著者
村上 修一
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.162-166, 2021-09-07 (Released:2022-06-08)
参考文献数
10

堤防が不連続である霞堤は,堤防のすき間をとおしてまちと川との近しい関係を創出すると仮定された。その解明への第一歩として,国内48水系296箇所の霞堤における土地被覆と土地利用が航空写真と地図によって把握された。公園緑地として利用されていることの確認された38箇所については,主体とする施設に違いはあるものの,それらの施設利用を目的とする来訪者が堤防のすき間にいる可能性が指摘された。そのうち13箇所については,堤防のすき間にある公園緑地が堤内地側の市街地や集落と堤外地とを空間的につないでいる可能性も示唆された。本調査では把握することのできなかった川に対する可視性や接近容易性の検証が今後の課題として挙げられた。
著者
新保 奈穂美
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.338-340, 2020-12-04 (Released:2022-06-08)
参考文献数
14

空き地の農的利用はその様々な機能から、有望な土地活用方法のひとつである。こうした住民主体の緑地管理は、予算やアイデアの不足に直面している自治体にも利点がある。ただし都市の農は形態が多様であり、各事例に適したガバナンスを見つけることは難しい。そのため、関係者が適当なモデルを見つけるために、事例調査の蓄積が必要である。本稿は、東京都墨田区の空き地にNPO法人が開設したコミュニティガーデンの設立経緯と運営方法に関する調査結果を報告する。インタビューと資料調査の結果、人の交流を生み出すため伝統野菜を育てる農園が開設され、自治体の補助金を受けるためにNPO法人格を取得したことがわかった。また、NPO法人格は固定資産税の問題の解決にも役立つ可能性がある。このように、NPO法人はコミュニティガーデン運営の経済的安定性の面で利点があると考えられる。
著者
野中 勝利
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.168-175, 2016-12-07 (Released:2022-06-08)
参考文献数
88
被引用文献数
2

本論文は、御料地だった明石城址を兵庫県が宮内省から借用して公園にしたことを対象として、その評価と政策的位置づけを明らかにした。公園整備の予算案を審議した兵庫県会では公園の開設に対する反対意見があった。予算案は減額されたが可決された。御料地として閉ざされた空間だった明石城址が公園として開放されることを明石町民は歓迎した。地元新聞は当初、公園化の構想に賛意を示す一方、さらに詳細な検討を促した。しかし公園整備が進み開園式を間近にすると、他の歴史的庭園以上の公園になったと高く評価した。公園を設計した長岡安平は日本一の名園になったと自賛した。兵庫県に開園式後に公園整備を本格的に進めた。この公園整備は、清野長太郎知事が積極的に取り組んだ社会政策の一つに位置づけられる。
著者
林 真木子 高見沢 実
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.82-85, 2004-11-28 (Released:2022-09-01)
参考文献数
13

本研究では今後必要とされるであろう中心市街地活性化事業における評価手法に着目し、日本における現状・中心市街地活性化の先進事例であるアメリカ・イギリスでの評価手法を調査することにより、今後、わが国において評価手法を本格的に導入する際の一知見となることを目的とする。特に評価手法の活用方法が興味深いイギリスTCMの事例をについて詳しく調査を行った。TCMでは客観的なデータに基づいたKPIs(主要達成度指標)が評価手法として使われている。その導入目的は、資金獲得とマネージメントツールとしての利用の2点である。活用面の特徴としては、データ収集面の重視などが挙げられ、指標自体の特徴としては量だけでなく質も評価できる指標を採用していることなどが挙げられる。
著者
大島 英幹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.14-17, 2018-06-08 (Released:2022-06-08)
参考文献数
10

本稿では、2022年度からの高等学校必修科目「地理総合」の中で行われる、生活圏の地理的な課題解決の学習について、学習指導要領などにより現時点で明らかになっている情報を整理した。さらに、このような学習が、まちづくりに参加する大学生の技能向上やまちづくり市民活動の活性化、まちづくり合意形成の促進などをもたらす可能性を展望した。また、指導する高等学校教員自身に生活圏の地理的な課題解決の経験が少ないため、まちづくりや都市計画の専門家がこのような学習に対して支援する必要があり、学会や関係官庁が専門家の協力を得て支援を行うことが考えられることを示した。
著者
今津 海 大西 春樹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.98-101, 2022-09-09 (Released:2022-09-09)
参考文献数
14

本研究は、『「都市経営論」の学問的意義に関する基礎的研究』の第2報である。前稿では、各種先行研究を概観しながら、「都市経営論」の基本目標や特性などを導出した。本稿においては、「都市経営論」の類似概念の一つである「地域経営論」を取り上げ、その概要を整理した上で、「都市経営論」と「地域経営論」の関係性について検討することを目的としている。検討の結果として、「都市経営論」と「地域経営論」の間には多くの共通点が見出せる一方で、両論が対象としている空間的領域には大きな差異があることが示唆された。
著者
山内 彩加 土屋 一彬 大黒 俊哉
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.338-342, 2016-03-04 (Released:2022-06-08)
参考文献数
9

都市部のムクドリの集団ねぐらは、糞害や騒音などの多様な社会問題を起こしており、これまでの追い払いなどの一時的・局所的な対策ではその解決に到っていない。本研究は、東京都区部のムクドリの集団塒と周辺土地利用の関係を明らかにすることで、長期的・広域的な対策のための生態学的な観点からの基礎的知見を得ることを目的とした。その結果、集団ねぐらは2ha以上の大規模緑地から200m-300m程度の範囲に存在し、実際に就塒前にそうした大規模緑地を利用していることが明らかになった。また、集団ねぐらは、開放的な場所の木立か、駅前など高層建築物に囲まれた場所のいずれかに存在する傾向がみられた。
著者
棚橋 結花 岡崎 篤行
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.290-293, 2020-12-04 (Released:2022-06-08)
参考文献数
7

花街は日本の文化をソフト・ハード両面から包括的に継承している稀有な場であり、近年ではその価値が再評価されつつある。向嶋花街は芸妓数が東京の花街において最多であり、東京大空襲を逃れた昭和初期の料亭が現存している。本研究では向嶋花街を対象に関東大震災以前の1921年頃、戦前であり最盛期の1935年頃、戦後直後の1953年頃、衰退過程の1968年頃、現時点の2019年の5時点での花街建築の業種毎の分布とその変遷を明らかにする。主な結論としては、1)花街建築の集積する場所は1921年頃から変化していないこと、2)昭和後期以降に料亭の営業形態が茶屋型から料理屋型中心に変化したこと、3)向嶋花街では現在、他の東京の花街と異なり、昭和後期以降に新しく組合に加盟した料亭が多いことが挙げられる。
著者
中村 英慈 久保 有朋 岡崎 篤行
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.39-44, 2020-06-08 (Released:2022-06-08)
参考文献数
15

花街は日本の文化をソフト・ハード両面から包括的に継承している稀有な場であり、近年ではその価値が再評価されつつある。赤坂花街は、明治期には多くの陸軍や政界の客が利用する等、東京都内では新橋と並び特に格式の高い花街として知られていた。本研究では赤坂花街の戦前の最盛期である1933年頃、戦後の最盛期である1955年頃、衰退が始まる直前の1965年頃、衰退過程である1988年、現時点の2019年の5時点での花街建築の業種毎の分布とその変遷を明らかにする。主な結論として、花街建築の集積する場所が1933年以来変化していないこと、昭和末期以降に料亭の営業形態が茶屋形態から料理屋形態中心に変化したこと、置屋の大半がいずれの年代においても路地沿いに分布していたことが挙げられる。
著者
近藤 紀章 松本 邦彦 石原 凌河 笹尾 和宏 竹岡 寛文 中野 優
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.448-455, 2022-03-03 (Released:2022-06-08)
参考文献数
95

本論では、文献から「散歩」に関する研究の拡がりを明らかにするために、都市空間や都市デザインとの関係性の観点から95編の文献を整理した。散歩の定義や目的として、実社会の要請に応えるために「都市活動」が定着した時期が転換期といえる。また、研究の拡がりとしては、人を対象とした研究は蓄積されているものの、空間や文献を対象とした研究、時系列比較や国際比較の研究の蓄積が少ない。目的を持って歩くことが実際の都市空間に適用されることで、「いかに人を(より)歩かせるか」という計画の視点が組み込まれている。しかし、「人はなぜ無目的に歩くのか」という原論が求められた初期の方が、自由で大胆な発想が、散見された傾向がある。
著者
中野 卓 木内 望
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.324-329, 2020-12-04 (Released:2022-06-08)
参考文献数
15

我が国では昨今、集中豪雨等の影響で河川水害が頻発しており、水害に強いまちづくりのあり方が模索されている。こうした検討の参考情報として、本稿では、本邦の水害事例が網羅的に整理された唯一の統計資料である水害統計調査のうち、26年間分の基本表データを用いて、過去の河川水害による家屋・市街地等被害の傾向を分析し、その特徴を明らかにした。分析の結果、大都市では内水被害が中心で、地方都市では外水被害が中心であること、さらに建物被害の約8割が床上50cm未満の浸水被害であり、建築的工夫で水害に対応可能な被害程度であることが明らかになった。
著者
吉田 泰寛 吉川 徹
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.50-56, 2021-06-08 (Released:2022-06-08)
参考文献数
9

本研究は、私鉄の駅前の広告物の色彩には沿線ごとに傾向があり、また開業年や乗降客数などの駅特性にも影響を受けるのではないかとの仮説を検証することを目的とした。このため、京王相模原線、東武東上線、小田急多摩線を対象として、色彩と駅特性の関係を、判別分析とクラスター分析によって検討した。結果として、沿線ではなく都心部からの距離によって、またターミナル駅より都心側か郊外部側かによって、色彩が大きく異なっていた。
著者
萩原 和
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.317-323, 2018-12-07 (Released:2022-06-08)
参考文献数
6

本研究では、自治体主導で継続実施している地域人材育成プログラムの受講者および卒業生の特性を把握するとともに、その違いを生じさせた要因を分析する中で、今後のプログラムづくりの基礎的データを得ることを目的とした。具体的は、対象者に対してアンケート調査を実施し、そこで得られたデータを階層クラスター分析によって、4つの所属クラスターに分類した。次いで、提供カリキュラムの時期(全8期分は、大きく3つのタームに分類)と所属クラスターとの連関を分析した。この結果、同プログラムのコンテンツは、3つのタームごとに大きく異なることが示された。加えて、卒業生・受講生の地域活動に対する振舞いや反応は、タームによって異なることも示唆された。