著者
森田 達也 野末 よし子 花田 芙蓉子 宮下 光令 鈴木 聡 木下 寛也 白髭 豊 江口 研二
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.121-135, 2012 (Released:2012-02-22)
参考文献数
19
被引用文献数
5

本研究の目的は, 地域緩和ケアプログラムが行われた地域の医師・看護師の体験した変化を収集することである. OPTIMプロジェクト介入後の医師1,763名, 看護師3,156名に対する質問紙調査の回答706件, 2,236件を対象とした. 自由記述の内容分析を行い, それぞれ327, 737の意味単位を同定した. 好ましい変化として, 【チーム医療と連携が進んだ】 ([相談しやすくなった][名前と顔, 役割, 考え方が分かるようになった]など), 【在宅療養が普及した】 ([在宅移行がスムースになってきた]など), 【緩和ケアを意識するようになり知識や技術が増えた】が挙げられた. 意見が分かれた体験として, 【病院医師・看護師の在宅の視点】【活動の広がり】【患者・家族・市民の認識】が挙げられた. 地域緩和ケアプログラムによるおもな変化は, チーム医療と連携, 緩和ケアの意識と知識や技術の向上, 在宅療養の普及であると考えられた.
著者
国分 秀也 とおし 幸市朗 的場 元弘 磯野 雅子 外 須美夫 矢後 和夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.311-316, 2006 (Released:2006-09-08)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

アセトアミノフェン(APAP)坐薬の成分含量は1個200mgが最大で, がん性疼痛患者に用いる場合, 海外における用量(4000mg/日上限)を目安に投与するケースがあるため, 一回に3~4個挿入しなければならない. そこで, 今回, 1個600~800mgの坐薬を調製し, その有用性について検討した. 方法は, APAP経口投与患者と直腸内投与患者の血中トラフ濃度を測定し, 副作用についても比較検討した. その結果, APAP経口投与群と直腸内投与群の血中濃度は, ほぼ同等な値を示した. また, APAP使用1週間後のAST, ALTおよび総ビリルビン値に異常値は認められなかった. さらに, APAPを経口投与から直腸内投与に切り替えた症例で, 切り替え前後でNRSに変化がなく, 血中濃度もほぼ同等な値を示していた. 以上のことから, 今回, 調製した高用量APAP坐薬はがん性疼痛患者において血中濃度と安全性に問題なく使用可能であると考えられた.
著者
河原 正典 岡部 健
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.133-142, 2011 (Released:2011-08-08)
参考文献数
7
被引用文献数
1

アセトアミノフェン(APAP)は, WHO方式がん疼痛治療法の中で非オピオイド鎮痛薬の選択肢の1つに位置づけられているが, わが国において, その有効性や安全性を検討した報告は少ない. われわれは, 当院で非オピオイド鎮痛薬として, 世界標準量のAPAP (1,800~2,400mg/日)を使用した182例(APAP群)と非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を使用した86例(NSAIDs群)を比較することで, オピオイドとの併用も含めたがん疼痛管理における世界標準量APAPの有効性と安全性について後ろ向きに検討した. 疼痛管理状況はAPAP群とNSAIDs群で同等であった. オピオイドなどの併用薬剤についての検討が不足しているものの, がん疼痛治療における非オピオイド鎮痛薬としての世界標準量APAPは, 有効性の点でNSAIDsに劣らない結果が得られた. また, 安全性に関するAPAP群とNSAIDs群の比較では, 嘔気の発現頻度はAPAP群が有意に低く(p<0.01), AST・ALTが基準値の2.5倍を超えた患者の割合は両群同等であった. 有効性と安全性に関する以上の結果から, わが国においても世界標準量APAPは, がん疼痛治療における非オピオイド鎮痛薬の有用な選択肢の1つになると考えられた. Palliat Care Res 2011; 6(2): 133-142
著者
中西 敏博 武内 有城 伊奈 研次 長尾 清治
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.324-329, 2011 (Released:2011-06-02)
参考文献数
6
被引用文献数
7 3

Mohsペーストは塩化亜鉛を主成分とする組織固定剤で, 皮膚腫瘍のchemosurgeryに応用されている. 近年, 緩和医療分野でも, 切除不能な皮膚浸潤・転移巣の悪臭などの症状コントロールにおいて有益性が高いとされている. わが国で広く使用されているMohsペーストは, 重山らが提唱した塩化亜鉛と亜鉛華デンプンの混合物にグリセリンを添加して調製するが, 粘度が高く粘着性もあるため, 塗りにくいという問題がある. われわれは, Mohsペーストを短冊ガーゼにからませて患部に貼付する方法と, ガーゼに塗って患部に貼付する方法の2つのMohsガーゼ法を考案し, 出血や悪臭, 浸出液のコントロールに難渋した胃がんの皮膚転移巣の症例に有用であった. この方法は, 従来のMohsペースト塗布方法と固定効果に差を認めず, Mohsペーストの塗りにくさの問題を解決することができ, 処置時の苦痛を軽減することが可能であった. Palliat Care Res 2011; 6(1): 324-329
著者
宮本 信吾 大熊 裕介 高木 雄亮 下川 恒生 細見 幸生 井口 万里 岡村 樹 澁谷 昌彦
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.119-125, 2011 (Released:2011-04-20)
参考文献数
11

【目的】非小細胞肺がんに対する終末期epidermal growth factor receptor tyrosine kinase inhibitor (EGFR-TKI)継続投与の意義を検討した. 【方法】EGFR-TKIが以前は治療効果を示したものの増悪し, 最終の化学療法がEGFR-TKIであった非小細胞肺がん患者33例を対象とし, EGFR-TKIを1カ月以内に中止した群(16人)と継続した群(17人)を比較した. 【結果】生存期間中央値は, 継続群191日, 中止群62日であり, EGFR-TKI継続群で有意に長かった(p=0.0098). 継続投与群における有害事象は, Grade 1の皮疹が6人, Grade 2の皮疹が1人, Grade 1の下痢が1人, Grade 1のAST/ALT上昇が4人認められたものの, 制御不能な有害事象は認められなかった. 【結語】EGFR-TKIが奏効したものの, その後, 増悪し, 殺細胞性抗がん剤による治療が困難な非小細胞肺がん患者において, 重篤な有害事象は少なく, 生存期間が延長する可能性もあるEGFR-TKIの継続投与は, さらに検討を進める必要がある. Palliat Care Res 2011; 6(1): 119-125
著者
一楽 由貴 福重 哲志 山田 信一 大石 羊子 佐野 智美 加納 龍彦
出版者
Japanese Society for Palliative Medicine
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.321-325, 2008

症例は舌がん術後の42歳男性. 多発性骨転移に伴う疼痛コントロールのため緩和ケアセンター入院中であった. 肺炎治療中の胸部X線写真で心嚢気腫が判明した. その後, 心嚢膿瘍をきたし, 臥床するに伴い多量の痰が排出され眠れないという症状を呈した. ドレナージチューブを経皮的に心嚢内に留置し, 心嚢内貯留物の吸引を行うことで臥床できるようになり苦痛を軽減することができた. Palliat Care Res 2008; 3(2): 321-325