(±5.6)であった.訪問看護師としてのスピリチュアリティの平均得点は46.8点(±8.7)で正規分布に近い分布を示した.スピリチュアリティに影響を与えていると思われる11項目との関連は,多変量解析の結果,最も影響していた項目は「スピリチュアリテイに関心がある」「(スピリチュアリテイの)研修会に参加したことがある」であった.本研究において,スピリチュアリティに影響していたものは,「年齢」や「経験」ではなく,訪問看護師のスピリチュアリティに働きかけていくためには,それへの関心と学習の機会が重要であるといった示唆を得た.
著者
長江 弘子 千葉 京子 中村 美鈴 柳澤 尚代
出版者
日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.123-130, 2001-03-01

本研究は,生活障害をもちながら地域で暮らす高齢者の主体的選択である「生活の折り合い」の概念を明らかにすることを目的とした.研究対象は,都内に居住する70〜89歳までの要支援高齢者20名である.データ収業は,個別訪問による半構成的面接を行い,高齢者の言語データをありのままに捉えるBerelsonによる内容分析の技法を用いて分析した.結論として生活障害をもちながら地域で暮らす高齢者の「生活の折り合い」概念は,「身体的機能障害によって変化した日々の生活スタイルを修正し,以前の生活に近い状態,あるいは自分の望む生活を自立的に選択しながら老いの成熟へ向かう過程」と定義された.この概念は,地域看護における新しい看護支援概念であり,「楽しく過ごすが生活信条」「老いに伴う生活調整」「自己尊重感を保障する健康」「生活保障に対する安心感」の4主要因で構成されていた.生活の折り合いの過程では,この主要因が絡み合い,肯定的認識と否定的認識との心的葛藤を伴う高齢者自身の心の仕事として意味をもっている.構成する4主要因は,地域で暮らす高齢者の日々の生活における個別支援への方略を提供するものであると考える.
著者
岡本 玲子 塩見 美抄 鳩野 洋子 岩本 里織 中山 貴美子 尾島 俊之 別所 遊子 千葉 由美 井上 清美
出版者
日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.60-67, 2007-03-30
被引用文献数
9

本研究の目的は,今特に強化が必要な行政保健師の専門能力を明らかにすることである.データは,(1)学識経験者を対象としたフォーカスグループディスカッション(n=7)と,(2)保健師と関係他職種を対象とした個別面接(n=9)により収集した.専門能力は,研究者によるデータの解釈・分析によって抽出・精選した.専門能力の妥当性と優先度の検討は,(3)全国の現任保健師研修担当者への郵送質問紙調査により行った.(1)(2)を分析した結果,専門能力は次の5つにまとめられた.すなわち,a)住民の健康・幸福の公平を護る能力,b)住民の力量を高める能力,c)政策や社会資源を創出する能力,d)活動の必要性と成果を見せる能力,e)専門性を確立・開発する能力である.(3)の調査(n=225)では,a)〜 e)の専門能力は,被調査者の9割以上の賛同を得た.また,7割の者が優先度が高いとした専門能力は,c)d)であった.結果より,今回抽出した専門能力は,今特に強化が必要なものとしてコンセンサスを得られた.今後保健師がこれらの能力を獲得できるよう,とりわけ優先度の高い専門能力について,我々は早急に教育プログラムの開発や教育体制の整備を行っていく必要がある.