著者
池田 紀子 奥野 茂代 岩崎 朗子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.36-43, 2004-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
17
被引用文献数
2

本研究は死別した高齢女性のサポートグループにおける悲哀の仕事について,参加者の語りから明らかにすることを目的とした.夫と死別した高齢者女性に対し,1回2時間,計10セッションのサポートグループにおける参加者の語りの内容を分析した.その結果,大きく6カテゴリーに分けられた.(1)夫の介護と看取り,(2)夫への思慕,罪悪感,怒り,(3)抑うつ,(4)家族や友人の中での孤独と傷つき,(5)あきらめから受け入れへ,(6)これからの人生に向けての生活の再構築,であった.またこれらのテーマは死後数か月から1年以上を経ても,その量や質を変化させながらも,つねに同じように語り続けられ,これらは重層的に関連しつつ悲哀の仕事を促進させた.サポートグループにおいて自由に自発的に自らの悲しみについて語ることやファシリテ一ターや参加者同士の相互関係により悲哀の仕事が促進することが明らかになり,また仲間との出会いや,今後の地域での交流への発展の可能性が示唆され,グループの果たす意味を明らかにすることができた.
著者
高柳 智子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.14-21, 2003-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

医療用粘着テープの皮膚刺激の少ない剥離方法を明らかにすることを目的に,高齢女性10名を対象に,剥離角度による皮膚刺激を比較した.剥離角度は, 30°, 60°, 90°, 120°, 150°, 180°を設定し,評価項目は,剥離力,角質細胞剥離量,剥離後の発赤消退時間,剥離時の痛みとした.角質細胞剥離量は剥離角度間で有意な差は認められなかった.剥離角度30°と60°は,90°以上に比べて有意に剥離力が大きかった.剥離角度30°は,90°以上より有意に発赤消退時間が長く,剥離時の痛みが強かった.これらから,剥離角度90°以上での剥経が望ましいことが示唆された.
著者
柴田(田上) 明日香 西田 真寿美 浅井 さおり 沼本 教子 原 祥子 中根 薫
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.116-126, 2003-03-15 (Released:2017-08-01)
参考文献数
18
被引用文献数
12

本研究は施設ケアの実践を担う看護職・介護職における連携・協働に関する問題認識の異同を比較検討し,その課題を明らかにすることを目的とした.介護療養型医療施設,介護老人保健施設,特別養護老人ホームに所属する看護職,介護職の別に6名ずつの4グループを構成し,グループインタビューを実施した.その結果,各職種の認識は情報の伝達方向,業務分担,個人の職業意識の内容に分類された.(1)情報の伝達方向:看護職は介護職による情報の質と内容に個人差があることを指摘し,介護職は看護職には本音が言えないという相違があった.(2)業務分担:指示・命令型は明確な分業体制が意識されている反面,職種間の階層性に伴う不満もあった.相互・調整型はスタッフの力量とケアの質を基準として,柔軟に調整され円滑であった.独立・分業型は両職種ともに業務の責任範囲が不明瞭であるという認識であった.(3)個人の職業意識:介護職は看護職に個人的な親しみを求め,看護職は介護職に職業的成長を求めていた.管理職の方針が連携活動に強く影響するという認識は共通していた.
著者
柏﨑 郁子 佐々木 晶世 碓井 瑠衣 叶谷 由佳
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.98-106, 2017 (Released:2018-08-01)
参考文献数
52

日本では一般病床での身体拘束を規制する法律は存在しない.一般病床は治療を優先する特性から,介護保険施設向けの「身体拘束ゼロへの手引き」(以下,「手引き」)の要件をそのまま適用するには困難さがある.最高裁判所平成22年1月26日判決は,一般病床での身体拘束に法的な判断を下した唯一の最高裁判決である.その判例評釈と,各医療施設の身体拘束ガイドラインの内容を「手引き」の3要件をもとに比較検討した.結果,裁判で身体拘束是非を判断する根拠は〈切迫性を判断すること〉〈拘束に代替する手段の実施〉〈拘束を行う時間〉〈医師の参加〉〈拘束中における状態確認〉〈説明〉〈承諾書〉〈記録〉であり,同様の視点で一般病床の各ガイドラインでは具体的な看護内容が示されていた.一般病床で身体拘束をする際には,「手引き」の3要件の考え方を踏襲した多くの複雑な手順が必要とされていることが明らかとなり,期待される看護の責任が多岐に渡ることが示唆された.
著者
中村 もとゑ 永井 眞由美 松原 みゆき
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.104-110, 2011-11-30 (Released:2017-08-01)
参考文献数
14
被引用文献数
4

本研究は,認知症高齢者を介護する向老期・老年期にある男性介護者のよりよく生きる力とそれを育む要因を明らかにすることを目的に,認知症高齢者を自宅で介護している男性12人に半構成的面接を行った.その結果,よりよく生きる力として「主体者になる力」「バランスを保つ力」「学習・自己成長する力」の3カテゴリー,それを構成する8サブカテゴリーが抽出された.よりよく生きる力を育む要因については,内的要因として「愛情」「責任感」が,介護者を取りまく外的要因として「精神的支援」「実質的支援」「社会への近接性」「出会いとつながり」「経済的な基盤」が抽出された.男性介護者は介護の苦悩がありながら自らの人生・生活を主体的に選択し,新たな知識の習得や介護経験を通じ自己成長につなげていた.また抽出された要因から,看護者には男性介護者の介護に対する内的要因を高める支援,実質的支援の提供,社会とのつながりや経済的基盤を支える支援が求められていると考える.
著者
粟生田 友子 長谷川 真澄 太田 喜久子 南川 雅子 橋爪 淳子 山田 恵子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.21-31, 2007-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
20
被引用文献数
4

本研究の目的は,(1)せん妄発生因子を患者へのケア実践過程にしたがって構造化し,(2)その発生因子とせん妄発症との関連を明らかにすることである.せん妄発生因子は,【背景・準備因子】【身体・治療因子】【患者因子】【周辺因子】の4領域102項目と,薬剤104種類について,せん妄発症との関連を検証した.研究の場は一般病院1施設の,産科,小児科,脳神経外科病棟を除く7病棟であり,2005年1〜3月の3か月間に,基点となる週から2週間ごとに等間隔時系列データ収集法を用いて,6クールのデータ収集を行い,75歳以上の入院患者の全数を調査した.その結果,対象はのベ461名得られ,DRS-Nによってせん妄発症の有無を判定したところ,せん妄発生群96名(DRS-N平均得点16.16点),非せん妄発生群365名(2.44点)となった(発症率20.8%,t=37.687,p=.000).【背景・準備因子】では,「年齢」「入院ルート」「認知症または認知障害」「脳血管障害」「せん妄の既往」の5項目で両群に有意差が認められ,【身体因子・治療因子】で,身体因子の「せん妄を起こしやすい薬物の投与数」「高血圧の既往」「脳血管疾患の既往」「消化器疾患の既往」「感染症徴候(CRP,発熱)」「低血糖/高血糖」「肝機能障害(LDH)」の7項目,治療因子の「緊急手術」「緊急入院」の2項目に有意な差があった.【患者因子】では,日常生活変化の「陸眠障害(夜間不眠,昼夜逆転)」「排尿トラブル(尿失禁,おむつ使用)」「排便トラブル(下痢)」「脱水徴候」「低酸素血症(O2 sat)」「ライン本数」「可動制限(生活自由度)」「視覚障害(眼鏡使用)」の8項目,【周辺因子】では,物理的環境の「部屋移動」,物理的環境への認識/反応の「日にちの確認(カレンダーで確認)」「時間の確認(時計で確認)」「点滴瓶やルートが気になる」の4項目に有意差を認めた.今回抽出できた因子は,せん妄の発症リスクの判断指標となりうるもの,あるいは看護介入によって発症を予防できる可能性をもつものであり,看護職が日々のケアの中で介入可能なものに対して介入方法とその効果を明確にしていくことが今後必要であると考えられた.
著者
七戸 翔吾 山田 律子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.76-86, 2020 (Released:2021-03-03)
参考文献数
32

研究目的は,通所サービスを利用する高齢者のサルコペニアの実態とその要因を認知機能障害(以下,認知障害)の有無で比較し,明らかにすることである. 対象者は,認知障害群57人と年齢・性をマッチングした非認知障害群57人の計114人であり,サルコペニアの有無,認知機能,栄養状態,活動状況を調査した. サルコペニアの発生率は認知障害群50.8%,非認知障害群47.4%と有意差はなかった.しかし,通所サービスの利用頻度は,非認知障害群よりも認知障害群が有意に多く(p<.001),また認知障害群にのみサルコペニアを有する者は日常生活能力(p<.001)やサービス以外の複数の活動状況(p<.05)が低かった.ロジスティック回帰分析の結果,サルコペニアの影響要因として「女性」「低い栄養状態」「通所サービス以外の少ない外出頻度」が挙げられた.通所サービスを利用する高齢者のサルコペニアの予防には,女性の低栄養の予防や活動範囲の拡大に向けた支援の必要性が示唆された.
著者
長谷川 真澄
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.36-46, 1999
参考文献数
25
被引用文献数
5

本研究の目的は,急性期の内科治療を受けるために入院した高齢者のせん妄がどのような状況で発症するか,その発症過程と発症因子を明らかにすることである.急性期状況にある高齢者は,環境の変化に対する適応力が乏しいという特徴がある.そこで,Royの看護適応モデルを基盤に本研究の概念モデルを作成し,データ収集を行った.対象は,さまざまな疾患で内科治療を受けるために入院した44名である.せん妄は44名中8名(18%)に発症し,発症時期は全員,入院当日から3日目までの期間であった.初発症状の出現からせん妄が完成するまでの時間経過は,3つのパターンに分類できた.せん妄発症後,症状が消失するまでの終息過程もまた,3つのパターンに分類できた.せん妄発症にかかわる因子の分析で有意差(p<.05)が認められたのは,安静療法,ライン類の本数,ヘモグロビン値,脈拍数,口渇,ADL得点,不安反応,頑固・短気な性格の8因子であった.急性期の内科治療を受ける高齢者のせん妄のアセスメントは,入院・治療に伴うせん妄の発症因子だけでなく,それらのストレス因子を高齢者がどのように捉え,反応しているかという点に着目することの重要性が示唆された.
著者
棚町 祐子 表 志津子 藤川 幸未 片寄 妙子 田中 瑞穂 村住 英也 中島 志保 宮内 愛 佐伯 和子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.92-99, 2005
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究の目的は,デイケアにおける高齢脳卒中後遺症者の生き生きとした様子に注目し,高齢脳卒中後遺症者の意識から,デイケア参加の意味を明らかにすることである.デイケアを利用する高齢脳卒中後遺症者11名を対象に質的帰納的研究を行い,半構成面接と参加観察によりデータを収集し分析した結果, 3つの中核カテゴリーが抽出された.1つ目は,デイケアを利用することで<障害のある自分を否定的に捉えずにすむ>等から【不安・気兼ね・心配ごとが和らいでいる】, つ目は<リハビリの効果を実感し他の利用者と思いを分かちあい,支えあえる>等から【支えや励みを得て,リハビリを続けていくやる気を保っている】,3つ目は,デイケアへ通所することで<いつもの生活と違った雰囲気が味わえる>等から【生活に新たな喜びを加えていけている】であった.デイケアの専門職は,デイケアが生き生きとした生活を支援する場となるよう,高齢脳卒中後遺症者にとってのデイケア参加の意味に共感し,生活にも目を向けた援助を提供することが重要であると考えられた.
著者
立原 怜 原 祥子 小野 光美
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.75-83, 2019 (Released:2020-02-01)
参考文献数
14

本研究の目的は,認知症高齢者の血液透析導入後の生活を支える家族がどのような体験をしているかを明らかにすることである.血液透析に通う認知症高齢者の家族7人を対象に半構成的面接を実施し,質的記述的に分析した.その結果,【忘れてしまう注意点に配慮する】【透析を受けることの難しさにつきあう】【透析導入前からの楽しむ力を維持する】【言葉で表せない透析による身体の不調を察し対応する】【葛藤した透析の導入を前向きにとらえられる】の5つのカテゴリーが抽出された.家族は,認知症高齢者の言動に苦心しながらも,その人に合わせた日常生活や体調の管理,透析を受ける手助けをしていることが明らかになった.看護者は,できる限り早期に,家族が認知症高齢者との生活を整えられるよう支援することが必要と考える.また,認知症高齢者のもつ力を尊重している家族を認め,透析の導入を肯定的に受け止められるように関わることが大切と考える.
著者
沖田 裕子 岡本 玲子 中山 貴美子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.30-39, 2001
参考文献数
13
被引用文献数
3

本研究は,痴呆ケア経験年数3年以上の看護・介護職が,痴呆性高齢者の活動性を引き出していると考えられるアクティビティ・プログラム(AP)の介入方法を明らかにすることを目的とする.研究方法は,痴呆ケア経験年数3年以上の看護・介護職18人に半構成質問紙によるインタビューを行い,分析は修正版グラウンデッド・セオリーを用いて行った.その結果,明らかになったことは,痴呆性高齢者の個別情報をもとに,痴呆性高齢者の個別情報がない場合とある場合の,両方の状態から活動性を引き出す介入方法であった.そして,痴呆性高齢者の個別情報を中心にAP介入方法のモデルを示すことができた.これらの結果を利用することによって,APの決定はプログラムの種類からの選択ではなく,高齢者のニーズを中心に行うことができると考えられる.
著者
林 健司 原 祥子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.91-97, 2014

本研究の目的は,大腿骨骨折により手術を受けた高齢患者の排泄行動において,見守りを止めて良いと判断した看護師の着眼点を明らかにすることである.大腿骨骨折手術を受けた高齢患者への看護に3年以上携わった経験がある看護師14人を対象に,「見守りを止めて良いと判断した看護師の着眼点」について,フォーカス・グループ・インタビューを行い,質的記述的に分析した.その結果, 15のサブカテゴリーが抽出され, 6つのカテゴリー【活力が蓄えられている】【自立へと気持ちが向かっている】【看護師と意思疎通が図れている】【自分のペースを調節できている】【注意力が高まっている】【動作にしなやかさがある】に集約された.これらのカテゴリーは,日常生活全般のケアを通してとらえられる患者の状況を判断材料にしたものであり,新人看護師をはじめとする看護師にとって,大腿骨骨折術後の高齢患者において排泄行動の見守りを止めて良いかどうかを判断する際の指針になり得るものと考える.
著者
沼本 教子 原 祥子 浅井 さおり 柴田 明日香
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.54-64, 2004
参考文献数
20

本研究は,高齢者が看護者からの支援を受けて「自分史」を記述することにより,どのような心理社会的発達を経験していくのかを明らかにし,老年期における心理社会的健康を維持していくための看護援助として,自分史の記述を支援する意義について検討することを目的とする.有料老人ホームに入居している協力の得られた65歳以上の4名の高齢者を対象に著者の考案した「自分史プログラム」を実施し,その介入前後で得られたインタビューデータと日本語版E.H.エリクソン発達課題達成尺度および日本版GHQ28を用いて,プログラム開始前と終了後の変化を検討した.プログラム介入前後の発達課題達成度,GHQ28でみた心理社会的健康状態はどちらも改善傾向を示していた.また,プログラムの面談を利用しながら人生の軌跡を振り返り記述することによって,終了後「重要他者の存在」に気づく,夫の死の悲嘆を克服し「人生のまとめ」を考え始める,家族に対する「赦(ゆる)す感情」を見出す,生きる限り「挑戦する」など,それぞれがこれまでの人生を再評価し,新しい人生の目標を見出しており,自分史を記述することの効果があったことを示唆していると考えられた.
著者
杉本 知子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.5-11, 2006
参考文献数
33
被引用文献数
2

本稿では,Rodgersの手法を用いて高齢者の長期ケアにおけるinterdisciplinary teamの概念構造を明確化した.文献データベースの検索等から48文献を分析し概念の先行要件,属性,帰結,さらに関連概念の検討を行い,以下の結果を得た.(1)概念の先行要件には,患者/クライアントの「ニーズの複雑化・拡大化」とそれを取り扱う専門職の「専門性の細分化・明確化」があった.(2)チームメンバーの属性にはチームメンバーへの「信頼」「理解」等が含まれ,チームの属性には「協働連携」「開放的なコミュニケーションの実施」等が含まれた.(3)概念の帰結はチームメンバーの協働連携に基づく相互作用によって導かれるものであり,ケアの提供者と対象者双方に有益性をもたらすものであった.(4)Interdisciplinary teamは患者/クライアントをチームの中心に据え,メンバー間の協働連携やコミュニケーションを重視した概念である.
著者
流石 ゆり子 牛田 貴子 亀山 直子 鶴田 ゆかり
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.70-78, 2006-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究は,高齢者の終末期のケア-の取り組みの現状と課題を明らかにするため,Y県下の介護保険施設90か所に勤務する看護職者全数717名を対象にアンケート調査を行い,395名(老健149名,特養91名,療養型155名,有効回答率55.1%)の回答を得た.主な結果は以下のとおりである.看取りの体験事例数,および受け入れ可能な治療・処置は,療養型が最も多かった.また,看護職は,「傾眠状態が続く」「嚥下・経口摂取困難」および「不安定なバイタルサイン」などにより"終末期が近い"ことを察しており,特に医療職の設置比率の低い特養の看護職の実感している程度が高かった.さらに特養の看護職は,「他職種との連携調整」を強く意識していた.終末期ケアにおいては,「苦痛の緩和」が最も意識されており,今後強化し取り組みたい項目として「死別後の家族ケア」「家族の負担軽減」があげられた.これらは,ともに療養型が最も強く意識していた.看護職は,医療機関でのキャリアを有し高齢者ケアに熱意をもっていた.一方,現施設での経験年数は浅く,准看護師が半数以上を占め,看護職の絶対数が少ないことなどは終末期のケア取り組みに少なからず影響を及ぼしていると考えられる.
著者
橋本 晶子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.58-63, 2011-06-15 (Released:2017-08-01)
参考文献数
22

研究目的は,介護老人福祉施設の介護職員に対する視覚教材を用いた手洗いの洗い残しを認識する自己学習の効果を検証することである.対象者である介護老人福祉施設の介護職員27名に対して,蛍光塗料含有ローション塗布後に通常手洗いを実施し,Gritter BugTMにより照らし出される部分を洗い残しとして自己学習する実験介入を自己学習前,自己学習直後,1週間後,1か月後に実施した.手指全体と各部位ごとに手洗いの洗い残し状況の得点でみた結果,自己学習直後および1週間後に有意に得点が下降していたが,1か月後には有意差がみられず,各評価段階すべてにおいて手背側より手掌側に有意に減少がみられた.これは,視覚教材を用いた自己学習直後の効果を維持するための定期的な追加介入などの方策および手背側手洗いの励行の必要性を示唆している.