著者
永村 美奈
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.87-103, 2015

熊本県は公文書館を建設しておらず、既存のリソースを活用して行政文書管理を実施している。熊本県は、透明性・公開性、第三者の視点を盛り込みながら、熊本県行政文書等の管理に関する条例と行政文書の作成、分類、保存及び保存期間満了時の措置の基準に則って、県政情報文書課が行政文書管理の主管部署となり、外部有識者らが特定歴史公文書の評価選別を実施している。本槁では、熊本県の行政文書管理事例を今後の地方自治体の行政文書管理の検討材料に資するべく、熊本県における行政文書管理の概要および特定歴史公文書の評価選別の課題について考察を行う。特に、実際の評価選別作業において、どのように評価選別基準と合致しないか、評価選別者が文書作成部局などとどのような意識の違いがあるかについて明らかにする。このような実状を踏まえ、今後の熊本県における行政文書管理の展望について考察を行う。
著者
永村 美奈
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.87-103, 2015-12-15 (Released:2017-03-24)

熊本県は公文書館を建設しておらず、既存のリソースを活用して行政文書管理を実施している。熊本県は、透明性・公開性、第三者の視点を盛り込みながら、熊本県行政文書等の管理に関する条例と行政文書の作成、分類、保存及び保存期間満了時の措置の基準に則って、県政情報文書課が行政文書管理の主管部署となり、外部有識者らが特定歴史公文書の評価選別を実施している。本槁では、熊本県の行政文書管理事例を今後の地方自治体の行政文書管理の検討材料に資するべく、熊本県における行政文書管理の概要および特定歴史公文書の評価選別の課題について考察を行う。特に、実際の評価選別作業において、どのように評価選別基準と合致しないか、評価選別者が文書作成部局などとどのような意識の違いがあるかについて明らかにする。このような実状を踏まえ、今後の熊本県における行政文書管理の展望について考察を行う。
著者
渡邊 健
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.69-83, 2018 (Released:2018-03-29)

2017年6月、「東京都公文書の管理に関する条例」が制定され、翌7月に施行された。同条例は何をきっかけとして、どのような過程を経て制定されたのか。先行して公文書管理条例を制定している地方公共団体の事例に照らして考察した。東京都の場合、豊洲問題という不祥事を契機として、小池百合子都知事のリーダーシップの下、条例化が進展した。その制定過程について、都に対する情報開示請求の結果得られた文書を中心に、「条例案の概要」に対して募集されたパブリックコメントへの意見表明結果や東京都総務局総務部文書課との面談等を通じて、多面的に検討した。東京都の情報公開や公文書管理に対するスタンスは条例制定を経てなお、課題が多いが、今後2019年の新公文書館開館に併せてもう一段の制度見直しが期待される。特に歴史公文書の扱いについて、継続的に動向を注視していくことが必要である。
著者
小川 千代子 秋山 淳子 石井 幸雄 石橋 映里 菅 真城 北村 麻紀 君塚 仁彦 西川 康男 廣川 佐千男 船越 幸夫 益田 宏明 山﨑 久道
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.73, pp.44-59, 2017

<p> 本研究は3か年計画で記録管理学という学問分野の体系化を目的とする第1年目の成果である。ここでいう記録管理学体系化とは、実務者が、自身が経験した個別事例を一般化された記録管理体系の中に位置づける手がかりを求め、そこから文書管理実務の観察、検討、改善への道筋を探れるようになることを意図している。たとえば記録連続体論は、記録の存在を研究観察対象として論じる。だが、現実的実務につながるという面で見ると、記録管理学は長くその体系化の必要が叫ばれながら、事例紹介の蓄積にとどまり、体系の大枠すら明確ではない。そこで、初年度は文書管理の実務者が業務遂行上依拠する現状の文書制度に基づき、記録管理学の体系化の糸口を探ることとした。研究では、諸文書管理例規を収集し、用語と定義の比較分析を行った。</p>
著者
高山 正也
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.4-11, 2014-03-15 (Released:2017-03-24)

著者は2006年4月から理事として、2009年7月から館長として勤めていた(独)国立公文書館を2013年5月で、退職した。国立公文書館在職中に課せられた主な使命は、主要諸外国に比較し、異常に小規模で低水準の国立公文書館の水準を向上させるべく、関連法令の制定、施行に始まり、末端行政組織と化した国立公文書館の活性化とそれを公文書館本来のアーカイブズ専門業務担当組織に変質させることにあった。しかし、長い伝統の下で硬直化した公文書館のような公的な組織の変革は著者のごとき理屈だけを、公文書館同様日陰の存在になっている図書館を対象とした経験しかない者の手には余るものであった。その様子が法律の制定、公文書館業務の実態等を経営の要素としての、ヒト、カネ、資料等の扱いといった具体例に触れて記述される。結局、日本における国際標準から外れた公文書類の扱いは公的組織の奥深くまで浸透しており、今後息の長い取り組みが必要との結論が述べられる。
著者
大村 英正
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.11-28, 2004

企業経営はしばしば困難に直面するが、そのような時にこそ、そして普段から歴史を学び歴史に学ぶことが大切であり、その方法論が適正でなければならない。本稿では、企業で経営史料の管理、活用並びに会社史の編纂を担当した若干の経験をふまえて、非現用の企業史料を中心に、その定義、収集、評価、保存・管理、活用さらにビジネスアーキビストの育成について、問題提起を含めて私見を述べる。収集では着眼点と収集対象を、評価では評価の主体と史料価値の多面性について、保存・管理では原秩序の維持と出所の原則の重要性について、活用では史料の広範な利用の実例と可能性を中心に論考する。ビジネスアーキビストの育成については資質面と育成の制度に触れる。総じて、公共財としての性格をも持つ個々の企業の私的財産である企業史料の取り扱いについて全体像を整理してみた。これらは概論であり基本の考え方であって企業史料管理マニュアルではない。
著者
坂口 貴弘
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.15-34, 2015-03-23 (Released:2017-03-24)

戦後日本の文書管理においては、なぜ不用文書の廃棄のみが重視され、アーカイブズの保存が重視されなかったのかについて、米国のレコード・マネジメント概念の受容との関連から考察した。第二次大戦前及び終戦直後に紹介されたファイリング・システムは、もともと文書廃棄を必ずしも重視していなかったが、米国の文書管理事情の翻訳が進むにつれて、徐々にその側面が強調されるようになる。行政管理庁もこのような動向を採り入れた文書管理改善運動を推進するが、ほぼ同時期に総理府が進めていた国立公文書館設置準備との連携は密接ではなかった。両府庁は文書管理とアーカイブズの連携を前提とした米国の方法論を各々に参照していたが、その原理への部分的・一面的理解と省庁セクショナリズムとが、公文書の国立公文書館への移管停滞と大量廃棄をもたらすことになった。
著者
平井 孝典
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.50-70, 2014

本稿では、19世紀初期の「アーキビスト」アルヴィドソンやグロンブロードらの情報アクセス環境を整える活動をとりあげる。次の内容が扱われる。最初に、いかにアーキビストや図書館員がフィンランド及びスウェーデンの公文書を持ち得たか。第二に、フィンランド人アーキビストはどのようなアーカイブズの知識をスウェーデンで学んだか。第三に、どのようにアルヴィドソンはフィンランドに関係のあるアーカイブズ資料について考えていたのか。第四に、いかにグロンブロードは、人々がフィンランド研究を進めるよう、アーカイブズ資料を扱ったのか。最後に、上述したことと関連し、私たちはどのようなフィンランド関係のアーカイブズ資料にインターネットを通じアクセスしうるのか。
著者
森 顕登
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.63-79, 2015

戸籍制度は親族関係を公証する国民登録制度であるが、この制度のもとに作成される戸籍は災害のたびに存在の危機にさらされてきた重要文書の一つである。昨今の例では2011年の東日本大震災で4つの自治体の戸籍正本が滅失しているが、先の大戦でも空襲によって戸籍を滅失させた自治体が相次いだ。例えば旧東京市部では7区の戸籍が被害を受け、そのうち3区はそのすべてを滅失している。来たるべき空襲に備えて戸籍はどのように管理されていたのか。そして、滅失した戸籍はいかにして再製が図られたのか。この二つの問いの答えを得るべく、法務省民事局編『民事月報』26巻2号(1971年刊)に掲載された戸籍実務家による座談会を分析する。
著者
山崎 沙織 逢坂 裕紀子 岡本 詩子
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.45-63, 2012

2009年に制定された「公文書等の管理に関する法律」の要点のひとつは、国の非現用公文書等についての利用請求権を 認め、それに基づく異議申し立てを可能にしたことにある。同法の努力義務規定により、上述の権利とそれに基づく異義申し立ては地方自治体の公文書政策にも反映される見込みだ。そこで、本研究は同法制定後の地方自治体の公文書館についての条例・規則の改訂状況を次の2点から調査した。(1)利用請求権や異議申し立てを認める改訂はあったか。(2)公文書館への意味づけを変えるような改訂はあったか。調査の結果、(1)'新規に条例・規則を制定した自治体を除き、利用請求権や異議申し立てを認める改訂は見られないこと、(2)'公文書館への意味づけは「地域の歴史・教育・文化を振興させる場」と「開かれた行政を実現させる場」に二分されるが、前者が保持される傾向にあり、この傾向が利用請求権成立の困難さに一定の影響を与えていることが判明した。
著者
李 東真
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.29-44, 2012

動的映像は、歴史や過去の事象を生々しく伝えることのできる資料として高い価値を有する。動的映像を研究資料としてまたは、創作活動の素材として利用するためには、動的映像を収集して、利用できる形に整理する、つまり組織化する必要がある。ニュースや映画などの完成作品としての動的映像は、提供元などが提示した情報を基に目録規則に従い記述することで組織化できる。一方で、素材もしくは半製品として存在する動的映像を記録として組織化する場合、動的映像そのものから目録、メタデータに対応する情報を生成することが求められる。動的映像資料の利用者研究を考察することにより、「制作者」、「タイトル」、「主題」がアクセスポイントして有効であること、さらに「制作者」、「タイトル」が与えられない素材、未完成・未公開作品などの動的映像から生成可能な情報は「主題」であることが示された。しかし、動的映像そのものからの主題を生成する場合、イメージを語で表現する作業を伴うことから、本稿ではさらに、その際に生じる問題点を考察、分析した。その結果に基づき、問題点を1)抽出する動的映像の階層レベル、2)抽出する素性の抽象度、3)抽出された主題の表現法の3つに分類した。
著者
添野 貴史
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.71-78, 2012

記録資料は、東日本大震災のような天災、戦争や紛争などの人災、火災等のいつ起こるか分からない災害や、記録資料自体の劣化など、さまざまな危険に晒されている。しかし仮にそのような場面に直面したとしても、「記録の媒体変換」を行い、さらに「分散管理」をしておくことで、記録情報損失のリスクを軽減出来る。当社は50年にわたり記録資料の「保存と活用」に携わってきた。本稿では、記録を損なうことなく将来に伝えるために、専門技術者として蓄積してきた技術力・アイディアを駆使した記録管理方法について、現状・今後の可能性を報告する。