著者
加藤 逸郎 小野 公二 大前 政利 神田 哲聡 藤田 祐生 大林 茂樹 中澤 光博 丸橋 晃 今堀 良夫 切畑 光統 由良 義明
出版者
Japan Society for Head and Neck Cancer
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.581-586, 2005
被引用文献数
3

ホウ素中性子捕捉療法(Boron neutron capture therapy: BNCT)は,<SUP>10</SUP>Bを予め腫瘍に集積させ,中性子線照射で発生する粒子線を利用して腫瘍選択的に破壊する治療法である。我々はこの治療法を再発頭頸部悪性腫瘍患者に対し,2001年より世界に先駆けて開始した。対象は扁平上皮癌6例,唾液腺癌3例,肉腫2例の計11例であった。その結果,腫瘍縮小率は,CR:2例,90%以上:5例,73%,54%,PD:1例,NE:1例で,奏功率82%。QOL改善は,潰瘍消失と皮膚再生,PSの改善による仕事復帰,疼痛・開口障害・呼吸苦の改善,生存期間延長などであった。11例中7例(4例:遠隔)に転移を認めた進展例だったが,治療後の生存期間は,1-38ヶ月で平均8.5ヶ月,生存率は36%(4例生存中)であった。副作用は,口内炎,全身倦怠感,脱毛などで軽度だった。進展再発頭頸部悪性腫瘍に対しBNCTを実施し,その有効性を確認した。
著者
平川 仁 鈴木 基之 西野 宏 佐藤 雄一郎 石木 寛人 篠崎 剛 海老原 充 新橋 渉 上條 朋之 岡本 牧人 別府 武 大堀 純一郎 松浦 一登
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.75-81, 2018

頭頸部癌終末期患者における症状について多施設調査を行った。根治不能頭頸部癌と診断され,癌の進行による状態悪化のために入院となった患者を対象とした。11施設から100人の患者が登録され,そのうち転院した患者などを除く72人が死亡まで観察可能であった。最終観察時における出血や滲出液を伴う自壊腫瘍を持つ症例は36.1%であった。またそれに伴う制御不能な出血を認めた症例は5例であった。1例は頸動脈破裂による急速な転機をたどった。残りの4例は出血および血圧低下による止血を繰り返し最終的に心肺停止となった。栄養経路に関して61.1%で経腸栄養摂取が可能であった。頭頸部浮腫は36.1%に認めた。喉頭発声による意思の伝達は50%で不可能であった。頭頸部癌の終末期症状は決して軽いものではない。しかしその症状・頻度,病態の理解が進み,適切な指針を今後作成できれば,患者は終末期の時間を自宅近くの医療施設もしくは自宅で過ごすことができるようになると期待される。
著者
加藤 智絵里
出版者
Japan Society for Head and Neck Cancer
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.337-340, 2005
被引用文献数
2

神戸大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科にて2002年4月より言語聴覚士が定期的に口腔・中咽頭癌患者の術後摂食・嚥下障害のリハビリテーションに関わっている。術前よりオリエンテーションを実施しており,その内容と利点について述べる。また嚥下リハビリテーションの開始時には耳鼻咽喉科医師と共に嚥下機能評価を行うことや,実際によく実施している間接嚥下訓練と直接嚥下訓練について舌癌(部切,舌半切,舌亜全摘)と中咽頭癌に分けて具体的に紹介する。
著者
土屋 沙緒 櫻庭 実 宮本 慎平 林 隆一
出版者
Japan Society for Head and Neck Cancer
雑誌
頭頸部癌 = Head and neck cancer (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.31-35, 2008-04-25
被引用文献数
1

喉頭摘出術後の合併症として咽頭皮膚瘻の発生は15~35%とされ,比較的高い確率で生じる。この際大血管周囲の感染とそれに続く出血が起きれば患者にとって致命的であり,未然の適切で早急な処置が必要となる。従来我々は咽頭粘膜の欠損が小さく,一期縫縮が可能な場合には大胸筋皮弁の筋体を頸部の死腔の充填に用い,皮島を頸部の皮膚欠損部に縫合する方法をとってきた。大胸筋の豊富な血流により良好な感染のコントロールが得られるのが長所であったが,大胸筋皮弁の下垂により気管孔が狭小化し,永続的なカニューレの挿入を余儀なくされた症例を数例経験した。同時に頸部としては皮弁がVolume過多となり,整容的な問題も認められた。そこで,積極的に大胸筋皮弁の皮島を切除し,植皮に置き換える工夫を8例におこなった。この方法で手術を行った症例では,皮弁の下垂が見られず,筋体が萎縮するとともに,より頸部らしい自然な形態となった。メッシュ植皮とすれば皮島自体の大きさも従来法よりも小さくてすみ,皮弁採取部の閉創も容易である。皮島への穿通枝を含める必要がないため,乳頭を切除する必要もなく,胸部の整容面でも優れていた。
著者
光藤 健司 藤内 祝 不破 信和 古谷 和久 西口 浩明 福井 敬文 山本 憲幸 杉村 友隆 斎藤 昌樹 上田 実
出版者
Japan Society for Head and Neck Cancer
雑誌
頭頸部癌/ 日本頭頸部癌学会 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.93-97, 2006-03-25
被引用文献数
13 11

口腔癌の治療において浅側頭動脈からの超選択的動注法は放射線療法との連日の同時併用が可能となった。この方法を口腔癌の治療体系に組み入れ,治療効果について検討してきた。超選択的動注法を用いた連日同時放射線化学療法をStage III,IVの口腔癌症例に対して術前治療として行い,摘出した原発巣について病理検索したところ約90%という高いCR率を認めた。そこでわれわれはStage III,IV口腔癌に対して原発巣の手術が回避される可能性について検討した。治療スケジュールとして,動注化学療法(DOC 60mg/m<SUP>2</SUP>,CDDP 100mg/m<SUP>2</SUP>)および放射線治療〔40Gy(2Gy/日)〕を4週間の連日同時併用療法を行い,臨床的にCRと診断した15症例には放射線,超選択的動注化学療法を続行した。その結果,13例(87%)については再発を認めず,2例(13%)は局所の再発を認めた。15例中12例(80%)が生存,3例(20%)が死亡(2例が遠隔転移,1例が原病死)した。この治療法は臓器温存が可能となり,機能障害も少なく,患者のQOLの向上に寄与する治療法と考えられる。
著者
長谷川 博 鹿野 真人 佐藤 栄需 金子 哲治 門馬 勉 武石 越郎
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.439-444, 2006-12-25 (Released:2008-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
2 3

高齢者の頭頸部癌治療では副作用が少なく,高い安全性と根治性が要求される。われわれは高齢者口腔癌に対し,ドセタキセル(TXT),シスプラチン(CDDP),ペプロマイシン(PEP),5-FUによるTCPF動注化学療法を行い,その安全性と有効性について検討した。2002年3月から2005年5月までTCPF動注化学療法を行った75歳以上の扁平上皮癌症例10例を対象とした。年齢は75~84歳,平均80歳。部位は舌口腔底8例,頬粘膜1例,上顎歯肉1例。全症例に浅側頭動脈か後頭動脈経由で動注用カテーテルを留置し,TCPF動注化学療法を行い,7例に生検切除を,2例に根治的切除を行った。原発部位に対する効果はCR率80%(8/10),PR率20%(2/10),pathological CR率67%(6/9)であった。副作用は,脳血管障害はなく,動注側の粘膜炎と脱毛が主であり,血液毒性など全身的な副作用はほとんど認めなかった。本療法の有効性と安全性は高く,ハイリスクの高齢者にも根治的治療として適応し得ると考えられた。