著者
田村 純 俵原 敬 諏訪 賢一郎 野中 大史 尾関 真理子 浮海 洋史 中野 秀樹 井手 協太郎 阿部 克己 高橋 元一郎
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.7, pp.1972-1974, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
3

肺動静脈瘻は先天性の中胚葉性血管形成不全を原因とする疾患である.症例は26歳,男性.Hugh-Jones II度の労作時呼吸困難あり,健康診断にて胸部X線上結節状陰影を指摘され当院紹介受診.3次元CT等で右上下肺,左下肺に肺動静脈瘻を認め,肺血流シンチグラムではシャント率16.5%であった.経カテーテルコイル塞栓術を施行し,術後血液ガス所見および臨床症状の著明な改善を認めた.
著者
石突 吉持
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.922-926, 1990-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

ヨード摂取量の多寡は甲状腺疾患の発症,病態に影響を及ぼす.日本人のヨード摂取量は年代,地方により異なり,近年1mg/日以下例が多い. 2mg/日以上のヨードを海藻類から毎日摂り,甲状腺異常を見る例が甲状腺疾患の5%内にある.ヨード誘発は機能低下症,ヨード甲状腺腫が多く,機能亢進症はまれであるが,共にヨード中止後軽快する一過性機能異常である.ヨードは慢性甲状腺炎の進展に関与すると同時に,バセドウ病の機能増悪をも来たし治癒率低下をもたらす.食事指導上,摂取ヨード量は10mg/日内の,間歇摂取が望ましく,ヨード含有薬使用にも注意を与えるべきである.

4 0 0 0 OA 4.消化器系

著者
金子 榮藏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.86, no.12, pp.2219-2224, 1997-12-10 (Released:2008-06-12)

効率的かつ侵襲を考慮した診断計画を立てる上で,詳細な病歴の聴取とともに,正しい理学的所見の採取は不可欠である.また初診時理学的所見の正確な診療録への記載は,疾患の推移を知る上でも重要である.腹部の所見を取る上で重要な点は,第一に如何に患者の緊張を少なくするかであり,次いで健常者で認められる所見を確実にとらえることの出来る技術である.本小論はそのような点に重点をおいて述べた.
著者
鈴木 洋通
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.2465-2468, 2000-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
3

腎臓は身体所見から重要な情報が得られることは他の循環器や消化器疾患と比してそれほど多くない.しかし,触診で腎臓の大きさの見当をつけたり,また痛みの有無を確認することは大切である.さらに,膀胱や前立腺では触診が重要であり,内科医でもそれらをおこなうことを怠ってはいけない.とくに前立腺では触診により単なる前立腺肥大であるかあるいは前立腺癌であるか比較的容易に診断がつけられる.聴診では腎血管性高血圧を見付け出すのに役立つことが多い.最近老年人口の増加に伴い動脈硬化による諸疾患が多くなり,腎血管性高血圧も増加傾向であるのであまりなじみのない腹部の聴診も心がける必要があると思われる.
著者
木下 芳一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.9, pp.1611-1625, 2016-09-10 (Released:2017-09-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1

4 0 0 0 OA 1.鑑別診断

著者
竹内 靖博
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.656-661, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5
被引用文献数
2 1

高カルシウム血症は,日常臨床で頻繁に遭遇する生化学検査上の異常である.大部分の高カルシウム血症は自覚症状に乏しく,検査によって初めて気付かれることも稀ではない.一方,血中カルシウム濃度は極めて厳密に制御されており,高カルシウム血症の背景には必ず何らかの病態が潜んでいる.従って,高カルシウム血症に遭遇したら,正しい思考過程に従って適切な診断を付けることが臨床的に大切な課題であり,患者の健康にとって大きな貢献となる.
著者
萩野 昇
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.10, pp.2421-2431, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
10
被引用文献数
1

原因不明の発熱・不明熱患者の診療に際しては,感染症,膠原病・リウマチ性疾患,悪性腫瘍,その他,の4つのカテゴリーを念頭に置きつつ診察・検査を進める.膠原病・リウマチ性疾患の診断は特徴的な病像と臨床経過に頼る部分が大きく,感染症や悪性腫瘍の注意深い除外診断が必要になる.本稿では,リウマチ科医の視点から見た原因不明の発熱・不明熱診療について,リウマチ性疾患の診断に重点を置いて記載した.
著者
松永 和人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.6, pp.950-956, 2016-06-10 (Released:2017-06-10)
参考文献数
10

喘息の病像は多様であるが,気道の慢性炎症は一貫した特徴である.呼気一酸化窒素濃度は,気道の好酸球性炎症を捕捉するバイオマーカーである.喘息を疑わせる呼吸器症状に加え,気道炎症の存在は喘息の診断を支持する.本稿では,気道における一酸化窒素(nitric oxide:NO)の産生機序,呼気NO濃度測定の方法と留意点,喘息の診断や慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)の鑑別における呼気NO濃度測定の役割について最近の話題を提供する.
著者
西條 政幸
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.10, pp.2581-2586, 2014-10-10 (Released:2015-10-10)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

2011年に中国の研究者らにより初めて報告された致死率の高いブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新規ウイルスによる感染症,重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome:SFTS)が日本でも流行していることが2013年1月に明らかにされた.2013年3月から12月までに西日本において40名の患者が報告され,そのうち13名は死亡した(致死率:約30%).SFTSの原因ウイルスであるSFTSVは,自然界においてマダニおよび哺乳動物の間で維持され,ヒトはSFTSVを有するマダニに咬まれて感染し発症する.つまり,私たちはSFTSに罹患するリスクから逃れることはできない.今後,SFTSVに感染するリスクを明らかにし,対策を立てることが求められる.また,SFTSの高い致死率を説明するための病態生理・病理を明らかにするとともに,治療および予防法の開発が望まれる.
著者
新井 万里 松岡 克善 金井 隆典
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.35-41, 2015-01-10 (Released:2016-01-10)
参考文献数
10

ヒトの腸管には数百種類,100兆個以上の腸内細菌が生息し,多彩な代謝機能による宿主へのエネルギー源供給,腸管上皮細胞や免疫細胞の分化や成熟化,腸内環境の恒常性維持,病原菌に対する感染防御などに関与している.腸内細菌叢は健康と疾患に深く関与し,炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)や過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS),大腸癌などの腸疾患のみならず,生活習慣病,自己免疫性疾患,自閉症など腸管以外の疾患との関連性も指摘され,大きな注目を集めている.
著者
久保田 功
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.3, pp.510-515, 2017-03-10 (Released:2018-03-10)
参考文献数
10
著者
神田 隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.8, pp.1517-1523, 2019-08-10 (Released:2020-08-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

血管炎性ニューロパチーは,末梢神経軸索の虚血による梗塞が本態である.生命予後には直結しない血管炎合併症であるため,不当に軽視される傾向がみられるが,一旦,梗塞に陥った末梢神経は容易には再生できず,治療の遅れた患者はADLの低下を一生負い続ける結果となる.的確な診断と速やかな治療開始のためには,まず本症であることを疑うこと,次いで,詳細な神経学的診察によって多発性単神経炎の存在を明らかにすることが重要である.
著者
石川 勲
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.970-976, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

運動が原因の急性腎不全は,これまでマラソン・登山など長時間の激しい運動で,大量の横紋筋融解が起こり,その結果生じるミオグロビン尿性の急性腎不全が知られていた.しかし,近年,短距離の全力疾走などほとんど横紋筋融解が関与しない無酸素運動による非ミオグロビン尿性急性腎不全が知られるようになった.これは,運動後急性腎不全(ALPE)と呼ばれ,激しい背腰痛・嘔気を訴え,救急外来を受診することが多い.血清クレアチニンと尿酸値の測定が必要である.
著者
櫻本 恭司 後藤 耕司 岡本 耕 貫井 陽子 畠山 修司 四柳 宏 小池 和彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.831-833, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

Mycobacterium marinumは,皮膚に結節や潰瘍を形成し,時に深部に進展して関節炎,腱滑膜炎,骨髄炎などを来すことがある.症例はprednisolone10mgを内服中の60歳代女性.手関節の腫脹で発症し,広範な皮膚潰瘍と四肢深部膿瘍を呈した.難治性の皮膚潰瘍をみた場合,抗酸菌感染症も念頭に置く必要がある.
著者
嵯峨 知生 廣川 誠
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.11, pp.2336-2342, 2015-11-10 (Released:2016-11-10)
参考文献数
9

予防接種の安全性は高いが,副反応はゼロではない.成人に安全に肺炎球菌ワクチンを接種するにあたり,定期接種・任意接種の接種要件を理解し,不適当者・要注意者を見極めることが重要である.歴史的経緯から接種経路についても注意が必要である.副反応・有害事象の考え方と対処法,および予防接種後副反応報告の義務化とその概要,健康被害救済制度についても理解しておく必要がある.
著者
吾妻 安良太
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.7, pp.1542-1549, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
18

ピルフェニドン(ピレスパ®)は特発性肺線維症(IPF:Idiopathic Pulmonary Fibrosis)の肺活量の悪化を抑制した.その臨床試験結果に基づき,2008年10月 欧米に先駆けて製造販売承認を取得したIPF治療薬である.特発性肺線維症は特発性間質性肺炎の約半数を占め,最も予後不良の疾患である.稀少疾患ゆえに画像や病理診断による予後評価が難しく,無作為化比較試験展開が困難を極めた.本稿では我が国の産官学共同臨床開発の経緯と,欧米のCAPACITY試験成績との比較から,IPF治療研究の課題と展望について概説する.

4 0 0 0 OA 1.補体

著者
西川 和裕
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.5, pp.948-954, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
10

IgA腎症や膜性腎症では腎組織に補体が沈着し局所での補体活性化を示すが,血中の補体は低下しない.より強力な補体活性化が持続するループス腎炎や膜性増殖性糸球体腎炎では低補体血症がみられる.低補体血症を呈する疾患・病態は限られている.血中補体価,C3,C4測定結果から補体欠損症が発見でき,補体活性化を伴う疾患では補体活性化経路判別による病態の解析が可能となる.ここでは,補体の概説,腎疾患との係わり,血中補体の見方を解説する.
著者
飯村 洋平 本告 成淳 今中 景子 吉田 知彦 竹本 稔
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.4, pp.784-790, 2019-04-10 (Released:2020-04-10)
参考文献数
10

72歳,男性.肛門腺癌の術後リンパ節転移に対して化学療法を開始.化学療法27コース目施行後,突然の眩暈,ふらつきならびに意識障害が出現し,A病院に救急搬送され,低血糖と診断された.当院の内分泌学的検査より,インスリン自己免疫症候群(insulin autoimmune syndrome:IAS)と診断.チオール基を有するベバシズマブを中止したところ,低血糖発作の頻度は低下した.ベバシズマブ使用時の低血糖発作では,IASの発症を考慮する必要がある.
著者
石田 直
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.2990-2997, 2013-11-10 (Released:2014-11-10)
参考文献数
14

現在,日本では,高齢者における肺炎の罹病率,死亡率が増加しており,これを背景として医療・介護関連肺炎という新しい疾患概念も生まれている.高齢者の肺炎は,非典型的な症状や所見を呈することが多く,また,誤嚥が大きな要素となっている.高齢者肺炎の原因微生物は,若年者に比して多様であり,薬剤耐性菌の頻度が高くなるが,検出菌が真の原因菌であるかを検討しなければいけない.高齢者肺炎の治療は,患者の医学的および社会的背景ならびに薬剤耐性菌のリスクを考慮して原因微生物を想定し抗菌薬を選択するが,過剰な治療にならぬよう,用量や薬剤併用に留意する必要がある.また,補液,栄養管理,呼吸管理等,抗菌薬治療以外の治療にも留意する必要がある.高齢者肺炎の中には,末期肺炎,老衰としての肺炎,嚥下機能廃絶例も含まれ,これらに対してどのように対処していくか,社会的なコンセンサス作りも必要である.