著者
池谷 昌枝 島田 凉子 庄子 和夫
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.75-85, 2014-09-01 (Released:2014-09-13)
参考文献数
47

本研究ではn-3 polyunsaturated fatty acid (PUFA) 量とn-6/n-3PUFA比率を統制した食事が大学生の心理的ストレス応答にどのような影響を及ぼすかについて調査した.大学生男女23名を実験群13名とコントロール群10名に分け,調整期 (n-6/n-3=8) 3日間,介入期 (実験群:n-6/n-3=2,コントロール群:n-6/n-3=8) 7日間の食事介入を行った.最終日に暗算を行い,暗算前後の唾液中コルチゾール,尿中ビオピリン,profile of mood states-brief form (POMS短縮版) の群間比較を行った.実験群ではコントロール群よりも暗算後の気分の回復が早く,唾液中コルチゾールの終息も良好であった.また実験群は暗算後の尿中ビオピリンの上昇が抑制されていた.これは,n-3PUFAによりhypothalamic-pituitary-adrenal axis (HPA系) の負のフィードバックが良好であったことや活性酸素種への対処が円滑に行われたことに起因すると考えられる.
著者
中谷 啓子 島田 凉子 大東 俊一
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.37-47, 2013-02-10 (Released:2013-02-18)
参考文献数
51
被引用文献数
2

本研究は,日本におけるスピリチュアリティの概念を明らかにするための先行的研究である.スピリチュアリティが人間の内面に本来備わる目に見えないものという前提に立ち,「スピリチュアリティの覚醒」,すなわち,スピリチュアリティが顕在化する契機に着目し,その概念を明らかにすることを目的とする.研究デザインは,文献研究である.国内の学術論文を網羅するため3種類の検索データベースを用いた.キーワードを「スピリチュアリティ」「スピリチュアル」「覚醒」「危機」「クライシス」「概念」「グリーフ」「悲嘆」「日本人」に設定し文献を抽出し,その記述内容を分析フォームに整理しデータ化した.このうち,「スピリチュアリティの覚醒」の概念が抽出されたデータを,Walker & Avantの概念分析の手法を用い分析した.その結果,「スピリチュアリティの覚醒」の先行要件12種類,属性5種類,帰結9種類が明らかになった.また,考察の結果,スピリチュアリティの覚醒は,快・不快といった様々な出来事を契機に発生し,その結果として,自己の意識を拡張したり心身の回復,さらには大いなるものへの感謝と慈しみといった自己の成長をもたらすことが示唆された.さらに,このような機会は,生涯を通して,誰にでも起こり得ること,内的自己と超越的存在との関係といった2つの方向性のある探求であることを示唆した.さらに,人間は,「スピリチュアリティの覚醒」によって,生涯にわたり成長や変化の機会を得ることができ,こころとからだの相関の中でQOLを高めていくことが可能であることが示唆された.
著者
大鳥 和子 福島 和代 吉田 浩子 鈴木 はる江
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.33-42, 2014-02-01 (Released:2014-02-21)
参考文献数
31

本研究は,先輩看護師の言動に対する病院勤務看護師の被害認識と被害認識に関連する要因を明らかにするために,20~30歳代女性看護師963人を対象に質問紙調査を行った.有効回答478を被害認識の有無で分類し,関連要因は属性,ローカス・オブ・コントロール,心身不調とした.結果,31.8%が被害認識あり群で,20歳代が30歳代よりも被害認識あり群の割合が高かった.30歳代と臨床経験年数10年以上の看護師は,被害認識あり群がなし群よりも外的統制傾向にあった.心身不調10項目中9項目は,被害認識あり群がなし群よりも「有」の回答の割合が高かった.先輩看護師は,自らの言動が「被害を受けた」と認識されることを自覚し,被害認識を与えない言動を行うことが重要であることと,20~30歳代女性看護師のメンタルヘルス対策には先輩看護師の言動に対する被害認識を考慮した方策を盛り込む必要性が示唆された.
著者
本間 生夫
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-7, 2009-02-10 (Released:2010-11-10)
参考文献数
34
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.171-176, 2012-09-10 (Released:2012-09-10)
著者
木村 滋子 久住 武
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-12, 2019 (Released:2019-04-19)
参考文献数
35

本研究は「切る」「手でこねる」の2種類の料理作業に着目し,各料理作業が作業者の不安と気分に及ぼす影響を明らかにすることを目的に,大学1年生男女延べ25名を対象に,「切る」(11名)と「手でこねる」(14名)の作業について,新版STAIと日本語版POMS短縮版を指標として,各作業あり・なしの料理前後で比較した.その結果,特性・状態不安(STAI)と総合得点TMD(POMS)は,「切る」「手でこねる」どちらの作業においても,作業あり・なしに関わらず有意に低下した.POMS下位尺度は,「手でこねる」作業の場合,作業ありのみで「怒り-敵意」が有意に低下し「活気」が有意に上昇した.「疲労」「抑うつ-落込み」「緊張-不安」は作業あり・なしともに有意に低下し,「混乱」はともに有意な変化を認めなかった.「切る」作業の場合,作業ありのみで「抑うつ-落込み」「緊張-不安」「混乱」が有意に低下し,「疲労」は作業あり・なしともに有意に低下し,「怒り-敵意」「活気」はともに有意な変化を認めなかった(p<0.05).2種類の料理作業の各々の場合において,作業あり・なしでPOMS下位尺度に異なる影響を見出すことができた.この違いは,食材に直接触れるか否かによる料理作業中の触感の違いが影響した可能性がある.作業内容を一部変えることで,作業者の不安や気分に異なる影響を及ぼすことをより詳細に明らかにすることができた.このことから,料理作業と心身相関の関係を明らかにすることができた.
著者
大東 俊一
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.51-55, 2015-09-01 (Released:2015-09-15)
被引用文献数
7
著者
新井 康允
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.61-63, 2009-09-10 (Released:2010-11-19)
参考文献数
7
著者
古川 公宣
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.84-90, 2012-09-10 (Released:2012-09-10)
参考文献数
14
著者
石川 和江 藤原 宏子 鍵谷 方子
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.14-27, 2022 (Released:2022-02-25)
参考文献数
48

慢性ストレスによる負の情動はテロメアの短縮(細胞老化の指標)と関連する.健常な女子学生を対象に,コーヒーの香りによるストレス緩和効果をテロメア長に注目して検討した.心理社会的ストレス負荷実験では,負荷時にコーヒーの香りを呈示した群(n=15)としなかった群(n=15)の両群において,負荷前に比べ,負荷後に不安得点が有意に増加したが,両群の間に有意な差は認められなかった.一方,コーヒー呈示群でのみ,コーヒーの香りの主観評定と不安得点に負の相関がみられた.さらに,コーヒー習慣のある17名で,テロメア長を目的変数として重回帰分析を行ったところ,関連を示した項目はコーヒーの香りの快・不快度と覚醒度であった.以上により,コーヒーの香りの主観評定と不安には関連があること,習慣的にコーヒーを飲む人において,香りによる快や覚醒とテロメア長に関連があることが示された.
著者
大谷 喜美江
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.82-92, 2009-09-10 (Released:2010-11-19)
参考文献数
18

ストレスや怒りの感情は,時に怒りをぶつける形のストレスコーピングとして表出され,この回避は重要である.一方,心身健康科学は心身相関に関し文化的視点を含め,Knowledge for well-beingの創出を目的とする.そこで本研究では聴取型音楽を用い,特に成人女性の「怒り」に及ぼす影響を検討した.また心身健康科学的観点から,育児ストレスコーピング法として聴取型音楽の有用性を類推した.方法は,乳幼児保護者を含む成人女性計43名を音楽使用・未使用の群に任意区分し,聴取有無別に気分変化をProfile of Mood States短縮版(以下POMS)を用い類推し,統計学的処理を経て分析を行った.結果,1.下位尺度「活気」の増加,「混乱」の減少,2.「怒る」「すぐかっとなる」の減少,3.音楽以外の要素も下位尺度,設問項目の一部の減少の効果を認めた.以上より聴取型音楽は成人女性の気分変容効果があり,怒りをぶつけるコーピング回避に有用と類推された.また心身健康科学の観点から,育児ストレスの解消においては適宜音楽聴取体験の活用が有用と考えられた.
著者
村上 香奈
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.64-66, 2014-09-01 (Released:2014-09-13)
参考文献数
10
著者
中谷 啓子 島田 凉子 大東 俊一
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.37-47, 2013

本研究は,日本におけるスピリチュアリティの概念を明らかにするための先行的研究である.スピリチュアリティが人間の内面に本来備わる目に見えないものという前提に立ち,「スピリチュアリティの覚醒」,すなわち,スピリチュアリティが顕在化する契機に着目し,その概念を明らかにすることを目的とする.<br>研究デザインは,文献研究である.国内の学術論文を網羅するため3種類の検索データベースを用いた.キーワードを「スピリチュアリティ」「スピリチュアル」「覚醒」「危機」「クライシス」「概念」「グリーフ」「悲嘆」「日本人」に設定し文献を抽出し,その記述内容を分析フォームに整理しデータ化した.このうち,「スピリチュアリティの覚醒」の概念が抽出されたデータを,Walker & Avantの概念分析の手法を用い分析した.その結果,「スピリチュアリティの覚醒」の先行要件12種類,属性5種類,帰結9種類が明らかになった.また,考察の結果,スピリチュアリティの覚醒は,快・不快といった様々な出来事を契機に発生し,その結果として,自己の意識を拡張したり心身の回復,さらには大いなるものへの感謝と慈しみといった自己の成長をもたらすことが示唆された.さらに,このような機会は,生涯を通して,誰にでも起こり得ること,内的自己と超越的存在との関係といった2つの方向性のある探求であることを示唆した.さらに,人間は,「スピリチュアリティの覚醒」によって,生涯にわたり成長や変化の機会を得ることができ,こころとからだの相関の中でQOLを高めていくことが可能であることが示唆された.
著者
筒井 末春
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.69-76, 2008-09-10 (Released:2010-12-04)
参考文献数
23
著者
吉田 浩子
出版者
日本心身健康科学会
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.52-57, 2016-09-01 (Released:2016-09-15)
著者
山田 晴美 久住 眞理 吉田 浩子 大東 俊一 青木 清
出版者
The Japan Society of Health Sciences of Mind and Body
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.26-36, 2013

【目的】東日本大震災の災害支援活動を行った保健師の心身の状態について,心身健康科学の視点から解析し,派遣時のサポートについて考察することを目的とした.<br>【方法】X県から被災地に派遣された保健師32人を対象に,心身の健康状況,派遣中及び派遣後の職業性ストレス,メンタルへルス対策の状況について調査を行った.<br>【結果】質問紙回答者 (n= 26) の約6割が派遣中に睡眠の問題や緊張感を,約7割が派遣終了後に心身の不調を感じたと回答した.派遣された保健師にとって,ストレスの要因は「被災の話を聴く」「被災者のストレスを受け止める」ことであった.派遣時期や労働環境もストレス反応に影響を及ぼしていた.<br>【結論】支援者である保健師は,災害支援活動中の二次受傷が自らの健康に影響を及ぼす可能性があることを自覚し,セルフケアを行うことが大切であった.通常業務時以上に,仲間・上司等との語りやサポート体制が必要とされることがわかった.