著者
野間田 佑也 星野 准一
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.43-54, 2008 (Released:2008-07-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

本稿では,漠然とした検索要求下におけるレシピ探索を支援することを目的とし,その実現のアプローチとして情報視覚化を利用したレシピ探索システムを提案する.本システムでは,ユーザが行う一連の探索過程を,ユーザからの個々の検索要求および検索結果となる個々の情報をノードとするグラフとして表現する.また,本システムの有効性を評価するために,本システムを一人で使用する場合と,複数人での利用を想定し,評価実験を行った.実験後のアンケートの結果と考察から,本システムは,漠然としたレシピ探索に対して有効であることが確認された.
著者
野間田 佑也 中野 敦 星野 准一
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.55-64, 2008 (Released:2008-07-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

イベントデータを時系列に配列したタイムラインは,時間的な関係性を提示する手法として広く利用されている.人物の経歴や物事の歴史などを調べる際には,ある特定のタイムラインだけではなく,その他のタイムラインに含まれる出来事との関連性も理解することが重要となる.しかしながら,テキストベースの異なるタイムラインを比較参照し,出来事の時間的な位置関係を理解しながら,出来事間の関連性を理解することは困難である.そこで本稿では,情報視覚化によって複数のタイムラインの関連性の理解を支援するシステムVISTORYを提案する.提案システムでは,複数のタイムラインと相互関連性の視覚的なオーバービューをユーザに提示することにより複雑な関連性の理解を助ける.本稿では,提案したシステムを被験者に利用してもらい,その様子の観察と実験後のアンケートに基づき,提案システムの有用性の評価を行った.
著者
橋田 朋子 苗村 健 佐藤 隆夫
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.75-84, 2008 (Released:2008-07-30)
参考文献数
61

即興的な音楽表現システムは,音楽の新しい楽しみ方や体験を提供する効果的なメディアとして,近年非常に注目されている.この中でも,ユーザが自由に創意を発揮する事と,即興的音楽表現に必要な技法に気が付いたり練習する事を,違和感なく促すシステムに,筆者らは特に興味を持っている.本論文ではまず,数多く提案されている即興的な音楽表現システムの中で,技法習得を伴う創意発揮を実現するシステムの位置づけを歴史・エンタテインメント・教育の観点から行う.さらに該当する事例の比較検討を通じ,創意や表現の楽しさを損なう事なく,技法の自発的な練習を促すための効果的な支援・デザイン手法について明らかにし,今後の動向を展望する.
著者
山澤 舞子 伊藤 貴之 山下 富義
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.85-96, 2008 (Released:2008-07-30)
参考文献数
20

本論文では,階層型多変数データを可視化する一手法「十二単ビュー」を提案する.既に報告されている「平安京ビュー」が階層型データ中の各データ要素をアイコン表示したのに対して,「十二単ビュー」では個々のアイコンに割り当てられた変数の数だけの色を割り振り,この色の濃さによって各データ要素の多変数の値を表現する.また,拡大表示時にはデータの葉ノードを単位として変数値を表示し,縮小表示時には下位階層の変数値を統合し,上位階層のみを表示する,というような詳細度制御を実現する.本論文では,薬物群の分子構造情報と実験値を格納したデータベースより構築される階層型多変数データを例として,「十二単ビュー」の有用性を議論する.また,いくつかのユーザテストにより,可視化結果の有効性を検証する.
著者
八木 麻理子 川田 洋平 藤澤 誠 三浦 憲二郎
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.97-101, 2008 (Released:2008-10-08)
参考文献数
8
被引用文献数
1

美的曲線は,対数(等角)らせん,クロソイド曲線,さらにインボリュート曲線を含むとともに,接線ベクトルの積分形式としてのみ与えられている場合であっても対話的な生成,変形が可能であり,実務への応用が期待されている.しかしながら,これまでに提案された3点による美的曲線セグメントの入力法では,曲率が単調に増加,または減少する美的曲線セグメント1本しか入力することができず,曲率が増減し曲率の極値を持つ曲線や曲率の正負が反転する変曲点を持つ曲線を入力することができない.そこで,本研究で液晶ペンタブレット等で入力された点列からの$G^1$連続性を持つ美的曲線セグメント列の生成法を提案する.
著者
山本 景子 金谷 一朗 佐藤 宏介
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.102-112, 2008 (Released:2008-10-08)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

本論文は,工業デザイン支援システムのための三次元形状操作インタフェースに関するものである.従来のコンピュータ支援設計(CAD: Computer Aided Design) システムは,操作が複雑かつ非直観的であるため,専門のCAD オペレータを介して形状操作する必要があり,デザイナの造形上の意図を直接表現することが困難という問題がある.本論文では,複合現実感技術によるデザイン支援システムのための新たなユーザインタフェースを提案する.本提案インタフェースは,道具を握るときの手のフォームを埋込型センサにより取り込むことによって,実際に道具を持ち替えるのではなく握りを変えることによって道具を持ち替えるのと同様の効果をもたらすものである.著者らは本提案の試作システムを作成し,評価実験により三次元形状デザインシステムの入力インタフェースとしての有効性を確認した.
著者
吉田 安男 今野 晃市 徳山 喜政
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.113-123, 2008 (Released:2008-10-08)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

3次元モデルの軽量化手法は,肥大化する3 次元形状の冗長性を削減し,様々なアプリケーションに適用可能な,基本的で重要な技術である.3次元モデルの特徴を保存しながら,データを軽量化するためのアルゴリズムとして,QEM手法があげられる.QEM手法は,頂点を縮退した後の詳細さと軽量化速度の間で,最も良いバランスを持つアルゴリズムのひとつである.しかし,QEM手法は,一度にひとつの稜線しか削除できない逐次的なアルゴリズムであるため,膨大な3次元モデルの軽量化には時間がかかる.PC クラスタは,メモリ分散型の計算環境として一般に用いられており,複数のPC を束ねることで,計算資源を拡大することができる.本論文では,QEM手法をPCクラスタ環境で動作させるための分散化手法について提案する.PCクラスタを利用することで,安価なシステムにより3次元モデルの特徴を維持しながら,高速に軽量化することが可能となる.
著者
Laga Hamid Masayuki Nakajima
出版者
The Society for Art and Science
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.124-131, 2008 (Released:2009-01-14)
参考文献数
23
被引用文献数
8 11

We introduce a new framework for the automatic selection of the best views of 3D models based on the assumption that models belonging to the same class of shapes share the same salient features. The main issue is learning these features. We propose an algorithm for computing these features and their corresponding saliency value. At the learning stage, a large set of features are computed from every model and a boosting algorithm is applied to learn the classification function in the feature space. AdaBoost learns a classifier that relies on a small subset of the features with the mean of weak classifiers, and provides an efficient way for feature selection and combination. Moreover it assigns weights to the selected features which we interpret as a measure of the feature saliency within the class. Our experiments using the LightField (LFD) descriptors and the Princeton Shape Benchmark show the suitability of the approach to 3D shape classification and best-view selection for online visual browsing of 3D data collections.
著者
ママット アブドゥカディル 藤本 忠博 メムティミン ゲーニ 千葉 則茂
出版者
The Society for Art and Science
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.179-196, 2007 (Released:2008-06-18)
参考文献数
31
被引用文献数
2

We present an efficient method for creating large-scale animations of vertical developing cumulus-type cloud growth. The dynamics of cloud formation, growth, and motion are complex phenomena, and depicting these dynamics remains a significant challenge in the area of simulation and animation of natural phenomena in computer graphics. A novel aspect of this paper is the combination of a physical simulation method and a stochastic simulation method for obtaining an animation of large-scale phenomena with effects that are more natural. The physical simulation method is used to accurately solve fluid dynamics on a relatively small scale and prepare a 3D primitive pattern of a realistic animation of cloud growth. The stochastic simulation method uses 1/fβ noise functions and performs a large-scale simulation of an air current caused by the rising and condensation of water vapor due to the thermal effect. Many copies of the 3D primitive pattern are recursively mapped into the air current to constitute a large-scale continuous cloud growth. This combination of the physical and stochastic simulation methods can animate large-scale phenomena efficiently without enormous computational time and memory. The physical and stochastic simulations are achieved by particle-based methods, and the mapping is applied on simulated particles. Experimental results show that the proposed method efficiently creates realistic animations of large-scale cumulus and cumulonimbus clouds.
著者
金野 哲士 今野 晃市 千葉 則茂
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.197-206, 2007 (Released:2008-06-18)
参考文献数
23
被引用文献数
1

レンジセンサを使用することで,建造物の幾何情報が点群として得られる.建造物全体の幾何情報を得るためには, 複数の点群を統合する位置合わせ処理が必要である.著者らは,これまで特徴線の一致を利用した位置合わせ手法を提案してきた.しかし,従来手法では,位置合わせ処理に有効な特徴線を安定的に抽出するために,厳しい測定条件が必要であった.また,有効な特徴線数が少ないため,制限された位置から建造物を測定し,得られた全ての点群を位置合 わせ処理する必要があった.本論文では,従来必要であった測定条件を緩和するために,建造物の稜線を表す特徴線の抽出法を提案する.本手法は,従来手法で抽出した特徴線を用いて,測定点群を階層的に領域分割する.そして,隣接する二つの領域の境界線として線分を生成することで,稜線を表す特徴線を抽出する.実験では,測定して得られた点群から稜線を抽出し位置合わせ処理を行い,従来手法との比較を行った.その結果,本手法の有効性が確認された.
著者
菅野 研一 千葉 則茂
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.207-214, 2007 (Released:2008-06-18)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

マイクロホンを利用した簡便でローコストな風速センサを開発した.本論文では,このセンサの原理について,すなわちマイクロホンが風を受けたときに発生する雑音から,その他の音の影響を除去し,風速を求める方法を提案する.また,このセンサの,実世界の風に合わせて揺らぐ樹木のリアルタイムアニメーションシステムへの応用例を示し,その有効性を示す.
著者
ソソラバラム バトゥジャルガル グンジェー ゾリーグ 藤本 忠博 千葉 則茂
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.215-221, 2007 (Released:2008-06-18)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本論文では,ボクセル空間で表現される2値化されたスカラデータに対して,表面の再構成を行うアルゴリズムを提案する.提案する手法では,滑らかな表面を構成するため,近傍のボクセルの法線の平均化により,各ボクセルの法線の平滑化を行う.ただし,対象物の角などに相当するエッジ部分については,単純な平滑化を行わず,その状態に応じてエッジ部分を残すように法線の平滑化を行う.具体的には,近傍ボクセルの法線を重み付き平均化する際の重みとしてガウス関数を基本として用い,近傍のボクセル間の距離や法線ベクトルの方向により重みの値を決定して平滑化を施すことでエッジが保存される.最後に,いくつかの実験例により本手法の有効性を示す.
著者
マエス マルセーロ 藤本 忠博 千葉 則茂
出版者
The Society for Art and Science
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-13, 2007 (Released:2008-07-30)
参考文献数
36

We present an optimization of the height-field water-column based approach for water simulation, providing three-dimensional animation of water flow on natural terrains. Our approach eliminates the storage and management of redundant virtual pipes between columns of water and also removes output dependency for parallel implementation, making it efficient for interactive computer graphics applications. We show a GPU implementation of the proposed method that runs at interactive frame rates with rich lighting effects on the water surface, including light wavelength dependent attenuation and light scattering.
著者
Xin Yin Weiwei Xu Ryo Akama Hiromi T Tanaka
出版者
The Society for Art and Science
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.14-21, 2008 (Released:2008-07-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

A technique to synthesize a 3-D Kabuki face model from ancient images is proposed. Kabuki is a traditional Japanese theater art. Kabuki researchers can know some ancient information of Kabuki from the ancient 2-D images such as Ukiyo-e (Japanese drawing) and Kumadori images (Kabuki makeup). Compared with the real face images in photographs and paintings, the face images in Ukiyo-e and Kumadori images were distorted a little from the real face for art representation. Hence, it is necessary to synthesize a new 3-D face model between the 3-D real face original model and the 2-D images. A deformation technique is proposed for transforming 3-D real face original models according to the 2-D images, and a mapping algorithm is given to map the images onto the 3-D face shape model. To ensure balance between precision and smoothing of 3-D model deformations and mappings, the radial basis function (RBF) is developed and a multilevel RBF is proposed. This multilevel RBF solver can be used to deform the 3-D real face model as well as map the 2-D images onto the 3-D face model. Some experimental results are given to demonstrate the effect of this technique.
著者
橘 春帆 伊藤 貴之
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.22-33, 2008 (Released:2008-07-30)
参考文献数
29

クラスタリングされた表形式データは,情報科学の多くの場面において重要な役割を果たしている.このような表形式データの内容を効果的に可視化する手法として,表形式データを階層構造やグラフ構造に変換した上で可視化する手法が,近年になって多数報告されている.本論文では,階層型データ可視化手法「平安京ビュー」を使った表形式データの可視化手法を提案する.提案手法ではまず,表形式データの行および列を構成するデータ要素に,クラスタリングを適用し,各々の結果から階層型データを構築する.続いて,行を構成するデータ要素で構成される階層型データに対して,「平安京ビュー」を適用して可視化する.同様に,列を構成するデータ要素で構成される階層型データに対しても,「平安京ビュー」を適用して可視化する.この2 つの可視化結果を相互に操作することで,大規模な表形式データの内容を探索する新しい可視化を実現する.著者らは実験例として,新聞記事コーパスから作成された表形式データの可視化を試みた.本論文では,「左京と右京」によって新聞記事コーパスから,興味深いいくつかのキーワード群や記事群を発見できた事例を紹介する.
著者
竹川 佳成 寺田 努 塚本 昌彦 西尾 章治郎
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.88-97, 2007 (Released:2008-07-30)
参考文献数
25

近年,計算機の普及に伴い,電子メール,ブログ,チャットなどテキストベースのコミュニケーションが活発に行われている.また,感情や込めたい思いをより良く表現し他者に伝えるために,写真,ムービー,効果音,音楽,香りなどさまざまなコミュニケーションメディアやインタフェース,システムが提案されてきた.一方,ピアニストは鍵盤楽器を使って感情や思いを巧みに表現している.したがって,文字入力に演奏者の音楽的な表現力を付加できれば,感情や思いをより豊かに表現・伝達できると考えられる.そこで本研究では,鍵盤を使って文字入力に音楽表現を付加できる文字入力システムTEMPEST (TExt input and Musical PErforming SysTem) を提案する.TEMPEST の文字入力方式は,楽器演奏による感情伝達を考慮した設計になっており,ユーザはあたかも演奏しているかのように文字入力できる.さらに,実装したプロトタイプを用いた,文字入力演奏の視聴評価実験の結果から,提案システムは感情伝達手段として有効であることが証明された.
著者
景 琳琳 井上 光平 浦浜 喜一
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.98-105, 2007 (Released:2008-05-27)
参考文献数
11
被引用文献数
1

カラー写真をステンドグラス画像やカラースケッチ画像などの非写実的画像に変換する簡便で高速な手法として,画像を色が均一な領域に分割するタイプの処理法を提案する.本論文では,エッジベースの手法と領域ベースの手法とを提案する.エッジベースの手法では,入力画像から検出したエッジからの距離変換に基づいて画像をアポロニウス分割し,バンプマッピングによってステンドグラス風やキルティング風,タイル風などの画像を生成する.エッジからの距離変換を用いる同様な手法として,円板配置によるバブル画像の生成法も示す.領域ベースの手法では,入力画像を減色し,モードフィルタをかけて滑らかな境界の領域分割を得る方法を提案し,境界線や領域色を処理してステンドグラス画像やカラースケッチ画像を生成する.
著者
西山 慧子 伊藤 貴之
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.106-116, 2007 (Released:2008-05-27)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

遺伝子ネットワークとは,各遺伝子をノードとし,遺伝子間をエッジで接続して構築されるデータである.数千,数万といった大量の遺伝子群で構成される遺伝子ネットワークには,複雑な連結成分を含むことが多く,その解釈や把握が困難な場合も多い.本論文では,遺伝子群にクラスタリングとネットワーク化を同時に適用して構築される,階層型ネットワークデータを対象とした可視化手法を提案する.提案手法では,各々の遺伝子は数種類の発現率を持つと仮定し,その発現率の相関性の高さによりクラスタリングを行う.それと同時に提案手法では,発現率の相関性が高い遺伝子間をエッジで連結することにより,ネットワークデータも同時に生成する.提案手法ではこの遺伝子ネットワークデータを,大規模階層型データ可視化手法「平安京ビュー」の拡張手法を用いて可視化する.提案手法を用いることにより,遺伝子学の研究者は,膨大な遺伝子群の中から,特定の遺伝子の相互関係を分析,あるいは興味深い特徴を持つ遺伝子の発見,などが容易になるものと考えられる.なお本論文は遺伝子ネットワークの可視化を試みるものであるが,提案手法における階層型ネットワークデータの可視化手法は,拡大性とランダム性の高い複雑ネットワークと呼ばれるネットワーク全般に適用可能な,応用範囲の広い可視化手法である.
著者
五味 愛 伊藤 貴之
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.117-125, 2007 (Released:2008-05-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1

筆者らは,実写撮影画像の視線情報を高速検索するシステムVIEWGLEの研究に従事し,その中で大容量画像から類似部分画像の高速抽出アルゴリズムを用いている.本論文では,この類似部分画像抽出アルゴリズムを一般化した手法を提案し,その処理時間や正確さについて考察する.本手法は3ステップから構成される.最初のステップでは大容量画像に対して前処理を施し,その結果を蓄積しておく.続いて入力画像を提示されたときに,2つめのステップとして大雑把な類似度判定を行い,大容量画像中から少数の候補部分画像を抽出する.続いて3つめのステップとして,それら候補部分画像と入力画像の類似度を算出し,応答曲面法を用いて類似度が最大となる最適部分画像を出力する.本手法では,厳密に確実に画像を検索できる保証はない.しかし本論文の実験結果から,本手法が高速に,ある程度の満足のできる類似画像を抽出できることが示されている.
著者
大山 喜冴 伊藤 貴之
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.126-135, 2007 (Released:2008-05-27)
参考文献数
25

映画やテレビCMの製作,およびマルチメディア技術において,画像の印象に合った音楽を用いることは非常に重要である.そこで我々は,ユーザが任意の音楽と画像を入力した際に,画像の印象に合わせて音楽を自動アレンジする手法の研究を進めている.本論文ではその初期成果として,画像の色分布および対象物からその印象を推測し,その印象に合ったリズムパターンで音楽を自動アレンジする手法を提案する.本手法では前処理で,ユーザに多数のサンプル色,サンプル画像,画像に写る対象物をキーワードとして提示し,この各々から連想されるリズムパターンを回答させる.この回答結果から各々のリズムパターンに対して,どのような画像から高い連想度を得られるかを推測する算出式を導出する.続いて本処理では,任意の入力画像に対して,各々のリズムパターンの連想度を算出し,最も連想度の高いリズムパターンを用いて自動アレンジした音楽をユーザに提示する.