著者
鈴木 芳成 佐藤 守 矢内 清恭
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.41-45, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本稿(第9回)では,東京電力福島第一原子力発電所事故の農地及び農畜産物への影響の解明や,放射性物質の除去,低減及び吸収抑制技術の開発に関する福島県農業総合センターの取組みを,米等,果樹,畜産の各分野毎に紹介する。
著者
工藤 君明
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.468-472, 2010 (Released:2019-09-06)
参考文献数
4

地球温暖化というと,暑い夏がさらに暑くなることだと思われがちであるけれども,どちらかというと寒い冬が暖かくなって年間平均で気温が高くなるなど,年々の長期的変化に伴い,様々な現象の変動パターンがこれまでになく激変するということである。地球環境の変動をこれまでに蓄積してきたデータから単純に予測することはますます困難になっている。予測もつかないようないことを予測することが求められており,その予測技術を確立していくために,全球における高精度,広域,そして継続した観測がますます必要とされている。
著者
寿楽浩太 土田 昭司 下 道國 神里 達博
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.542-548, 2018 (Released:2020-04-02)

東京電力福島第一原子力発電所事故から7年。福島県の農畜産物の価格が,事故前の水準に戻らない。風評被害はなぜ,起こるのか。この問題にはどう対処すればいいのか。原子力学会の理事会と社会環境部会は春の年会でこれをテーマにしたセッションを企画し,この問題に対する解決策を探った。ここでは登壇した4人の講演と,その後の質疑の概要を紹介する。
著者
小野 章昌
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.780-785, 2014 (Released:2020-02-19)

エネルギー・ミックスの本格的な検討が求められている我が国にとって,将来を託せるエネルギー源の見通しを得ることは何にもまして重要と言えよう。再生可能エネルギーについては導入先進国であるEU諸国,とりわけドイツの実情を知ることが一番の近道である。
著者
小西 哲之
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.680-686, 2019 (Released:2020-04-02)
参考文献数
10

トリチウム研究の現状と今後の展開と課題について,炉内の工学研究のみならず,環境,生物影響,社会との関係まで視野を広げて概観する。核融合炉ではトリチウムは法規制を十分に守っていても一定量のトリチウムを定常放出するため,周辺環境モニターで濃度上昇が検出されるのは不可避であり,その影響の評価と社会による理解,合意まで含めて考える必要がある。工学のみならず環境,生物関連研究や社会との連携の進展は,核融合原型炉の実現に向けて,着実なトリチウム取り扱い技術と経験の蓄積に基づく展開を開始する段階を迎えている。
著者
澤田 哲生
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.776-779, 2014 (Released:2020-02-19)
参考文献数
11

正力大臣車中談(案)という風変わりな標題の史料がある。昭和31年の原子力委員会で諮られている。正力は東京から選挙区富山に電車でお国入りする車中で,随行記者団にさまざまな真情を披瀝した。同年1月中旬のお国入りの際には,原子力委員会発足直後の声明書の内容に関して談じた。原子力委員の湯川は,新聞紙面に踊った正力の車中談に接し,困惑と憤りを露にした。そんな背景に湯川ら物理学者と正力ら政治家の思惑の違いが根強くあった。それが,結果的に原子力ムラと御用学者を生む発端になったのではないか。史料をもとに論考する。

13 0 0 0 OA 海の国のアトム

著者
工藤 君明
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.336-340, 2010 (Released:2019-09-06)
参考文献数
5

海洋の科学と科学技術について,いまどんな研究が行われているのか,原子力にかかわっている方々にわかりやすく紹介するという機会をいただいた。地球は水の惑星といわれるが,それは地球の表面の2/3が海水で覆われているばかりでなく,固体地球の内部にも水の循環があり,そして巨大な山脈もかつては海の底だったからである。研究の分野は広く,専門分野が異なれば,なかなか理解も難しい。しかし分野が異なっても共通するのは人の情熱と努力である。自然の不思議に魅せられて科学するのは人である。科学技術を研究開発するのも,機器を操作し,データを管理するのも,また必要な予算を獲得して業務を管理するのも人である。さらに成果を享受し,評価するのも人である。人は国により,時代により,状況によってさまざまに異なる。しかし人を抜きに科学技術を語ることも,理解することも,役に立てることもできはしない。海洋研究開発機構(JAMSTEC)が進めている海洋の科学と科学技術を,研究開発にたずさわる人たち(ここではアトムと呼ぶ)の目線で解説していくことにしたい。

13 0 0 0 OA 海の国のアトム

著者
工藤 君明
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.409-413, 2010 (Released:2019-09-06)
参考文献数
5

現代の地球科学における重要なキーワードは地球内部の水循環である。水を含んだ海洋地殻が大陸地殻の下にもぐりこんでいくときに,水は絞りだされて循環する。熱水現象も,地殻内微生物の存在も,また地震発生のメカニズムも地殻内水循環が重要な役割を果たしている。今回は私たちの生活に極めて身近な存在である微生物の利用と生物の進化,そして海溝型の巨大地震の研究と防災について考える。
著者
吉田 至孝 宮野 廣
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.15-19, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

東京電力福島第一原子力発電所の津波対策が不十分であったことが指摘され,裁判でその責任の有無が争われている。本検討では,裁判の中での議論には関与せず,純学術的観点から主に4事故調(国会,政府,民間,東電)報告書の内容を精査し,わが国および東電の津波対応に関する事実関係をまとめ,考察した。加えて,話題となっている国土庁と気象協会が作成した津波浸水予測図,津波高さ15.7mの試算とその予防効果,地震本部の長期評価などについても検討するとともに,得られた知見を紹介する。
著者
木下 冨雄
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.465-472, 2011 (Released:2019-09-06)
参考文献数
20
被引用文献数
5 3

私は社会心理学の研究者である。原子力の世界とは長いお付き合いがあるが,その中味は所詮外野席からの聞きかじりであって,専門知識は乏しい。したがって以下の意見は,原子力の専門家からすれば的外れのことも多いだろう。それを覚悟しながら,社会心理学,ないしリスク学の立場から見た今回の事故の問題点を述べることにしたい。
著者
島本 龍 森下 友一朗 北川 高史
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.107-110, 2019 (Released:2020-04-02)
参考文献数
5

原子力発電所のコンクリート構造物は,設計および施工時の品質管理活動により,耐久性が確保された構造物であるが,運転開始後も技術者による保守管理活動が継続的に行われている。高経年化技術評価においては,コンクリートの強度低下等の劣化事象に影響を及ぼす劣化要因毎に長期的な健全性評価を実施しており,保守性の高い評価体系となっている。プラントの長期停止時に進展の可能性が否定できない要因に,コンクリート強度低下事象に対する中性化および塩分浸透が挙げられるが,いずれも将来にわたって大きな裕度をもって健全性が確保されている。
著者
早野 龍五
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.30-36, 2014

<p> 東京電力福島第一原発の事故により,福島県を中心とする地域の土壌は高濃度に汚染され,住民が内部被ばくと外部被ばくのリスクに曝された。特に,チェルノブイリ事故の経験に照らすと,平均的な内部被ばくは数mSvに達すると,当初予測された。しかし,実際に大規模なホールボディーカウンター測定を行ったところ,住民の平均的な体内放射性セシウム量は,冷戦時代よりも少ないことが明らかになってきた。福島における内部被ばく・外部被ばくの実測データを紹介し,今後を考える。</p>
著者
石井 伸拡
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.103-106, 2019 (Released:2020-04-02)
参考文献数
4

原子力発電所の電気計装設備の絶縁低下については,設置環境における温度・放射線の影響により,経時的に絶縁体の劣化が進行していくため,経年劣化に対する試験・評価や定期的な保全活動を踏まえて,健全性の維持に取り組んでいる。経年劣化に対する試験・評価はプラント運転中の厳しい環境を想定した保守的な寿命評価を実施し,その年数に基づき取替え等の管理を保守的に行っている。今回は,プラント停止中の温度・放射線はともに低いことに着目し,停止中の経年劣化への影響程度を評価した結果,劣化状況評価の結果に有意な影響は与えないことを確認した。