著者
三澤 貴代美 升谷 英子 荒尾 晴惠
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.309-319, 2020 (Released:2020-11-24)
参考文献数
22

【目的】再発・転移をきたした悪性骨軟部腫瘍患者のケアに携わる看護師が抱く困難感の実態とその関連要因を明らかにする.【方法】骨軟部腫瘍治療を行う12施設の看護師315名を対象に,看護師のがん看護に関する困難感および本疾患患者のケアへの困難感を調査した.また重回帰分析により関連要因を検討した.【結果】回答者は165人(有効回答率52.4%)であった.〈看護師のがん看護に関する困難感〉では,コミュニケーションの困難が最も高く,自らの知識・技術や,システム・地域連携の困難も高かった.〈悪性骨軟部腫瘍患者への看護に関する困難感〉では,ケアの対象特性に関することが高かった.関連要因は,施設特性,看護師経験や骨軟部腫瘍看護経験,骨軟部腫瘍看護の学習方法,多職種カンファレンスを認めた.【結論】骨軟部腫瘍に携わる看護師は,全人的苦痛,発症年齢,希少性に基づく困難があり,背景要因を踏まえた支援が必要である.
著者
西田 希久代 遠山 幸男 久野 久美 平野 茂樹 出口 裕子 松田 唯子 渡辺 貴志 山関 知恵 板倉 由縁 斎藤 寛子 長谷川 高明
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.207-213, 2009 (Released:2009-05-15)
参考文献数
12

がん患者は複雑な痛みをさまざまな言葉で表現する. こうした表現から薬剤の効果を推測することができ, 適切な疼痛緩和へつながると考え, 本調査を行った. がん性疼痛のある患者164名から, 529語(108種類)の痛みの表現を収集し, 使用頻度の高い痛みの表現に対するオピオイドおよび非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の効果を評価した. その結果, 「重い」や「どーん」という表現はオピオイドが効きやすく, 「しびれ」や「ぴりぴり」はオピオイドが効きにくい表現であることが推測された. 医療従事者は, 患者の言葉に耳を傾け, 患者の痛みを把握することが重要であり,このことが良好な疼痛緩和につながると考える.Palliat Care Res 2009; 4(1): 207-213
著者
草場 正彦 櫻井 卓郎 角田 明子 梅崎 成子 村川 雄一朗
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.277-284, 2020 (Released:2020-10-08)
参考文献数
30

近年,悪性脳腫瘍患者に対する終末期ケアの重要性が報告されている.終末期脳腫瘍患者と関わるうえで,患者の呈する症状を知ることは重要である.本研究の目的は,終末期脳腫瘍患者のデータ収集方法や評価時期,症状を調査することである.抽出された論文は7本であり,データ収集方法は診療録からの情報収集(4本),質問表(2本),電話での調査(1本)であった.評価時期は,死亡までの期間が46日から1週間前であった.患者の呈する症状は疾患特異的な症状と,終末期のがん患者が呈する一般的な症状に分類することができた.疾患特異的な症状である意識障害(4本),痙攣発作(7本),嚥下障害(6本),頭痛(6本)を報告した論文が多かった.終末期に近づくほど,嚥下障害の出現率は高くなった.以上より,データ収集方法や評価時期は先行研究ごとで異なり,終末期脳腫瘍患者は疾患特異的な症状を呈する可能性が高いことが示唆された.
著者
馬場 美華 西田 真弓 後明 郁男
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.332-337, 2010 (Released:2010-12-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1

緩和医療では, 全身倦怠感, 食欲不振, 疲労感, 疼痛などのさまざまな苦痛症状の緩和目的にベタメタゾンが広く用いられている. ステロイド投与中は, その身体的副作用だけでなく, 精神的副作用も注意が必要である. profile of mood states (POMS)は, 対象者がおかれた条件により変化する一時的な気分, 感情の状態を測定できるという特徴を有している. その短縮版は, 質問項目を削減することにより測定時間を短縮し, 対象者の負担を軽減することができる. 今回, 消化管閉塞による消化器症状の緩和目的にベタメタゾン3mg/日を投与し, 症状緩和が可能であったが, 投与開始から4カ月後, 不安, 焦燥感, 不眠をきたしたので, ベタメタゾンから等力価のプレドニゾロンに変更, 変更後3日目より, 消化器症状を悪化させることなく精神症状が改善した症例を経験した. また, 薬剤変更前後での気分, 感情の状態を, POMS短縮版を用いて評価したので報告する. Palliat Care Res 2010; 5(2): 332-337
著者
河端 秀明 西川 正典 猪田 浩理 田中 章夫 柿原 直樹 多賀 千明 小東 睦 中村 光男 長谷川 知早 神田 英一郎 西村 暢子 中川 ゆかり 西谷 葉子 能勢 真梨子 浅野 耕太 佐久間 美和 藤村 恵子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.901-905, 2016 (Released:2016-01-27)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

当院では歯科医師が緩和ケアチーム(PCT)の一員として活動を共にしている.2009年から2014年までに当院PCTが介入したがん患者127例のうち,17例(13.3%)に口腔内の症状を認め,PCTで治療方針を検討した.口腔内の痛み,口腔乾燥,味覚異常,舌苔付着,唾液過多,食思不振,および開口障害に対し専門的治療を行い,全例に口腔内所見の改善が得られ,16例(94%)に症状の改善を認めた.歯科医師のPCT加入は介入患者の症状緩和に有効であり,チーム員の口腔に対する意識も向上した.またPCTによる口腔内観察は,患者のQOLの改善に寄与するだけでなく,医療スタッフの口腔への関心を高める効果も期待される.さらに多診療科連携を深めることにより,より質の高い緩和ケアを提供できるものと考える.
著者
村上 真基 大石 恵子 荒井 進 島田 宗洋
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.109-115, 2016 (Released:2016-02-03)
参考文献数
11
被引用文献数
2

【目的】療養病棟でがん患者の緩和ケアを行った成績を検討した.【方法】2010年4月~2014年12月に当院医療療養病棟へ入院した194名について,医療用麻薬(麻薬)不使用期(2012年3月まで:前期)と麻薬使用期(2012年4月以降:後期)の2群に分け,患者背景,入院期間,転帰,麻薬投与,苦痛緩和等について後方視調査した.比較のため緩和ケア病棟(PCU)の入院動態を調査した.【結果】前期74名中がん患者は16名(22%),後期120名中がん患者は79名(66%)と後期でがん患者の割合が3倍に増えた(p<0.01).後期の入院期間は1/2(144日)に短縮(p<0.01),死亡退院率(78%)は増えた(p<0.05).後期はがん患者の半数以上(57%)に麻薬を投与し,疼痛緩和は良好であった.後期の期間はPCU入院患者も増加した.【結語】療養病棟はPCUと連携してがん緩和ケアを行える可能性が示唆された.
著者
内藤 大輔 若山 文規 静川 裕彦 中野渡 正行 飯田 道夫 福原 敬
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.85-89, 2020 (Released:2020-04-26)
参考文献数
18

Stiff-person syndrome(SPS)は,特徴的な筋硬直および有痛性痙攣により進行性に四肢軀幹筋の運動障害を引き起こす極めて稀な疾患であり,診断に苦慮することがある.SPSでは抗GAD抗体や抗amphiphysin抗体などの自己抗体が証明される場合があり,これらの抗体による中枢神経系でのGABA作動性ニューロンの障害が推測されている.今回われわれは,進行期乳がん患者に発症した傍腫瘍性SPSの症例を経験したので報告する.【症例】患者は52歳の女性で,両側肺転移,両側がん性胸膜炎,肝転移,がん性腹膜炎,両側卵巣転移を伴う進行期乳がんと診断された.全身状態不良のため抗がん治療の適応はなく,緩和ケア病棟入院にて酸素投与や胸腹水ドレナージを行ったが,嚥下障害に始まり筋硬直による上肢の運動障害や歩行障害が急速に進行し,脳神経内科にて傍腫瘍性SPSと診断された.ジアゼパム投与で若干効果が認められたが,傾眠となり投与量調整に難渋した.
著者
北條 秀博 松本 禎久 久能木 裕明 阿部 恵子 木下 寛也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.542-545, 2014 (Released:2014-12-19)
参考文献数
7

【はじめに】転移性膀胱腫瘍による膀胱出血に対し,1%ミョウバン水持続灌流療法が奏功した中等度の腎機能障害例を報告する.【症例】64歳,女性.腎盂がんに対する右腎尿管摘出後に多発リンパ節転移,腰椎転移を認めていた.腰痛緩和目的の入院中に残尿感や排尿困難を認めた.膀胱内に多量の凝血塊を認め,用手的膀胱洗浄後に生理食塩水の持続灌流療法を施行したが改善せず,1%ミョウバン水による持続灌流療法を開始した.肉眼的血尿を認めなかったため,灌流は7日間継続し中止した.灌流開始後9日目の採血では,血清アルミニウム値の上昇はなく,その後腰痛も軽減し,退院となった.退院3カ月後に自宅で死亡したが,その間に肉眼的血尿や尿閉はみられなかった.【考察】腎機能障害例ではミョウバン水持続灌流療法によりアルミニウム脳症などの重篤な副作用も報告されているが,灌流量の減量により安全で有効な治療法である可能性が示唆された.
著者
坂口 幸弘
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.137-145, 2016 (Released:2016-04-21)
参考文献数
8
被引用文献数
4

【目的】ホスピス・緩和ケア病棟での遺族ケアサービスの現状と課題を把握するとともに,2002年調査との比較によって,この10年間での変化を検討することが本研究の目的である.【方法】2011年12月末日時点での緩和ケア病棟入院料届出受理施設を対象とし,看護師長宛てに2002年調査と同じ質問紙を送付した.その結果,156施設から回答が得られた(回収率:68.7%).【結果】最も多く行われていた遺族ケアサービスは手紙送付で78%,次いで追悼会が73%であった.10年前に比べ実施施設の割合はやや減少した.今後の課題に関して,「組織としての体制の整備」との回答が最も多く,10年前と同じ71%であった.「教育の充実」や「遺族のニーズ調査」との回答には減少がみられた.【結語】ホスピス・緩和ケア病棟での遺族ケアサービスの実施状況が示されたとともに,解決に向かいつつある問題や手つかずの課題が示唆された.
著者
谷山 智子 清水 千佳子 垣本 看子 小林 典子 Saad Everardo
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.101-109, 2014 (Released:2014-07-11)
参考文献数
9

【目的・方法】がん診療において治療法の優先順位に関する認識を明らかにするため, 乳がん患者, 医師, メディカルスタッフを対象にアンケート調査を行った. 調査項目は1)がん告知後の治療法選択, 2)悪性度の高いがんに対する年齢設定別の治療選択, 3)生存期間(survival time; ST)と生活の質(quality of life; QOL)の異なる治療法の選択とした. 【結果】1)がん告知後の治療法選択について, 医療者より患者の方が, STとQOLのどちらを重視するかがはっきりしている傾向にあった. 2)医師は患者やメディカルスタッフと比べて高齢者に対してもSTを重視する傾向にあった. 3)患者と医師はSTを重視し, メディカルスタッフはQOLを重視する傾向にあった. 【結論】患者と医療者はがん診療に対し異なった意識をもっている可能性があり, その意識の違いを認識する必要がある.
著者
木村 好江 池垣 淳一 駒澤 伸泰
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.566-569, 2013 (Released:2013-10-02)
参考文献数
20

【症例】耐糖能異常のないがん患者が, クエチアピン内服中に低血糖を発症した. 低血糖は, クエチアピン増量後に, 絶食を契機に起こっていた. 【考察】クエチアピンは, 飢餓時の低血糖代償反応を抑制した可能性がある. 【結論】クエチアピン服用中のがん患者では, 高血糖のみならず低血糖の発症も念頭においた症状の観察と, 定期的な血糖値測定が望ましいと考えられる.
著者
橋本 孝太郎 佐藤 一樹 内海 純子 出水 明 藤本 肇 森井 正智 佐々木 琴美 宮下 光令 鈴木 雅夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.153-161, 2015 (Released:2015-03-05)
参考文献数
14
被引用文献数
4 6

【目的】在宅緩和ケアを受けた終末期がん患者の現状と診療実態を調査すること.【方法】在宅緩和ケアを専門的に提供する6診療所(在宅特化型診療所)から在宅診療を受け,2012年1~6月に死亡または診療中止したがん患者352名を対象として,診療録調査を実施した.【結果】対がん治療終了後に在宅診療を開始した290名の有効回答が得られた.男性165名(57%),年齢は平均72±13歳.訪問看護を238名(98%),訪問介護を95名(39%)が利用し,死亡または診療中止前1カ月間に,輸液療法を72名(30%),強オピオイド鎮痛薬投与を127名(52%)の患者が受けていた.転帰は自宅死亡242名(83%),在宅診療中止48名(17%)であり,中止の理由は,患者の身体的問題と並んで,家族の精神的・身体的な問題が多かった.【結論】在宅特化型診療所における在宅緩和ケアの現状と診療実態が明らかとなった.
著者
田中 宏 江口 由紀 松本 明子 杉井 健祐 坂口 智香 丹後 ゆかり 丸濱 勉 藪嶒 恒夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.248-253, 2016 (Released:2016-11-02)
参考文献数
12

終末期における抗がん治療の現状を知り緩和ケア病棟(PCU)の意義を検討する目的で,2013年10月からの2年間に当院で死亡したがん患者414例(PCU 219例,一般病棟195例)を対象に,抗がん治療歴や緩和ケア状況を検討した.その結果,一般病棟ではPCUに比べ高齢で,診断が遅く,病勢進行が速い患者が多く,これらが標準的な抗がん治療や緩和ケアの機会を妨げる要因となった可能性が示唆された.一方,化学療法施行例においては,最終治療日から死亡までの中央値がPCU 110日に対し一般病棟は55日と有意に短く,死亡前1カ月間の化学療法施行率もPCU 2%に対し一般病棟は32%と高率であった.終末期の抗がん治療を適正化する上でPCUの意義は大きいと考えられたが,診断時期や病勢進行速度にかかわらず早期からの緩和ケアを実践するには,社会全体に向けた緩和ケアやアドバンスケアプランニングの普及啓発が大切である.
著者
日下部 明彦 野里 洵子 平野 和恵 齋藤 直裕 池永 恵子 櫁柑 富貴子 結束 貴臣 松浦 哲也 吉見 明香 内藤 明美 沖田 将人 稲森 正彦 山本 裕司 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.906-910, 2017 (Released:2017-03-24)
参考文献数
13

死亡診断時の医師の立ち居振る舞いは,その後の遺族の悲嘆に大きく影響を及ぼすと考えられているが,現在の医学教育プログラムのなかには,死亡診断時についての教育内容はほとんど含まれていない.われわれは遺族アンケートを基に「地域の多職種でつくった死亡診断時の医師の立ち振る舞いについてのガイドブック」(以下ガイドブック)を作成した.本ガイドブックを用い,横浜市立大学医学部4年次生に対し授業を行い,授業前後で死亡診断時の困難感,自己実践の可能性を評価するアンケート調査を行い解析した.有効回答を得た39名において死亡確認についての困難感についての項目は,「死亡確認の具体的な方法」が最も高く,89.5%であった.しかし,授業前後では,死亡診断時における自己実践を評価する項目で有意な改善がみられた.死亡診断時の医師の立ち居振る舞いについての卒前教育にわれわれが作成したガイドブックは有効な可能性が示唆された.
著者
安藤 千晶 菅野 雄介 鈴木 晶子 高橋 文代 小川 朝生
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.151-157, 2019 (Released:2019-06-27)
参考文献数
32
被引用文献数
1

訪問看護師が行っている,在宅で生活する認知症高齢者に対する疼痛マネジメントの内容を明らかにすることを目的とし,10名の訪問看護師を対象に半構造化インタビューを実施,質的帰納的に分析した.その結果24のサブカテゴリー,8のカテゴリーが得られた.訪問看護師は標準的な認知症高齢者の疼痛マネジメントに加え,在宅看護のヘルスアセスメントの特性から生活全体を視野に入れた疼痛マネジメントを実施していた.また自らの訪問時の情報に加え,家族や他職種から得た情報から,利用者の生活全体を想像し総合的にアセスメントする視点が重要であり,多職種でアセスメントの視点と情報を共有する工夫が求められていることが示唆された.さらに訪問看護師は疼痛の存在が明確でなくとも,疑われる場合は薬物・非薬物療法を実施し,平常時の日常生活の行動変化から疼痛評価を実施していた.今後全国調査により疼痛マネジメントの実際を明らかにする必要がある.
著者
飯岡 由紀子 中山 祐紀子 渡邉 直美 田代 真理 榎本 英子 髙山 裕子 廣田 千穂 秋山 正子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.89-95, 2019 (Released:2019-06-03)
参考文献数
15

本研究の目的は,看護師を対象にEnd-of-Life Careの実践を支援するリフレクションプログラムを開発し,その効果と実現可能性を検討することである.ファシリテーター主導リフレクションプログラム(FRP)と,カードを用いたリフレクションプログラム(CRP)を開発した.緩和ケアに関する知識・態度・困難感尺度と自己教育力尺度の平均得点をプログラム前・直後・3カ月後で測定し,得点の変化をFRPとCRPで比較した.倫理審査委員会の承認を得て行った.FRPは9名,CRPは15名のデータを分析した.FRPはCRPと比較して緩和ケアに関する困難感が有意に低下し,知識が有意に上昇した.また,FRPの群内においても同様の結果が得られた.FRPもCRPもプログラム評価は高く実現可能性は高いと考えられた.今後は,アウトカム指標の検討,サンプル数を増加し,効果をより明確にする必要がある.
著者
宮林 真沙代 中村 千香子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.67-72, 2019 (Released:2019-05-15)
参考文献数
12
被引用文献数
1

【背景】Do not attempt resuscitation(DNAR)の意思表示のあるがん終末期のCardiopulmonary arrest(CPA)患者の搬送は,現行消防法では全例蘇生を行いながら搬送される.現場で救急活動を行う消防職員(以下,消防職員)の気持ちを調査検討した.【方法】当地域の消防職員103名に,DNAR提示をしているがん終末期CPA患者を搬送したことがあるか,またその活動内容,および消防法がなかった場合の活動内容に対し,無記名式アンケートを行った.【結果】DNARの意思表示をしていても,消防法に従わざるを得ない現実があった.消防法がないと仮定しても,救命処置を行うと約半数が回答したが,その約半数は搬送を拒否したいとした.【考察】消防職員にとって蘇生行為は使命であり,搬送と意味の違いがあった.救急搬送に対する患者および家族の知識不足や事前の話し合いのなさが,DNAR患者搬送の大きな原因と考えられ,患者の意思を尊重するためにもACPの浸透と地域住民への教育が必要である.
著者
菊地 綾子 平本 秀二 堀 哲雄 吉岡 亮 長島 健悟
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.335-340, 2018 (Released:2018-12-07)
参考文献数
17

緩和ケア開始後の早期死亡に関する予測因子研究はあるが,入院時に長期の生存期間を予測するモデルや予測因子に関する報告はない.31日以上あるいは61日以上の長期入院に関連する予測因子解析を探索的に行った.また終末期症状(がん性疼痛,せん妄,悪心・嘔吐,倦怠感,呼吸困難感)と終末期治療(平均輸液量,持続的鎮静,平均オピオイド使用量)について長期入院群と非長期入院群とで比較した.31日以上長期入院群においては性別(オッズ比0.502),意識レベル(オッズ比0.258),補正カルシウム値(オッズ比0.559)が統計学的に有意であった.61日以上長期入院に対する予測因子解析では血清CRP値(オッズ比0.254)において統計学的な有意差を認めた.終末期症状・治療において31日以上長期入院の有無では倦怠感と平均輸液量が統計学的に有意に少なかった.61日以上長期入院の有無では差はみられなかった.
著者
高野 純子 山花 令子 山本 則子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.357-366, 2018 (Released:2018-12-25)
参考文献数
32
被引用文献数
1

【目的】全国の緩和ケア病棟における看護師のターミナルケア態度の関連要因を明らかにする.【方法】病棟看護管理者103名,看護師1,671名への自記式質問紙調査.【結果】看護管理者93名,看護師1,112名(有効回答率90.3, 66.5%)を分析.ターミナルケア態度の下位尺度の死にゆく患者へのケアの前向きさ,患者・家族中心のケアの認識の高さは緩和ケア病棟への配属希望(β=0.159, β=0.131, p<0.01)が関連した.ケアの前向きさは,緩和ケア病棟経験年数(β=0.125, p<0.01), 基本的緩和ケアの研修の修了(β=0.065, p<0.05)等10因子,認識の高さは,患者・家族の創作活動支援(β=0.114, p<0.01)等4つが関連した.【結論】前向きなターミナルケア態度を涵養するための,基本を礎にした経験の蓄積と支持的教育,充実した緩和ケア病棟体制の重要性が示唆された.