著者
吉元 勝起
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.107-111, 2011 (Released:2019-09-06)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1

1977年の日米再処理交渉を機に,基本設計まで終えていたシュウ酸沈殿法によるプルトニウム単体転換プロセスは,日米再処理交渉によって断念を余儀なくされたことから,核不拡散上の観点から,プルトニウムとウランの混合溶液を転換する新たな方法の開発が必要となった。 日本が独自に開発したマイクロ波加熱直接脱硝法は,電子レンジと同じ原理を応用した日本独自の技術である。マイクロ波加熱直接脱硝法を核拡散抵抗性に優れたプルトニウム・ウラン混合転換プロセスの中核技術として採用し,東海再処理工場に隣接してプルトニウム転換技術開発施設を建設し,1986年より開発運転を行っている。この技術を短期間にいかに育み,開花させるに至った経緯について,その歴史的背景等を交えながら解説する。
著者
早野 龍五 澤田 哲生
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.566-572, 2017 (Released:2020-02-19)

事実の解明は科学者の発した素朴なツイートから始まった。あっという間に多数の協力者が協力を申し出てボランティアとクラウドファンディングの輪が広まり,それを学術論文4本で世に問うた。陰膳調査,BABYSCAN,D-シャトルが明らかにしたこととは何か。
著者
青柳 征夫
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.49-53, 2014 (Released:2019-10-31)
参考文献数
3

チェルノブイリNPP4号炉では約200tの核燃料の溶解によって発生したコリウムaとコンクリートの反応によって炉下区画bの鉄筋コンクリート床版が1,600℃に達する高温によって侵食された。しかし,これらが崩壊することなく,コアキャッチャーのような役割を果たし,溶岩状燃料含有物質を受け止め,更なる事故の拡大を未然に防ぐことができた。本稿では,コリウム・コンクリート反応の経緯とコンクリート構造物の損傷の状況をロシアで出版された報告をもとに解説した。
著者
浅野 和仁
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.139-140, 2020 (Released:2020-09-01)
参考文献数
3

当社では,燃料無交換型ナトリウム冷却小型高速炉「4S」(10MWe,50MWe)1)での経験や知見を活用・反映し,300MWeクラスの高温ガス炉と3MWe級の超小型炉(MoveluXTM:Mobile-Very-small reactor for Local Utility in X-mark)2)の開発を進めている。高温ガス炉は蓄熱システムを組み合わせることで,再生可能エネルギーの電力需給変動に対応可能なベースロード電源としての600MWt級の発電プラントを指向し,国内技術として確立した技術をベースとした開発を進めている。並行して原子力イノベーションを追求した新たな概念として10MWt級の超小型炉(MoveluXTM)の概念設計を進めている。本稿ではそれぞれの特徴について紹介し,今後の取組み方針ならびに課題について概観する。
著者
茅野 政道
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.220-224, 2013 (Released:2019-10-31)
参考文献数
6
被引用文献数
1 3

東京電力福島第一原子力発電所の事故では,SPEEDIは事故当初からマニュアルに沿った情報提供を関係機関に行っていたが,避難等の判断に利用されなかったことが大きな議論になった。本稿では,今回の事故でSPEEDIがどのような予測情報をどのようなタイミングで関係機関に提供し,それらの精度はのちに測定されたモニタリングデータと比較してどうであったかを検証し,それをもとに今後の活用を探る。
著者
唐木 英明
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.236-240, 2008 (Released:2019-06-17)
参考文献数
1

食中毒の原因には,食中毒菌,ウイルス,きのこ毒,ふぐ毒などがある。食中毒患者数はこの50年間を通じて年3万人前後でそれほど変わっていないが,かつては年間500名を超えることもあった死亡者数は,このところ10名前後まで大きく減少している。このような統計値から見て日本の食品の安全性は高いといえる。しかし,アンケート調査の結果を見ると,食品の安全に対する消費者の不安は大きい。不安の原因として遺伝子組換え食品などいくつかの要因が挙げられているが,食品添加物や残留農薬のような化学物質は常に不安の上位に出てくる。ところが,戦後の混乱期に基準を大幅に超えた量を使用した例を除いては,化学物質による食中毒は起こっていない。にもかかわらず不安を感じるのは,多量の化学物質により起こる毒性が少量でも出るという誤解に基づく不適切な報道の影響が大きい。さらに食品関連企業の偽造が消費者の不信を招き,不安をさらに大きくしている。
著者
大塚 直彦 河野 俊彦 国枝 賢 大澤 孝明
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.101-105, 2018 (Released:2020-04-02)
参考文献数
3

IAEA核データセクション(NDS)は,核データの収集・整備・配布・教育を通じて,原子力・非原子力分野における核物理の成果の平和利用を半世紀以上にわたり支援している。これらはいずれも国際協力事業であり,核データの先進国である我が国の大学・研究機関の核データ研究者が長年にわたって貢献している。本稿ではセクションの概要と実施事業を紹介する。
著者
須山 賢也 国枝 賢 深堀 智生 千葉 豪
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.598-602, 2017 (Released:2020-02-19)
参考文献数
5

核データとは狭義には原子核と中性子の反応の確率であるが,一般的に言えば,原子核の物理的変化や反応の様子を表現するデータの事である。我が国が原子力開発に着手して以来,核データの開発は重要な技術開発のテーマであり,現在我が国の核データライブラリJENDLは世界で最も高い精度と完備性を兼ね備えた核データファイルの一つとして国際的に認知されている。本連載講座では,原子力開発に関係している方々を対象とし,シグマ特別専門委員会の監修を経て,核データ開発の意義,核データの開発の最新の状況,国際的な動向,そして今後の開発の方向性を解説する。
著者
吉田 正
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.852-856, 2019

<p> 80年の時を経た今となっても,核分裂発見の物語は分かりにくい。ここで扱う両大戦のあいだの7年間(1934〜1940年)はナチスの全権掌握から開戦までの苛烈な時代に一致し,発見に至る経緯はこの時代背景ぬきには理解しにくい。いつ,誰が,どう決定的なことを成したのかに焦点をあわせ,核分裂の発見という現代の我々にも計り知れない影響を与えた出来事を,人々の果たした役割や時代推移の節目ふしめに注意を払いながら見てゆく。</p>
著者
石田 健二 丸末 安美
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.392-396, 2014

<p> 日本原子力産業協会では約3年前の2011年1月,毎週発行の原子力産業新聞の紙上に,理科好きの女子高校生「ゆりちゃん」が世の中に広く利用されている放射線について質問し,ものしり博士の「タクさん」が分かりやすく回答する「原子力ワンポイント」の連載を始めた。その途中,福島第一原子力発電所事故が起こったため,2011年4月7日からは「日本の放射線・放射能基準」について,男子高校生の「ゲンくん」が質問し,ものしり博士の「カワさん」が回答する「番外編」を組み込んだ。そして事故から約2年半が過ぎた2013年9月5日,もう一度,初心にかえり,「広く利用されている放射線」についての解説を再開した。本稿では,執筆済みの中から,放射線量の数値等が独り歩きをして一般の方に誤解を与えているケースに対し,分かりやすく解説したコラムを「4編」選んで紹介する。</p>