著者
杉田 麟也
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.23-35, 2010 (Released:2010-09-01)
参考文献数
10
被引用文献数
3

上咽頭炎は多彩な症状を呈するが診断が難かしい. 従来は上咽頭に触った時の痛みの有無, 出血の有無で診断した. 著者は最初に耳下頸部を触診し圧痛及び硬結感の有無で病変の有無を推測し内視鏡検査, 接触痛, 接触出血の有無により上咽頭炎を診断する事を提案した. 治療は1%塩化亜鉛溶液塗布, ベタメタゾン1.5mg (分2) 4日間が種々の症状軽減に有効である. 咽頭痛が主訴の患者の約90%は責任部位が上咽頭であった. 上咽頭炎検出菌は70%が常在細菌であり, 主な検出菌はインフルエンザ菌, カタル球菌であった.
著者
田中 亜矢樹
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.5-16, 2020 (Released:2021-03-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1

慢性上咽頭炎の治療における上咽頭擦過療法には経鼻綿棒法と経口咽頭捲綿子法があり,各々盲目的に行う方法と内視鏡下に行う方法がある.それぞれに長所と短所があり,その特性を理解し症例に応じて使い分けることが臨床効果を向上させる上で重要である.経鼻法に用いる綿棒には直綿棒と弯曲綿棒があり局面によって使い分ける.経口法に用いる咽頭捲綿子にも擦過する上咽頭各部位に応じた使用法がある.経鼻綿棒と経口咽頭捲綿子のそれぞれの特性に基づいた基本的使用法について概説する.
著者
高原 幹
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.111-114, 2016

SAPHO 症候群51症例に対し扁桃摘出術を施行し, 35例 (68%) の患者で疼痛が消失, 47例 (92%) の患者で有効以上の効果が得られた. また, 術後3ヵ月までに91%の患者で関節痛の改善がみられた. また, SAPHO 症候群の病態の一つに掌蹠膿疱症と同様に扁桃リンパ球の病巣へのホーミングが関与している可能性が示唆された. SAPHO 症候群の関節痛に対する扁摘の効果は非常に高く, 扁桃病巣疾患のひとつと考えられた.
著者
余田 敬子 尾上 泰彦 西田 超 金子 富美恵 須納瀬 弘
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.171-177, 2011

性感染症クリニックで, 淋菌・クラミジア検査を行った女性169人の職業と, 男性81人の性交渉の相手について検討した. 女性の92%を占めたソープランド (ソープ) 従業女性では, 淋菌の咽頭陽性者が性器より多く, クラミジアは性器陽性者が咽頭より多かった. ソープ以外の性風俗店従業女性においても, 淋菌・クラミジアの咽頭と性器の陽性者が存在した. 性風俗従業でない女性にも, 淋菌・クラミジアの陽性者があった.<br>男性では, 咽頭の淋菌陽性者の89%, 性器の淋菌陽性者の93%, 咽頭のクラミジア陽性者全員, 性器のクラミジア陽性者の77%が, 性風俗従業女性からの感染と推察された. また, 少数ではあるが, 特定の女性から淋菌・クラミジアに感染した人と思われた人が存在した.
著者
青木 香織 水田 啓介 山田 南星 青木 光広 伊藤 八次 加藤 博基
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.199-203, 2009 (Released:2010-07-01)
参考文献数
10
被引用文献数
6

耳下腺腫瘍では術前に良悪の鑑別や, 悪性の場合には悪性度が問題となる.今回, 我々は耳下腺腫瘍症例の病理検査とMRI画像所見, および見かけの拡散係数 (ADC) 値との関連を検討し, 耳下腺腫瘍の術前診断への有用性を検討した.耳下腺腫瘍81症例を対象として, 病理組織, MRI, 拡散強調画像におけるADC値を検討した.ADC値は, ワルチン腫瘍と癌のADC値は, 多形腺腫のADC値の平均値と比較し, 有意差を認めた. 癌を悪性度に分けてみると, ADC値が1.0未満の低値の症例は, 高悪性度では4例中3例で, 多形腺腫では18例中1例であった. 多形腺腫と高悪性度群の癌との術前の鑑別には有用であると思われた.
著者
土屋 昭夫 相澤 直孝 佐藤 邦広 高橋 姿
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.173-177, 2012 (Released:2012-08-25)
参考文献数
20

線維素性唾液管炎は, 唾液腺導管内に線維素塊が形成されて導管の閉塞をきたし, 反復性に唾液腺腫脹をきたす疾患である. 腫脹時に唾液腺を圧迫すると, 導管から多数の好酸球を含む線維素塊の排出を認める. アレルギー性疾患を合併することが多く, そのため発症の原因としてアレルギーの関与が考えられている.今回われわれは, 反復する耳下部腫脹を主訴に当科を受診し, 線維素性唾液管炎と診断された3例を経験したので報告する. 3例ともにアレルギー疾患の合併があり, 2例ではステノン管からの排出物に好酸球を認めた. 全例で抗アレルギー剤の効果を認めたが, 1例を除き症状は残存しており, ステロイド治療の追加を検討している.
著者
愛場 庸雅
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.173-179, 2004-02-29 (Released:2010-06-28)
参考文献数
40
被引用文献数
1

味覚障害の原因別の治療法を概説し, その実際, 効果について述べた.血清亜鉛値70μg/dl未満の場合は亜鉛欠乏性味覚障害と診断されるが, 潜在性亜鉛欠乏も多く, 亜鉛製剤が有効である.硫酸亜鉛, ポラプレジンク, およびサプリメントによる治療がなされ, 有効率は70%前後である.投与期間は, 数ヶ月は必要である.薬剤性味覚障害の頻度は高いが, 起因薬剤の同定や証明が困難なことが多い.自発性異常味覚, 異味症, 味覚乖離など病態の不明な場合には, 漢方薬も有力な治療手段になりうる.亜鉛のみではなく, 各種のビタミン, ミネラルの補給も重要であり, 患者の生活全般の在り方を考えた食事, 栄養指導が必要である.
著者
河合 美佐子
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.63-66, 2011 (Released:2011-04-16)
参考文献数
5
被引用文献数
2

5基本味の1つであるうま味に関する味覚感受性については現在臨床検査法がなく, うま味に関する味覚障害の実態はほとんどわかっていない. 本試験では, 濾紙ディスク法による4基本味検査に加え, 全口腔法を用いてうま味感受性を検査したところ, 味覚障害外来患者においてうま味の味覚障害をきたす者を見出した. 同時に行ったアンケートの結果と合わせると, うま味感受性低下は食のQOLの低下と強い相関を示していた.
著者
鈴木 祐介 富野 康日己
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.115-120, 2014-06-10 (Released:2014-08-20)
参考文献数
36

これまでの多くの臨床研究や IgA 腎症動物モデルからの知見, およびそれを基にしたトランスレーショナルリサーチなどから IgA 腎症の病因の本態は, 腎臓の固有細胞ではなく, 全身の複雑な免疫ネットワークにあることが想定されている. 特に, 「Mucosa-Bone Marrow Axis」 における免疫学的異常が議論され, 「粘膜型 IgA がなぜ骨髄で産生されるのか」 について長年研究されてきた. しかし, 免疫学の進歩にともないケモカイン・ホーミングレセプターが急速に解明され, 粘膜型B細胞が, 実効組織として骨髄や全身のリンパ組織に展開しうる具体的なメカニズムが明らかになり, IgA 腎症における Mucosa-Bone Marrow Axis の関与がにわかに現実味を帯びてきた. 一方, 以前より IgA 腎症患者では IgA ヒンジ部に糖鎖異常があることが指摘されてきた. 近年糖鎖異常 IgA の定量的解析が可能となり, IgA 腎症の病態が IgA 分子の側からも検討されるようになった. それにより, 糖鎖異常 IgA ばかりかその異常糖鎖を認識する内因性抗体による免疫複合体形成も, IgA 腎症の病態進展に深く関与することが明らかになった. さらに最近の研究では, 糖鎖異常 IgA および内因性自抗体産生の主座が扁桃であることが強く示唆されている. IgA 腎症患者の扁桃において, APRIL や BAFF といった B 細胞分化誘導因子の過剰発現も確認され, IgA 腎症患者の扁桃 B 細胞の分化異常が病態に関わっている可能性も高い. 本稿では, IgA 腎症の粘膜異常および糖鎖異常 IgA 産生機序に触れながら, 扁桃 B 細胞の IgA 腎症の病態における役割を概説する.
著者
大上 研二 戎本 浩史 槇 大輔 酒井 昭博 飯島 宏章 山内 麻由
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.81-85, 2019 (Released:2020-06-10)
参考文献数
22

頭頸部癌の発がん因子として新たに注目されているヒト乳頭腫ウイルス(HPV)は,国内外でHPV癌の関連中咽頭癌の頻度は急増している.治療法にかかわらず予後良好であるため,TNM分類もHPV関連の有無で分けられている.本稿では外科的治療を中心に治療法の低侵襲化と予後について,現在進行中の観察試験や臨床試験を踏まえて概説する.
著者
有本 友季子
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.7-11, 2013 (Released:2013-05-15)
参考文献数
10
被引用文献数
5

小児深頸部膿瘍は非常に稀で, 臨床像も成人例と大きく異なる. 好発部位は, 咽頭後間隙, 口腔粘膜間隙, 副咽頭間隙が主で, 他に顎下間隙も多くみられた. 小児特有の発症背景に, 先天性嚢胞性疾患や先天性免疫不全症の感染, 歯ブラシ外傷, 特殊感染症である猫ひっかき病がみられた. 重篤な合併症はほとんどみられなかった. これは成人例との病態の違いによるもので, 深頸部膿瘍と診断される小児例の多くは深頸部リンパ節膿瘍の段階にあり, いわゆる成人例の真の意味での深頸部膿瘍とは異なると考えられた. 気道狭窄等リスクが高い症例では切開排膿が必要となることが多いが, 病態や合併症の少なさを考慮し, より低侵襲な治療法選択の可能性が示唆された.
著者
青井 典明
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-6, 2013 (Released:2013-05-15)
参考文献数
21
被引用文献数
4

扁桃周囲膿瘍は, 日常診療でしばしば経験される疾患であり, 抗菌薬の投与とともに穿刺あるいは切開排膿, 膿瘍扁摘等を行えば比較的容易に治癒する予後良好な疾患である. 一方で適切な治療を行わなければ, 気道狭窄をきたす恐れもあり, また深頸部膿瘍, 更には降下性壊死性縦隔炎や縦隔膿瘍に進展し, 命に影響を及ぼす疾患であり, 迅速かつ的確な診断と治療を必要とする. 扁桃周囲膿瘍の治療については膿瘍扁摘と比較し, 比較的安全に行うことができる手技として穿刺排膿と切開排膿がある. しかしながら穿刺排膿あるいは穿刺排膿ができなくとも, 抗菌薬およびステロイド等による保存的加療のみで改善する症例もあれば, 増悪して深頸部膿瘍に至る症例もある. 本稿では扁桃周囲膿瘍に対する穿刺排膿あるいは切開排膿のそれぞれの特徴, その限界について文献的考察を含め検討したい.
著者
松永 佳世子 冨高 晶子 秋田 浩孝
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.311-317, 2001-06-01 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12

ラテックスに交叉反応するフルーツにより, 咽に痒みを生じたり口唇腫脹や蕁麻疹, 喘息, 重症例ではアナフィラキシーとなる即時型反応をラテックスフルーツ症候群と呼ぶ.これはバナナ, 栗などが, その抗原であるclass I chitinaseのN末端にラテックスの主要抗原であるheveinドメインを持つことによる.当科のラテックスアレルギー54例中28例 (52%) が食物アレルギーを合併しており, うち口腔アレルギー症状を16例 (30%) に認めた.重症例は栗, そば, アボカドで, また, 口腔アレルギー症状はメロン, キウイ, トマトなどで発症していた.ラテックスフルーツ症候群の診断と治療および対策について述べた.
著者
堀田 修 田中 亜矢樹 谷 俊治
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.99-106, 2016

慢性上咽頭炎は肉眼的に判定することは困難とされ, 耳鼻咽喉科医の認知度は低い. しかし, 同部位の慢性炎症による局所症状は一般的には軽微であるがその解剖学的特性により, 慢性上咽頭炎は免疫系・自律神経系・内分泌系に影響を及ぼし, その結果として様々な全身症状を惹起する. 原病巣である慢性上咽頭炎が耳鼻咽喉科領域であり, 二次疾患である全身疾患が他科領域となるため, 1960年代に注目された後, 医療の細分化の潮流の中で, 一旦は医学界の表舞台から姿を消したが, 近年, 再び復活の兆しがある. 中でも慢性疲労症候群, 過敏性腸症候群などの機能性身体症候群における慢性上咽頭炎の関与は重要であり, 充分な上咽頭処置により全身症状の軽快が得られることが多い. それ故, 適切な慢性上咽頭炎診療の再興は将来, 日本の医療に大きなインパクトを与える可能性を秘める. その為には微細な経鼻的内視鏡的所見や具体的な処置方法を含む, 今日の医学に即した「慢性上咽頭炎診療マニュアル」の作成が切望される.
著者
丸笹 直子 岩井 大 吉永 和仁 泉川 雅彦 金子 明弘 立川 拓也 山下 敏夫
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.237-241, 2001-02-28 (Released:2010-06-28)
参考文献数
11
被引用文献数
4

1988年1月から1997年8月までに, 関西医大耳鼻咽喉科で全身麻酔下に口蓋扁桃摘出術を施行された725例を対象とし, このうち術後出血例につき検討した.その結果, 11例 (1.5%) で術後出血が見られ, 6例 (0.8%) は再度の全身麻酔が必要な症例であった.習慣性扁桃炎の11~20歳の年齢層に術後出血が生じやすく, 出血部位は左に多く, 出血時期は術後24時間以内に多く見られた.扁桃摘出術に際し, こうした事項の認識が重要であると考えた.
著者
原田 生功磨 國井 博史 小山 新一郎 勝見 さち代 村上 信五
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.109-115, 2009 (Released:2010-07-01)
参考文献数
22
被引用文献数
3

口蓋扁桃摘出術における周術期抗生剤の投与期間を手術当日のみから術後3日以上に延長, 術後経過をカルテで追跡した. その結果, 抗生剤投与日数を3日以上に延長しても術後出血率, 解熱鎮痛剤使用数, 発熱の有無に影響がみられなかった. 周術期の抗生剤投与は手術当日のみで十分と考えられたが, 術後出血例の検討では局所感染を伴うものもあった. 術前より術野の常在菌叢, 薬剤感受性を把握し最適な抗生剤を使用するなど症例毎に感染対策を行うことが良いと思われた. 一方, 抗生剤使用期間にかかわらず, 解熱鎮痛剤の使用が多いと, 有意に術後出血が増加した. その原因は不明であり解熱鎮痛剤の抗血小板作用なども含め今後の検討を要する.
著者
工藤 典代
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.29-32, 2014-03-31 (Released:2014-08-20)
参考文献数
5

口蓋扁桃摘出術は従来, 扁桃被膜の鑷子剥離と出血点の絹糸結紮で行っていたが, 現在は高周波凝固切開装置 (オートバイポーラ) を用い剥離と切離・摘出, 出血点の凝固を行っている. 前者を従来法, 後者を現法とし, 総手術時間 (摘出時間と止血時間) と出血量についての比較を, 扁摘経験による術者別に行った. その結果, 術者の経験を問わず, 手術時間も出血量もともに大きく短縮及び減少させることができた. 止血処置を要した術後出血は, 14年間の扁摘1,923例中, 25例 (1.3%) であった. アルゴンプラズマ凝固法を併用しはじめた年は4.1%であったが, 翌年以降には術後出血例は再び年間0から2例となり, 用いた手術機器による差は見られなかった.