著者
三代 剛 三上 博信 木下 芳一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.40-45, 2019-01-10 (Released:2020-01-10)
参考文献数
12

刺激性下剤は古くから使用されるものが多く,便秘改善作用が強力であることが知られている.しかし,腸管の強い収縮によって腹痛を生じたり,連用すると耐性現象によって必要な薬剤の量がさらに多くなったりするといった悪循環を来たすこともある.「慢性便秘症診療ガイドライン2017」1)(日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断・治療研究会,2017年)では,「慢性便秘症に対して,刺激性下剤は有効であり,頓用または短期間の投与を提案する」とのステートメントが出されており,基本的に連用する薬剤ではなく,レスキュー的な役割での使用が望ましい薬剤であると言える.
著者
小西 美絵乃 盛田 幸司 田中 祐司
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.769-775, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

粘液水腫性昏睡は,甲状腺機能低下症が基礎にあり,直接あるいは何らかの誘因で中枢神経系の機能障害をきたす内分泌救急疾患である.稀であるが,1990年以後も死亡率が20~50%と高いと報告されている.粘液水腫顔貌や中枢神経症状に加え,低体温,循環不全,呼吸不全など,障害が多臓器に渡ることが多い.甲状腺ホルモンを直ちに開始する必要があるが,投与ホルモンの種類,経路,量には未だ確立されたものがない.現在,日本甲状腺学会が「粘液水腫性昏睡の診断基準と治療指針」を作成中であり,診断基準第三次案も合わせて報告する.
著者
星山 栄成 鈴木 圭輔 平田 幸一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1358-1365, 2016-08-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
10

内科診療では,突然の意識消失で救急外来を訪れる患者において神経調節性失神と心因性非てんかん発作が40%と多く,てんかんは29%,次いで心原性失神が7%とされる.他に非てんかん性不随意運動や異常行動もてんかんとして診断され,治療される場合がある.てんかんの鑑別診断として,十分な病歴を聴取することが重要である.本稿では,内科医がてんかんを鑑別するうえで重要な鑑別疾患を提示しながらそのポイントについて解説する.
著者
宇野 健司
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.11, pp.2275-2285, 2019-11-10 (Released:2020-11-10)
参考文献数
42

我が国では成人8人に1人が慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)に罹患しており,また,透析患者も30万人を超えている国民病といっても過言ではない.CKD患者や維持透析患者は細胞性・液性免疫の低下があるため,感染症に罹患しやすい状況にあり,特に肺炎,敗血症,結核,インフルエンザならびに帯状疱疹,また,腹膜透析患者ではそれに加え,腹膜関連感染症(カテーテル出口部・トンネル感染及び腹膜炎)の罹患リスクや死亡リスクが上がるため,注意が必要であり,これらの疾患に対しては,ワクチンや曝露後予防等を積極的に行うことにより,リスクを下げるよう努めることが重要である.また,投与の際には,腎機能に応じた投与量の調節が必要な薬剤もあるため,予め調節が必要な薬剤のチェックを行っておくことが必要である.
著者
松岡 雅雄 安永 純一朗
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.7, pp.1376-1382, 2017-07-10 (Released:2018-07-10)
参考文献数
13

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type 1:HTLV-1)は,ヒトで初めて同定された病原性レトロウイルスであり,生きた感染細胞を介してのみ感染するという特徴を有している.生体内では,主にCD4陽性Tリンパ球に感染しており,その感染細胞の形質を変化・増殖させ,次の個体へと感染を拡大している.HTLV-1のマイナス鎖にコードされるHTLV-1 bZIP factor(HBZ)はHTLV-1の病原性発現に極めて重要な役割を担っている.この感染細胞を持続的に増殖させるというウイルスの戦略が病原性と結び付いており,感染細胞の抑制が発症予防にも重要である.
著者
里吉 営二郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.8, pp.2325-2328, 2002-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1
著者
冨山 佳昭
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.11, pp.2393-2399, 2020-11-10 (Released:2021-11-10)
参考文献数
10

特発性(免疫性)血小板減少性紫斑病[idiopathic(or immune)thrombocytopenic purpura:ITP]は血小板に対する自己免疫疾患であり,その治療はこの10年で大きく進歩している.「成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2019改訂版」(厚生労働省難治性疾患政策研究事業 血液凝固異常症等に関する研究班「ITP治療の参照ガイド」作成委員会,2019年)が公開された.慢性ITPに対する治療の目標は,血小板数を正常に戻すことではなく,重篤な出血を予防し得る血小板数を維持することである.血小板数を正常化するための過剰な薬剤(特に副腎皮質ステロイド)の長期投与は,その副作用のため,患者QOL(quality of life)を低下させるため,避けるべきである.ファーストライン治療は,Helicobacter pylori除菌及び副腎皮質ステロイドである.セカンドライン治療として,トロンボポエチン受容体作動薬,リツキシマブならびに脾臓摘出術(脾摘)を位置付け,これらの薬剤は,それまで脾摘が唯一の治療法であった難治例に対しても有効である.それぞれの治療法の長所・短所を勘案すると共に,個々の患者の状況・状態を把握し,患者自身の希望を勘案したうえで選択する必要がある.

4 0 0 0 OA 身体症状症

著者
吉原 一文 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.1558-1565, 2018-08-10 (Released:2019-08-10)
参考文献数
10

身体症状症とは,さまざまな苦痛を伴う身体症状が長期に持続する疾患である.身体症状症の要因には,遺伝的要因や環境的要因(ストレス等),患者側の要因(パーソナリティ特性や認知的要因)があり,生物学的要因も示唆されている.診断には,「精神疾患の診断・統計マニュアル」(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM)-5)(アメリカ精神医学会,2014年)の診断基準を用いて診断する.身体症状症には不安や抑うつが併存している割合が高い.身体症状症の治療には,医師との信頼関係が重要である.また,病因・病態の推定には心理社会的背景の聴取が必要になる.病因・病態に応じて治療を行うため,治療法は多岐にわたり,効果も一様ではない.身体症状症に効果のある薬物療法には抗うつ薬があり,特に疼痛症状に対する効果が認められる.心理療法に関しては,認知行動療法(cognitive behavioral therapy:CBT),リラクセーション法,ペーシング,段階的運動療法等の有効性が示されている.その他にも,必要に応じて家族面接や心理教育を行う場合がある.
著者
高橋 和郎 田中 和子 西川 清方 米本 哲人
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.1140-1152, 1975
被引用文献数
1

8例の特異な急性多発性神経炎について臨床的ならびに末梢神経の電顕的検討を行なつた.これらの症例は下肢の著しい浮腫,疼痛をもつて始まり,上行性の運動麻痺,駆幹あるいは四肢末端の知覚障害,深部反射の低下をみる.麻痺は顔面神経に及ぶことがあり,一般に四肢末端に強い。知覚障害は比較的軽い.発症は急性あるいは亜急性で時に寛解,増悪を示し,しばしば,発熱,白血球減少,血沈促進, CRP陽性, A/G比低下など感染,アレルギーを思わせる所見を有する.同時に著しい心拡大,心雑音,時に心電図異常を認める.心臓症状は多発性神経炎の回復に先立つて軽快する.神経症状はGuil1ain-Barré症候群に類似するが,脳脊髄液は細胞数増加を示すことが多いが蛋白量は正常である。末梢神経は軸索,髄鞘共に著しい障害を示し,軸索再生,髄鞘再生の像がみられ,障害は有髄線維に著しい.再生した細い無髄線維の著しい増加がみられる.筋は軽度の血管周囲性リンパ球浸潤を示すものがあるが,筋炎という程の所見ではなく,一般に神経原性萎縮を示す.いずれも男性で1973年から1974年にかけて発症し,近年多発する傾向がある.脚気にも類似するが,要因と思われるものが見出し難く,かつしばしば感染,アレルギーを思わせる所見を有する.
著者
中村 幸子 飯田 啓二 玉川 杏奈 日野 泰久 大原 毅 高橋 佳子 高橋 直人 千原 和夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.1382-1384, 2014-06-10 (Released:2015-06-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2

鉱質コルチコイド反応性低ナトリウム(Na)血症(MRHE:mineralocorticoid-responsive hyponatremia of the elderly)は,脱水を伴った高齢者に発症することが多い疾患である.バソプレシン分泌過剰症(SIADH:syndrome of inappropriate secretion of anti-diuretic hormone)と臨床像が類似するが,治療法が異なるため鑑別が重要である.
著者
伊藤 裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.9, pp.1913-1920, 2018-09-10 (Released:2019-09-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1
著者
葛西 隆敏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.9, pp.1683-1687, 2016-09-10 (Released:2017-09-10)
参考文献数
9
著者
眞田 淳平 木村 友彦 金藤 秀明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.690-697, 2016-04-10 (Released:2017-04-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

高血糖緊急症は1型糖尿病患者に限らず,全ての糖尿病患者で発症する可能性があり,初期治療を誤ると生命に関わる.糖尿病性ケトアシドーシス,高血糖高浸透圧症候群ともにインスリン欠乏(作用不足)と脱水が病態の根幹であり,治療の基本はインスリン投与と脱水補正である.発症予防には患者教育も重要な因子である.劇症1型糖尿病は2000年に本邦で確立された1型糖尿病の新たなサブタイプであり,成因には遺伝素因が関与し,ウイルス感染を契機に免疫応答が惹起され,β細胞が破壊されるという仮説が立てられている.
著者
嶋田 元 堀川 知香 福井 次矢
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.12, pp.3413-3418, 2012 (Released:2013-12-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

厚生労働省では,平成22年度より医療の質の評価・公表等推進事業を進めており,「国民の関心の高い特定の医療分野について,医療の質の評価・公表等を実施し,その結果を踏まえた,分析・改善策の検討を行うことで,医療の質の向上及び質の情報公表を推進すること」を目的としている.平成22年度は国立病院機構,全日本病院協会,日本病院会の3団体が,平成23年度は全日本民主医療機関連合会,恩賜財団済生会,日本慢性期医療協会の3団体が本事業を実施した.
著者
長谷川 友紀
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.12, pp.3448-3454, 2012 (Released:2013-12-10)
参考文献数
9

医療の質向上の方策としては,構造,過程,結果に着目した方法,第三者評価・認定が代表的である.各国では,さらに情報公開,診療報酬などを併用しながら質向上を進めることが通例である.医療では,(1)データが断片化されており相互利用が困難,(2)患者の個別性,重症度の調整が困難,(3)評価手法の開発は個々の施設の評価に留まっていること,などにより,これまでは適切に評価を行い,改善に結び付けることが困難であった.今後は,データの標準化,医療機関が改善につなげやすい還元方法の開発,医療機関への支援策の検討が優先して行われる必要がある.
著者
柏木 征三郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.811-816, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5

トリインフルエンザA(H5N1)の感染はアジアからヨーロッパまで拡がり,2007年1月には宮崎県にまで達している.このようなトリインフルエンザの拡がりは,ヒトからヒトへと感染するウイルスへと変化する機会が多くなると考えられる.現在のA(H5N1)のヒトに対する死亡率がパンデミックの際にも同様と考えるときわめて大きな被害となるものと考えられる.これに対しては,抗ウイルス薬の備蓄,パンデミックへの進展の阻止,ワクチン技術の開発など種々の対策が必要であろう.新型ウイルスが登場した場合は,1918年のスペインかぜの事例から学ぶことも多い.幸い,1918年のウイルスの感染実験もなされるようになり,その成績が待たれる.
著者
佐々木 毅 塚本 さなえ
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.87, no.12, pp.2390-2395, 1998-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

赤沈値(血沈値), CRP値は炎症病態把握での基本的検査とされ,自己免疫疾患例でのモニタリングにおける重要な検査の一つとして汎用されている.最近,新しい炎症マーカーとして血清アミロイドA蛋白(SAA)のルーチン検査が可能となった. SAAはCRP変動の乏しいSLEらリウマチ性疾患の活動期に上昇する.これらの炎症マーカーは自己免疫疾患例のモニタリングにおいて有力な指標となりうることと推定される.
著者
迫井 正深
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.2320-2329, 2016-12-10 (Released:2017-12-10)
被引用文献数
2 3

診療報酬は日本の医療費や診療内容に大きく影響する医療保険制度の根幹をなす仕組みであり,診療サービスの価格表にとどまらず,保険給付の範囲・内容を定めた「品目表」であり,また,医療現場のサービスや体制から国家財政に至るまで様々なレベルで強い影響力をもっている.診療報酬の設定は中央社会保険医療協議会(中医協)が中心的な役割を果たすとともに,医療政策の基本方針や政府予算編成と整合をとりながら実施される.