- 著者
-
唐木 英明
- 出版者
- 一般社団法人 日本原子力学会
- 雑誌
- 日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.4, pp.236-240, 2008 (Released:2019-06-17)
- 参考文献数
- 1
食中毒の原因には,食中毒菌,ウイルス,きのこ毒,ふぐ毒などがある。食中毒患者数はこの50年間を通じて年3万人前後でそれほど変わっていないが,かつては年間500名を超えることもあった死亡者数は,このところ10名前後まで大きく減少している。このような統計値から見て日本の食品の安全性は高いといえる。しかし,アンケート調査の結果を見ると,食品の安全に対する消費者の不安は大きい。不安の原因として遺伝子組換え食品などいくつかの要因が挙げられているが,食品添加物や残留農薬のような化学物質は常に不安の上位に出てくる。ところが,戦後の混乱期に基準を大幅に超えた量を使用した例を除いては,化学物質による食中毒は起こっていない。にもかかわらず不安を感じるのは,多量の化学物質により起こる毒性が少量でも出るという誤解に基づく不適切な報道の影響が大きい。さらに食品関連企業の偽造が消費者の不信を招き,不安をさらに大きくしている。