著者
古賀 弥生
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.39-48, 2004-09-30 (Released:2009-12-08)
参考文献数
21

文化政策は、公共政策の中でも特に多様な主体によって担われるべき分野である。実際に地方都市で展開されているさまざまな文化政策の実態を観察すると、その主体が行政のみならず企業・NPOなど民間セクター及び各々のネットワークであることが理解でき、民間セクターが文化政策の主体としての存在感を増しつつあることが実感される。
著者
大鋸 順
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.65-73, 1998

本研究は、Jリーグクラブチームの設置による地域活性化の可能性を確かめるものである。鹿島町は鹿島臨海工業地帯として発展し、経済的基盤は確立されたが、人々の地域生活を豊かなものにするインフラは必ずしも充分ではなかった。このために、鹿島町は隣接する市町村と鹿島臨海工業地帯の企業とともに鹿島アントラーズFCを設立した。1993年に開始されたJリーグは、日本全体に大きなインパクトを与えた。本研究は、鹿島町の人々の生活にも大きな影響を与えていることを確認した。
著者
川又 啓子
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.63-70, 2000

本稿は、関係性マーケティングの実践として、劇団ふるさときゃらばんを取り上げた事例研究である。最初に関係性マーケティングの議論を概観し、次に、組織内対応と顧客対応の面から分析する。また第3章では、きゃらばんの応援団とのインタビューから、企業と顧客とが融合するような関係性マーケティングの可能性について考察を加えることにする。最後に、地域におけるきゃらばんの実践から、地域需要開拓戦略への経営上の示唆を提示する。
著者
安田 秀穂
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.11-17, 2005-03-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
20

芸術文化産業の経済波及効果を産業連関分析により算出し、立地分析と時系列分析をおこなった。経済波及効果を地域で比較すると東京に立地する芸術文化産業は全国平均よりも大きな経済波及効果を有していることがわかった。時系列でみると1990年から2000年にかけて経済波及効果は芸術文化産業ごとに特徴をもった変化をしており、なかでも映画では経済波及効果の大幅な上昇がみられた。
著者
山本 美紀
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.65-75, 2003-03-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
32

戦後の日本において最初のイメージを提供したのは、「大阪国際フェスティバル」「現代音楽祭」「東京世界音楽祭」という3つの音楽祭であった。本論では、この3つの音楽祭を概観後、1999年に実施した「全国音楽祭アンケート調査」を中心とした分析によって、戦後から音楽祭開催ピークである1990年代に開催された国際音楽祭の基本的分類を示し、日本における国際音楽祭受容を考察するものである。
著者
砂田 和道
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.87-99, 2007
被引用文献数
1

音楽アウトリーチ活動の有効性は実施する音楽家の手法、資質に依存される。クラシック音楽家の養成過程を検証することで、社会情勢の変化に即した音楽家養成と、地域文化振興に有意義な音楽家の必要性が明らかになる。またアウトリーチ活動を媒体とし大学と地域の連携は音楽家、大学、地域の再生に繋がり、地域文化振興に有益である。
著者
福井 健策 唐津 真美
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.39-48, 1999-03-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
33

筆者らは、97年、芸術団体98団体を対象に、各団体の会員に対するリーガルエイド (法律扶助) の実態調査を実施した。本稿の前半では、上記実態調査の結果を題材に、果たして日本において芸術家の法的ニーズは充分に充たされているか, 芸団協による最近の調査結果や法社会学分野における議論の状況を参考に検討を加える。本稿の後半では、仮に日本において芸術家の法的ニーズが充足されていないとした場合、芸術家に対するリーガルエイドの充実に向けて具体的な改善案を提示することを試みる。
著者
川又 啓子
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.55-62, 1998
被引用文献数
1

本稿は、松竹、東宝に並び称されるほどの演劇興行会社へと商業的に成功した劇団四季の事例研究論文である。劇団のこれまでの歩みを概観した後に、劇団四季という組織の運営形態に検討を加え、最後に顧客とのコミュニケーション行為としての劇団四季のマーケティング戦略を分析し、芸術性と営利性という二律背反的関係を超えた文化・芸術活動とマーケティングの融合について検討を加えるものである。
著者
山田 浩之
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.1-7, 2002-09-30 (Released:2009-12-08)
参考文献数
30
被引用文献数
1 4

文化産業の定義をはっきりさせ、その範囲を明確にすることは、文化経済学の研究対象とも関係して重要な課題であるが、未だ十分に考察されていない。本論文はこの課題に答えようとするものであるが、まず、文化産業の文化及び産業概念の検討が行われ、さらに従来の文化産業論へのアプローチやその分類が紹介される。次いで、文化活動の意義は創造性にあることを踏まえて、種々の文化活動は、創造性-再創造性 (娯楽性) の軸と感性-知性の軸からなる二次元上に位置づけることが可能であり、それによって、芸術、学術・出版、ゲーム、娯楽・生活文化の4グループに分類される。この文化活動に対して、それと前方連関関係にある文化支援産業と後方連関関係にある文化利用産業が存在することを指摘して、これら全体が広義の文化産業を構成する、と考える「文化産業のリンケージ・モデル」が提示される。
著者
川本 直義 清水 裕之 大月 淳
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.63-76, 2003
被引用文献数
2

市民吹奏楽団という具体的な市民文化活動の実態を明らかにし、自治体等の活動支援のあり方を考察する。演奏機会、練習場、資金について、自治体等がどのように市民吹奏楽団を支援しており、それがどのような活動結果につながっているかを分析した。その結果、支援の性格によって活動の方向に違いがあることがわかった。共同体としての支援の枠組みだけでなく、新たな支援の枠組みが今後必要となるであろう。
著者
梅原 宏司
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.31-45, 2007-03-31 (Released:2009-12-08)
参考文献数
111

1960年代から70年代にかけ、国家レベルの保守政治に対して革新自治体が行なった政策は、「自治」「市民」という言葉の問い直しに基づくものであった。それは「市民」を政治的に活動する存在として考え、「自治」を市民の参加としてとらえるものであった。これをリードしたのが、政治学者の松下圭一であり、彼はその一環として「文化行政」を構想した。本稿は、松下の考えを検証し、「革新」という考えが「文化」に与えた影響を考察する。
著者
大木 裕子
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.117-126, 2000-09-30 (Released:2009-12-08)
参考文献数
15

フランスではオーケストラの運営資金の大半が公的助成で賄われているため、民間企業をスポンサーとするアメリカとは異なり、景気に左右されることの少ない安定した経営が可能である。EUの統合により、国の境界線が低くなることによって、これまで伝統的な経営を行ってきたフランスのオーケストラの中にも危機感が強まり、ディレクタージェネラルが中心となって、積極的なマネジメントを行うオーケストラが現れてきている。
著者
宮治 磨里
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.91-101, 2002

本稿は、19世紀末のパリ・オペラ座がフランス第三共和政期に、どのようにその社会的機能を変容させていったのかを解明する試みである。現存するパレ・ガルニエは落成当時、特権階級のための社交場であったが、1880年代、90年代と、劇場を民衆のために開かれたものにしようという動きが活発化する。その結果、オペラ座に足を運んだ観衆層は、大ブルジョワジーから中層ブルジョワジーへと移行し、それがオペラ・レパートリーにも反映し、オペラ座に新しい風が吹くことになる。
著者
金武 創
出版者
Japan Association for Cultural Economics
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.31-40, 2005
被引用文献数
2

デジタル化された日本のポピュラー音楽 (J-POP) 市場は1998年まで確実に成長し、その後急速に衰退した。1999年から2003年にかけて、アーティスト部門では年間販売チャートの大幅な変化がみられると同時に、(出せば必ずヒットする) カリスマ型アーティストの存在が認められる。逆にレコード会社は寡占市場を形成しているが、このままでは共倒れを避けることはできないだろう。