著者
土井 淳 伊藤 貴之
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.250-263, 2004 (Released:2008-07-30)
参考文献数
20
被引用文献数
4 3

グラフデータの視覚化技術は,近年活発に研究が進められており,金融・交通・通信・社会組織・科学・計算機システム・インターネットなど,非常に幅広い分野のデータ分析およびデータ監視の目的での実用が報告されている.グラフデータの視覚化における最も大きな問題は,「グラフを誤読させない適切なノードの画面配置を,自動的に実現する」という問題である.この問題を解決するために,ノードに分子間力モデル,アークにバネモデルを適用して,運動方程式によって良質なノード配置結果を得る手法が提案されている.本論文では,上記のような「力学モデルを用いたグラフデータの画面配置手法」の改良手法および階層型グラフデータへの拡張手法を提案する.本手法は,ノードを1個ずつ配置するインクリメンタルなアルゴリズムにより,配置結果を改善するとともに,計算時間の増加を抑えることに成功している.また本論文では,上記手法を用いたウェブサイトの視覚化結果を提示する.本手法では,ウェブサイトを構成するウェブページをノード,ウェブページ間のハイパーリンクをアークとして,またウェブページのディレクトリ階層を参照してウェブページを階層型データに格納することにより,ウェブサイトを階層型グラフデータとして表現する.この階層型グラフデータを上記手法により画面配置し,個々のウェブページをサムネイル画像で表示することにより,ウェブサイトの全体像を表現する.
著者
菊池 司 伊藤 貴之 岡崎 章
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-12, 2005 (Released:2008-07-30)
参考文献数
50
被引用文献数
2

日常生活や日常業務にあふれる膨大な情報の中から、利用者が必要としている情報を適切にわかりやすく提供するためには、視覚的な技術を用いることが非常に有効である。有効な視覚的技術を確立するためには、人間の感覚・感性の観点からと、コンピュータによる自動化の観点からの議論が有用である。視覚的に情報を提供する技術の代表として、情報デザインと情報視覚化があげられる。前者は人間(デザイナー)が表現した情報を提示する技術であり、どちらかといえば感性の観点から発達した分野である。後者はコンピュータ(プログラム)が表現した情報を提示する技術であり、どちらかといえば自動化の観点から発達した分野である。視覚的な情報提示技術が必要とされている代表的な分野にWebがあげられる。本論文ではWebナビゲーション技術に適用されている情報デザイン・情報視覚化の両技術を紹介し、その内容から情報デザイン・情報視覚化の最近の動向と今後の展望を論じる。
著者
山田 雅之 鈴木 茂樹 ラフマット ブディアルト 遠藤 守 宮崎 慎也
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.149-158, 2004 (Released:2008-07-30)
参考文献数
10
被引用文献数
4 3

本論文ではコミックを携帯電話端末上で閲覧できるシステムについて述べる.表示画面のピクセル数が十分でない携帯電話端末でコミックを提供するためには,コミックをコマ毎に分割して表示したり,台詞のテキストを抜き出して拡大表示したりする工夫が必要である.そのためは,コミックからのコマフレームの抽出,整列,ならびにフレーム画像内の台詞の抽出,整列等の処理が必要であり,本文では特にそれらの処理を実行するためのアルゴリズムを提案する.また, 実際にコミックのデータをWebサイトからダウンロードし, 携帯電話上でコミックを再構成するプログラムを実装し,携帯電話の画面に実際に表示される画像のクオリティやコンテンツとしてのコストパフォーマンスについて検証する.
著者
竹下 大樹 太田 真 田村 真智子 藤本 忠博 村岡 一信 千葉 則茂
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.159-167, 2004 (Released:2008-07-30)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

本論文では,粒子ベースによる爆発火炎のビジュアルシミュレーション法を提案する.本手法は,粒子による離散的なラグランジュ記述による流体モデルに基づく数値シミュレーション法と,その粒子群の運動データからCG映像を生成するためのレンダリング法からなる.本流体モデルでは,炎粒子と空気粒子を用い,ナビエ・ストークス方程式における外力として温度差による浮力を,また粘性力と圧力は粒子を用いて離散化したモデルにより近似している.さらに,粒子間の熱伝導及び,熱ふく射を考慮している.本手法によれば,爆発火炎の湧き出しを伴う上昇や,上昇気流後方に起こる気流の巻き込み現象などが表現可能である.レンダリングには,Z‐バッファベースのボリュームレンダリングを適用している.
著者
前野 輝 岡田 稔 鳥脇 純一郎
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.168-177, 2004 (Released:2008-07-30)
参考文献数
18
被引用文献数
2 3

CG制作における形状モデリング過程では三面図は点や直線を仮想空間に数値的に正確に配置するための最もポピュラーかつ重要な道具であるが,これを利用して仮想物体の形状変形を行うためには特殊な技術と知識を必要とする.既に筆者らは形状創成過程におけるデザイナの初期発想支援を目的とする,形状関数を用いた双三次ベジエ曲面の直観的形状変形方式を提案している.本論文では,この方式とつまみ判定機能を用いた会話型モデリングシステムの一構成法を示す.本システムでは,データグローブと三次元位置センサを用いてユーザの手の動きを入力し,つまみ判定機能を取り入れることによりユーザの意志が反映されるようなシステムを実現している.本システムのプロトタイプを実装し,いくつかの実験により実際に手で押したり引っ張ったりするような感覚で変形操作を行えることが確認された.
著者
徳井 直生 伊庭 斉志
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.178-184, 2004 (Released:2008-07-30)
参考文献数
23
被引用文献数
2

⌈Bioshpere of Sounds⌋は,動的な3Dインタフェースを用いたインタラクティブ音楽環境SONASPHEREの上に構築された音響作品である.本作品においては,仮想空間内に球として表現される音響的処理の機能単位が,3次元空間を飛び交いながら相互に作用し合うことで複雑で豊かな音響効果が生まれる.出力される音に関わるプロセスを可視化し,操作できる形で提示することで,音楽を聴取するという行為に音以外の新しい意味を付加することを試みる.
著者
筧 康明 苗村 健
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.185-188, 2004 (Released:2008-07-30)
参考文献数
5
被引用文献数
3 1

鏡は,その前に広がる光景を即時的に映し出す.我々は,“鏡の中の世界は,その前にある我々の世界そのものである”という常識を疑うことはない.この常識に対して,本稿で提案する“through the looking glass”は,その概念を覆し,鏡の中に別の世界を作り出す作品である.本作品では,何の変哲もない普通の鏡を用いる.しかし,鏡の前に配置された映像スクリーンと,鏡の中に映るそのスクリーンには,別々の映像が見えている.すなわち,鏡の持つ対称性や整合性に縛られない映像が,鏡の中と外で自由に展開されているのである.例えば,鏡に正対した観客は鏡の中にいる自身の鏡像とホッケーゲームを通じて対戦することができる.普段は一心同体であるはずの鏡の中の自分と,敵・味方の関係に分かれて戦うことで,観客は“鏡の中の世界”との,さらには自分自身との新たなインタラクションを体験することができる.
著者
河原塚 有希彦 高橋 誠史 宮田 一乘
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.189-192, 2004 (Released:2008-07-30)
参考文献数
11
被引用文献数
3 2

本作品“ViewFrame2”(以下VF2)では,画像処理による位置検出技術を用いた新たなコンテンツ鑑賞スタイルを提案する.VF2は,「窓越し現実感」というコンセプトに基づき,窓の代わりに設置したディスプレイ上に,ユーザの視点移動に伴い変化する景色をシミュレーションして提示するものである.VF2の実装システムではリアルタイム性が強く求められるために,グラフィックボードのピクセルシェーダ機能を用いて,ハードウェアによる画像処理の高速化を試みた.実装の結果,身体移動に伴う自然なインタラクションで,景観の奥行き知覚や3次元物体の形状認識が容易になることが体感できた.
著者
児玉 幸子 福田 陽子 佐山 弘樹 小池 英樹
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.193-196, 2004 (Released:2008-07-30)
参考文献数
5
被引用文献数
1

本論文では,外部入力に対しインタラクティブかつ複雑に変化するテクスチャのコンセプトと,それを実現するため人工生命モデル“Evoloop”を用いたインタラクティブアート<生きている表面>について報告する.作品では正方形のスクリーン上の図形を画像認識して輪郭線を抽出し,それとスクリーンの淵で囲まれた範囲をEvoloop個体群が生息する空間とする.鑑賞者が図形を動かすと,Evoloopは輪郭線や個体同士と衝突して多くは消滅し,個体の新たな生成・自己複製・進化によって,生息空間に多様性が生まれる.結果的にリアルタイムに変化する抽象のコンピュータグラフィックスが生成される.これら個体群の状態をテクスチャ画像の生成に利用し,別のスクリーン上に動的テクスチャをマッピングした生物の3次元CGを投影する.
著者
伊藤 智也 中野 誠士 藤本 忠博 千葉 則茂
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.197-199, 2004 (Released:2008-07-30)
参考文献数
12

筆者等は,これまで方状節理と柱状節理の生成に基づく岩場景観のモデリング法と,粒子要素法的アプローチによる剛体の運動シミュレーション法を提案している.本論文では,これらの手法を併用することにより,岩塊の崩落による堆積を伴うより自然な岩場景観のビジュアルシミュレーションが可能となることを示す.
著者
藤本 忠博 今野 晃市 千葉 則茂
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.8-21, 2004 (Released:2008-07-30)
参考文献数
28
被引用文献数
3 3

本稿では,最近活発になってきた研究分野である“ポイントグラフィックス”に関連して,点集合を扱うこれまでのCG技術と,主にポイントグラフィックスとして最近開発されたレンダリング技術について解説し,ポイントグラフィックスはこれまでのCG技術の自然な発展としてある魅力的な技術分野であることを示す.
著者
菊池 司 工藤 芳彰 岡崎 章 木嶋 彰 古屋 繁
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.35-44, 2004 (Released:2008-07-30)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

デザインの対象が「モノ」から「コト」への移行がいわれて久しい昨今,ユーザが製品や提供される環境を利用していくなかでの全体的な経験までを視野に入れた「Experience Design」,つまり経験を提供するデザイン,あるいは経験そのものをデザインの対象とするという視点に立ったデザインの必要性が言われている.しかしながら,「Experience Design」の意味する本質は見えにくく,経験をデザインできるのかという疑問があるのも事実である.そこで本論文では,「Experience Design」という言葉が意味するものは何かを研究事例などを通して探り,新しい領域へと広がっていくデザイン研究,および実践のあり方を検討するものである.
著者
高橋 裕樹
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.45-68, 2004 (Released:2008-07-30)
参考文献数
9

SIGGRAPHは,CG(Computer Graphics)とinteractive technologyに関する国際会議である.今年は,7月27日(日)から31日(木)までの5日間に渡りSan Diego, California, USAのConvention Centerで行われた.本論文では,SIGGRAPH'03で発表された論文全81件を概説する.
著者
梶原 景範 高橋 裕樹 中嶋 正之
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.69-75, 2003 (Released:2008-07-30)
参考文献数
12

ボリュームオブジェクトが互いに干渉したシーンをレンダリングする方法を提案する.本提案方法は,信学ソ大2001で提案し,映情学誌,Vol.56,No.10,に採録の光線ボリュームを用いたボリュームとポリゴンの干渉シーンのレンダリング方法を拡張したものである.ボリュームの各ボクセルを通過する光線の色とそこまでの透過度を計算し, 光線ボリュームバッファに出力しておくことによって,ボリュームもポリゴンも統一的にテクスチャ付きのポリゴンとしてレンダリングすることを特徴とする.本論文では,ボリュームと干渉するボリュームを半透明ポリゴンの規則的に配列した層と見なして,ボリュームとボリュームの干渉シーンのレンダリングへ拡張した.これによって,ポリゴン用グラフィックパイプラインでボリュームとポリゴンまたはボリュームが互いに干渉したシーンをレンダリング可能である.本提案方式は,光線ボリュームバッファの生成においては, ボリュームとポリゴンの干渉を考慮することなくボリュームを単独で処理すればよいことをを特徴とする.
著者
松山 克胤 藤本 忠博 村岡 一信 千葉 則茂
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.76-85, 2004 (Released:2008-07-30)
参考文献数
19

筆者らは,これまで風による樹木の揺らぎの効果音を自動的に付加するサウンドモデリング法を提案している.この提案手法は,樹木の枝と葉に対して,揺らぎの付加と効果音の生成をそれぞれ独立に行い,個々に作成された効果音を合成することで,樹木全体の効果音としている.本論文では,枝と葉の効果音の生成に対して,既提案手法とは異なる統計的なアプローチに基づくより効率的に動作する手法を提案する.
著者
伊藤 智也 藤本 忠博 千葉 則茂
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.86-95, 2004 (Released:2008-07-30)
参考文献数
21
被引用文献数
3 3

本論文では,柱状節理の形成過程のシミュレーションに基づく,岩場形状のモデリング手法を提案する.節理形状は岩場景観の視覚的特徴を与える重要な要因の一つであるが,これまで節理形状の形成に基づく岩場景観の生成技術に関する研究例は極めて少ない.本提案手法は,(1)初期溶岩形状に対する熱伝導シミュレーションによる温度分布の生成,(2)温度分布から収縮中心線の生成,(3)収縮中心線を母線としたボロノイ領域分割,および(4)風化シミュレーションのステップからなる.また,計算の効率化のために,(1)には低解像度のボクセル空間を,(2)-(4)には高解像度のボクセル空間を用いている.本手法では,さまざまな境界条件に応じた柱状節理形状が容易に生成可能である.
著者
曽我 麻佐子 海野 敏 安田 孝美 横井 茂樹
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.96-107, 2004 (Released:2008-07-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

モーションキャプチャで取得したバレエの3次元モーションデータを利用し,バレエの振付をWeb環境で対話的に創作し,3次元アニメーションによってシミュレーションするシステム"Web3D Dance Composer(WDC)"の開発を進めてきた.バレエ教師が作成した振付をWeb上に蓄積し,それを生徒がダウンロードして再生し,復習や自主学習に利用することを想定している.本論文では,まず,WDCがバレエの実用的な教育支援システムとなるように,その機能を大幅に強化するため,バレエ動作の体系的符号化と,創作支援システムの開発を行った.次に,バレエ教師が舞踊の保存手段として利用できるように,バレエ用語に基づいたテキストベースの符号化手法を考案した.さらに,この体系的符号化に基づき,バレエ教師がレッスン用の振付を効率的に創作するための支援システムとして,動作連結の自動制御,ランダム選択機能,自動振付機能,蓄積・再利用機能を導入した.創作支援システムの有用性を評価する実験を行い,その結果を考察した.
著者
古川 耕平 米村 貴裕 廣瀬 健一 長江 貞彦
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.114-115, 2003 (Released:2008-07-30)
参考文献数
4

3次元コンピュータグラフィックス(以下3DCG)を用いて表現されるイメージは,直感的に理解しやすいという特徴を持つ.近年,デジタル技術の進歩に伴い,教育分野においても3DCG を用いた教育コンテンツが急速に普及しつつあるが,それら教育コンテンツの開発はまだ緒についたばかりであり,更なる研究開発が期待されている.本研究では,この3DCG の特徴を教育コンテンツに生かし応用する.今回はコンテンツとユーザとの間に双方向性を持たせるために,人がものを詳しく観察しようとするときにおこなう「覗き込み」の動作を利用したビューワシステムの構築をおこなった.これにより興味の喚起を促し,ユーザの理解度を高めるためのシステムを実現できた.さらに,本システムをユーザに使用してもらい,興味の喚起や理解度に関するアンケート調査を実施した.この結果,教育コンテンツとしての本システムの有用性を確認できた.
著者
渡邊 淳司 板垣 貴裕 野嶋 琢也 稲見 昌彦 舘 すすむ
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.116-122, 2003 (Released:2008-07-30)
参考文献数
12

見える物体は触ることができる.普段我々は,見えているものに何気なく手を伸ばし,触っているが,それはあたりまえの行為なのであろうか.我々にとって,何かがが存在するということは,そこに物質が存在し触覚を感じられることなのか,それとも,見えるということなのであろうか.本作品ではそれぞれの感覚における“存在”がテーマであり,体験者が画面の中で走り回る小人を触ることで,視覚と触覚による存在感の違いを感じることをねらいとした.小人は見える小人と影だけの小人の2 種類の小人が存在し,見える小人は視覚では知覚することはできるが,触覚によっては感じられない.一方,見えない小人は触ることによってその物質性は確認することはできるが,見ることはできない.彼らはそれぞれ,人間の知覚との関係性が一部失われた世界に存在している.
著者
高橋 誠史 河原塚 有希彦 桑村 宏幸 宮田 一乘
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.123-127, 2003 (Released:2008-07-30)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

ただ歩きながら目にする風景の移り変わりを, 泳ぐという行為で置き換えてみたらどうなるのだろうか.本論文では, そのような身体運動に伴うさまざまな視覚体験を, コンピュータを用いて置換する試みを提案する.両腕に装着された反射板で参照光を反射し,その反射光を天井から吊るされたCCD カメラで観測する.次に, 観測された反射光を画像処理して腕の動きを計算し, その動きの変化にあわせて, 投影されるビデオの再生速度を制御し, 動画の中を泳いでいるような感覚を体験させる.日常的な光景を撮影した映像を泳ぎという動作を通して体験することにより, 無意識のうちに我々の行動に影響を与えている重力や, 身体そのものについて考えるきっかけを与える場を, この作品は提供する.