- 著者
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玉懸 元
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 国語学 (ISSN:04913337)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.2, pp.30-43, 2001-06
本稿では,若年層を話者とした調査結果に基づき,仙台市方言の終助詞「ッチャ」の用法を整理して記述する。「ッチャ」の用法は,用例の観察を通して,次の(1)(2)(3)に整理される。(1)対話用法A:そもそも知っているはず・分かるはずの事柄を忘れている・気付いていない,ということが相手から看取された場合に,その事柄を取り上げて「ッチャ」を使用する。(2)対話用法B:相手のそもそも知っているはず・分かるはずの事柄を,後続させる発話内容の土台になることとして取り上げておきたい場合に,その事柄を取り上げて「ッチャ」を使用する。(3)独言用法:自分自身がある事柄を思い出した・ある事柄に気付いたといった場合に,その事柄を取り上げて独言的に「ッチャ」を使用する。(3)は(1)を自己内対話的に拡張したものとしてその関係が理解される。また「ッチャ」の本質を把握することによって,(1)と(2)との関係も理解される。なお,以上のような記述を通して,現代方言において共通語化を免れている方言形式の具体的様相とその理由に関する問いに対して,ひとつの見通しが得られることになる。