著者
冨田 寛
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.28, no.11, pp.1224-1229, 1992-11-01 (Released:2018-08-26)
被引用文献数
2
著者
山口 賀章
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.255, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
2

2017年のノーベル生理学・医学賞は,概日リズムを制御する分子機構を明らかにしたHall,Rosbash,Youngの3人に授与された.彼らの研究を発端とし,24時間周期の概日リズムが,地球の自転による明暗変動ではなく,生体の個々の細胞が持つ時計遺伝子により主体的に形成されることがわかってきた.概日リズムの分子機構は,植物,昆虫,ヒトと進化上,高度に保存されており,ほ乳類では転写活性化因子であるCLOCKとBMAL1のヘテロダイマーが,PerやCry遺伝子のE-box配列に結合し転写を活性化する.翻訳されたPERやCRYタンパク質は,核へと移行しCLOCKとBMAL1による転写を抑制する.この結果,PerやCryの発現量はリズム性を示す.また,時計遺伝子のノックアウト(KO)マウスは,概日行動リズムに異常を示す.例えば,常時消灯下でのCry1とCry2それぞれのKOマウスの概日行動リズムは,短周期および長周期となり,ダブルKOマウスでは概日リズムは消失する.このように,培養細胞や遺伝子改変動物を用いて,概日リズムの分子機構やその生理的意義は広く研究されてきた.しかし,ヒトのリズム異常を対象とした研究はあまりなされていなかった.本稿では,ノーベル賞受賞者の1人であるYoungらによる,ヒトCRY1遺伝子の変異に基づく睡眠障害を報告した論文を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Brown S. A. et al., Dev. Cell, 22, 477-487(2012).2) Patke A. et al., Cell, 169, 203-215(2017).
著者
大谷 悠介 関 貴洋 梅野 太輔
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.658-661, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
12

二次代謝経路(天然物経路)は生理活性と新規酵素の宝庫であり,リデザインも容易である。一方で,これを一次代謝に匹敵する馬力で高度に運転するためには,多くの新しい工学的努力を要する。本稿では,筆者たちのテルペノイド合成経路の進化工学の経験をもとに,天然物生合成経路の高効率運転を目指したリデザイン技術のあり方について議論する。
著者
佐藤 玄 王 超 内山 真伸
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.684-688, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
10

天然物の巧みな『ものづくり』の仕組みを解き明かし、目的に応じて生合成経路を人工改変することができれば、有機化学・天然物化学における学理・学術的な成果としてはもちろん、創薬・物質科学に強力なツールをもたらすに違いない。本稿では、最近当研究室で取り組んでいる「計算化学的手法を基盤とした未解明生合成経路の探索」について紹介する。
著者
白石 太郎 葛山 智久
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.679-683, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
23

天然物は人知を超えた幅広い多様性と生物活性を有している。近年、次世代シーケンサーの発展により微生物のゲノム解析が数多く報告されるようになるとともに、微生物が生産する天然物からの医薬品探索・開発研究の手法も大きく変化してきている。本稿では近年の天然物探索手法の展開と天然物生合成研究の意義・展開について述べる。
著者
渡辺 賢二
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.674-678, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
11

現代においても新たな新規天然物を取得することの学術的, 産業的な重要性は不変である. このような状況の下, 天然物の生合成遺伝子を用い新規天然物の獲得を目指す,融合研究分野である「シンセティックバイオロジー(合成生物学)」による取り組みが行われている. 本稿では, 休眠型生合成遺伝子クラスターの活性化および天然物生合成遺伝子の異種発現系による新規天然物生産と生合成機能解析への挑戦について解説する.
著者
後藤 佑樹 井上 澄香 菅 裕明
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.662-667, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
11

ペプチド性天然物によく見られる非タンパク質性骨格をもったペプチドは、医薬品シーズとして高い利用価値を秘めている。本稿では、ペプチド性天然物の一種として知られるribosomally synthesized and post-translationally modified peptide(RiPP)の生合成経路を人工的に改変し、非タンパク質性骨格を含有した人工ペプチドを生産する方法論について概説する。
著者
池田 治生
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.655-657, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
10

Avermectin生産菌のゲノム解析から当該生産菌のゲノムを改変し、異種由来の生合成遺伝子群の発現、生成機構および遺伝子発現調節機構などの解析に適切なモデル宿主を構築した。作製した異種発現系では多くの異種生合成遺伝子群の発現を確認するとともに休眠生合成遺伝子群の覚醒による新たな物質生産やポリケチドやペプチド化合物の生合成過程における重要な修飾系を評価することが可能となった。
著者
松田 研一 倉永 健史 脇本 敏幸
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.650-654, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
9

環状ペプチドは生物活性天然物に数多く見られる骨格であり、大環状化によって消化酵素による分解を免れ、膜透過性や標的分子への特異性が向上する。環状ペプチド生合成における環化酵素はこの大環状化反応を極めて効率的に触媒する。我々が見出した非リボソーム型ペプチド生合成における新しい環化酵素は2つの異なる鎖状ペプチドを環化するため、広い基質特異性を有し、ペプチド大環状化生体触媒としての応用が期待できる。
著者
阿部 郁朗
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.645-649, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
9

ゲノムマイニングにより様々な天然物の生合成遺伝子を取得し、その生合成系を再構築することで物質生産が可能となりつつある。次のブレークスルーは、この生合成マシナリーを如何に活用するかという点であり、生合成の「設計図を読み解く」から、さらに「新しい設計図を書く」方向に飛躍的な展開が求められている。合成生物学は、クリーンかつ経済的な新しい技術基盤として、広く有用物質の安定供給を可能にするため、資源が枯渇しつつある現代にあって、ますます重要になる。
著者
及川 英秋
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.7, pp.635, 2019 (Released:2019-07-01)

医薬品として注目を集めてきた天然物の生合成は、従来とは異なった天然物供給法として脚光を浴びている。設計図を用いた天然物の合成法の現況と今後の展望を紹介する。
著者
鈴木 嘉治
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.817, 2018 (Released:2018-08-01)
参考文献数
4

抗がん薬誘発性の悪心嘔吐は,担癌患者に苦痛を伴わせ,患者のquality of lifeや治療への参加意志を損なうものである.多くの臨床試験により,コルチコステロイド,5-HT3受容体拮抗薬,NK1受容体拮抗薬およびオランザピンが抗がん薬誘発性の悪心嘔吐の制御に有用であることが示されてきたものの,その制御は完全には克服されておらず,現在でも多くの検証研究が進行中である.サリドマイド(thalidomide:THD)が多様な薬理効果を示すことは既知であるが,近年では抗がん薬誘発性の悪心嘔吐に対する制吐薬としての有用性が示されつつある.そこで本稿では,高度催吐性リスク抗がん薬の投与を受けた患者における遅発期(抗がん薬投与25〜120時間後)の悪心嘔吐の制御を目的として,THDを制吐薬として併用した場合の効果および安全性について第3相試験により検証したZhangらの研究を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Sommariva S. et al., Crit. Rev. Oncol. Hematol., 99, 13-36(2016).2) Rojas C. et al., Eur. J. Pharmacol., 684, 1-7(2012).3) Navari R. M. et al., N. Engl. J. Med., 375, 134-142(2016).4) Zhang L. et al., J. Clin. Oncol., 35, 3558-3565(2017).
著者
中村 恵美子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.706-708, 2018

(株)リボミックはアプタマー医薬の研究開発を専門とする、東京大学発のバイオベンチャーである。一本鎖の核酸であるアプタマーは、それ自体で様々な形を作り、疾患の原因となっているたんぱく質などの分子に結合し、その働きを阻害することで疾患を治療する。本稿では、当社技術の概要をご説明するとともに、現在、加齢黄斑変性症等を適応症として治験の準備を進めているRBM-007についてご紹介する。
著者
三浦 恭子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.225-227, 2017

ハダカデバネズミ(naked mole-rat, <i>heterocephalusglaber</i>, デバ)は,その名の通り裸で出歯のげっ歯類である(実はよく見ると感覚毛と呼ばれる毛がまばらに生えている)(表紙写真).自然下ではエチオピア・ケニア・ソマリアの地下に,数十~数百匹の集団で生息する.ガス交換が乏しく気温が安定している地下トンネルで暮らしており,トンネル内の位置によってはかなりの低酸素(~7%)かつ高二酸化炭素(<10%)環境になる.デバは視覚が退化しており,ヘモグロビンの酸素親和性が高く,また電位依存性ナトリウムチャネル(Nav1.7 voltage-gated sodium channel)の変異により酸への非感受性を示すことが報告されている.また,体の恒温機能はほとんど失われており,外温性で低体温(約32℃)である.研究室ではアクリルボックスをパイプで複数連結したケージを用い,温度30℃・湿度60%に調節された通常大気下で飼育を行っている.自然下では根茎を食べているが,実験飼育下ではイモ・ニンジン・リンゴ・オートミールなどを与えている.<br>デバは「真社会性」と呼ばれる分業制の社会を形成することで知られている.真社会性とは,昆虫のアリ,ハチ,シロアリなどでみられる,2世代以上が共存し繁殖個体とその繁殖を手伝う不妊個体から成る社会形態を指す.現在確認されている真社会性ほ乳類は,デバと近縁のダマラランドデバネズミだけである.コロニー内で繁殖を行うのは1匹の女王と1~3匹の王のみで,その他の個体は,生殖機能が未発達なままワーカーやソルジャーとして巣内の仕事に携わる.女王化のメカニズムは,現在のところほとんど分かっていない.我々は,MRIを用いたデバ三次元脳アトラスの作製を行い,ワーカーが女王になる際の脳内変化について解析を進めている(関ら,未発表).
著者
池田 幸弘
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.256-257, 2017

名鉄名古屋駅から犬山線,犬山駅からは広見線に乗り継いで新可児まで行き,そこからさらに御嵩行ワンマン列車に乗り込み,のどかな田園風景に見とれていると間もなく明智駅に到着した.無人駅のため運転手さんに切符を手渡して下車し,ちょうど駅前に停車しているバスに乗り込んだ.バスはこの先の名鉄八百津線が2001年に廃線となったため,代替として運行されている.ここまで来るとすっかり小旅行の気分になってしまっているが,弾む気持ちをおさえながら元役場前にて下車した.