著者
任 智美 梅本 匡則 前田 英美 西井 智子 阪上 雅史
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.31-35, 2017-03-31 (Released:2017-05-31)
参考文献数
10
被引用文献数
3

味覚異常の症状は「味覚低下」や「消失」,「解離性味覚障害」のような量的味覚異常と「自発性異常味覚」や「異味症」などの質的味覚異常に分類される. 障害部位としては受容器障害, 末梢神経障害, 中枢性障害, 心因性に分けられ, 受容器障害の病態としては亜鉛欠乏による味細胞のターンオーバー遅延が一般的である. 電気味覚検査や濾紙ディスク法で定量的, 定性的な味覚機能評価を行い, 病態を把握したうえで味覚障害と診断される. 現在では亜鉛内服療法のみがエビデンスをもつ治療であるが, 漢方の有効性も報告されており, 著効する例も経験する. 味覚異常は時に消化器疾患, 血液疾患, 皮膚疾患, 精神疾患, 神経疾患などが背景に存在する場合もあり, 味覚異常を局所的な疾患として捉えるのではなく, 全身を把握しておく必要があるものと考える.
著者
中田 誠一
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.181-184, 2008-03-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
3

アメリカは民間の医療保険が発達している. そのため民間医療保険側からの医療に対する制約が多く, 患者側は多大な医療保険を払わされる上に, かつ指定された医療機関しかかかれない保険があるなど負担が大きい. 睡眠医療に関しても夜間の睡眠検査料は日本と比べると法外なものであり, その背景に経済市場原理が働いていると思われる. 睡眠検査は睡眠センターというところで一括して行われ, 診断とともにその治療に関与して, かつCPAP治療はアメリカでは患者本人が直接, 業者からCPAP機器を購入し自分で自己管理という形式をとるため日本とは診療形態がまったく異なっている. アメリカで睡眠にかかわっている実地医家は, CPAP治療に脱落した患者に対してコンサルタント料や手術を希望すれば手術費用などを徴収することによって医療が成り立っていることがわかった.
著者
宮崎 総一郎 板坂 芳明 石川 和夫 多田 裕之 戸川 清
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.183-189, 1998-02-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
10
被引用文献数
2

睡眠時無呼吸の病因ならびに長期治療成績を左右する因子として, 睡眠体位と肥満は重要である.肥満と体位の及ぼす影響を, 気道内圧測定を含む睡眠検査を実施した68例(平均年齢: 47.2歳, 平均肥満度: 120.5%)について検討した.68例をやせ群(肥満度90%未満)+普通体重群(肥満度90%以上, 110%未満), 過体重群(肥満度110%以上, 120%未満), 肥満群(肥満度120%以上)の3群にわけた.肥満群の無呼吸+低換気数(AHI)は47.1/hr.で, やせ・普通体重群(32.6/hr.), 過体重群(31.3/hr.)に比し有意に高値であった.また肥満群の最低酸素飽和度値は80.1%で, やせ・普通体重群(85.0%), 過体重群(85.8%)に比し, 有意に低値であった.食道内圧変動値に関しては, 肥満群45.4cm H20, やせ・普通体重群33.5cm H20, 過多体重群32.5cm H20であった.側臥位の検討では, 肥満群は, 仰臥位と同様, やせ・普通体重群に比しAHI, 食道内圧変動値が有意に大きい値であった.側臥位での呼吸障害の改善度は, その肥満度に反比例していた.また仰臥位から側臥位に体位変換することで, AHIと食道内圧変動値がともに50%以上減少した症例数は67例中30例(44.8%)であった.
著者
赤城 ゆかり 山中 昇 林 泰弘 九鬼 清典 寒川 高男 木村 貴昭
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.7-12, 1994-02-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
8

Palmoplantar pustulosis (PPP) has been accepted as one of the secondary diseases caused by tonsillar focal infection ; however, the pathogenesis is still unknown. In this study, the expression of adhesion molecules on the palmar and plantar skin of eight patients with PPP and three healthy volunteers with normal skin were examined immunohistochemically. In normal skin, only CD44 was expressed on the epidermis. In the macroscopically normal region of PPP skin, intercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1) was demonstrated on the endothelial cells in the dermis. In the erythema stage and the pustule stage, CD3, CD4, and lymphocyte function-associated antigen-1 (LFA-1) were expressed on the cells infiltrating the dermis. ICAM-1 was detected immunohistochemically on the endothelial cells, keratinocytes and infiltrating cells in PPP skins. Moreover, endothelial cell-leukocyte adhesion molecule-1 (ELAM-1) was expressed on vessels in the dermis in these two stages. These findings suggest that the interaction between LFA-1 and ICAM-1 plays an important role in T cell infiltration into PPP skin and that the continuity of ICAM-1 expression is related to the chronicity of PPP.
著者
林 達哉
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.17-21, 2010 (Released:2010-09-01)
参考文献数
16

抗菌薬の適正使用の第一歩はウイルス性と細菌性を鑑別し, 細菌性疾患にのみ抗菌薬を投与することである. 咽頭・扁桃炎の場合, 膿栓や白苔の付着は細菌感染を連想させるが実際にはウイルス感染が多く注意が必要である. 扁桃炎の起炎菌として最も重要なA群β溶血連鎖球菌が起こす扁桃炎の診断には, 症状と所見のみならず, 迅速診断キットの結果, 場合によっては培養結果を参考にする必要がある.溶連菌性扁桃炎の抗菌薬治療として, 従来ペニシリン系の10日間投与がゴールドスタンダードとされてきた. しかし, 最近, セフェム系抗菌薬の方が除菌率が高く, 臨床的効果にも優れるとのメタ解析の結果が報告された. この報告に対する反論もすぐに発表され, 現在, ペニシリンvs. セフェムの議論が内外ともに盛んである. 溶連菌に関しては現在までのところ, ペニシリン系, セフェム系のいずれに対しても耐性株は出現していない. しかし, 扁桃炎に対して投与した抗菌薬が上咽頭細菌叢に与える影響も考えに入れる必要がある. セフェム系抗菌薬は小児急性中耳炎難治化の主因である中耳炎起炎菌の耐性化に大きく関わってきたとされる. セフェム濫用の反省から抗菌薬の適正使用が漸く緒に就いた本邦の現状もよくよく考慮に入れた上で, 抗菌薬の適正使用を進めていく必要がある.
著者
岳田 ひかる 齋藤 和也
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.159-163, 2015-06-10 (Released:2015-08-15)
参考文献数
11

咀嚼から嚥下反射にいたる咀嚼筋の一連の筋活動を表面筋電図およびレーザ変位センサを用いて記録・解析した. 口腔咽頭に形態的機能的障害を認めない大学生ボランティアを対象として, パン 5-10グラムを自由に咀嚼・嚥下させた時の咬筋, 側頭筋および舌骨上筋群の表面筋電図, ならびに甲状軟骨の変位を計測した. 咀嚼中, 下顎の開閉運動に応じて開口筋である舌骨上筋群と閉口筋の咬筋・側頭筋は交代性に収縮を繰り返した. その後, 両筋群の1ないし数回の共収縮の後, 嚥下反射の惹起が観られた. 開口筋と閉口筋の共収縮により顎関節の安定性を高めることが, 嚥下口腔期から咽頭期への移行に重要な要素であると考えられた.
著者
加藤 久幸 油井 健宏 日江井 裕介 桜井 一生
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.41-47, 2014-03-31 (Released:2014-08-20)
参考文献数
18

中咽頭癌の診断・治療には HPV との関連の解明や喫煙率の低下, IMRT や分子標的薬, ロボット手術などの新しいモダリティの出現によりパラダイムシフトが起こっている. HPV 関連癌は非関連癌と比べ有意に遺伝子変異が少なく, 非喫煙者に多く, 予後が良好で生物学的に異なる性格を持つ癌腫との認識が必要である. 現在, HPV 関連癌に対して治療成績を保持・向上しつつ, 治療強度を下げて患者の QOL を改善するかに主眼を置いた臨床試験が行われている. 本稿では発癌要因と発症率の動向, HPV 関連癌と非関連癌の分子生物学的相違, HPV の検出法, p16免疫染色の有用性, HPV 感染・喫煙と予後, 臨床試験について概説する.
著者
原 浩貴 村上 直子 山下 裕司
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.245-252, 2003-02-28 (Released:2011-03-01)
参考文献数
14
被引用文献数
2

2001年5月より2002年4月までの1年間に, いびき・OSAS患者32名に対し睡眠中のいびき音をMDに録音した後, マルチディメンジョナルボイスプログラムを用いて音響解析を行った.その結果, 周波数分析上, 単純いびき症例では, 基本周波数を中心とした一峰性のピークを持つものがほとんどであるのに対し, 閉塞性睡眠時無呼吸症候群例では, 1kHz以上の高周波数帯に複数のピークを持つ傾向がみとめられた.また雑音成分は, 単純いびき症でSPIが高く, 閉塞性睡眠時無呼吸症候群例でNHRが高い結果がえられた.
著者
進 武幹 福山 つや子
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.37-41, 1993-03-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
9

The cause of Behcet's disease is still unknown. In this paper, we describe the features of Behcet's disease as reported by the Japan Ministry of Health and Welfare in 1987. Behcet's disease is characterized by oral and genital ulcers and ocular inflammation. At least two of these main symptoms are required to establish the diagnosis. Behcet's disease is further classified as having mucocutaneous, arthritic, digestive, vascular and neurologic abnormalities.Behcet's disease must be differentiated from benign mucous membrane pemphigus, pemphigoid and erythema multiforme. The ulcers in recurrent aphthous stomatitis are quite similar in appearance. These diseases can be ruled out with pathological and immunological techniques.
著者
森岡 基浩
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.39-45, 2013 (Released:2013-05-15)
参考文献数
13

舌咽神経痛 (Glossopharyngeal Neuralgia: GPN) は嚥下等の誘因により誘発される耐えがたい咽頭-舌根部の痛みを主訴とし, しばしばその痛みは同側の耳に放散する. その原因として脳幹から分枝した舌咽神経 (および迷走神経感覚枝) の分枝部 (root entry zone: REZ) を正常の血管が接触・圧迫しているためと考えられている. 正確な問診が最も重要であり上咽頭への局麻テスト/MRIにより最終的に診断する. GPNの初期治療はCarbamazepineによる薬物治療であるが最終的に薬剤の効果が不十分である症例では開頭による微小血管減圧術 (Micro Vascular Decompression: MVD) または舌咽神経と迷走神経の一部の切断術 (rhizotomy) が有効である.