著者
日合 あかね
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
no.4, pp.96-107, 2005-05-28

本稿の目的は、女性の性的自立の可能性について探究を行うことにある。そのために、通常は女性の性的自立と対立するものとされるマゾヒズムを取り上げ、女性のマゾヒズムが性的自立に導きうる可能性を検討する。女性の積極的なマゾヒズムの実践が現状の権力構造を脱構築する可能性を検討し、あわせて、マゾヒズムのより深い理解へ至るよう努める。ジェンダーの文化的偏向によって、男性のそれとは異なり、女性のマゾヒズムは自然本性的なものとされてきた。自然に依拠したこの種の議論は、当然のことながら再吟味されねばならない。しかしまたこのことは、必ずしも女性の性的なマゾヒズムが日常の権力関係を単純に反映していることを意味しない。サドマゾヒズムが権力関係を利用するというように考えると、パット・カリフィアのように、サドマゾヒズムは「権力関係のパロディ」と定義することもできよう。そこで本稿では、パット・カリフィアのこの考え方を、女性のマゾヒズムの十全な理解と現在のジェンダー構造を脱構築する手立てとして取り上げ、そこから女性の性的自立を再定義する方向性を提示することを試みた。これと関連して、ジュディス・バトラーの「ジェンダー・トラブル」の概念や、男性のマゾヒズムを近代的主体の派生形態を捉えるジョン・K・ノイズの議論をも検討した。
著者
入江 由規
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.58-70, 2014-05-31 (Released:2017-09-22)

本稿の目的は、なぜ、アニメやゲーム、コミックの舞台を訪れる「聖地巡礼者」が、これまで「変わり者」と見なされることの多かった、アニメやゲーム、コミックを愛好するオタクであるにもかかわらず、それらに必ずしも関心のある訳ではない、作品の舞台となった町の住民や商店主らにとっての「ゲスト」へと変貌を遂げたかを分析することにある。オタクの対人関係は、これまで、趣味や価値観を共有する人とだけ交流する、閉鎖的な人間関係を築くものと捉えられることが多かった。だが、聖地巡礼者は、アニメやゲーム、コミックを愛好するオタクであるにもかかわらず、作品の舞台となった町に住む住民や商店主と交流を図り、時に作品を活かした町おこしを模索する企業人や研究者とも、共同でイベントを開催する関係を築いている。このことは、これまでのオタク研究では捨象されてきた、オタクの新たなコミュニケーションの実態を表していた。上記の目的に基づき、本稿では、アニメ作品の舞台を旅する「アニメ聖地巡礼者」に聞き取り調査を行った。その結果、彼らは、住民への挨拶といった礼儀を大切にし、商店主や企業人、研究者からの依頼を、物質的な見返りを求めることなく、自分たちが好きな作品で町おこしが行われるからという理由で最後までやり遂げることで、住民や商店主、企業人や研究者から信頼を得て、「ゲスト」へと変貌を遂げたことが分かった。
著者
鎌田 大資
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
no.7, pp.114-125, 2008-05-24

初期シカゴ学派の社会学者たちは19世紀から20世紀の変わり目に、世界ではじめて大学での社会学の制度化を勝ちとった。彼らの営みを画期としてその前後で社会学における実証主義的な知の生産と蓄積、すなわち社会調査に向かう体制の変遷が認められる。19世紀中盤の社会学の発祥以来、総合哲学の頂点に冠せられる社会学という位置づけが生まれ、1892年開設のシカゴ大学に社会学が設置されてしばらくは同じ形での模索がつづく。そしてパークとバージェスが協同した学生指導により、また『科学としての社会学入門』(1921)での移民周期説、『都市』(1925)での同心円理論、自然地域概念などから枠組みを得て、1925年ごろには一定の基準のもとに都市シカゴに関する社会調査の知見を蓄積する調査研究体制が整備される。だがやがて初期シカゴ学派の凋落に伴い、量的社会心理学のサーベイ調査を主流にすえながら傍流として質的社会調査も継続される、量的、質的という二極分化をともなった現行の調査研究体制の祖形が成立した。本稿では、シカゴにおける都市社会学の形成に大きく貢献しながら、主流派の量的社会心理学への移行にも努力したバージェスの活動を取りあげ、今後、質的、量的調査の設計や知見について考察するためのインプリケーションを探る。
著者
岡 京子
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
no.8, pp.92-104, 2009-05-23

日本における高齢者介護施設では「全人的介護」という理念の導入、さらに公的介護保険制度開始による市場化の流れによって脱アサイラム化が図られることとなった。新しい介護理念と市場論理という2つの相反する要求の狭間に立たされたケアワーカーの労働は、措置時代の大規模処遇における労働に比べ、大さく変化していることが予測される。今回、高所得者が入居し職員から「VIPユニット」とよばれているユニットケアの場において参与観察を行いA.R.ホックシールドが見出した「感情労働」の観点からケアワーカーの労働を考察した。その結果、利用者の生活においては、かつてみられたようなアサイラム的状況が薄まり、利用者が人として尊重される部分のみならずケアワーカーと利用者のせめぎあいの場面の誕生という側面があるという事実が見出された。そしてケアワーカーの労働においては、利用者個々の自尊心を支え、かつ利用者間の関係を調整するために、またユニットの統制をとるためにも、自己の感情管理と同時に他者の感情管理技能としての「気づかい」が相即的になされている事実が見出された。
著者
大澤 真幸
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.25-39, 2006-05-27 (Released:2017-09-22)

「オタク」と呼ばれる若者たちが、日本社会に登場したのは、1980年代の初頭であった。本稿の目的は、オタクが、いかに謎に満ちた現象であるかを示すことにある。オタクとは何か?オタクは、それぞれが関心を有する主題領域についての「意味の重みと情報の密度の著しいギャップ」によって、伝統的な趣味人や専門家からは明確に区別される。われわれは、オタクについての通念に反する4つの逆説を提示する。(1)オタクは、それぞれがコミットするきわめて特殊な主題にしか興味をもたない、と言われる。これは、事実だが、オタクの生成過程・発展過程の観察から、われわれは次のような仮説を導出する。すなわち、オタクが特殊な領域にしか興味をもたないのは、まさにその特殊な領域に普遍的世界が圧縮されて表現されているからである、と。(2)オタクは、現実をも虚構と本質的には異ならない意味的な構築物と見なすような、アイロニカルな相対主義者である。オタクは、意識のレベルでは、虚構の対象に対して、このようにアイロニカルな距離を保ちながら、反対に、行動のレベルでは、その同じ対象に徹底して没入してもいる。こうした意識と行動の間の逆立が、またオタクを特徴づける。(3)オタクは、他者との接触を回避する非社会性によって特徴づけられる。が、同時に、オタクは、他者を希求し、連帯を求めてもいる。オタクの主題領域に見出された逆説(普遍性の特殊性への反転)に対応した両義性が、対他関係にも見出されるのだ。すなわち、オタクにあっては、他者性への欲求が、他者性の否定(類似性への欲求)へと裏返るのである。(4)他者性への関心は、身体への関心としばしば並行している。身体の活動性の低下は、オタクの特徴である。だが、他方で、身体の活動性を上げることへの、つまり身体の直接性への関心もまた、現在の若者たちの特徴である。身体に関しても、背反するベクトルが共存している。以上のような逆説が、なぜ出現するのか。オタクを視野に収めた、社会学的な若者論は、これを説明できなくてはならない。
著者
金 瑛
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.3-14, 2012-05-26 (Released:2017-09-22)

本稿の目的は、アルヴァックスの集合的記憶概念を再考することにある。そこでまず行なったのが、アルヴァックスによる記憶(mémoire)と想い出(souvenir)の区別、集合的記憶と歴史の区別を検討することで、集合的記憶を定義し直すことである。集合的記憶は、時間的な連続性の流れとして定義され、言語活動・時間・空間という「枠組み」によって構成される。本稿では、従来あまり注目されてこなかった「環境(milieu)」という概念に着目することで、時間の「枠組み」を支える空間性について論じた。そしてそこでは、ノラの「記憶の場」という概念やモースの贈与論を参照軸に、「環境」と「場」の関係、「場」の変化による忘却の問題を論じた。また「環境」という観点から、個人的記憶と集合的記憶の関係、集合的記憶における忘却と想起についても論じた。本稿の論点は、「環境」が集合的記憶に対してもつ意義を説くことである。
著者
田崎 俊之
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
no.8, pp.105-119, 2009-05-23

現在、日本酒製造の担い手は季節労働者(杜氏や蔵人)から社員技術者へ転換してきている。本稿では、京都市伏見の日本酒メーカーに勤める酒造技術者へのインタビューを通して、彼らがどのようなつながりのなかで技術の習得や継承を行なっているのかを明らかにし、伝統的な杜氏制度と社員体制との間の連続性と変化について検討する。また、分析に際しては実践コミュニティ概念を手がかりとすることで、フォーマルな組織の枠をこえた技術者仲間のつながりを把捉するよう努めた。社員技術者らは、日本酒メーカーの社員であるとともに、技術者たちが形成する企業横断型の実践コミュニティにも参加している。つまり、日本酒製造の担い手が企業に内部化されても、なお企業の内部では完結しない集合的な酒造技術の習得過程が存在している。他方で、社員技術者らの実践は個人的なつながりを基盤とした相互交流へと深化していた。これは、彼らが勤務先である日本酒メーカーをはじめ、技術者の団体やインフォーマル・グループなど複数の所属性をもつことによる。企業横断型の実践コミュニティは日本酒メーカーが当然求めるべき「企業の利益」と産地内での協調という「共同の利益」の両立にせまられており、社員技術者らは相互交流の複数の位相を用いることでこれを可能にしている。
著者
善積 京子
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
no.4, pp.66-74, 2005-05-28

近代婚姻制度では、婚姻と性と生殖の〈三位一体〉制度がとられ、子どもを産み・育てるという再生産機能は婚姻内だけに期待され、親子関係は婚姻関係と結びつけられ、嫡出推定によって法的な父親が定められる。先進諸外国では近年、同棲・婚外出産・離婚・ひとり親家庭や再婚家庭が増え、人間の再生産機能は婚姻家族だけでなく多様な形態の家族によって遂行されるようになる。子どもの人権尊重やライフスタイルへの中立性の視点から、家族法が改正され、「嫡出・非嫡出子」の概念が取り除かれ、「嫡出推定」「嫡出否認」の制度は廃止される。親の婚姻関係を超えて父子関係が形成され、離婚後も共同親権が認められる。一方日本においては、婚前の性関係は一般的になるものの、嫡出性の規範が支持され、「婚姻-生殖」の結合関係が維持される。日本では、法的親子関係がいかに婚姻制度を軸にして展開されているかを、親の婚姻関係の有無で異なる父子関係の形成、嫡出推定の排除方法、国際婚外子の国籍、非婚の父の出生届、離婚後の単独親権や養育責任追及制度から検討し、その問題点を明かにする。
著者
入江 由規
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
no.13, pp.58-70, 2014-05-31

本稿の目的は、なぜ、アニメやゲーム、コミックの舞台を訪れる「聖地巡礼者」が、これまで「変わり者」と見なされることの多かった、アニメやゲーム、コミックを愛好するオタクであるにもかかわらず、それらに必ずしも関心のある訳ではない、作品の舞台となった町の住民や商店主らにとっての「ゲスト」へと変貌を遂げたかを分析することにある。オタクの対人関係は、これまで、趣味や価値観を共有する人とだけ交流する、閉鎖的な人間関係を築くものと捉えられることが多かった。だが、聖地巡礼者は、アニメやゲーム、コミックを愛好するオタクであるにもかかわらず、作品の舞台となった町に住む住民や商店主と交流を図り、時に作品を活かした町おこしを模索する企業人や研究者とも、共同でイベントを開催する関係を築いている。このことは、これまでのオタク研究では捨象されてきた、オタクの新たなコミュニケーションの実態を表していた。上記の目的に基づき、本稿では、アニメ作品の舞台を旅する「アニメ聖地巡礼者」に聞き取り調査を行った。その結果、彼らは、住民への挨拶といった礼儀を大切にし、商店主や企業人、研究者からの依頼を、物質的な見返りを求めることなく、自分たちが好きな作品で町おこしが行われるからという理由で最後までやり遂げることで、住民や商店主、企業人や研究者から信頼を得て、「ゲスト」へと変貌を遂げたことが分かった。
著者
トイボネン トゥーッカ 山本 耕平
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
no.13, pp.102-110, 2014-05-31

社会起業および社会イノベーションという概念は、この20年間で、新たな実践と研究の領域を切り開いてきた。しかし、社会起業家の社会イノベーションの事例などについては研究が蓄積されてきた一方で、起業家の恊働については十分な研究がなされていない。そこで本稿では、この側面をより体系的に探究するための、柔軟な枠組みを構築することを目指す。社会起業という領域における恊働は、いわゆる社会イノベーション・コミュニティー-恊働を可能にする物理的環境およびインターネット環境に加えて、社会起業の文化によって動かされる混合体-という文脈で展開されるようになっている。いまやこうしたコミュニティーは世界中で生まれているが、これはさらに、当初の恊働関係を超えてより広範な社会イノベーションの「回路をつなぎ換える」ような、恊働体(collaborative community)と見なせるだろう。社会イノベーション・コミュニティーは、多様な参与者を取り込み、学習と創造能力の向上を促進することで、創意にあふれ、かつ持続可能な経済への転換を触発するようになっている。こうしたコミュニティーや、それがもたらすイノベーションのプロセスおよび影響にかんするさらなる研究においては、社会ネットワーク分析、社会関係資本の理論、エスノグラフィーといった多様なアプローチが実り多い成果を生むと思われる。
著者
松岡 慧祐
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.100-113, 2008-05-24 (Released:2017-09-22)

1990年代に厚東洋輔や若林幹夫によって、地図は個人が直接的に俯瞰することのできない「社会」の全体像を可視化し、他者と共有することを可能にするメディアであるということが論じられた。だがそれ以来、こうした発想を現代社会の分析に適用するような「地図の社会学」が展開されることはなかった。現代では、グローバル化によって個人を取り巻く「社会」がますます大規模化・複雑化し、個人の生活は<ここ>ではない場所の目に見えない影響を受けやすくなっている。そこで、個人が地理的想像力を拡張し、こうした「世界社会(地球社会)」を面的・視覚的に把握するためのモデルとして、地図の役割があらためて重要になっている。また近年、コミュニティ再生が課題となっている地域社会でも、住民みずからの地理的想像力をローカルに拡張し、面的な「地域社会」を再発見するための地図がまちづくりに活用されるようになっている。だが地理的想像力は、地図の変容や電子メディアの発達などによって、危機に晒されるようにもなっている。地図は地理的想像力を拡張し、社会(学)的想像力の手がかりになりうる一方で、現代社会における地図のあり方は、地理的想像力を断片化し、「社会」を不可視化することで、個人と社会を切り離す可能性をもちはじめているのである。
著者
西田 芳正
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.41-50, 2003-05-24 (Released:2017-09-22)

日本人、日本社会と在日韓国・朝鮮人の民族関係を検討する際、被差別部落の問題を避けることはできない。戦前、多数の朝鮮人が部落およびその周辺地域に流入、定着したことが知られており、職業、地域、学校などさまざまな場面で両者が近接して生活することになった。本論文では、特定地域での両者の関係史をたどり、他地区の事例も踏まえつつ両者の関係性を整理した。日本社会の差別性のゆえに職住において両者は接近せざるを得ない構造的な与件があり、職業において競合する立場に置かれることにもなる。差別的な意識を双方が抱いていることも事実であるが、日常生活場面では良好な関係が成立していたことを示す記録が多数残されている。貧困、生活苦のなかでの密接な関わりは、民族関係成立の条件を考える上で一つの手がかりとなるだろう。また、マイノリティ集団を相互に比較検討する視点もさまざまな知見をもたらすはずである。それぞれの集団に課せられた障壁=バリアのあり方、その認識と対応のあり方を比較によって検討することは、それぞれの集団の特性を浮かび上がらせるだけではなく、日本社会の差別的構造をも明らかにするはずである。
著者
安里 和晃
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.93-101, 2014

経済成長を背景とした女性の労働力化と高齢化の進行に対応すべく、家事・介護・看護の外部化が多くのアジア諸国で進んでいる。シンガポール、香港、台湾だけで70万人を超える外国人家事労働者が存在し、韓国や東南アジアの受け入れ諸国でもその数を増大させている。日本はやや例外的で性役割分業を前提とした家族モデルが相対的に強く、家事労働などの外部化はそれほど進展しなかった。しかし、幾度か外国人家事労働者や介護労働者、看護師などの受け入れが議論されたことがある。本稿では外国人労働者政策を振り返ることで、介護保険、ポイント制、経済連携協定が議論された際、外国の人材受け入れに関してどのような対応がされたか検討した。日本では労働需給にもとづき外国人労働者を導入するといった補完的論理に基づく外国人労働者政策を取ることができず、研修や日系人、留学生といった形で事実上の受け入れを行ってきた。EPAにおいても看護・介護部門の人材不足は認められないという前提に立ち「候補者」という形で受け入れが行われ、わかりにくい運用となっている。外国人の労働者性に対する懸念は国民主権の論理、治安の悪化や社会保障費用の増大といった社会的コストなどがあげられるが、人口構成の変化に対する新たな社会システムの構築は喫緊の課題であり、労働市場に応じた受け入れというある意味わかりやすい社会政策と関連付けた外国人労働者政策が取れるかどうか検討されるべきであろう。
著者
日合 あかね
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.96-107, 2005-05-28 (Released:2017-09-22)

本稿の目的は、女性の性的自立の可能性について探究を行うことにある。そのために、通常は女性の性的自立と対立するものとされるマゾヒズムを取り上げ、女性のマゾヒズムが性的自立に導きうる可能性を検討する。女性の積極的なマゾヒズムの実践が現状の権力構造を脱構築する可能性を検討し、あわせて、マゾヒズムのより深い理解へ至るよう努める。ジェンダーの文化的偏向によって、男性のそれとは異なり、女性のマゾヒズムは自然本性的なものとされてきた。自然に依拠したこの種の議論は、当然のことながら再吟味されねばならない。しかしまたこのことは、必ずしも女性の性的なマゾヒズムが日常の権力関係を単純に反映していることを意味しない。サドマゾヒズムが権力関係を利用するというように考えると、パット・カリフィアのように、サドマゾヒズムは「権力関係のパロディ」と定義することもできよう。そこで本稿では、パット・カリフィアのこの考え方を、女性のマゾヒズムの十全な理解と現在のジェンダー構造を脱構築する手立てとして取り上げ、そこから女性の性的自立を再定義する方向性を提示することを試みた。これと関連して、ジュディス・バトラーの「ジェンダー・トラブル」の概念や、男性のマゾヒズムを近代的主体の派生形態と捉えるジョン・K・ノイズの議論をも検討した。
著者
金 瑛
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
no.11, pp.3-14, 2012-05-26

本稿の目的は、アルヴァックスの集合的記憶概念を再考することにある。そこでまず行なったのが、アルヴァックスによる記憶(memoire)と想い出(souvenir)の区別、集合的記憶と歴史の区別を検討することで、集合的記憶を定義し直すことである。集合的記憶は、時間的な連続性の流れとして定義され、言語活動・時間・空間という「枠組み」によって構成される。本稿では、従来あまり注目されてこなかった「環境(milieu)」という概念に着目することで、時間の「枠組み」を支える空間性について論じた。そしてそこでは、ノラの「記憶の場」という概念やモースの贈与論を参照軸に、「環境」と「場」の関係、「場」の変化による忘却の問題を論じた。また「環境」という観点から、個人的記憶と集合的記憶の関係、集合的記憶における忘却と想起についても論じた。本稿の論点は、「環境」が集合的記憶に対してもつ意義を説くことである。
著者
鹿島 あゆこ
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.78-92, 2018 (Released:2019-05-11)
参考文献数
21

サラリーマンという言葉の一般への普及は大正期から昭和初期といわれている。本稿の目的は、この普及に一役買ったといわれる『時事漫画』の検討を通じて、当該時期におけるサラリーマンイメージの形成と展開を明らかにすることである。『時事漫画』から選出した計297の漫画作品を、3つの時期に区分して分析した。その結果、サラリーマンという言葉の下で一定のイメージが共有されるようになっていく過程には、失業と消費という2つの要素が関係していたことが明らかになった。まず大正初期から大正中期にかけて、「サラリーメン」という言葉のもとで、社会状況や雇用主によって生活基盤を左右されやすい被雇用者という側面が焦点化された。それは、当時の日本社会においては相対的に上層の階級とみなされていた「サラリーメン」階層が、乱高下する経済状況によって次第に困窮していく過程で形作られたイメージであった。このイメージを下地にして、大正後期から昭和初期にかけては、主に広告漫画の中で、新しい消費財を消費することでよりよい生活を営む代表的な主体としての「サラリーマン」が描かれた。それは、当事者ではない他者の目線から描いたイメージが、広告という媒体によって自己のイメージに変換されはじめる過程でもあった。こうして、「私的生活においては消費者であり、公的生活においては被雇用者であるサラリーマン」という表現が誕生した。
著者
秋風 千惠
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.175-187, 2018 (Released:2019-05-11)
参考文献数
19

本稿では軽度障害当事者の語りから、彼/彼女らのディスアビリティ経験をみていくこととする。まず軽度障害者が浮上してきた経緯を述べ、その背景となったイギリス社会モデル批判を検討し、アメリカ社会モデルが妥当であると結論する。これまで社会モデルへの批判は主にインペアメントの扱いについての批判であったが、星加良司はディスアビリティについて再検討し、障害者が蒙る不利益を集合としてみる“不利益の集中”という概念を持ち込んだ。本稿では星加の不利益理論を補助線として、軽度障害者の語りを検討する。『社会的価値』『個体的条件』『利用可能な社会資源』『個人的働きかけ』といった諸要素を考慮に入れながら、主に性別役割分業に照準したディスアビリティ経験を分析してみる。
著者
福浦 厚子
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.116-130, 2017 (Released:2018-06-13)
参考文献数
36

本研究の目的は、軍隊と社会との関係についてのこれまでの研究を概観したうえで、個別的日常的な民軍関係に着目し、社会学や文化人類学での成果を紹介し、近年の研究の特徴をみていく。そのうえで、日常に埋め込まれた軍隊と社会や個人との関係性を文化人類学的な視点からみることで、軍隊研究に新たな議論の局面を示したい。その一つの例として、自衛隊を取り上げ、これまで行われてきた自衛隊研究を、1:政軍関係その1、自衛隊を取り巻く政治状況の視点から検討する研究、2:政軍関係その2:医療や災害・メンタルヘルス対策として自衛隊でどんな対処が可能かについて検討する研究、3:ノンフィクション・ルポ、自衛隊員の視点に近い立場からの提言や報告、4:民軍関係の4つに大別し、そのなかの民軍関係について概観する。自衛隊の普通化、ソフト路線に注目し、その例として自衛官の婚活に着目し、雑誌MAMORや実際の自衛隊婚活のなかで語られる自衛官像や希望する交際相手や配偶者像がどのように表象されているのか検討する。その結果、従来の軍人妻研究にみられるダブルの役割期待が婚活にも存在するにも関わらず、言及されないままになっていることが明らかになった。