著者
鶴屋 和彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.5, pp.856-864, 2018-05-10 (Released:2019-05-10)
参考文献数
33

近年,心房細動例においてワルファリンに代わる直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant:DOAC)が使用可能となり,その使用頻度は年々増加している.DOACは,早期~中等度の慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)においても有効性・安全性が認められているが,高度腎機能障害例や透析患者では禁忌とされている.また,透析患者では,心房細動例に対するワルファリン投与の是非についても結論が出ていない.現在,血液透析患者を対象とした無作為化比較試験が行われており,その結果が待たれる.
著者
蔭山 和則 須田 俊宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.743-746, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

副腎機能低下症の原因には,原発性と続発性副腎機能低下症がある.続発性の原因には,視床下部性と下垂体性があり,原発性を含めた原因局在の決定のため負荷試験が有用である.一般的には,現在,corticotropin-releasing hormone(CRH)負荷試験とインスリン低血糖刺激試験(ITT)が行われることが多い.原発性副腎皮質機能低下症は,ACTH試験によって副腎皮質の予備能の低下を証明する必要がある.ストレス時の副腎皮質の予備能を評価しておくことは,副腎クリーゼ予防に重要である.それぞれの検査の意義を良く理解した上で,安全に行われるのが望ましい.
著者
諏訪 哲也 宗 友厚
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.756-760, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

副腎クリーゼは,副腎皮質ステロイドの急激な欠乏が本態であるが,脱水,電解質異常,高サイトカイン血症などの併存を考慮することが,正しい治療を行う上で必要である.また,副腎不全が原発性か2次性かによって,病態が異なることも理解されるべきである.ミネラルコルチコイド欠乏合併の有無は,重症度を左右する鍵のひとつである.
著者
続木 康伸 成田 光生
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.5, pp.986-990, 2015-05-10 (Released:2016-05-10)
参考文献数
10

症例は,30歳代女性,1卵性双生児の姉妹.開封し常温保存した市販のミックス粉を使用してお好み焼きを摂取した.摂取後より,アナフィラキシー症状を認め,当院救急搬送となった.血清特異的IgEで,家塵ダニが高値であったこと,プリックテストにて実際に摂取したお好み焼き粉は強陽性に加え,顕微鏡下に多量のダニを確認した.以上より,お好み焼き粉中に発生したダニの経口摂取によるアナフィラキシーと診断した.
著者
千葉 雅尋 重松 明男 山川 知宏 高橋 正二郎 高畑 むつみ 小林 直樹 太田 秀一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.2154-2160, 2019-10-10 (Released:2020-10-10)
参考文献数
7

65歳,男性.倦怠感で当院を受診した.血液検査にて汎血球減少,LD高値ならびにハプトグロビン低値であり,末梢血に破砕赤血球が認められた.血栓性血小板減少性紫斑病に特有の症状である腎機能障害,動揺する神経症状等はなかったが,血栓性血小板減少性紫斑病を想定して,血漿交換を開始した.後日vitamin B12低値が判明し,vitamin B12の補充を行い,溶血所見及び汎血球減少の改善が認められた.破砕赤血球を伴う巨赤芽球性貧血では血栓性血小板減少性紫斑病と類似した検査所見が認められることが報告されており,pseudo-TTPと呼ばれる.
著者
宮地 清光 猪原 明子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.2107-2115, 2019-10-10 (Released:2020-10-10)
参考文献数
17

45~55歳の期間は更年期と呼ばれており,エストロゲン低下が女性特有の多彩な症状をもたらす.その症状に加え,朝のこわばり,手指の疼痛ならびに乾燥感があると,関節リウマチやSjögren症候群ではないかと心配し,内科医を訪れる患者が多い.関節の腫脹がなく,CRPの上昇がなければ,関節リウマチの可能性は少ないが,リウマチ反応がみられ,抗CCP抗体及び抗核抗体が陽性である場合は,適切な対応が必要である.閉経後であれば,ホルモン補充療法が有効であることが多い.
著者
武藤 香織
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.11, pp.2334-2338, 2020-11-10 (Released:2021-11-10)
参考文献数
6

新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)の倫理的法的社会的課題には,①生命・公衆衛生倫理,②研究倫理,③法制度の運用,④COVID-19当事者参画,⑤社会的に脆弱な立場の人々への影響,⑥デジタル技術の利活用等が挙げられる.本稿では,これらに通底する偏見・差別とリスクコミュニケーションの課題について,その背景や定義,最近の動向を取り上げる.
著者
北村 次男 中川 史子 堀内 成人 清永 伍市 乾 久朗
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.628-633, 1970-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1

46才の男. 33才ころより発熱,右下肋痛,黄疸の典型的な胆石発作をくり返えし,内科的な治療により一時軽快していた.約2年前より発作が頻発するようになつた.腹腔鏡と肝生検で肝硬変を発見,炎症症状も残存するためゾンデ療法を主とした内科的治療を行なつたが軽快しなかつた.食餌脂肪源としてトリオクタノインを33%に含有する粉末(以下MCT末と略)を1日120G与えたところ,体重が46.5kgから4カ月目には53.5kgと著明に増加した.胆石発作も3力月間は全く発生せず,その後1カ月に1~3回の発作が見られたが, MCT末投与前に比してその頻度は少なかつた.血清アルカリフォスファターゼ値もMCT末投与7カ月目から正常範囲になつた.この時点で再度腹腔鏡検査を行なつたところ肝硬変は前回とほゞ変らず,同時に行なつた直接胆のう造影により総胆管結石を確認し,その摘出に成功した.
著者
田中 信治
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.9, pp.2228-2235, 2014-09-10 (Released:2015-09-10)
参考文献数
23
著者
高橋 和郎 北川 達也
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.256-262, 1976
被引用文献数
1

最近多発した浮腫を伴う急性多発性神経炎25例につき,発生頻度ならびに成因について検討した.年次別にみると昭和48年以後年ごとに多発する傾向があり,春から初秋にかけて発症することが多く,とくに若年男性に多い.食事は全例白米食で,強化米はなく,インスタント食品の多食,高糖質,低VB<sub>1</sub>の清凉飲料水の多飲が目立つた.又発症時激しい運動をしているものが多かつた.詳細に検討した2症例において血中B<sub>1</sub>濃度はやや低値,乳酸,ピルビン酸濃度はやや高値,平日ならびにB<sub>1</sub>負荷時の尿中B<sub>1</sub>排泄量は明らかな低値を示した.さらにB<sub>1</sub>投与が特異的に症状改善をもたらす所などから,本症が脚気neuropathyであることを明らかにした.末梢神経は軸索変性を示し,とくに初期には特異な管状構造物が軸索内に多数出現した.有髄線維に比し,無髄線維の変化は軽度であつた.最近脚気が増加し始めたことは,本邦栄養食品に何らかの欠陥が生じ始めたことを示すものである.
著者
藤村 茂 渡辺 彰
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.3533-3541, 2011 (Released:2013-04-11)
参考文献数
9

抗菌薬適正使用は,副作用の軽減と最良の臨床効果を得るだけでなく,薬剤耐性菌の出現抑制や医療経済効果にも寄与するが,適正使用の実施にはPK-PD理論の活用が不可欠となる.また細菌感染症の治療では,多数の抗菌薬を効果的に使い分けることが求められることから,各薬剤の特徴や抗菌力,アンチバイオグラムによる状況把握,さらには当該薬剤の耐性化について知ることが,適正使用の実践につながる.
著者
玉岡 晃
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.9, pp.2469-2475, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
55
著者
浅野 泰
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.1868-1872, 1997-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
3
被引用文献数
1

酸塩基平衡調節は,血液のpHを通常7.4±0.04という極めて狭い範囲に保つように働いている.血液pHを一定に保つということは,酵素活性の安定化など生体の代謝が正常に行われるのに重要な役割を成している.この調節には,緩衝作用,肺と腎による共同作用が主な働きを行う.
著者
松原 雄 家原 典之 深津 敦司
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.5, pp.1313-1318, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
9

腎が障害されると様々な電解質異常を来しうるが,中には腎障害の原因となる電解質異常も存在する.低カリウム血症は尿細管の空胞変性や尿細管萎縮,間質の線維化や嚢胞形成を,高カルシウム血症では,腎石灰化症をともなう間質性腎炎や腎結石などの原因となる.両者に共通した障害は尿の濃縮能障害であり,これは,主に集合管に存在する水チャネルであるアクアポリン2の,ADHに対する反応性低下が関与しているとされている.
著者
長坂 昌一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.7, pp.2085-2090, 2012 (Released:2013-07-10)
参考文献数
3
著者
松村 正巳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.2562-2567, 2017-12-10 (Released:2018-12-10)
参考文献数
9

診断とは,患者に起こっている現象を医学知識に照らし正確に解釈する作業である.我々は,問診,診察からの情報をもとに鑑別診断を挙げ,診断を確定する.このプロセスでは,主に2つのプロセス,パターン認識と分析的推論を使い分けている.正しい診断を行うためには,実践を積み,それをフィードバックし,理論的知識・実践知を系統立てて整理していくことが必要である.
著者
安藤 朗 藤本 剛英 高橋 憲一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.2983-2989, 2013-11-10 (Released:2014-11-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1

我々は腸内細菌を利用してさまざまな食物からエネルギーを獲得している.腸内細菌は糖吸収を促がすだけでなく,食物繊維を発酵して脂肪酸を誘導しこれらがエネルギーとして利用される.一方,腸内細菌の存在は複雑な免疫機構の発達を誘導した.腸管は生体内最大のリンパ装置とされ,ここでは腸内細菌や食物抗原に対する免疫誘導と寛容が巧妙にコントロールされ過剰な免疫応答による組織障害が未然に防がれている.このホメオスタシスの乱れが炎症性腸疾患の発症につながる.一方,機能性消化管障害は,腹痛と便通異常などの症状があるにもかかわらず消化管検査では症状の原因を特定できないことから,腸管運動の機能障害と内臓神経の知覚過敏に起因する疾患と考えられてきた.しかし,最近の研究から機能性消化管障害の病態にも腸内細菌叢の関与が示唆されている.ここでは,腸疾患と腸内細菌叢のかかわり,腸内細菌を標的とした治療の実際について解説した.
著者
平田 健一 山下 智也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.9, pp.1706-1711, 2016-09-10 (Released:2017-09-10)
参考文献数
7