著者
源河 朝治 神里 みどり
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.87-96, 2022 (Released:2022-07-28)
参考文献数
37

【目的】放射線療法後の頭頸部がんサバイバーにおける晩期有害事象と社会的困難との関連を明らかにする.【方法】照射後1年以上が経過した頭頸部がんサバイバーの症状を既存の疾患特異的QOL尺度の一部で評価した.分析は記述統計を行い,社会的困難と晩期有害事象および基本的属性との関連を検討した.【結果】対象者は73人(回収率70.8%)であった.晩期有害事象は口腔乾燥の有症率および重症度が最も高かった(79.5%).また,社会的困難は会食時の困難の有症率が最も高く(87.7%),会話困難の重症度が最も高かった.照射後5年以上経過した群は症状の重症度が高く,社会的困難と晩期有害事象には有意な正の相関がみられた.社会的困難は嚥下障害と唾液異常,手術歴と関連していた.【結論】頭頸部がんサバイバーは長期にわたり複数の晩期有害事象と社会的困難を有していた.今後は外来にて包括的なアセスメントとケアを行う必要がある.
著者
滝本 佳予
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.71-75, 2022 (Released:2022-06-17)
参考文献数
9

【緒言】アセトアミノフェン(APAP)の過量もしくは長期投与による肝障害は知られているが,治療推奨用法・用量の範囲内でのAPAPによる急性肝不全は稀である.今回われわれは,推奨用法・用量のAPAP注射剤を用い,急性肝不全に陥ったものの回復した1例を経験したので報告する.【症例】患者は56歳の肺がんstage IV,肝機能正常な女性.摂食不振とがん性疼痛のために入院し,胸膜・肋骨転移の鎮痛のためにAPAP注射剤1回1 gを6時間ごとに使用したところ,11 g使用後にAST/ALTが3104/1212 IU/Lと上昇した.血液吸着療法,血漿交換を実施し,N-アセチルシステインの内服を開始して,速やかに肝機能は改善した.【考察】APAP注射剤は緩和ケア領域で用いられることも多いが,推奨使用量でも経口摂取が不十分な担がん症例では体内のグルタチオン枯渇により肝不全が生じる可能性があり,使用時には常に念頭におく必要がある.
著者
矢萩 裕一
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.227-231, 2020 (Released:2020-08-07)
参考文献数
17

【緒言】リンパ系腫瘍では,ステロイド治療は症状緩和に加えて抗腫瘍効果も期待できる.生命予後3週間以下と見込まれた終末期リンパ系腫瘍症例ながら,ステロイドの緩和治療効果と抗腫瘍効果により,在宅療養・通院治療が可能となった2症例を報告する.【症例1】55歳女性.腸管症関連T細胞リンパ腫の患者.再発時に高ビリルビン血症とPS悪化を認めた.症状緩和目的のステロイド治療はそれのみならず抗腫瘍効果も発揮し,3カ月間の在宅療養が可能となった.【症例2】63歳男性.ATLL急性型の患者.VCAP療法を中心に化学療法を施行したが,再発再燃を繰り返したため,症状緩和目的でステロイド治療を行った.ステロイドは抗腫瘍効果も発揮し,8カ月にわたる在宅療養が可能となった.【結語】終末期リンパ系腫瘍患者において,ステロイド治療は症状緩和と抗腫瘍効果の両方を視野に入れた,強力な選択肢になり得ると考えられた.
著者
宮川 裕美子 伊藤 怜子 升川 研人 宮下 光令 山極 哲也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.59-64, 2022 (Released:2022-05-24)
参考文献数
11

【目的】日本バプテスト病院ホスピス病棟において,チャプレンの司会により行っている「お別れ会」の実際を報告し,お別れ会に対する遺族の感想を記述する.【方法】遺族84名に対して,お別れ会の感想を質問紙票にて調査し,自由記述の内容分析を行った.【結果】回答者40名のうち,お別れ会を経験した遺族は15名であった.お別れ会の内容でよかった点として,[祈祷(祈り)],[スタッフの参加]などが抽出され,遺族はお別れ会を行うことによって,[区切り],[気持ちの平安],[心身の癒し]を感じ,[振り返りの機会]や,[心に残る特別な思い出]を得ていた.【考察】お別れ会は,遺族の気持ちの平安や喪失感の軽減の助けとなり,死別後の遺族の悲嘆の軽減につながる可能性が考えられた.本調査から得られた遺族の声をもとに,遺族の思いに寄り添った,より質の高い遺族ケアの実施や,今後のさらなる研究につなげていきたい.
著者
坂口 達馬 梶山 徹 三宅 麻文 片山 俊郎
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.43-49, 2022 (Released:2022-04-15)
参考文献数
26
被引用文献数
1

【目的】ヒドロモルフォン持続皮下投与法によるタイトレーション(以下,本法)の有効性と安全性を検討した.【方法】2020年2月から2021年10月まで,中等度から高度のがん疼痛に対して本法を適応した症例を後方視的に解析した.【結果】計37例中,オピオイド・ナイーブは1例(2.7%).タイトレーション開始時,完了時のヒドロモルフォン投与量は各1.92 mg/日,2.40 mg/日(いずれも中央値),3日以内のタイトレーション完了は33例(89%).著効(Numerical Rating Scale [NRS]≥66%改善)は33例(89%),有効(NRS≥33%改善)は3例(8.1%),無効(NRS<33%改善)は1例(2.7%)であった.有害事象は眠気が3例(8.1%),血圧低下が1例(2.7%)であった.【考察】本法は簡便かつ安全で,中程度から高度のがん疼痛に迅速かつ効果的な鎮痛が得られた.
著者
熊井 正貴 加藤 信太郎 小柳 遼 敦賀 健吉 伊藤 陽一 山田 武宏 武隈 洋 菅原 満 川本 泰之 小松 嘉人
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.51-58, 2022 (Released:2022-04-15)
参考文献数
26

【目的】緩和ケアに携わる医療提供者のターミナルケア態度の実態とそれに関連する要因を明らかにすることを目的とした.【方法】がん治療医と緩和ケア医を含む緩和ケアに携わる医療提供者を対象にFrommelt Attitude Toward Care Of Dying Scale Form B日本語版(FATCOD B-J)を用いて質問紙調査を実施した.【結果】解析対象は223例であった(回収率42.2%).FATCOD B-J総得点を目的変数とした重回帰分析の結果,偏回帰係数は年代で40代と比較して30代以下が低く(−3.8),業務から得られる満足感を感じているほうが高く(+5.7),緩和ケアへの関心が強いほうが高かった(+6.2).【考察】緩和ケアへの関心と業務から得られる満足感がターミナルケア態度の涵養に重要である可能性がある.
著者
木原 里香 山添 有美 浅井 泰行 足立 佳也 桒原 恭子 藤野 雅彦 佐部利 了 小田切 拓也 綿本 浩一 渡邊 紘章
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.199-204, 2020 (Released:2020-07-21)
参考文献数
15

【緒言】血管内大細胞型B細胞リンパ腫が疑われた患者が過活動型せん妄を呈し,ステロイド投与が過活動型せん妄に有効であった1例を経験したので報告する.【症例】67歳男性.発熱と貧血,高LDH血症を認め,精査中に,過活動型せん妄をきたした.抗精神病薬のみでは症状緩和が困難であった.血管内大細胞型B細胞リンパ腫による微小血管閉塞がせん妄の直接因子となっていることが強く疑われたため,骨髄検査と皮膚生検を施行したうえで,プレドニゾロンを増量したところ,速やかに症状が改善した.【考察】血管内大細胞型B細胞リンパ腫の症例においては,微小血管梗塞や中枢神経病変といった原病によるせん妄に対し,ステロイド投与が症状緩和に寄与する可能性がある.
著者
加藤 恭郎 徳岡 泰紀 松村 充子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.241-246, 2021 (Released:2021-07-29)
参考文献数
9

日本臨床化学会はアルカリフォスファターゼ(ALP)の日本固有の測定法の国際標準化法への変更を決定した.予後予測式Prognosis in Palliative care Study predictor(PiPS) modelsのPiPS-Bの項目にはALPがあるが,過去の本邦の報告では国際標準化法を用いていなかった.当院緩和ケア病棟に2019年3月から2021年3月に入棟した連続239例において,入棟時にPiPS modelsによる予後予測を行った.このうちのPiPS-B 98例においてALPを国際標準化法測定値への換算値に置き換えて再計算した.98例中5例で予後予測が週単位から月単位へ変更となった.ALP測定方法の国際標準化法への変更により,PiPSの週単位の予後予測が月単位に変わる可能性が示唆された.
著者
宇野 あかり
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.117-127, 2020 (Released:2020-05-30)
参考文献数
38
被引用文献数
1

【目的】緩和ケア病棟で働くスタッフを対象に,緩和ケアで死に寄り添うことへの心理的適応過程を死のとらえ方と時間的展望に着目して明らかにする.【方法】緩和ケアスタッフ10名を対象に半構造化面接を実施し,TEM(複線径路・等至性モデル)を用いて分析した.【結果】スタッフは緩和ケアのキャリアの中で死のとらえ方を変化させ,死にpositiveな意味を見出すことで精神的健康を維持して働いていた.また,死が身近な環境は,過去・現在・未来への視点を広げ,適応的な時間的展望の形成を促し,よりよい生を送ろうという意識を高めることが推測された.【結論】今後はスタッフの死のとらえ方を把握しpositiveな意味づけを促す必要がある.また,緩和ケアに時間的展望の視点を取り入れることは,緩和ケアが自身の成長の糧になっているという気づきや,日々のケアの意識にもよい変化があると考えられ,有意義であるといえるだろう.
著者
吉田 詩織 佐藤 冨美子 田上 恵太 霜山 真 高橋 信
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.99-108, 2021 (Released:2021-03-24)
参考文献数
26
被引用文献数
1

研究目的は,遠隔看護によるがん疼痛モニタリングシステムのパイロットユーザビリティ評価である.方法は,外来進行がん患者と医療者各10名にシステム使用後にWeb Usability Scale(WUS)と自由記述を用い評価した.WUSの7項目中「構成のわかりやすさ」および「内容の信頼性」がよい評価を得られ,「操作のわかりやすさ」,「見やすさ」,「反応性」,「役立ち感」,「好感度」はよい評価を得られなかった.自由記述では,システムはがん疼痛セルフマネジメントを高める評価,運用拡大への要望と社会面への課題が示された.患者のユーザビリティ改善が課題であり,効果検証では十分なオリエンテーションが必要である.
著者
伊木 れい佳 齋藤 恵美子 和田 伸子 高田 寛仁 四宮 真利子 嶋田 雅俊 田中 雅子 吉住 智奈美 阪井 宏彰 片岡 裕貴
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.93-98, 2021 (Released:2021-03-22)
参考文献数
17

【背景と目的】国内外を通し苦痛のスクリーニングの効果を検証した研究は少ない.今回兵庫県立尼崎総合医療センターにて化学療法導入時にスクリーニングを実施し,緩和ケア介入件数が増加するかを検討した.【方法】2018年2月から2019年1月に化学療法同意書を発行された患者を対象にスクリーニングを実施した.回帰不連続デザインを用いて導入前後の緩和ケアチーム介入件数の変化を評価した.スクリーニング回収率を算出し,回収に影響した因子についてロジスティック回帰分析にて評価した.【結果】チーム介入件数の変化の推定値は3.32件/月(95%CI: −3.19〜9.82)であった.回収率は月平均35.2(±7.94)%であり,回収有に関して診療科による差がみられた.【結論】当院で導入したスクリーニングでは緩和ケア介入件数の有意な増加は得られなかった.
著者
阿部 健太郎 三浦 智史 藤城 法子 沖崎 歩 吉野 名穂子 青木 茂 内藤 明美 真野 泰成 齊藤 真一郎 山口 正和 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.85-91, 2021 (Released:2021-03-22)
参考文献数
15

【目的】進行がん患者の遺族からみた多剤併用の状況と内服負担に関する体験や認識を明らかにする.【方法】がん患者の遺族303名に自記式質問票を郵送し,回答を得た.1回6錠以上の内服を多剤併用群,1回6錠未満の内服を非多剤併用群とし,内服負担や体験,認識について単変量解析を行った.102名の結果を解析した(有効回答率33.7%).【結果】多剤併用群(65名)は,非多剤併用群(37名)よりも遺族が患者の内服負担を感じた割合が高値であった(43.1% vs 10.8%,p<0.01).内服負担が少ない服用方法としては,現状よりも1回の服用錠剤数を減らしたいと希望していた.多剤併用群の遺族は,内服薬が多いことの懸念が強く,医療者からの内服薬に関する説明や相談できる医療者を希望していた.【結論】医療者は,服薬状況の確認とともに薬に関する家族の懸念についても十分に配慮する必要があることが示唆された.
著者
柴原 弘明 安藤 啓 西村 大作
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.507-510, 2013 (Released:2013-05-02)
参考文献数
22

【緒言】従来の一般的な内服や外用薬に対して治療抵抗性の皮膚掻痒感をもつがん患者では, 症状緩和に難渋する. 【症例】72歳, 女性. 肺がん膵転移に伴うがん性疼痛に対してオキシコドン徐放剤を投与し, また閉塞性黄疸に対して内視鏡的胆道ドレナージを行った. 皮膚掻痒感がみられたため, 外用薬・内服(ミルタザピンと漢方)の投与を行ったが改善しなかった. 難治性皮膚掻痒感と診断しプレガバリンを投与した. 低用量で開始後増量し, 投与3日目に改善効果がみられた. 最終的には皮膚掻痒感のNumerical Rating Scaleは投与前8/10から投与後0~1/10となり, 症状緩和が得られた. 【考察】プレガバリンが皮膚掻痒に有効であるという海外の先行研究がみられている. 自験例でも, プレガバリンにより難治性皮膚掻痒感の症状緩和を得ることができた. 【結論】プレガバリンは, 難治性皮膚掻痒感に対する有効な治療の選択肢の1つと考えられる.
著者
佐藤 麻美子 田上 恵太 田上 佑輔 青山 真帆 井上 彰
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.79-84, 2021 (Released:2021-03-16)
参考文献数
13

緩和ケアの均てん化が求められているが,専門家不在の地域での普及方法は検証が少なく,本邦においても緩和ケアの専門家によるアウトリーチが期待されている.本研究の目的は,緩和ケアの専門家が不在な地域での緩和ケアアウトリーチの介入点を検討することである.宮城県登米市の訪問看護師を対象に,緩和ケアに関する困難感,自信・意欲,実践についてリッカート法でアンケート調査を行い,5カ所の訪問看護ステーションの看護師39名が回答した.困難感は「症状緩和」,「医療者間コミュニケーション」で高かった.自信が低く,意欲は高い傾向であり,とくに自信の低い項目は「医師とのコミュニケーション」,「スタッフの支援」であった.また「往診医や主治医との連携」,「ヘルパーとの連携」で実践度が低かった.これらの結果から,地域の「顔の見える関係」を強化し,訪問看護師の自信を高める関わりが,緩和ケアアウトリーチにおいて有効と考えられた.
著者
山本 亮 木澤 義之 永山 淳 上村 恵一 下山 理史
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.73-78, 2021 (Released:2021-03-16)
参考文献数
9

【目的】がん対策推進基本計画の改定で緩和ケア研修会の開催方法が変更され,対象が医師以外にも拡大された.本研究の目的は,新指針緩和ケア研修会の教育効果を受講生の自己評価により検証することである.【方法】2018年度に新指針緩和ケア研修会を修了したすべての受講生を対象とし,研修開始時と修了時の緩和ケアの知識(PEACE-Q)および緩和ケアの困難感(PCDS)のスコアを比較した.【結果】11,124名が研修会を修了した.研修開始時と修了時を比較すると,PEACE-Qは24.1から30.0と上昇(p<0.0001),PCDSは45.2から39.2へと低下した(p<0.0001).職種ごとの解析でも同様の結果であった.【結論】新指針緩和ケア研修会でも,研修会修了時に緩和ケアの知識は向上し,困難感は低下していた.職種ごとの解析でも同様の結果であり,本研修会の教育効果は職種によらず認められることが示唆された.
著者
竹井 友理 山本 瀬奈 師岡 友紀 南口 陽子 畠山 明子 辰巳 有紀子 荒尾 晴惠
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.35-43, 2021 (Released:2021-02-09)
参考文献数
23

【目的】本研究の目的は,がん患者の緩和ケア開始時期の認識と関連要因を明らかにすることである.【方法】がん診療連携拠点病院に入院・通院中のがん患者を対象に無記名自記式質問紙調査を行った.個人属性,がん・治療状況,緩和ケア開始時期の認識,緩和ケアの認知や提供状況を調査し,ロジスティック回帰分析を行った.【結果】3,622名のうち1,981名(54.7%)の回答を得た.1,187名(59.9%)が早期から,414名(20.9%)が終末期からの緩和ケアの認識であった.症状への対応あり(vs.該当なし,OR=0.56),再発・転移あり(vs.なし,OR=1.44),40代以下(vs.70代以上,OR=1.67)は終末期からの緩和ケアの認識と有意に関係した.【考察】症状への対応が必要となる前から緩和ケアの普及啓発を行うことが早期からの緩和ケアの認識を促進する可能性がある.
著者
的場 康徳 村田 久行 森田 達也 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.45-54, 2021 (Released:2021-02-16)
参考文献数
27

【目的】スピリチュアルケア(SPC)の実践力の習得を目的とした研修の医師での効果を測る.【方法】自記式質問法により,教育介入前,直後,3カ月後,6カ月後に測定.【結果】医師30名が研修を修了.すべての主要評価項目が有意に改善し,その効果は介入6カ月間持続(すべてP=0.0001).スピリチュアルペイン(SPP)を訴える患者とのコミュニケーションの自信が高まり(6カ月後の効果量(Effect Size=1.3),SPCの実践の自己評価が高まり(ES=1.2),SPPを訴えられたときの無力感が軽減し(ES=0.8),SPCの経験を肯定的に捉えるようになり(ES=0.8),SPPを訴える患者にすすんで関わりたいと思うようになった(ES=0.4).96〜100%の医師が,SPCの概念理解と実際にSPCの方法を知ることについて本研修が「とても役に立った」または「役に立った」と評価した.
著者
八代 英子 國府田 正雄 村上 敏史 田口 奈津子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.535-538, 2015 (Released:2015-08-12)
参考文献数
9

【緒言】頸椎転移による強い痛みに対し,ハローベスト装着により良好な痛みの緩和が得られ,自宅退院が可能となった症例を経験したので報告する.【症例】76歳,男性.食道癌術後,リンパ節再発に対し化学療法施行中,頸椎転移を認めた.徐々に悪化する右頸部から背部への痛みに対し,薬物療法,放射線療法施行したが改善なく,さらにオピオイドによる強い副作用のため,著明にADLが低下した.症状緩和目的にハローベストを装着した.痛みは軽減し,オピオイドは不要となり,転院後に自宅退院,約2カ月間自宅療養をされた.【考察】ハローベスト装着は,標準治療にても疼痛緩和に難渋する症例に,今後も検討したい治療法である.本邦では,自宅療養中の装具装着は一般的ではなく,患者・家族の精神的負担が大きいことが予想される.重篤な合併症の報告もあり,整形外科医との連携が必須であり,患者,家族とともに慎重に適応を検討する必要がある.
著者
中村 明澄 堤 円香 安藤 仁子 高柳 論也 地曵 典恵
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.339-343, 2020 (Released:2020-12-21)
参考文献数
11

ヒドロモルフォン塩酸塩1%注射液(高濃度ヒドロモルフォン注)の持続皮下注により皮下硬結を生じたが,希釈濃度を下げることで改善した1例を報告する.患者は60歳女性,膵がんによる背部痛に対して高濃度ヒドロモルフォン注の持続皮下注を行い,ヒドロモルフォン濃度を0.17%から0.83%に上げた際に発赤・皮下硬結が出現した.留置針の刺し替えを行うも改善せず,ヒドロモルフォン濃度を0.28%まで下げたところで皮下硬結が消失した.第61病日より嘔気に対してハロペリドールを混注し,第70病日より身の置きどころのなさの出現により,ミダゾラムをさらに混注で追加したが,ヒドロモルフォン濃度を0.28%以下に保つことで,第79病日に亡くなるまで皮下硬結を認めず,症状緩和も可能であった.高濃度ヒドロモルフォン注の持続皮下注の皮膚局所反応に,ヒドロモルフォンの濃度が関係している可能性が推測された.
著者
山本 泰大 渡邊 紘章 近藤 綾子 出口 裕子 平野 茂樹 櫻井 愛菜 公文 章子 村路 留美子 持山 めぐみ 奥村 佳美 浅井 泰行 小田切 拓也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.303-308, 2020 (Released:2020-11-24)
参考文献数
12

【緒言】小牧市民病院では2018年3月より外来がん患者を対象としたオピオイド導入支援を開始した.本活動前後の変化を比較検討したため,報告する.【方法】対象は2017年1月〜2019年3月に小牧市民病院で苦痛緩和に対して強オピオイドを導入したがん患者で,本活動前後のオピオイド導入時のレスキュー薬,制吐剤,下剤の処方割合,副作用の発現率について比較した.【結果】対象は122名(活動前/後:54/68).本活動の前後でオピオイド導入時のレスキュー薬の処方率は90.7から98.5%に,制吐剤の処方率は63.0から70.6%,緩下剤の処方率は61.1から70.6%と上昇した.STAS-J2以上の副作用は本活動の前後で22.2,13.2%であった.【考察】当院での本活動の実施により患者に合わせた薬物治療の提供,患者の相談機会の増加に寄与することができた.