著者
辻 貞俊
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1400-1406, 2016-08-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
9

てんかん発作に起因する交通死傷事故の発生により,運転免許制度が改正され,「道路交通法の一部を改正する法律」および「自動車運転死傷行為処罰法」が施行された.改正点は,一定の症状を呈する病気等に該当するかの判断に必要な質問票の虚偽の報告者に対する罰則および医師による届出に関する規定の整備である.さらに,特定の病気等の影響で正常な運転に支障を来たし,交通死傷事故を起こした場合の罰則(新類型)が強化された.医師にも患者にも法律の遵守が求められている.
著者
葛谷 雅文
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.12, pp.2602-2607, 2015-12-10 (Released:2016-12-10)
参考文献数
10
被引用文献数
9 4

サルコペニア,フレイルは,超高齢社会の日本では要介護状態に至る重要な要因として位置づけられ,健康寿命の延伸を目指すうえでも大切な病態である.これらは地域高齢者の10~30%程度の有病(症)率と考えられており,身近に存在する老年症候群であり,高齢者診療にあたる場合は,この存在に注意を払い,基準に合わせて診断する必要がある.サルコペニア,フレイルは予防が可能であることと,早期に発見することにより介入効果が期待できることもあり,一般診療で早期に発見し適切に介入することが重要である.
著者
富沢 雄二 横山 和正 服部 信孝
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.8, pp.2242-2248, 2012 (Released:2013-08-10)
参考文献数
11

膠原病は全身性自己免疫疾患と呼ばれ,1942年にクレンペラーらによって提唱された病理組織学的概念である.脳神経障害を来す代表的な膠原病および膠原病関連疾患として,SLE,Sjögren症候群,MCTD,Behçet病,サルコイドーシス,抗リン脂質抗体症候群などがある.これらの疾患による脳神経障害のパターンおよび診断・治療につき考察する.
著者
沖 祐美子 小池 春樹 祖父江 元
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.1591-1597, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5

薬物による末梢神経障害は,薬剤の用量規制因子となり,原疾患の治療に影響を与えるという点で重大な副作用である.早期発見による投与薬剤の減量,中止が唯一の対症療法となる場合がほとんどで,なんらかの神経症状が残る場合も多い.日常診療においては,末梢神経障害を引き起こす薬剤について幅広く理解し,症状の出現を早期に発見し迅速に処置を行うことが最も重要であると考えられる.
著者
八板 謙一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.11, pp.2326-2332, 2017-11-10 (Released:2018-11-10)
参考文献数
14

院内・術後の発熱は,感染症内科医が多く相談を受ける事象である.患者背景(術式,併存疾患等)を鑑みつつ,臓器毎(肺,尿路等)に考えていけば不明熱化することは多くない.このカテゴリーにはカテーテル関連菌血症・尿路感染症・院内肺炎といったよくみられるものから,デバイス感染や薬剤熱等,詳細な診察・カルテレビュー,画像検索を必要とするものまで存在する.また,診療に関わる主治医との交渉も重要な技術である.
著者
井上 真奈美
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.3-10, 2005-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
15

わが国の胃癌は,罹患率,死亡率とも,諸外国と同様に一貫した低下傾向にあるが,低下の開始時期が欧米先進国と比較して遅く,現在なお高率である.それでも最近は,トップだった罹患や死亡順位が他癌と入れ替わるなど,様相が変貌しつつある.今後,急速な高齢化に伴いしばらく患者数自体は低下しないが,長期的にみれば,わが国の胃癌は大きく減少していくと予想される.

4 0 0 0 OA ライム病

著者
川端 眞人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.83, no.7, pp.1206-1211, 1994-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

ライム病は野山に生息する大型のダニ(マダニ)によって媒介され,病原体はBorrelia burgdorferiである.本症は全身性感染症で,第I期症状はマダニ刺咬傷部の丘疹が遠心性に拡大し遊走性紅斑を形成する.第II期にはボレリアが血行性に全身拡散して,神経・循環器・関節などに多彩な病変を生じ,神経症状・関節炎など一部の病変は慢性化し第III期へと移行する.ライム病は1970年代にアメリカ合衆国で最初に確認された.ヨーロッパ諸国でもマダニ刺咬傷に続発する(慢性)遊走性紅斑や髄膜炎の出現は今世紀初頭から記載されており,アメリカ合衆国とヨーロッパ諸国が世界のライム病二大流行地である.東アジアも流行地のひとつで,日本にも流行が確認されている.これまでの調査から日本のライム病は臨床的および疫学的特色が次第に解明され,アメリカ合衆国やヨーロッパとの違いが指摘されている.
著者
成瀬 光栄 立木 美香 田辺 晶代
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.716-723, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
15
被引用文献数
2

原発性副腎皮質機能低下症は倦怠感などの非特異的症状,色素沈着,低ナトリウム血症,高カリウム血症などに注目し,本疾患を疑った場合,コルチゾール,ACTHを測定する.典型例ではコルチゾール低値,ACTH高値から原発性と診断可能であるが,コルチゾールの低値域はキット間でばらつきがあるので評価に注意する.必ずACTHと合わせて評価すると共に,適宜,迅速ACTH試験を実施し副腎皮質機能の予備能低下を確認する.基礎疾患診断のため胸部X線,抗副腎抗体,副腎CTなどを実施する.続発性との鑑別が困難な場合にはCRH試験,下垂体MRIなど視床下部・下垂体系の評価を行う.
著者
澤田 康文
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.1570-1579, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
8

薬物相互作用には,薬物の血液中濃度などの変化を伴う場合と,変化を伴わない場合に分けられる.前者の例としては,ビンクリスチンとイトラコナゾールによる末梢神経障害,チザニジンとフルボキサミンによる眠気,トリアゾラムとイトラコナゾールによる覚醒遅延,オランザピンと禁煙による錐体外路症状などがあげられる.また,後者の例としては,シプロフロキサシンとケトプロフェンによる中枢性けいれん,スルピリドとチアプリドなどによる薬剤性パーキンソニズム,トリアゾラムとアルコールによる記憶障害・意識障害・ふらつきなどを挙げることができる.本稿では,その中の幾つかの例を解説する.

4 0 0 0 OA 8.高脂血症

著者
曽根 博仁 山田 信博
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.4, pp.1202-1207, 2002-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
30
著者
浅井 一久 渡辺 徹也 栩野 吉弘 鴨井 博 平田 一人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.6, pp.1082-1088, 2015-06-10 (Released:2016-06-10)
参考文献数
8

喘息―COPDオーバーラップ症候群(ACOS)の頻度は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の20~50%程度にみられる.ACOSの喘息がコントロール不良で喘息発作を繰り返す場合,呼吸機能の悪化が早く,予後不良となる.禁煙,気管支拡張剤を中心とする薬物治療に加えて,吸入ステロイド薬(inhaled corticosteroid:ICS)を基本薬として長時間作用性気管支拡張薬の併用が有用である.本稿では,ACOSの病態や治療方法につき述べる.
著者
芦澤 潔人 長瀧 重信
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.972-976, 1995-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10

放射線は広く活用される半面人体に及ぼす影響がいろいろと懸念されている.放射線の影響を知る上で甲状腺は最適臓器の一つであり,本稿では被爆者の甲状腺疾患および放射線の甲状腺細胞に対する影響について述べる.我々は長崎の原爆被爆者を対象にして甲状線の被爆量(DS86)と甲状腺疾患の相関について最新の診断法を使用して調査したところ従来の甲状腺癌に加えて自己免疫性甲状腺機能低下症も被爆者に有意に多いことが判明した.さらに長崎の経験に基づいたチェルノブイリ周辺地区の実態調査では甲状腺癌が急増していることは認められているにしても未だに放射線との関連は明確ではなく,他の環境因子も考慮する必要があるというのが現状のまとめである.又放射線の甲状腺に及ぼす作用は遺伝子,分子,個体レベルでもさかんに研究が進んでいる.ヒト甲状腺癌ではras, ret遺伝子が特に注目を集めている.
著者
加藤 康幸 狩野 繁之 大西 健児
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.11, pp.3162-3167, 2012 (Released:2013-11-10)
参考文献数
10

最近,注目される新興・再興寄生虫症として,東南アジアの森林地帯で報告が増加しているヒトPlasmodium knowlesi感染症,移民により分布が拡大するシャーガス病(アメリカトリパノソーマ症),豚レバー生食に関連したアジア条虫症,ヒラメを介したクドア食中毒,馬肉に関連した消化管ザルコシスティス症をとりあげた.いずれも,疫学,病態に不明の点が多く,今後の研究が待たれる.
著者
赤石 哲也 菊池 昭夫 長谷川 隆文 竪山 真規 青木 正志
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.6, pp.1464-1466, 2013-06-10 (Released:2014-06-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

首下がり症候群は,頸部筋群の機能異常から頸が常に垂れ下がった状態を示す病態である.症例は87歳,男性,糖尿病に対してDPP-4阻害薬のvildagliptin導入後1カ月程で歩容の不安定化から杖歩行となり,約半年で頸が常時前屈位となった.血清CK値の軽度上昇に加え,頸部MRIで頸半棘筋および頸板状筋に一致してT2高信号域を認め,薬剤性の筋障害に伴う首下がり症候群を疑った.同薬を中止して3週間程で症状は改善し,杖なしで歩行可能となった.

4 0 0 0 OA 甲状腺疾患

著者
森 徹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.1109-1110, 1997-07-10 (Released:2008-06-12)
著者
小川 佳宏 阿部 恵 中尾 一和
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.705-710, 2001-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
12
被引用文献数
1

レプチンは脂肪組織に由来する新しいホルモンであり,主に視床下部に発現するレプチン受容体に作用して強力な飽食シグナルを伝達するとともに,交感神経活動亢進によるエネルギー消費増大をもたらし,肥満や体重増加の制御に関与すると考えられている.一方,血中レプチン濃度は体脂肪量の増加に比例して上昇するため,肥満や肥満に合併する循環器・代謝疾患におけるレプチンの病態生理的意義が注目されている.筆者らは,重症肥満者と同程度に血中濃度が上昇するレプチン過剰発現トランスジェニックマウスでは,交感神経活動亢進による血圧上昇が認められることを明らかにしている.又,レプチンは血管内皮細胞に作用して血管新生を促進し,マクロファージ機能調節に関与すると報告されている.以上より,レプチンは肥満に合併する高血圧や動脈硬化症の発症に関与する可能性が示唆される.
著者
髙田 徹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.11, pp.2356-2366, 2017-11-10 (Released:2018-11-10)
参考文献数
10

免疫低下者における感染症は,病原体に対する炎症反応や免疫応答の減弱により,症状徴候や検査所見がはっきりせず,しばしば診断に困難を伴う.患者が抱える個々のリスク因子を評価し,免疫低下のタイプを類型化することで,易感染性となる原因微生物を想定し,原因の検索を進めることが重要である.本稿では,高齢者,抗がん薬や副腎皮質ステロイド薬(ステロイド薬),免疫抑制薬等を使用中の免疫低下者における感染症による不明熱について概説する.
著者
平澤 康孝 河野 千代子 山田 嘉仁 前村 啓太 竹島 英之 槇田 広佑 山口 陽子 一色 琢磨 鈴木 未佳 山口 哲生
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.1457-1459, 2015-07-10 (Released:2016-07-10)
参考文献数
7
被引用文献数
2 3

症例1は,78歳男性.インフルエンザワクチン接種3日後に発熱,胸部CTにて両下葉背側に多発浸潤影を認め,同ワクチンによる薬剤性肺障害が疑われた.集学的治療を行うも,第32病日に死亡.症例2は,68歳男性.特発性肺線維症にて無治療経過観察中であったが,同ワクチン接種3日後に発熱,胸部CTにてすりガラス影の出現を認め,接種契機の間質性肺炎急性増悪が疑われた.治療を行うも,最終的にニューモシスチス肺炎にて死亡.インフルエンザワクチン接種による肺障害の可能性に注意を要すると考えられた.