著者
南郷 栄秀
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.2545-2551, 2017-12-10 (Released:2018-12-10)
参考文献数
14

エビデンスに基づく医療(evidence-based medicine:EBM)が提唱され四半世紀.その言葉は浸透したが,誤解も多い.EBMはエビデンスを盲信するものではない.エビデンスを踏まえたうえで,患者の病状や周囲を取り巻く環境,患者の価値観,医療者の臨床経験を考慮し,一人ひとりの患者でベストな診療を行う,個別化医療のツールである.患者や家族がエビデンスを理解し,自ら診療上の決断が下せるような支援が必要である.
著者
山家 純一 高橋 弘憲 石原 明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1521-1523, 1999-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

症例は43歳の女性.鉄欠乏性貧血の治療を受け改善したが,突然死を来した.剖検で,両肺動脈主幹部に遊離血栓が証明され,肺塞栓症が突然死の原因と考えられ,塞栓源は左総腸骨静脈に形成された血栓であることが示唆された.子宮腺筋症による圧排が,血栓形成の原因となったと考えられた.子宮の良性腫瘍では経過観察されている例も多く,内科診療上,肺塞栓症の危険性を念頭に置いた管理が必要と考えられたので報告した.
著者
新沼 廣幸
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.2, pp.251-257, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本邦では多列CTやMRIなどの画像診断装置の進化と普及に伴い急性大動脈解離や大動脈瘤に代表される大動脈疾患の診断能は改善された.しかし,大動脈疾患は多彩な臨床症状を示し,非典型的な症例が多いため,しばしば診断に困窮する.このため,大動脈疾患の診断では個々の症例で詳細な問診と身体所見を含む基本的診断法から得られた情報をもとに正確な診断プロセスを用いて画像診断に至ることが重要である.
著者
安藤 朗
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.29-34, 2015-01-10 (Released:2016-01-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1 3
著者
原田 孝 松崎 晋一 野口 俊治 仁平 聡 吉見 誠至 富岡 眞一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.1183-1185, 2004-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

症例は41歳,男性.労作時息切れを主訴に受診.胸部X線写真上心拡大,両下肺の網状影,索状影,胸部CT上同部の肺血管影増強と胸膜直下に多発する斑状影を認めた.肺生検組織ではNonspecific interstitial pneumonia (NSIP)および筋性肺動脈レベルでの微小肺血栓塞栓症を認めた. Predonisolone (PSL)とWarfarinを開始し軽快した.両者の合併は稀であり,貴重な症例と考え報告した.
著者
森 潔 向山 政志 中尾 一和
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.1188-1193, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
21

鉄は細胞分裂に必須の元素であるので,微生物は鉄濃度の低い環境から効率よく鉄を捕捉するためにシデロフォアと総称される鉄結合性有機化合物を合成,分泌する.一方,最近の研究により,哺乳類にはシデロフォア結合蛋白が存在し,大腸菌や結核菌の鉄利用を阻害することで感染防御に役立っていることが解明された.シデロフォア結合蛋白は,感染のほかにも細胞分化,癌,造血,アポトーシスなどの多彩な生命現象にも関わっている.
著者
氏田 万寿夫 佐藤 英夫 山口 美沙子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.11, pp.2688-2700, 2014-11-10 (Released:2015-11-10)
参考文献数
14

市中肺炎でみられる画像パターンは気腔性肺炎と気管支肺炎パターンに大別され,肺野末梢の非区域性の均等陰影を主所見とする気腔性肺炎パターンは,肺炎球菌,肺炎桿菌,レジオネラと肺炎クラミドフィラにほぼ限定される.特徴的な所見を確認することにより,患者背景や起炎菌の頻度を参考に,画像から原因微生物を推定することが可能である.また,CTによる画像診断は,臨床上肺炎と紛らわしい患者の診断に有用性が高い.
著者
張替 秀郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.10, pp.2699-2704, 2013-10-10 (Released:2014-10-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

近年,鉄代謝の分子メカニズムが急速に明らかになってきている.その一つが生体内の鉄量を調節するヘプシジン-フェロポーチンシステムである.フェロポーチンは腸上皮細胞やマクロファージから鉄を血液中に排出するたんぱく質であり,ヘプシジンはフェロポーチンの発現を低下させることで生体の鉄利用を抑制する.もう一つは,IRP(iron regulatory protein)-IRE(iron responsive element)システムである.IREはmRNAの非翻訳領域に存在する高次構造で,このIREにIRPが結合し,鉄関連遺伝子の翻訳を調節する.このシステムにより細胞内鉄濃度に応じて鉄の貯蔵,利用,排出,取り込みにかかわる遺伝子の発現が調節され,細胞内鉄量が最適化される.さらにミトコンドリアにおけるヘム・ヘム中間体・鉄のトランスポーターも続々と同定されてきており,今後鉄関連疾患の発症機序の解明や新たな創薬が期待される.
著者
野津 司
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.1, pp.90-95, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
8

機能性腹痛症候群は,消化管機能と関連が乏しい慢性の腹痛を来す疾患である.うつや不安障害などの精神疾患を合併し,ドクターショッピングを繰り返すQOLが高度に障害された症例が多い.病態として,中枢性の内臓知覚過敏の存在が推測されている.精神科的な治療が中心となるが,内科を受診することが多く,良好な医師患者関係の構築が疾患対応として特に重要である.内科医は本疾患の概念を理解し,適切に対応しなければならない.
著者
清井 仁
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.6, pp.1180-1188, 2015-06-10 (Released:2016-06-10)
参考文献数
9

急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の発症・進展には,細胞増殖の促進に関与する遺伝子変異と細胞分化を阻害する遺伝子変異が蓄積することが必要とされてきた.次世代シークエンサーによるゲノム解析技術により,DNAやヒストンのメチル化状態などのエピジェネティック制御に関与する遺伝子,RNAスプライスに関与する遺伝子,娘染色体の安定化に関与するcohesin複合体遺伝子など,新たな機能分子をコードする遺伝子の変異が明らかにされ,より複雑な分子機構がAMLの発症・進展に関与していることが示唆されている.しかし,それら同定された変異遺伝子個々の生物学的意義はほとんど明らかにされていない状況であり,さらなる研究と複数の遺伝子変異の協調的意義に対する解明が待たれている.一方,分子病態に基づく診断基準,予後層別化,標的治療薬をはじめとする個別化治療への実用化も進んでいる.本稿では,AMLにおける遺伝子異常と予後層別化システムへの応用について概説する.
著者
高橋 将文
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.747-752, 2016-04-10 (Released:2017-04-10)
参考文献数
12

免疫は,細菌やウイルスといった病原体などの異物(非自己)を排除する生体反応であり,ヒトの免疫システムは自然免疫と獲得免疫とに分けられる.免疫システムの異常は様々な疾患の病態に関与するが,自己免疫疾患(autoimmune disease)は主に獲得免疫の異常によって引き起こされる.近年,この自己免疫疾患と対比される疾患として,主に自然免疫の異常に起因する自己炎症疾患(autoinflammatory disease)が注目されている.また,単純な免疫システムと考えられてきた自然免疫が,獲得免疫の始動に必要不可欠であるとともに,自己免疫疾患の発症機序においても重要な役割を果たしていることがわかってきた.中でも,病原体由来の核酸を認識する自然免疫のパターン認識受容体(pattern recognition receptor:PRR)が,自己由来の核酸を認識することで炎症・免疫反応を惹起し,代表的な自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)の病態に関与することが明らかになってきている.
著者
小川 渉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.89, no.8, pp.1512-1517, 2000-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

2型糖尿病のインスリン抵抗性には,遺伝的に規定された原発性インスリン抵抗性と,可逆的な二次性インスリン抵抗性がある.原発性インスリン抵抗性として,骨格筋の糖取り込み障害が重要視されており,その原因遺伝子の検索が行われている.二次性インスリン抵抗性を惹起する因子として,グルコサミン過剰産生,高遊離脂肪酸血症, TNFαなどの関与が示唆されており,持続する高インスリン血症もインスリン感受性の低下を誘導する.