著者
又吉 康綱 中村 聡史
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1_55-1_71, 2022-01-25 (Released:2022-03-25)

大学で開講される初年次必修プログラミング教育では,TAが必要不可欠である.対面講義でもあった積極性を発揮できず質問できない受講生の問題は,COVID-19の影響により大学の講義がオンラインになったことで,より大きな問題となっているといえる.また,それに加え質問の順番待ちや質問対応などの制御や,TAにとって質問に対応できるだろうかという精神的な負荷も大きな問題となりうる.そこで本研究では,受講生の質問へのハードルを下げつつ,TAの精神的負荷も軽減するため,受講生がTAに直接質問をするのではなく,受講生はシステムに対して質問を行い,またTAは質問を事前に確認し,対応可能な場合に呼び出しして入室を促す手法を提案し,実装した.また,実際のオンライン講義で計1600分運用し,受講生およびTAから高い評価を得ることができた.
著者
二村 良彦
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.343-351, 2004-09-28 (Released:2009-04-27)

インタープリタを用いて形式的に記述されたプログラミング言語のセマンティクスと現実のコンパイラとの関係およびインタープリタからコンパイラを自動的に作成する方法について述べる.この方法は計算過程の部分評価の一種である.この方法を応用してできるコンパイラ・コンパイラと既存のコンパイラ・コンパイラの相違は,プログラミング言語のセマンティクスを記述するさいに,既存のものが翻訳過程を記述しなければならないのに対して,本方式によるものは評価手順を記述すればよいことである.
著者
佐藤 健
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.3_36-3_44, 2010-07-27 (Released:2010-09-27)
被引用文献数
5

筆者は,論理に基づく人工知能の法学への真の応用を求めて,東大法科大学院に2006年から3年間在学し,そこで法律に関する知見を得た.本稿では,その知見とこれまで20年にわたり研究してきた人工知能における論理の研究を融合させた結果について概観するとともに,今後の有望な研究テーマについて述べる.
著者
小林 隆志 林 晋平
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.3_13-3_23, 2010-07-27 (Released:2010-09-27)

本論文では,多量のソフトウェア関連データを用いたソフトウェアの構築・保守支援手法及びそのために必要なデータマイニング技術の動向を,既存の研究を概観しつつ紹介する.
著者
山本 雅基 小林 隆志 宮地 充子 奥野 拓 粂野 文洋 櫻井 浩子 海上 智昭 春名 修介 井上 克郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1_213-1_219, 2015-01-26 (Released:2015-02-11)

本論文では,協働教育の教育効果を測定するための新しい手法について提案して,実証評価する.分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワークenPiTでは,全国の大学院生に対して,情報技術の実践力を高める教育を実施している.実践力の育成を目的とする教育協働における教育効果の測定には,2つの課題が挙げられる.第一に,実践力は専門知識の定着を問うテストでは測定困難である.第二に,履修カリキュラムが異なる受講生を共通の指標で評価することも困難である.本論文では,学習経験を問う質問紙と行動特性を計測するテストを併用することにより,履修カリキュラムが異なる受講生の実践力を統一の基準で評価する手法を提案し,enPiTで実証評価した.
著者
川俣 楓河 寺内 多智弘
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.2_19-2_48, 2023-04-21 (Released:2023-06-21)

代数的エフェクトとハンドラとは,プログラム中のエフェクトの発生を抽象化してその動作をハンドラで定義するものであり,実装が分離されることでエフェクトを含むプログラムを見通し良く書くことができる.トレースエフェクトとは,プログラムの実行中に生じるイベントの発生順の列を静的に見積もったものであり,プログラムの時間的な性質の検証を可能にする.本論文では,代数的エフェクトハンドラとトレースエフェクトを共に備えることで,代数的エフェクトハンドラのエフェクト実装分離の利便性を享受しつつプログラムの時間的な性質を捉えることのできる型・エフェクトシステムを提案する.また,この体系の型安全性,すなわち正しく型付けされた項の評価は行き詰まらず,かつ型付けで得られたトレースエフェクトはその項の評価で発生し得るエフェクト列を保守的に見積もることを示し,さらにこの体系に対する健全性を満足する型推論を構築する.
著者
伊奈 林太郎 五十嵐 淳
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.2_18-2_40, 2009-04-24 (Released:2009-06-24)

静的型システムと動的型システムの両者の利点を活かす枠組みとして,SiekとTahaは漸進的型付けを提唱している.漸進的型付けでは,型宣言された部分のみ静的型検査が行なわれ,残りの部分については実行時検査が行なわれる.これにより,当初型を付けずに書いたプログラムに型宣言を徐々に付加し,静的型付けされたプログラムを完成させることができる.本研究では,漸進的型付けをクラスに基づくオブジェクト指向言語で実現する理論的基盤として,Igarashi, Pierce, Wadlerらの計算体系Featherweight Java (FJ)に動的型を導入した体系FJ?を定義し,型付け規則を与える.さらにFJ?からFJにリフレクションを加えた体系への変換を定義することで意味論を与え,静的に検査した部分の安全性が保証されることを示す.
著者
栗原 一貴
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.4_293-4_304, 2012-10-25 (Released:2012-11-25)

本論文では動画を高速に鑑賞する技術について検討する.映画DVDなどで一般的である字幕付きの動画を対象として,字幕のない箇所は高速再生し,字幕のある箇所については字幕を読むことが可能なように再生することで,鑑賞の娯楽的価値を保ちつつ鑑賞時間を通常よりも短時間にすることを可能にする.さらに高速鑑賞時の負荷軽減のための字幕表示インタフェースとしてセンタリング,フェーディングを実装する.また再生速度,文字読み速度,総鑑賞時間の指定により動画を出力でき,モバイル機器などの一般的な動画プレイヤーで再生可能なフォーマットに変換可能な汎用性の高いエンコーダを実装および公開し,評価実験により有効性を示した.
著者
伊藤 孝行
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.4_20-4_32, 2008-10-28 (Released:2008-12-31)

計算論的メカニズムデザインは,分散された個人情報を持つ自律的意思決定主体(エージェント)の社会的決定と,計算量や通信コストといった計算機科学の概念を同時に扱う新しい分野である.ミクロ経済学やゲーム理論の概念及び知識と,マルチエージェントシステムや計算機科学の概念及び知識が必要となる.さらに,計算論的メカニズムデザインは,理論からダイレクトに応用が可能な分野の一つである.本解説では,古典的メカニズムデザインの基本概念を概説した後,組合せオークションなどの計算論的メカニズムデザインの基本問題を解説する.その後,現在,計算論的メカニズムデザインの分野で注目されている課題やテーマについて紹介する.
著者
千葉 滋
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1_40-1_54, 2022-01-25 (Released:2022-03-25)

日本ソフトウェア科学会の論文誌でもあるコンピュータソフトウェア誌の査読・編集作業では,2017 年より編集作業を支援する web アプリケーションを利用している.これは当時,同誌の編集委員長であった著者が作成したものである.本論文は,国際会議用の既存の査読システムでは論文誌の査読支援には不十分であることを述べ,論文誌の査読支援のために開発した web アプリケーションの設計概要を示す.
著者
大西 主紗 志築 文太郎 田中 二郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1_78-1_90, 2016

大型のタッチ画面を備える携帯情報端末(以降,大端末)を片手にて操作する場合,その大きさゆえに指が届かず,操作が困難な画面領域が存在する.この時ユーザは片手のみを用いて端末の把持姿勢を変えるという煩雑な動作を行う必要があり,不安定な把持及び端末の落下の原因となる.そこで我々は,大端末向けの安定した片手親指操作手法であるTouchOverを示す.TouchOverは画面下部にて発生したタッチイベントを画面上部に転送する.画面上部に対するTouchOverと画面下部に対する直接操作とを使い分けることにより,大端末に対する安定な操作,すなわち片手親指のみを用いた持ち替えを必要としない,画面の全領域に対する操作を実現する.本稿においては,操作の切り替えにホームボタンのダブルタップを用いることにした.この動作の検出のため,我々はAndroid端末におけるホームボタンのダブルタップを検出するウィジェットを作成した.提案手法の評価を行うため,我々はTouchOverのプロトタイプをAndroidアプリケーションとして実装した.本稿ではプロトタイプを用いた使用例及び,性能評価のために行った比較実験の結果を示す.
著者
関 浩之 鯵坂 恒夫
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.3_61-3_69, 2011-07-26 (Released:2011-09-26)

ソフトウェアサイエンスになじみ深い形式言語理論の枠組みであるチョムスキー階層をあらためて探検する.文法の記述の方法および4つの文法クラス間の隙間に注目し,とくに機械と人間(生物)の間を攻めるともいえる弱文脈依存文法についてはやや詳しく解説する.