著者
小形 美樹
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.20-32, 2013-03-31 (Released:2017-03-24)

東日本大震災では組織も個人も多くの記録を失った。しかし、組織の場合は何らかの形で完全とはいえないまでも記録を復旧することが可能であった。一方、個人の多くは自分に関する記録を管理しておくという習慣がなく、震災後に記録を作成・管理することの重要性や必要性に気づかされた。本稿では、東日本大震災の事例を踏まえつつ、個人記録の管理の重要性と課題について述べる。
著者
渡邊 健
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.69-83, 2018

<p> 2017年6月、「東京都公文書の管理に関する条例」が制定され、翌7月に施行された。同条例は何をきっかけとして、どのような過程を経て制定されたのか。先行して公文書管理条例を制定している地方公共団体の事例に照らして考察した。東京都の場合、豊洲問題という不祥事を契機として、小池百合子都知事のリーダーシップの下、条例化が進展した。その制定過程について、都に対する情報開示請求の結果得られた文書を中心に、「条例案の概要」に対して募集されたパブリックコメントへの意見表明結果や東京都総務局総務部文書課との面談等を通じて、多面的に検討した。東京都の情報公開や公文書管理に対するスタンスは条例制定を経てなお、課題が多いが、今後2019年の新公文書館開館に併せてもう一段の制度見直しが期待される。特に歴史公文書の扱いについて、継続的に動向を注視していくことが必要である。</p>
著者
嶋田 典人
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.71-90, 2014-12-20 (Released:2017-03-24)

公文書管理法・公文書管理条例の趣旨は「説明責任」である。公文書の評価・選別をその趣旨に沿って行なう必要がある。レコードスケジュールの導入と評価・選別、行政施策・事業の「説明責任」を果たしうる「重要な公文書」や歴史的に「熟成」された「歴史資料だから重要な公文書」等の文書館での評価・選別について考察する。学校アーカイブズの事例を中心に述べる。
著者
今井 敬子
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.3-11, 2007-04-30 (Released:2017-03-24)

『日本占領下のマラヤ1941-1945』を翻訳出版した筆者が、原著作におけるアーカイブズの利用について紹介する。統計類により、戦争前、英領マラヤは繁栄していたが、日本占領下、経済が崩壊したこと、国民は食糧不足に苦しんだことを立証。また、現地事務所の議事録・書簡類からは、統治者、被統治者が実際に事態にどのように対処していたかを窺い知ることができた。
著者
辻川 敦
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.20-29, 2005

「日本社会において文書館が社会的に認知されず、位置付けられないのはなぜか」繰り返されるこの問いかけに対して、「アーカイブズ界」において現在なされている議論は果たして的を得ているのか。問題の社会的背景・課題要因を的確に把握し、その克服の方向性を実践的に提起できているのか。以上の問題意識に立って、本稿ではまず前段において、サービス業たる文書館事業を一種の「ショップ」になぞらえ、筆者の職場の事例をもとにアウトソーシング、ボランティアという観点から事業のひとつの方向性を提案する。後段においては、冒頭の問いかけの根本的背景要因を日本社会の特質と歴史的変遷からとらえ直すことで、とるべき視点、あるべき方向性を考察する。
著者
辻川 敦
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.20-29, 2005-12-01 (Released:2017-03-24)

「日本社会において文書館が社会的に認知されず、位置付けられないのはなぜか」繰り返されるこの問いかけに対して、「アーカイブズ界」において現在なされている議論は果たして的を得ているのか。問題の社会的背景・課題要因を的確に把握し、その克服の方向性を実践的に提起できているのか。以上の問題意識に立って、本稿ではまず前段において、サービス業たる文書館事業を一種の「ショップ」になぞらえ、筆者の職場の事例をもとにアウトソーシング、ボランティアという観点から事業のひとつの方向性を提案する。後段においては、冒頭の問いかけの根本的背景要因を日本社会の特質と歴史的変遷からとらえ直すことで、とるべき視点、あるべき方向性を考察する。
著者
増田 節雄
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.38-42, 2000-11-15 (Released:2017-03-24)

アメリカのユタ州に本部を置くユタ系図協会(Genealogical Society of Utah、略称GSU)の106年にわたる歴史及びその活動について言及しつつ、その家系図調査において収集した膨大な史料の有功活用の道を探る。さらに、ユタ系図協会でのインターネットによる新しい家系情報の共有化の事例を、ビジネスの世界で用いられているのKM(Knowledge Management)の概念枠組を援用しながら紹介する。インターネットを媒体として個人や団体が永年蓄積してきた家族歴史情報を互いに共有することの可能性について考察する。
著者
新原 俊樹
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.38-53, 2020

<p> 「行政文書の管理に関するガイドライン」が改正され、各行政機関は共有フォルダの分類を行政文書ファイル管理簿上の分類に従い再構成するなどの対応が求められた。本研究では、法令の各条文の規定や法令間の主従関係に基づく分類を提案し、実際に行政機関で扱う文書を対象としてその有効性を検証した。</p><p> 法令に所掌業務が詳細に規定されている行政機関①の場合、行政文書ファイル管理簿に登録されていた全文書の7割以上について、法令に基づき分類することができた。また、法令に所掌業務の具体的な規定がない行政機関②の場合も、部内で流通していた電子メールの⚘割以上について、部内ルール(行政規則)に基づき分類することができた。</p><p> 法令という一つの観点に基づく分類により、利用者の間で文書の分類先について判断に齟齬が生じるおそれがなくなり、部内・部外ともに文書の検索性が高まるとともに、文書のより円滑な共有・継承が可能になると期待される。</p>
著者
小川 千代子 日野 祥智 益田 宏明 秋山 淳子 石橋 映里 小形 美樹 菅 真城 北村 麻紀 君塚 仁彦 西川 康男 船越 幸夫
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.54-65, 2020

<p> 記録管理学体系化に関する研究は、2016年度から3年計画でスタートし、2018年度は3年目の最終年度にあたる。2016年度、2017年度の研究成果を踏まえ、2018年度には記録管理学の体系を導き出すことを目指して研究を行った。2018年度は、4回の研究会を開催するとともに、各メンバーによる個別担当の研究を行い、それを取りまとめるための記録管理学体系化の方向性を模索した。各メンバーは各自が記録管理における関心のあるテーマの考察レポートを作成し、これらを研究代表者である小川千代子が、2017年度の記録管理学体系化プロジェクト研究報告(学会誌「レコード・マネジメント」)で描いたところの体系化予想項目の中に関係づけ、その時の成果である記録管理学体系の3層構造に肉付けを行った。</p>
著者
古賀 崇
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.72-85, 2017 (Released:2017-12-20)

「デジタル・フォレンジック」とは、データ修復などの手段を通じ、デジタル媒体(ハードディスク、サーバなど)上の証拠保全を行うことを意味する。英語圏(北米、豪州など)では、デジタル・フォレンジックは記録管理・アーカイブズ活動の一端として位置づけられているが、日本では単に「訴訟・捜査や情報セキュリティのための活動」として理解・実践されているのが現状である。本稿では、文献調査や米国アーキビスト協会(SAA)大会への参加経験などに基づき国際比較を行い、「ボーンデジタル世界における証拠保全」として記録管理・アーカイブズ活動を原点から見直すために、デジタル・フォレンジックを論じる。
著者
橋本 陽
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.24-38, 2016 (Released:2017-01-30)

アーカイブズにおける電子記録の具体的な整理方法については意外にも研究が少ない。本稿の目的は、その方法論を明らかにすることである。最初に、英語圏の先行研究に依拠し、電子記録の整理方法を確認し、そこには長期保存の対策が伴う事実を指摘する。次に、インターパレスが電子記録の信用価値について提示する要件も考慮に入れながら、アトムとアーカイブマティカというアプリケーションを使って、整理の過程はどのような手順を経るかについて具体的に検討する。続いて、電子記録の長期保存においてはアーカイブズに移管される前の作成の段階からの記録管理が重要な役割を果たすため、そのあり方について、イタリアのアーカイズ学の知見と比較しながら論じる。最後に、作成段階からの管理が、保存機関であるアーカイブズでの編成と記述にどのように作用するのかその影響について考察する。
著者
新原 俊樹
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.60-71, 2017 (Released:2017-12-20)

組織内で利用する共有フォルダ内にレコードスケジュールが定められないまま保存された電子ファイルが蓄積することで、現用の電子ファイルの検索の妨げとなり、共有フォルダの書庫としての利便性が低下している。この問題を解決するため、(1)レコードスケジュールを付与することなく文書のライフサイクルに基づくレコードマネジメントを実現するための電子ファイル保存ルール、(2)共有フォルダ内に残置された非現用ファイルの除去を促すための俯瞰機能、(3)現用ファイル同士が検索の妨げにならないように文書の共有範囲に応じた適切なフォルダ構成の3つの支援機能を提案した。いずれの機能も実際に組織が利用している共有フォルダに適用可能であることを確認するとともに、俯瞰機能が電子ファイルの廃棄・選別の進捗状況の把握にも活用できることが分かった。
著者
岸田 和明
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.22-34, 1997-07-31 (Released:2017-03-24)

近年、記録/文書をその主題や内容から検索する手法の必要性が認識され始めている。主題や内容からの検索については、情報検索あるいは文献検索の問題として、長年にわたって図書館情報学の分野において研究が進められてきたが、本稿の目的は、その記録/文書への適用可能性を検討することである。具体的にはまず、記録/文書における主題の概念について、特に文献検索におけるアバウトネスの概念との対比の中で議論する。次に、記録/文書の主題検索における現状を文献レビューする。特に、MARC AMCや索引語による検索の問題について論じる。最後に、文献検索理論において発達してきた自動索引法の適用可能性を検討する。すなわち、記録/文書は基本的には個々の機関・組織に特有のものであり、それらに対して人が個別的に索引語を付与することは労力的に困難との立場から、索引作成の自動化の可能性を議論する。