著者
石井 隆太 小野 晃典
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.109-119, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
14

漆器は,陶磁器やガラス食器などと並ぶ,日本における伝統的な食器類の一種であるものの,その需要の多くは外食業やサービス業向けの業務用に偏り,消費者用漆器は高価な工芸品に留まっているという,他の種類の食器類にはないイビツな商品構成によって特徴づけられてきた。この2種類の漆器のうちの1つである業務用漆器の一大産地,福井県鯖江市の河和田地区において,漆器に漆を塗る職人の家庭内手工業者として創業二百年の老舗である漆琳堂は,近年,普段使いの消費者用漆器を新たにデザインし,新たな販路を開拓した上で,それをいくつかの新規ブランドの下で販売することによって,消費者用漆器の巨大な新市場を創造することに成功している。本論は,その成功要因は,デザイン会社との提携,直販チャネルの構築,そして何より,漆琳堂社長で伝統工芸士の内田氏の企業家精神に存するということを論じる。
著者
杉本 宏幸
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.90-98, 2007-03-31 (Released:2021-07-16)
参考文献数
90
被引用文献数
1 1
著者
藤井 誠 関 隆教
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.72-84, 2022-01-07 (Released:2022-01-07)
参考文献数
31

本研究では,(1)どのような状況において現場従業員のクリエイティビティは顧客満足に負の影響を与えるのか。(2)現場従業員のクリエイティビティが顧客満足に与える負の影響はどのような要因によって緩和されるのだろうか,という2つの研究課題を設定した。研究課題を明らかにするために,初回利用の状況に着目し,調査会社のモニターを対象に,ヘアサロンをコンテクストとする場面想定法実験を行った。分析の結果,初回利用の場合,サービス組織の現場従業員のクリエイティビティは顧客満足に負の影響を与えるという仮説は支持された。しかし,類似性は初回利用時におけるサービス組織のFLEsのクリエイティビティとCSの負の関係を緩和するという仮説については支持されなかった。最後に,分析結果を踏まえた実践的示唆と今後の課題について示した。
著者
小野 晃典 菊盛 真衣
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.22-37, 2018 (Released:2020-01-24)
参考文献数
26

イノベーション普及論の分野における有名な古典理論において,早期に採用した消費者はいまだ採用していない消費者に対して正の口コミを発信するというテーゼがあるが,これに対して,近年,消費者はしばしば高い独自性欲求を有しており,そのような場合には,正の口コミ発信は控えられ,その結果,普及は生じない,という主張が展開されるようになった。しかしながら,この主張は,独自性欲求を一次元的にとらえた上で展開されている点に問題を抱えている。本論は,独自性欲求を三次元に分類した上で,正の口コミを抑制する効果を有するのは特定の種類の独自性欲求のみであり,独自性欲求の高い消費者が必ずしも正の口コミ発信を控えるとは限らないと主張する。
著者
小野 譲司
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.20-34, 2010-06-30 (Released:2021-03-18)
参考文献数
22
被引用文献数
5 4
著者
宮澤 薫
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.99-111, 2007-03-31 (Released:2021-07-16)
参考文献数
49
被引用文献数
1
著者
近藤 公彦 中見 真也 白鳥 和生
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.16-28, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
32

デジタル・トランスフォーメーションとコロナ禍という劇的な環境変化は,消費者行動と小売業にきわめて大きな影響を及ぼし,ニューノーマル時代に適応した新たな小売ビジネスモデルの構築が求められている。この論文では,まずデジタル・トランスフォーメーションが小売業をどのような方向に進化させようとしているのか,ならびにコロナ禍が小売業の活動をどのように激変させたのかを主要な文献を通じて概観する。次に,そうした要因が消費者行動をどのように変え,またどのような小売業の新しい取り組みを促しているかを博報堂生活者総合研究所,経済産業省,アクセンチュア等による消費者調査,およびビームス,カインズ等の小売業のトップマネジメントへのインタビューを通じて明らかにする。こうした議論を踏まえ,ニューノーマル時代の小売業の新しいビジネスモデルをネオリテールと名づけ,その全体像を顧客関係性(顧客識別性,ターゲット設定,タッチポイント,顧客関係ボンド),価値の創造と提供(提供価値,方向性,店舗の役割と位置づけ),活動システム(商品供給システム,業務システム,組織内・組織間関係),および収益フォーミュラの観点から提示する。
著者
赤松 直樹 福田 怜生
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.53-64, 2020-09-29 (Released:2020-09-29)
参考文献数
23

本研究では,ある選択がその後の選択に及ぼす影響の調整要因について議論した。逐次選択は,複数の選択間における選択行動であるが,既存研究では調整要因として消費者特性などが主に議論されており,各選択の関係については十分な議論がなされてこなかった。そのため,本研究は調整要因として各選択の関連性に着目し,消費者特性である健康意識との交互作用を考慮しながらその働きについて分析した。その結果,健康意識が高い消費者は,健康状態の維持に関する目標と美味しいものを食すことで快楽を得るといった目標の間でコンフリクト状態にあることが想定でき,事前選択でどちらか一方の目標を進展させると,その後の選択では進展がなされていないもう一方の目標に対応した選択を行う傾向が示された。そして,この傾向は各選択の関連性が高い場合に生じる点も確認された。これらは逐次選択の影響が生じる条件に関する新たな知見であると言える。
著者
西原 彰宏 新倉 貴士
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.46-59, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
13

デジタル変革により流通機能の脱構築が進行している。これを受けた小売現場では,多様な流通ビジネスモデルが展開されている。こうしたビジネスモデルを背後に,消費者には様々な機能を兼ね備えたモバイルアプリが提供されている。消費者に提供される製品カテゴリーの総合性と提供される機能の統合性を軸にすると,多様なモバイルアプリの競争的な類型化が可能になる。マス・マーケットを対象とすると,製品カテゴリーの総合性と機能の統合性を高く保持するリーダー型のモバイルアプリの存在が見いだせる。逆に個のマーケットを対象とすると,それらの軸の逆方向に,市場特化型のモバイルアプリと機能特化型のモバイルアプリが見いだせる。本稿では,それぞれの流通ビジネスモデルを反映するモバイルアプリの競争類型を念頭におき,モバイルアプリに期待される買物のスマートさと買物の楽しさを中心にモバイルアプリの利用実態とその認識に関する調査結果を報告する。
著者
香川 勇介 真野 俊樹
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.37-50, 2017-01-10 (Released:2020-03-31)
参考文献数
39

本論文の目的は,医療サービスにおける予防的コミュニケーションの成功要因を整理し,実証分析のための枠組みを作ることである。予防的コミュニケーションに関して関連する理論を渉猟して検討した結果12の仮説が得られた。そのうちの3つの仮説に対して探索的に実験を行った。結果として,①セルフ・エフィカシーを高められるメッセージであればあるほど,予防的コミュニケーションは成功しやすい,②セルフ・エフィカシーを高めるメッセージの場合,ゲイン・フレームより,ロス・フレームのメッセージが有効である,③セルフ・エフィカシーを高めるメッセージの場合,ゲイン・フレームより,ロス・フレームのメッセージの方が,行動変容ステージを促進しやすい,が支持された。医療サービスにおける予防的コミュニケーション成功のためにセルフ・エフィカシーを高めることの有用性が示唆された。
著者
今井 紀夫
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.89-99, 2021
被引用文献数
1

<p>昨今のデジタル技術の進化と普及により,これまでにない量や形式のデータが生成され,それらを分析するためのAIや基盤技術をマーケターは活用できるようになった。金融事業から出発したSBIグループでは,その機会を活かしてグループ会社間のシナジーによる価値創造を実現するために,2012年にグループの持株会社であるSBIホールディングス株式会社の社長室直下にビッグデータグループを設けた。このグループはデータ基盤整備やグループ会社のデータ活用能力向上などの様々な施策に取り組み,グループ全体の顧客基盤の成長などに見られる通り,成果に貢献してきた。その成功要因として,従来の情報システム開発と分けてのデータ基盤整備,システム導入ではなく価値創造を目的としてのリソースの確保,グループ横断での会議や勉強会開催によるノウハウ共有や各部門の課題把握,ワークショップなどによる社員のデータに基づく意思決定への意識改革の支援,更にこれらを支える経営陣のコミットメントが示唆された。</p>
著者
藤崎 実 徳力 基彦
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.5-26, 2015
被引用文献数
1

<p>ソーシャルメディアの普及と発展はインターネット上に消費者発信による大量の情報を生み出した。それは従来おこなわれてきたマスメディアを活用したリーチを重視したマーケティングコミュニケーションの世界に対して,ユーザーやファンによるクチコミを通じた新しいコミュニケーションの可能性を生みだしている。<br>本稿では,このような環境変化のなかで,自ら積極的に商品,サービス,企業やブランドについて情報を発信したり語ったりする新しいタイプの顧客に注目する。<br>そして,その新しいタイプの顧客を見つけだし,企業が公認し,積極的にクチコミをしてくれる発信力のある顧客を「アンバサダー」と定義し,企業が実際の顧客であるアンバサダーと一緒になって永続的に企業のマーケティング活動をおこなっていく活動について論じる。<br>またその際のクチコミには,従来のマス広告を通じたコミュニケーションに対してどのような違いや可能性や課題があるのか,さらにアンバサダーのクチコミには広告価値がある,ということの検証方法について論じたい。</p>
著者
池尾 恭一
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.6-15, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
43

新型コロナウィルス感染症の流行は,日本のマーケティングのあり方にも大きな影響をもたらした。激変する環境のなかで,マーケティング戦略をいかに適応させていくかは,マーケティング研究,マーケティング実務の双方にとって,きわめて重要な課題である。しかも,今回の新型コロナ危機がマーケティングに及ぼす影響は,それにとどまらないであろう。生活様式や購買行動の変化に不可逆的な部分が含まれるならば,長期的には,マーケティングのあり方を抜本的に変えてしまいかねない可能性も秘めている。本稿は,そうしたなか,新型コロナ危機のなかで広がった,オンライン商談,D2C,オムニチャネルに焦点を当て,これらの動きが,流通チャネル政策を通じて,将来に向けてどのような戦略課題をもたらすかを明らかにしようとするものである。