著者
番庄 智也 片寄 晴弘
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2021-EC-59, no.12, pp.1-7, 2021-03-09

本研究ではエンタテインメントコンピューティング領域の研究対象として注目が集まりつつある感情曲線の入力支援ツールの作成とその入力基準の策定に取り組む.感情曲線は物語や映画などの作品における感情の上げ下げを時系列に記述したグラフであり,作品制作時に利用されたり,また,鑑賞者の楽しみとして描かれることも増えてきている.基本的に感情曲線は主人公の幸福度を投影したものとされるが,鑑賞者の作品の理解や思い入れ,気分や性格によっても描かれる形状が変わると考えるべきである.本研究では,鑑賞者の作品の理解によって感情曲線がどのように変容するのかについての作業仮説獲得を目指して,人気アニメーションの 1 エピソード(シリーズものではあるが,それだけでも完結しているもの)を対象とした感情曲線入力実験を実施した.この結果,登場人物の関係性や登場人物の性格に対しての鑑賞者の理解が感情曲線の描出に影響を与えることを示唆するデータが観測された.
著者
小椋 裕太 大村 英史 東条 敏 桂田 浩一
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2021-EC-59, no.34, pp.1-8, 2021-03-09

認知的音楽理論は,音楽を「聴く側」の認知過程を踏まえた音楽の分析理論である.その一つである Generative Syntax Model (GSM) は,和声進行に関する文脈自由文法を定義することで,和声進行における期待-実現の構造を階層的に表現できることを示した.しかし,GSM をはじめとする従来の認知的音楽理論は楽曲聴取後の認知構造のみを表現しており,楽曲聴取中の認知構造である音楽的期待については議論されていない.しかし,楽曲聴取中の期待の逸脱や実現こそ音楽の意味である.そこで,本研究では楽曲途中の認知構造の表現を行うために,GSM を確率文脈自由文法に拡張する.これにより,漸進的構造解析を行うことが可能になる.このモデルを実装した和声解析システムを用い,ジャズ楽曲の和声進行の解析を行った.解析結果から,提案モデルが和声進行における楽曲途中の解釈の多様性や,楽曲における意外性の生じる位置を示唆していることが分かった.
著者
劒持 若菜 河瀬 彰宏
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2021-EC-59, no.40, pp.1-5, 2021-03-09

本研究では,ダンス評価時における視線計測実験を実施し,AIST Dance Video Databace の映像を用いてダンス経験者と未経験者のダンス評価時の注視傾向を比較した.注視部位の時間に対して統計的検定を実施した結果,注視部位とダンス経験に関連があること,経験者が頭部や手先を注視する傾向にあること,未経験者が胴体など身体の中心に近い部分を注視する傾向があることを明らかにした.
著者
荒井 翔子 大橋 学 伊藤 有紀 Uehara Juan Martin 増田 知之 Shoko Arai Manabu Ohashi Yuki Ito Martin Juan Uehara Tomoyuki MASUDA
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. EC, エンタテインメントコンピューティング (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.9, pp.1-4, 2019-06-03

店舗の環境を創り上げる要素の 1 つに,バックグランドミュージック (BGM) が挙げられる.買い物客の購買意欲を高めるためには,既存の BGM に頼るだけではなく,その店舗にフィットした新しい音環境や音源の開拓が必要である.現在,日本は空前の猫ブームに沸いており,猫の発するゴロゴロ音が人に癒しをもたらすと考えられている.しかしながら,これを実証する科学的根拠はほとんど存在しない.そこで本研究では,猫のゴロゴロ音が人の生理的状態にどのような影響を及ぼすか検討した.ストレス負荷課題をこなした実験参加者に猫のゴロゴロ音を聴かせたところ,ゴロゴロ音を聴いた群の心拍数は,猫への嗜好性を問わず,安静時の基準値よりも有意に低下することが明らかとなった.この結果は,猫のゴロゴロ音にリラックス効果があることを示唆しており,猫のゴロゴロ音が店舗での新規音源となるポテンシャルを秘めていることが明らかとなった.
著者
袴田 はるか 磯山 直也 寺田 努 塚本 昌彦
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2018-EC-47, no.5, pp.1-8, 2018-03-09

覚えておかなければならない数字列を覚える際に,数字語呂合わせと呼ばれる手法がよく用いられる.しかし,既存のツールでは自分と関連のある事柄や,意味を他と関連づけた事柄はより記憶に残りやすいのに対し,そのような事柄と関連した数字語呂合わせは生成できない.そこで本稿では,語呂合わせに使われている単語間の類似度を計算することで,関連付けたい事柄との関連度に着目した数字語呂合わせの自動生成システムを提案する.実装したシステムを用いて生成された数字語呂合わせの有用性について,評価実験を行った.実験の結果,4 字程度の短い数字列に対しては,提案システムにより生成された語呂合わせが高順位となることが分かった.
著者
星野 佑輔 高島 健太郎 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. EC, エンタテインメントコンピューティング (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2019-EC-51, no.13, pp.1-8, 2019-02-15

人は仕事や勉強などのやらねばならない必須タスクでも,「やる気が出ない」 という理由で後回しにしてしまうことがよくある.この問題に対し,たとえばゲーミフィケーションのように,従来はタスクの実行中やタスク自体に動機づけのための要素や機能を付け加えて支援する試みが多くなされてきた.これに対して本研究では,ビデオゲームによって好ましい効果が得られるといういくつかの先行研究で得られた知見に基づき,タスクの性質や構成に手を加えるのではなく,タスクの直前にビデオゲームをプレイすることで,タスクに対するやる気を向上させることができるのではないかという仮説を立てた.この仮説が支持されるかどうかを調査するための実験を 2 つ実施した.第 1 の実験では,ビデオゲームの難易度がタスクへのモチベーションにどのように影響するかを評価した.第 2 の実験では,ビデオゲームをプレイすること自体がタスクに対するやる気向上に影響があるかどうかを調査した.結果として,ゲームをプレイすることによるモチベーションへの有意な影響は認められなかったが,ゲーム難易度の違いが影響を与える可能性が示唆された. : People often postpone even mandatory tasks such as business or study on the grounds that they do not get motivated. To solve this problem, there have been many attempts that add some elements and / or functions that evoke people's motivation to the tasks themselves and / or during execution of the tasks: gamification is a typical approach. In contrast with these conventional approaches that modifies the nature of the tasks, based on several preceding works on the positive effects of the videogames, we made a hypothesis that playing videogames just before the tasks positively affect the motivation for the tasks. To investigate whether this hypothesis is supported or not, we conducted two experiments. The first experiment was to estimate how the difference of difficulty of a videogame affects the motivation, and the second one was to investigate whether playing a videogame affects the motivation or not. As a result, it was suggested that the difference of difficulty affects the motivation, although playing the videogame does not significantly affect the motivation.
著者
富田 雄希 高島 健太郎 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. EC, エンタテインメントコンピューティング (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2019-EC-51, no.14, pp.1-7, 2019-02-15

地域活性化の施策として,多くのご当地アイドルが各地で活動している.ご当地アイドルが円滑な活動を続けるためには,新規ファンの獲得が必要不可欠である.しかし,既存ファンコミュニティによる熱狂的応援や独特のルールなどが,潜在ファンの参入障壁を形成してしまう.本研究ではこの障壁を軽減するため,役割体験学習論に基づき,古参ファンの体験を追体験するノベルゲームを構築し,その効果を他者理解と愛着の増加の観点で検討する.モデルケースとして,石川県西金沢の商店街を拠点に活動する西金沢少女団の既存ファンコミュニティから実体験を収集し,その実体験を織り込んだノベルゲーム BNO-Story を潜在ファンに楽しんでもらう.このゲームにより,古参ファンがなぜ熱狂的応援をするのかを理解できるか,アイドルへの愛着が増加するかを評価する. : Recently, many local idols play an active part in vitalizing local regions. In these activities, continuous acquirement of new fans is important. However, enthusiastic cheering and unique rules of the existing fan community form a barrier that prevents potential new fans from joining the fan community. In this research, in order to alleviate this barrier, we create a novel-game based on the role action learning methodology, which allows the potential new fans to vicariously experience the old fans' experiences, and examine whether it can effectively increase understanding and affection to the local idols as well as their old fans. As a model case, we collected actual experiences from the existing fan community of the Nishi-Kanazawa Shoujo-dan, which is a local idol group based in the shopping district of Nishi-Kanazawa, Ishikawa Prefecture. We implemented a novel-game named BNO-Story to which the collected episodes are incorporated. We conducted experiments in which we asked some subjects to play this game to evaluate whether the game is effective.
著者
荒井 翔子 大橋 学 伊藤 有紀 Uehara Juan Martin 増田 知之 Shoko Arai Manabu Ohashi Yuki Ito Martin Juan Uehara Tomoyuki MASUDA
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. EC, エンタテインメントコンピューティング (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2019-EC-52, no.9, pp.1-4, 2019-06-03

店舗の環境を創り上げる要素の 1 つに,バックグランドミュージック (BGM) が挙げられる.買い物客の購買意欲を高めるためには,既存の BGM に頼るだけではなく,その店舗にフィットした新しい音環境や音源の開拓が必要である.現在,日本は空前の猫ブームに沸いており,猫の発するゴロゴロ音が人に癒しをもたらすと考えられている.しかしながら,これを実証する科学的根拠はほとんど存在しない.そこで本研究では,猫のゴロゴロ音が人の生理的状態にどのような影響を及ぼすか検討した.ストレス負荷課題をこなした実験参加者に猫のゴロゴロ音を聴かせたところ,ゴロゴロ音を聴いた群の心拍数は,猫への嗜好性を問わず,安静時の基準値よりも有意に低下することが明らかとなった.この結果は,猫のゴロゴロ音にリラックス効果があることを示唆しており,猫のゴロゴロ音が店舗での新規音源となるポテンシャルを秘めていることが明らかとなった.
著者
三武 裕玄
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2019-EC-53, no.2, pp.1-2, 2019-08-13

人は古来から魅力的な架空のキャラクタを生み出すとともに彼らが現実の存在であることを夢みてきたが,現代において我々は技術でその夢を叶えつつある.本発表では,生きて我々の存在に気づいてくれているかのようなインタラクションを可能にする振る舞いの自動生成やそのデザイン手法,およびキャラクタと人を地続きの存在にするための提示手法について自身の研究例を交えつつ俯瞰し,キャラクタを社会の一員とするためのキャラクタ創作 ・提示技術の展開について考える.
著者
吉田 夏子 福嶋 政期 会田 大也 苗村 健
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2016-EC-39, no.3, pp.1-7, 2016-03-09

ブレインストーミングは,複数人で思考することで問題を多角的に捉えアイデアを発散することができるという特性から,ビジネスや教育の現場で広く採用されている.本研究では Facebook のいいねボタンに着想を得て,物理ボタンの押下により誰でも簡単に楽しくアイデアを褒め合うことで,ブレインストーミングの生産性を向上させるシステムを提案する.本稿では,本システムの効果を検証した結果を報告する.
著者
福井 真理子 阪口 紗季 松下 光範
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2016-EC-39, no.1, pp.1-8, 2016-03-09

本研究では,実物体に映像を足し合わせることによって,秘匿された情報を視覚化する手法を提案する.提案手法では,錯覚を応用したエンタテインメントであるスキャニメーションの技法をプロジェクションマッピングに応用する.それによって,実物体の外観に付与されたパタンに対し,プロジェクタからの投影映像のパタンを重畳することによって,情報を視覚化することを可能とする.これにより,それぞれ単体では意味をなさない物体の外観と投影映像が重なり合ったときにのみ,意味のある情報として視覚化できるといったインタラクションが実現できる.
著者
湯村 翼
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2015-EC-37, no.3, pp.1-3, 2015-08-16

新たな成果や知見が発表される場は,アカデミック (学術会議や学術論文) 以外に,IT 勉強会,ハッカソン,Maker Faire,ニコニコ学会 β,ニコニコ動画,YouTube,KickStarter など多岐にわたる.これらに類する活動は昔からあったと推測されるが,近年のウェブサービスの充実とともにその様子が浮き彫りとなってきた.これらの場では、未知の知見が大いに含まれているものも数多く発表されている.人類の進化のためには適切に取り扱い広く共有されるべきであるが,学術論文の引用のような明確なルールは存在していない.本発表は,アカデミック以外の場において発表される成果や知見をどう活用すべきか議論するきっかけとしたい。
著者
佐藤 僚太 竹川 佳成 平田 圭二
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2019-EC-51, no.12, pp.1-6, 2019-02-15

本稿では,メドレー楽曲におけるマッシュアップを考慮した楽曲断片検出法について述べる.メドレー楽曲とは,複数楽曲の一部分の区間を接続することで作られる新たな形式の楽曲のことを指す.メドレー楽曲では原曲をテンポやキー,音の追加や削除などのアレンジやマッシュアップを行うことで,一曲であるかのように楽曲断片同士の接続を行っている.我々は,メドレー楽曲において何の曲がどこからどこまで登場しているか同定するため,Wang の音声指紋とカバーソング同定法 (Cover Song Identification, CSI) である Serrà らの相互再帰定量化 (Cross Recurrence Quantification, CRQ) を組み合わせた楽曲断片検出法の提案する.メドレー楽曲とその構成楽曲から音声指紋を抽出し,2 曲の類似度行列である行列 CR とカバーソングを定量的に評価するための累積値行列 Q を作成し,開始地点を同定することで楽曲断片の検出っを試みる.実験結果から,やや低い精度ではあるものの,パラメータの検討によって本手法の楽曲断片検出の精度が向上することが示唆された.
著者
松本 華歩 村上 真菜 栗原 一貴
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC) (ISSN:21888914)
巻号頁・発行日
vol.2017-EC-43, no.8, pp.1-8, 2017-03-03

お酒の割り方やコーヒーの甘さなどの味の好みは,人それぞれこだわりがある.しかし,自分の好みぴったりで割合を調節したり,気分や体調によって味を変えたりして飲むことは難しい.そこで本研究では,二つの液体の混合比を任意に調整して飲める水筒である ChanJar を提案する.ChanJar とは,change と jar を組み合わせた造語である.ここで,change は「変える」,jar は「瓶」という意味で用いている.ユーザ評価の結果,システムの有効性や改善点の必要性について確認した.また味覚と感情の関係性についての調査を行い,ChanJar を遠隔地から操作することで,操作者による,使用者への味覚による感情伝達の可能性を示すことができた.さらに,既存のウェアラブルシステムやセンサーを組み合わせることによる,健康管理システムやエンタテインメントシステムとしての可能性を論ずる.